音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■斎藤明子・ギターリサイタル バッハと中村洋子の無伴奏チェロ組曲を演奏■

2010-07-24 18:28:13 | ■ お薦めのコンサート ■

■斎藤明子・ギターリサイタル バッハと中村洋子の無伴奏チェロ組曲を演奏■
                             2010・7・24 中村洋子

★炎暑です。

大地も空気も焦げ、息も、思考も止まりそうです。
 
こんな時こそ、 “ ナガラ ”で聞く、安易な音楽ではなく、

バッハの音楽を、

音の建造物、大伽藍であるバッハの曲に、

耳と頭を、集中して、

聴いていただきたいものです。


★ギタリスト「 斎藤明子 」さんが、都内で 8月 28日、

バッハの 「 無伴奏チェロ組曲 第 1番 と 第 2番 」、それに、

私の 「 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」を、演奏されます。


★このプログラムは、W.ベッチャー先生が、ドイツで開かれました

演奏会と、同じ構成です。


★斎藤さんは、バッハの組曲 を、
 
バッハの「 手稿譜 」 ( アンナ・マグダレーナ・バッハの写譜 )、

 に基づいて、演奏します。

その後、私の 「 無伴奏チェロ組曲第 3番 」を、

チェロの楽譜通りに、演奏されます。


★斎藤さんのギターは、6弦に 低弦を増やした 

「10弦ギター 」ですので、

チェロの楽譜を、無理なく、

ギターでそのまま、演奏できます。


★バッハの「 無伴奏チェロ組曲  1番 、2番 」は、この春、

既に、演奏会で発表され、そのポリフォニックな構造を、

見事に弾き分け、感動的な名演でした。



★この斎藤さんのプログラムを、ドイツのベッチャー先生に、

お知らせしましたところ、お手紙が来て、

「 nice information 」と、喜んでいらっしゃいました。


★ドイツの 「 Maestro 」と、日本の 「 Maestra 」 に、

私の曲を、弾いていただけることは、

とても、幸せです。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■ Café Largo カフェ・ラルゴ  サロンコンサート
■ 日 時:'10年 8月 28日(土) 開 演:14:00
           ¥2,500-(コーヒー付き)

■ バッハ:無伴奏チェロ組曲第一番 BWV1007
■ バッハ:無伴奏チェロ組曲第二番 BWV1008
■ 中村洋子:無伴奏チェロ組曲第三番
 
■ 会 場:東京都練馬区田柄 「 カフェ・ラルゴ 」
   有楽町線・副都心線「地下鉄赤塚」駅すぐ近く。

★ お問合せ:カフェ・ラルゴ 電話:03-3930-9898
         http://www.cafe-largo.jp/

★ 斎藤明子ホームページ http://www.akikosaito.jp/
                               

 

                                      ( 白粉花 )

 ▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■中村洋子 第7回「バッハ 平均律クラヴィーア曲集 アナリーゼ講座」のお知らせ■

2010-07-17 00:14:51 | ■私のアナリーゼ講座■
■中村洋子 第7回「バッハ 平均律クラヴィーア曲集 アナリーゼ講座」のお知らせ■
                               2010・7・17  中村洋子


★第 7回は、平均律 第 1巻 「 第 7番 変ホ長調  前奏曲とフーガ 」。

≪ベートーヴェンは、第 7番から何を学び、ピアノソナタ第 31番 Op.110を作曲したか≫


◆日時:2010年 9月 9日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分

◆会場:カワイ表参道 2F コンサートサロン・パウゼ

◆会費:3,000円 ( 要予約 )  Tel.03-3409-1958 



★ベートーヴェンの 「 ピアノソナタ 31番 」の 1楽章は、

一見、対位法音楽のようには、みえませんが、

実は、筋金入りの対位法で作られた音楽です。

1楽章の第 2テーマは、オルゴールの響きのような美しい音楽です。

これをしっかり 「四声」 の対位法ととらえて、演奏すべきでしょう。

1楽章 44小節の下声   ド ~ ド  へのオクターブ音階は、

ハノンの練習曲のように弾いては、意味がありません。


★それらを理解し、演奏するための、

最良な道標 ( みちしるべ ) が、

この平均律 7番の 前奏曲とフーガです。

幼少からバッハを、探究し尽くしたベートーヴェンが、

彼の引出しから選びとり、育て上げたものが、

この 31番といえましょう。

バッハの音階を弾く際、単に音の粒をそろえるだけでは不十分です。

この 7番の 前奏曲&フーガを、詳しく分析することで、

その理由が、浮かび上がってきます。


★その結果、たくさんありますベートーヴェン・ピアノソナタの、

校訂版の中から、どれを選ぶべきか、自ずと、分かってきます。

素晴らしい校訂版は、指使い一つとりましても、

そこまで、読み込んでいるのです。


● 今後のスケジュール
第8回 10月 8日 (金) 第 8番 変ホ短調 前奏曲 & 嬰ニ短調フーガ
第9回 11月 16日(火) 第 9番  ホ長調 前奏曲 & フーガ
    午前10時~12時30分 
    会費:3,000円


■ 講師:作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。

ピアノ、チェロ、ギター、声楽、雅楽、室内楽などの作品を発表。
2003年~ 05年、アリオン音楽財団《東京の夏音楽祭》で、新作を発表。

自作品 「無伴奏チェロ組曲第 1番」 などを
チェロの巨匠 W.ベッチャー氏が演奏したCD『 W.ベッチャー 日本を弾く 』を
07年 発表する。

08年 9月、CD 「 龍笛&ピアノのためのデュオ 」と、
ソプラノとギターの「星の林に月の船」を発表。

09年10月、「 無伴奏チェロ組曲第 2番 」が
W.ベッチャー氏によりドイツ・マンハイムで初演される。

08~09年にかけ、「バッハのインヴェンション・アナリーゼ講座」
全15回を開催。

10年「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」の楽譜が、
ベルリン リース&エアラー社 Ries & Erler Berlin から出版される。

10年 W.ベッチャー氏 演奏の CD『 無伴奏チェロ組曲第3番、2番 』を、発表。

10年「レーゲンボーゲン・チェロトリオス ( 虹のチェロ三重奏曲集 )」
   の楽譜が、ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
   Musikverlag Hauke Hack 社から、出版される。

※ブログ:「音楽の大福帳」http:// blog.goo.ne.jp/nybach-yoko


■カワイ表参道
 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-1 
 Tel.03-3409-1958 
 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
 omotesando@music.kawai.co.jp


                             ( 京都・亀末広 絹のしずく )

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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■平均律 1巻 6番の E・フィッシャーと、W・ケンプによる、神々しいまでの名演■

2010-07-13 12:03:05 | ■私のアナリーゼ講座■
                              2010・7・13 中村洋子


★明日の 「 平均律アナリーゼ講座 」 1巻 6番に備え、

たくさんの、CD 演奏を聴いています。

いずれも、納得する演奏が多いのですが、

エドウィン・フィッシャーと、ウィルヘルム・ケンプの演奏には、

頭を垂れました。


★バッハは、自筆譜で、前奏曲の 3小節目 1拍目までを、

第 1段目に書き、 3小節の 2拍目からを、2段目に書いています。

ケンプは、1段目の左手の 8分音符を、

すべて、長めのスタッカートで、演奏し、

2段目以降は、左手の 8分音符を、

突然、レガートに変えています。


★バッハが自筆譜で、言いたかったことを、

見事に演奏に反映している、という、

一つの、美しい実例です。

これがアナリーゼ、まさに、深い読み、です。


★ケンプは、フーガの 11小節目から始まる 「 嬉遊部 」 や、

30 小節目から始まる 「 嬉遊部 」 なども、

突然、ドルチェ ( 柔らかく ) にし、

テンポも、若干、抑え気味にして、

聴く人に、強烈な印象を与えています。


★現在の演奏で、よくみられるように、

フォルテで咆えるような演奏が、強烈、というのではなく、

“ ひそやかに語りかける ” ほうが、

より、深く強い印象を与えるのです。

こうすることにより、前回のブログで書きましたように、

バッハが、交互に、 「 嬉遊部 」 と 「 ストレッタ 」 を

配置した意図を、見事に読みとり、

ケンプのバッハを、創造しています。


★エドウィン・フィッシャーは、神秘的な湖から湧き上がるように、

この前奏曲を、始めています。

言葉を失う美しさですが、  22小節目  3、 4拍の左手、

テノール部分の  8分音符 F、E、F ( ファ、ミ、ファ )を、

力強く、際立たせて弾いています。

これが、実は、フーガへと続いていく 「 モティーフ 」 、

構成の要となる 「 モティーフ 」 です。

フィッシャーの 前奏曲とフーガを、通して聴きますと、

演奏表現の極致である、と感銘を受けました。


★このお二人の演奏を、理解するには、

実は、聴き手のほうも、勉強が必要といえます。

お二人の CDのジャケットに、したり顔の “ 評論家 ? ライター ” が、  

書いている 「 テクニックが劣る 」 とか、

「 忘れ去られている 」 などという、

愚かし過ぎる言葉には、顔が赤らみます。


★同じように、日本で最も読まれていると推測されます、

日本人による、分厚い 「 解説書 」 の内容にも、

あきれ果てる点が多く、この “ 解説 ” により、

音楽愛好家や、若い方々が、

バッハを誤解されないことを、願うばかりです。


★例えば、 6番の前奏曲については、

≪ このプレリュードも、先の c moll, Cis dur, D dur

プレリュードと同じく、16分音符運動による

指の練習曲としての価値を有している ≫ と書かれています。


★この著者にとって、この曲は、 ≪ 指の練習曲 ≫

なのかもしれませんが、

バッハは、この作品を、作曲の道標 ( みちしるべ ) 、あるいは、

音楽愛好家のための楽しみの曲、として書いています。

当時、バッハの息子たちは、もう既に、指は十分に回っており、

指の練習をわざわざ、これでする必要は、全くなかったでしょう。

お弟子さんについても、同様でしょう。


★バッハには、これにより、作曲方法を、

息子や弟子に伝えたい、という意図が、ありました。

この作品は、≪ 機械的な指の練習からは、最も遠い曲 ≫

であると、断言できます。


★さらに、バッハがこのような、分散和音を、

上記の 3曲で使ったのは、

明日お話いたします、バッハの先輩作曲家の

カスパル・フィッシャーをはじめとする、当時の作曲家による、

「 前奏曲様式 」 に則ったためです。

指の練習では、ありません。


★さらに、この解説書では、フーガについても

≪ 主題前半の滑らかな音階的進行が、突然の B音への

6度 跳躍で破られ、不機嫌な様相を示している ≫

と、記されています。


★バッハは、さまざまな感情を、音楽で表現しましたが、

平均律クラヴィーア曲集のなかに、「不機嫌な」感情を、

表現したということは、理解できません。


★ この 6度跳躍は、 3回目の 「短 3度音程 モティーフ 」

( ここがテーマの頂点 ) に、到達するための、

ホップ、ステップ、ジャンプの 

「 ジャンプ 」に当たる部分なのです。


★また、フーガのテーマについて、この著者は、

和声を付けていますが、それが、間違っています。

フーガの主題に、 ≪ その和声基盤として ≫ と記したうえで、

和声が書き込まれていますが、

1小節目 8分音符の D E F G E ( レミファソミ )の、

1拍目 レの音には和声を付けず、2拍目、3拍目の ミファソミに、

Ⅱ7 ( この7は小文字 )の和音を、当てています。

( 正しい和音の付け方は、講座で解説いたします。)


★1拍目になぜ、和声がついていないのか、理由が全く分かりません。

2拍目、3拍目を 1つの和音ととらえますと、

1 ( 1拍目 ) 対 2 ( 2拍目、3拍目 ) の和声の流れとなり、

この 3拍子のテーマで、 2 対 1 の和声の流れは、十分に可能ですが、

一番大切な、曲頭の、テーマの開始部分を、1対2としますと、

前のめりに転ぶような、奇妙な進行になってしまいます。

バッハは、それを意図していません。

どんな、名演奏家の演奏でも、そのような演奏はありません。


★この和声をどう分析すべきか、についても、

明日の講座で、詳しくお話いたします。


★とにかく、この解説書は、間違いだらけですから、

決して、盲信しないでください。

解説を読んでも、サッパリ分からないのは当然です。

分からないから、 

“ 自分の理解がまだ足りない。バッハは難しい ” などと、

ご自分を責めることは、決してなさらないでくださいね。


★私は、講座のたびに、

この解説書を、お読みになった方々から、

以上のような感想や嘆きを、

たくさん、聴きます。

それを聴きますと、私は悲しくなり、

あえて、このように書きました。


★バッハの音楽は、決して、難しくないばかりか、

この世で、最も美しく、楽しく、心慰められる音楽、

宝石のような音楽です。

それを、ご一緒に学び、弾き、楽しみましょう。



                                 ( 紫式部の花 )
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■平均律・第 1巻 6番「 フーガ 」に現れる、ストレッタの魅力■

2010-07-12 01:33:32 | ■私のアナリーゼ講座■
■平均律・第 1巻 6番「 フーガ 」に現れる、ストレッタの魅力■
                 2010・7・12   中村洋子


★私の「 平均律・アナリーゼ講座 」に、出席された研究熱心な方で、

さらに「 勉強したい 」と、市販されている平均律の解説書を、

購入される方が、かなりいらしゃいます。


★正直申しあげまして、それは、非常に危険です。

日本で市販されている解説書は、ぼぼ、問題がある内容と、

言わざるを得ません。


★14日( 水 )に開催します「 平均律講座 」は、第 1巻 6番です。

「フーガ」 6番について、対談形式の権威あるとされる解説書を、

見まして、つくづく、悲しくなりました。


★その部分を要約しますと、以下のようです。

≪ このフーガは書かれ方が、かなり不規則。

三部形式とみなすこともでき、フーガというよりも、

インヴェンションに近いのです。

いわゆる対位法的楽曲ですね ≫

≪ ストレッタみたいなものがあったり・・・ ≫


★これを読んで、「 なにを主張しているのか、理解できない 」と、

お思いになる方は、ご自分の判断が正常である証拠、とお思いください。


★このお二人は、≪ 規範フーガに則ったもの以外は、

フーガでない ≫という、誤った偏見に,

とらわれています。

「 規範フーガ 」 という考え方と、形式は、

そもそも、バッハの時代には存在していません。


★「 規範フーガ 」 は、フランス語で「 フューグ・デコル

=学習フーガ 」と言われ、学習用のフーガの雛型 (ひながた ) を指し、

それ自体、芸術作品ではありません。

「 規範フーガ 」に習熟し、そのうえで、

バッハの本物のフーガを、見ますと、どこが違うか、

即ち、どこがそのフーガの個性であるか、

瞬時に見分けることができ、大変に便利です。


★また、モーリス・ラヴェルは、

曲集「 クープランの墓 」の「 フーガ 」を、

「 規範フーガ 」の形式で作曲していますが、これは、

彼一流のユーモアで、学習用の形式でも、このように、

素晴らしい芸術作品ができる、という実証です。


★上記の対談本は、「 規範フーガ 」 に則っていない

バッハのフーガを、≪ フーガというより、

インヴェンションに近い、いわゆる対位法的楽曲 ≫と、

意味不明の、説明もどきがなされています。


★ここで使われている ≪ インヴェンション ≫ の意味も、

さっぱりわからないうえに、≪ 対位法的楽曲 ≫ という漠然とした、

これも意味不明の用語がつかわれています。


★多分、「 インヴェンション 」 を、自由な形式で書かれたもの、

という捉え方で、そのように説明されたのでしょうが、

インヴェンションこそが、実に、これ以上ないほど、

厳格な形式で書かれていることは、既に、

「 インヴェンション全 15回講座 」で、お話いたしました通りです。


★ 14日の講座で、詳しく説明しますが、少年バッハが、

手で書き写し、研究したフィッシャーの鍵盤楽器の作品集は、

規模の大きいものは、 4作品が知られています。

そのうち、 2作品集は、前奏曲とフーガを、

あたかも、平均律クラヴィーア曲集のように、

並べているものです。


★その中のフーガは、概して、短く魅力的なものが多いのですが、

上記の先生たちの基準に、照らし合わせますと、

≪ フィッシャーは、フーガと言える曲は書いていない ≫

という結論に、達します。


★彼らが、この 6番フーガを、“ 本物のフーガ ” と、

認めない理由は、「 規範フーガ 」のストレッタは、

曲の 3分の 2以降のところで、展開すべきもの、

という考えに、囚われているからです。


★「 ストレッタ 」とは、フーガの主題や対主題を、

奏し終えないうちに、次の主題や対主題が、

重なって始まる、という技法です。

「 カノン 」 という、大きな枠組みの中の一種、といえます。


★これを、 3分の 2以降で使うということは、

曲が緊迫したものになるという、極めて学習的な理由からです。

そのように覚え、作曲しますと、

自然に、クライマックスを作ることが、習得できるのです。


★バッハの、全 44小節から成る 6番のフーガは、

13小節目で既に、第 1ストレッタが始まり、その後、

嬉遊部 (英語= エピソード、仏語=ディヴェルティスマン )と、

交互に、ストレッタが、 34小節まで、現れます。

このストレッタと嬉遊部が、交互に出現することこそが、

この 6番フーガの真骨頂なのです。


★溜息の出るような、美しい傑作フーガです。


★第 1番のフーガも、すぐにストレッタが出てくるため、

上記の先生方は、≪ 不出来なフーガ ≫ とおっしゃっています。

このような説が、まかり通るのは、日本だけですので、

くれぐれも、ご注意ください。


★バッハをもう一度、勉強しようと思われた場合、

講座で、ひとつでも、心に届いたものを、その後、

ご自身で追及していくべきである、と思います。

自分が納得して育て上げたバッハは、「 本物のバッハ 」です。

バッハ自身、数多くの弟子や息子たちに、

それぞれの個性に見合った演奏法、表現法を、

薦めているからです。


★意味不明の解説本を読んで、再度、バッハ嫌いになり、

バッハから、離れてしまわれないよう、

心より、願っております。



                      ( 檜扇水仙 )
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■ドイツから、私のチェロ三重奏曲の出版楽譜が、届きました■

2010-07-08 14:03:53 | ■私の作品について■
■ドイツから、私のチェロ三重奏曲の出版楽譜が、届きました■
                2010・7・8      中村洋子


★サッカー・ワールドカップの、ドイツ=スペイン戦を、

テレビで、観戦しました。

世界の超一流とは、どういうものか知りたい、という好奇心からです。

参加選手のテクニックが、最高であるのは、当然のことですが、

ある瞬間に瞬間に、どういう技を、

とっさに、自然に繰り出せるか、

最適な技が、自然に出てくるか・・・というスポーツ頭脳、

日ごろの、激しい訓練に裏打ちされた結果としての、

スポーツ頭脳が、卓越していることが、分かりました。

最高の選手だった人でも、監督となり、その指揮が卓越するとは、

全く、限らないことも、面白いことです。



★そのドイツで、出版されました楽譜が、

やっと、到着しました。

ドイツでは、既に、5月に出版され、その直後に、

ドルトムントから、私宛てに発送されました。

しかし、待てども、待てども、届きません。

アイスランドの噴火騒動、という事情を考慮しましても、

遅すぎます。



★「途中で消えた」という結論に達しました。

ヨーロッパでは、特段、驚くような現象ではないそうです。

そういう意味でも、日本は、素晴らしいですね。

再度、発送をお願いし、今度は、10日あまりで、届きました。


★「 チェロ三重奏曲集 」≪ Regenbogen-Cellotrios ≫

~ 7 Trios für 3 junge Cellisten ~、

ドイツ・ドルトムントの音楽出版社
〈 Musikverlag Hauke Huck 〉


★曲名は、直訳しますと、「 虹のチェロトリオ集 」

~ 3人の若いチェリストのための、7つの三重奏曲集 ~

※5月15日の当ブログ≪私の作品「 チェロ三重奏曲集 」が、
ドイツで出版されました≫
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20100515 参照。


★ことし初めに、ベルリンのリース&エルラー社から、

出版されました私の「 無伴奏チェロ組曲第1番 」には、

W.ベッチャー先生による、

詳細なボーイングと、フィンガリングが、書き込まれています。

そのまま、演奏しますと、

まさに、先生の演奏に近いものができます。


★今回のチェロトリオは、先生の意見により、

あえて、それらが一切、記載されていません。

それは、チェリストの自由に任せる方が、

今回はいいでしょう、という判断からです。


★2010-07-06のブログ≪平均律第1巻6番「フーガ」、
バッハが自筆譜に記したスラーに秘めた大きな意味≫
でも、書きましたように、

作曲家が記入したスラーは、たった一つであっても、

曲全体の構想を支配するほど、重いものです。


★フィンガリングやボーイングも、スラーと同様に、

重い意味を、もつのです。

さらに、このトリオの楽譜作りは、チェリストで、

ドルトムント・フィルハーモニーのメンバーでもある方が、

なさりました。


★その素晴らしい点は、まず、総譜とパート譜の両方が、

備わっていることです。

チェロを構え、譜面台に楽譜を置いたとき、

楽譜が最も、見やすいように、パート譜が作られています。

この種の室内楽の楽譜で、総譜がないものも、

よく、見受けられますが、それでは、曲の全体像が、

把握できません。


★大チェリスト、ピアティゴルスキーが、

戦前、フルトベングラーのベルリンフィルで、

主席チェリストとして、演奏していた際、

チェロ以外の、オーケストラの他のパートを、すべて、

暗記していたそうです。

ある奏者が、自分のパートを忘れたさい、

ピアティゴルスキーは、とっさにチェロで、

その部分を弾いて、補ったそうです。

総譜の勉強は、とても、大切ですね。


★このトリオが、入荷しました際には、

アカデミア・ミュージックと、カワイ表参道で、

お求めになることが、できます。


★また、アカデミア・ミュージックのホームページに、
「無伴奏チェロ組曲第1番」の案内が、掲載されています。
https://www.academia-music.com/academia/search.php?mode=detail&id=1501629029&title_type=score



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■平均律第1巻6番「フーガ」、バッハが自筆譜に記したスラーに秘めた大きな意味■

2010-07-06 17:09:48 | ■私のアナリーゼ講座■
■平均律第1巻6番「フーガ」、バッハが自筆譜に記したスラーに秘めた大きな意味■
                     2010.7.6 中村洋子


★平均律クラヴィーア曲集第1巻6番「フーガ」の、

2 小節目と 3 小節目に、

バッハ自身が、「 スラー 」 を、書き込んでいます。


★この 「 スラー 」 の解釈により、

この 「 フーガ 」 を、どのように演奏するか、

それが決定されるほど、重要な 「 スラー 」 です。


★バッハが、「 スラー 」を記入したということは、

「 必要であるから、記入した 」ということです。

「 必要であるから 」とは、

「 誤解されないため 」という意味です。


★ 2 小節目の「 スラー 」は、自筆譜では、

1拍目 16分音符 4つに、掛っています。

楽譜によっては、

自筆譜のように、4つを一つのスラーで、

大きく括っているものと、

最初の F ( ファ )から、スラーを始めずに、

2番目の D ( レ )から、始めている楽譜もあります。


★前者の、 4つを 一括りにしたスラーを採用しているのは、

ベーレンライター版 ( アルフレート・デュール校訂 )、

ヘンレ版 ( 新版 エルンスト・ギュンター・ハイネマン校訂 )

などです。


★また、後者の、3音にスラーを掛けているのは、

ヴィーン原典版 ( デーンハルト校訂 音楽之友社 )と、

ヘンレ版 ( 旧版  オットー・フォン・イルマー校訂 )など。


★どうして、このように、2種類のスラーになってしまったか?

それは、バッハの手書譜のスラーが、

符頭から、下に大きく離れた場所に書かれ、しかも、

スラーの始まる場所が、若干、2番目の音符に寄っているからです。


★しかし、つぶさにこの手書きスラーを見ますと、

最初の音符から、スラーが始まり、4音に掛っていると、

見るのが妥当と、思われます。


★では、なぜ、3音にスラーが掛けられている、

と解釈する楽譜が、あるのでしょうか。

それは、 1 小節目から始まる「 フーガのテーマ 」 の前半を、

2 小節目の F ( ファ )まで、と見ると、

テーマ全体が、すっきりと見渡せ、理解しやすくなるからでしょう。


★しかし、そのような解釈であるならば、

バッハは、そこに 「 スラー 」 を、書き込むことはしなかった、

と、私は思います。


★その解釈、つまり、テーマの前半が、

2 小節目冒頭の F ( ファ ) まで、続く場合、

F は前半を閉じる音となります。

そのため、 F に重み は、掛りません。

重みが掛りませんと、流れのあるテーマと、なります。


★一方、スラーが 4 つの音全部に掛る場合、

テーマの解釈が、全く、異なってきます。

つまり、 F から、テーマの第 2部分が始まり、

非常に、緊迫感があり、畳みかけるような曲想に、

がらりと、変化します。


★さらに、 2小節目の冒頭の F ( ファ )と、2番目の D ( レ )が、

分断されないことにより、 F と D とによって作られる

「 短 3度 」 が、 1 小節目の主題冒頭の、 8 分音符

D ( レ )ー E ( ミ )ーF ( ファ ) によって作られる

「 短3度 」 と、見事に、呼応することになるのです。


★そして、この 「 短 3度 」 音程が、 2 小節目 2 拍目、

スタッカートの 4 分音符 B ( シ♭ )と、

3 拍目の、トリルの付いた 4 分音符 G ( ソ )

によって作られる、 「 短 3度 」 にも、

さらに、呼応しています。

この B 、 G による 「 短 3度 」 が、テーマの頂点になる、

ということが、分かります。


★つまり、「 短 3度 」 が、 3 回現れ、クラシック音楽の原則、

「 3 回目が頂点 」 に、則っています。

バッハは、この 2 つの 4 分音符に、スタッカートとトリルを

自ら、書き込むことにより、その頂点であることを、

演奏者に、指示している、と思います。


★日本でよく読まれ、権威とされている平均律の解説書には、

このスタッカートについて、

『原典版には、2小節目のところに、非常に短いスタッカートが
ついています。これは気をつけなければいけない。この場合の
スタッカートは、バッハは自分で書いているわけですけれども、
これはむしろここのところで、フレーズが切れるというくらいの
解釈でいいと思うんですよ』と、書かれています。

≪非常に短いスタッカート≫と、書かれています。

しかし、自筆譜を見ますと、

短いどころか、ごく普通のスタッカートです。

ヘンレ旧版のみ、スタッカーティシモに記譜していますので、

ヘンレ旧版だけを見て、≪非常に短いスタッカート≫と、

書かれたのでしょう。


★自筆譜や、他の通常の版は、すべて「通常のスタッカート」です。

上記の≪非常に短いスタッカート≫は、明確に誤りです。

そのように演奏しますと、次の G ソ の音に行こうとする、

音の流れが、断ち切られてしまいます。


★さらに、≪フレーズが切れるというくらいの解釈でいい≫で、

演奏しますと、すでにご説明いたしましたように、

「 短 3度 」の関係が、損なわれてしまいます。

バッハが 3 回積み上げて構築し、頂点とした 「 短 3度 」が、

無残に、空中分解してしまいます。


★ 3 小節目の、 2 拍目のスラーの書き方も、同様に、

版によって、さまざまです。


★ヘンレ旧版は、スラーを削除して、全く記載していません。

ヘンレ新版とヴィーン原典版は、バッハの自筆譜を、

完全に無視し、 3 小節目の( タイによって繋がれた )

2 拍目冒頭の A ( ラ )から、 2 拍目終わりの E ( ミ )まで、

スラーで、全部括っています。


★ベーレンライター版は、

2 拍目の 16 分音符 2 つ目の音 G ( ソ )から、

2 拍目終わりの E ( ミ )まで、スラーで括っています。


★虚心に、バッハの自筆譜を眺めますと、

スラーは、 2 拍目 2 番目の 16 分音符 G( ソ )から、

次の16分音符 F( ファ )の、2つの音を、スラーで繋いでいる、

と、見ることができます。


★バッハの、ソ と ファの 2 音のみに、

スラーを掛けた技法は、常識的なものではありません。

ヘンレ新版、ヴィーン原典版、ベーレンライター版の、

スラーの掛け方は、大変に、常識的です。


★バッハが、なぜ、2 音のみにスラーを掛けたか?

その意図を、分析していきますと、

豊かなバッハの音楽の、根幹に触れる、思いがします。

この点につきましては、

7月14日、カワイ表参道「 パウゼ 」での

「 第 6 回平均律アナリーゼ講座第 1 巻 6番・ニ短調」で、

詳しく、お話いたします。

                  ( 沙羅:夏椿の花 と 蜜蜂 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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