音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ 「ベルガマスク組曲」の 和声は、 Sinfonia 14番から最大限に吸収■

2014-02-26 23:25:43 | ■私のアナリーゼ講座■

■ 「ベルガマスク組曲」の 和声は、 Sinfonia 14番 から最大限に吸収■
   ~ 第 14回 Invention・アナリーゼ講座のお知らせ ~

           2014.2.26        中村洋子

 

 


★本日は、KAWAI 名古屋で

「 第 13回  Bach  Invention・アナリーゼ講座 」 を、開催いたしました。

年 3回ですので、ゆっくりとした歩みですが、これまでの講座で、

 Bach の ≪ counterpoint 対位法 とは何か≫ を、探求してきました。


★今回は、 Bach の自筆譜から Invention と Sinfoniaを書き写す際、

両者を対比できるように、工夫を凝らして一枚の紙に記載し、さらに、

Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886~1960)校訂版の、

Fingering も加えました。


★その結果、そのレイアウトから、これまで以上に、 

Invention と Sinfonia が、表裏一体の曲 であることが、

裏付けられ、完璧に読み込むことができました。


★このようにして読み込むことが出来ますと、それが、

≪ 本当の暗譜 ≫ につながります

また、暗譜の具体的な方法についても、詳しくお話しました。


Bach を暗譜することは、

≪ 誰からも奪われることのない、宝物を手に入れる ≫

ことなのです。

 

 


次回の Invention アナリーゼ講座は、 Bach の和声と、

Claude  Debussy  クロード・ドビュッシー (1862~1918)との関係も、

お話いたします。


★Debussy は、 Chopin の全ピアノ作品を校訂しています。

Chopin は、その短い人生で、成人以降ほとんどをフランスで過ごし、

Parisで亡くなりました。

Chopin  の存在と作品が無ければ、

Gabriel Faure ガブリエル・フォーレ(1845~1924) 、

Debussy 、 Maurice Ravel モーリス・ラヴェル(1875~1937) など、

フランス近代の大作曲家の作品は、在り得なかった、

と言えます。


その Chopin  が、終生にわたって学び、

学び尽したのが Bach です。

Bach なくして、Faure 、Debussy 、 Ravel は在り得ない、

ということなのです

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■中村洋子・ Invention・アナリーゼ講座

●第14回 インヴェンション&シンフォニア 第14番 B-Dur
~ドビュッシー「ベルガマスク組曲」の和声は、14番から最大限に吸収~

★名古屋での 「 インヴェンション講座 」 も、あと 2回となりました。

★最終曲から一つ前の 14番は、インヴェンション全体を総括する、

とても重要な曲といえます。

★≪ インヴェンション 14番≫は、冒頭にある 3小節の長いテーマを、

どのように、緊張感を保ちながら演奏するか、

それが 「 要 」 といえます。

この 3小節のテーマには、一体どのような和声が、

内包されているのでしょうか?

それを、解きほぐします。


★≪ シンフォニア 14番 ≫ は、Fuga フーガのエッセンスを学べる曲です。

前半は、フーガの提示部として、例えようもない美しさ。

後半は、充実した「 ストレッタ 」 が、展開されます。

「 ストレッタ 」 は、 “ フーガの華 ” といえます。

この点についても、分かりやすくご説明いたします。


★他の曲と同様に、この14番も Invention と Sinfonia の両方で、

一曲とみることができます。

それを、 「 自筆譜 」 と 「 Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー版 」 を使い、

どう演奏と結びつけるかを含めて、詳しくお話しします。


★ ドビュッシー と インヴェンションは、

全く、無関係のように思われますが、

ドビュッシー の特徴的な和音は、実は、 Bach の和声に多くを負っています。

それを、 ≪ Suite bergamasque ベルガマスク組曲 ≫ を例に、

シンフォニア 14番から、何を学びとり、完成させたか、解き明かします。

同様のことは、モーリス・ラヴェルの和声についても、いえます。

フランス近代音楽の源泉も、すべてBach による、と言ういうことができます。

 

■ 日時 : 2014年 6月25日(水) 10:00 ~ 12:30

■ 会場 : カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」

■ 予約 : カワイ名古屋  Tel 052-962-3939 Fax 052-972-6427

 

 

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura
 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

       スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」
 Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。

★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■ Bach Sinfonia 13番 を特徴付ける 「掛留音」 の深い意味 ■

2014-02-22 00:23:14 | ■私のアナリーゼ講座■

■ Bach Sinfonia 13番 を特徴付ける 「掛留音」 の深い意味  ■
   ~ KAWAI名古屋 第 13回 Invention アナリーゼ講座 ~
                            2014.2.22   中村洋子






2月 26日 ( 水 ) は、カワイ名古屋で、

「 第 13回  Bach インヴェンション・アナリーゼ講座 」 を、

開催いたします。

今回は、「 13番  Inventio & Sinfonia  a-Moll 」 です。


★前回、12番 A-Dur で、生涯忘れない 「 暗譜 」 の方法を、

お話しましたが、今回はそれを、さらに深く掘り下げます。

そのためには、 Bach の自筆譜と Edwin Fischer

エドウィン・フィッシャー(1886~1960)の、

名校訂版を、勉強することが欠かせません。


Edwin Fischer 校訂版は、その曲がどういう構造で、

成り立っているかを、細部にわたって、

見事に、示唆しています。

しかし、それを理解するには、演奏者の絶え間ない、

不断の努力が、必要です。


確実な 「 暗譜法 」 を、獲得するには、

まずその曲が、どのような 「 和音 」 の連結から成り立っているか、

それを、理解する必要があります。

さらに、各々の 「 和音 」 の性質を、考える必要があります。








Bach に限らず、調性で書かれた作品の

Harmony を分析するには、

「 和声 」 と 「 非和声音 」 とを区別し、そのうえで、

「 非和声音 」 の性質や性格も、知る必要があります。

しかし、それは決して、難しいことではありません。

一つずつ、じっくりと覚えていけばよいのです。


★今回は、 「 非和声音 」 の中で、特に、

「 掛留音 ( suspension or retardation )」 に絞って、

分かりやすく、説明します。


★「 suspension 」 とは、掛けること、掛けられることが、原義です。

suspender = ズボン吊り、という派生語がありますが、

この掛留音のイメージに、近いものがあります。

「 retardation 」 は、引き延ばす、という意味です。


★シンフォニア 13番では、 21、 22小節のバス、 26小節内声、

33、 34小節バス、41、 42小節上声、49、 50小節上声、

53、 54小節内声に、 「 suspension 」 が使われています。







★是非、この部分のみ、ピアノで弾いてみてください。

どこかで聴いたことがある旋律だ、と思われませんか?

そうです、「 Französische Suite Nr.3 フランス組曲 3番 」 BWV814 の

第 3曲 Sarabande の、 1小節目上声、 9小節目内声、 21小節目内声に、

大変よく似ています。



Edwin Fischerは、シンフォニア 13番 を 

Andantino-Einfach (simply)に、

「 Französische Suite Nr.5 フランス組曲 3番 」 の Sarabande を、

tranquillo e legato というテンポに設定しています


このテンポの設定を含め、 「 suspension 」 の見分け方、弾き方、

についても、詳しくお話いたします。

 



■ 日  時 :  2014年 2月 26日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分

 ■ 会  場 :  カワイ名古屋   コンサートサロン・ブーレ

 ■ 予約   :      Tel. 052-962-3939

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

       スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。


 ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

 Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

  全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。

★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中

 


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■ Rousseau ルソー の「 トラとバッファローの戦い」に見る「 対位法 」■

2014-02-18 15:53:04 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■

■Rousseau の「 Fight between a Tiger and a Buffalo 」 に見る
「 Couterpoint 」 
                                          2014.2.18  中村洋子





★上野の国立博物館で開催されています

The Cleveland Museum of Art クリーブランド美術館展 」 に、

行ってまいりました。

俵屋宗達の 「 伊勢物語図 住吉の浜 」 や、

曽我蕭白 「 蘭亭曲水図 」 の、
日本お里帰りを喜びますと同時に、

私のお目当ては、

Henri Rousseau アンリ・ルソー (1844~1910) の

「 Fight between a Tiger and a Buffalo トラとバッファローの戦い 」

(1908)でした。   

Rousseau ルソー 晩年の作品です。


★Rousseau の幻想を、私流の分析で楽しみ、

堪能してきました。

Rousseauは、外国旅行をしたことがなかった、と言われています。

おそらく、トラも見たことがなかったかもしれません。

この絵のトラも、現実の獰猛なトラとはどこかかけ離れ、

妙に人間臭い、顔つきをしています。

Rousseau アンリ・ルソーの分身なのかもしれませんね。


★トラに噛み付かれているバッファロー。

抵抗もせず、諦観とでもいうべき醒めた目で、

この絵画を見ている観客を、逆に、

静かに、眺めています。


★トラに目を凝らしてみますと、背中の縞々模様が、

トラの背後にある、バナナの木の大きな葉の葉脈と、

呼応しています。

一番上のやや小さい葉、その下の大きな葉、そして、

トラの縞々文様と、心地よいリズムを刻みながら、

降りてきます。


★バナナの木の上部から、視線を落としていきますと、

葉っぱの斜め下に、トラの大きな尻尾が上を向いています。

葉っぱと、同じ角度です。

そして、トラを通り過ぎますと、画面の一番下中央部分に、

三つのオレンジ色の果実らしきものが、間隔を置いて、

転がっています。

リズムは、それまでの上から下へのベクトルから、

このオレンジで一転、
横向きに変わります。

オレンジがクッションのように、そのベクトルを受け止めます。

鮮やかな転調です。

H-Dur (♯5つの調) から、Des-Dur ( ♭5つの調 ) への、

転調にも比すべき、
意外性と色彩感です。







★観客は、このオレンジで、しばしの間、

憩います。

そして、トラさんのお顔と、見比べるでしょう。

トラの額にも、縞々が。

目が、「 金色 」 に怪しく光っています。

獰猛さは感じられず、なんとも変な顔、 

scherzando スケルツァンド

老境なのかもしれません。


★ホッとして上を見ますと、薄い黄色の大きなバナナの房が、

画面のちょうど真ん中に、ぶら下がっています。

一番下の房は、トラの茶色背中のすぐ上、

そこから右斜め上方に、黄色の房が、順に上がっていきます。

Largo e con forza ( ラルゴ エ コン フォルツァ ) 、

力強い上昇です。


★視線は自然に、最後の房の左上へと、流れます。

葉っぱの後ろに隠れてた、黄色の小さい房が、

一、二、三・・・、円を描くように 7個、

星座のように、軽く漂っています。


★このように、画面の左側は、

Bach の 「 countepoint 対位法 」 のように、

文様と色彩が、二大要素として絡み合い、

濃密です。







★右側は、どうでしょうか?

右下の端に、Henri Rousseau 1908 の署名があります。

画集を見ているだけでは、分からないのですが、

実物を見ますと、署名の色は、実に鮮やかな 「 金色 」 です。

この 「 金色 」 が、

画面の中央右側にありますシダのような葉と、

全く、同じ色なのです。


トラの目も 「 金色 」 。

その目は、3つの 「 オレンジ 」 を見ています。

トラの 「 金色 」 の目、「 オレンジ 」 の実、 「 金色 」 の署名、

 「 金色 」 のシダ、そして、その左の、

大きな 「 黄色い 」バ
ナナの房へと、円環を描きます。

天空を巡る惑星のように、互いが遠心力で、

引っ張られている。

精緻で、完璧なミクロコスモスです。


★右中央の金色のシダの間には、無数の 「 オレンジ 」 の実。

画面の一番上に、この密林のムンムンとした、

凝縮空間から
抜け出た 「 青空 」、そして、

2つの 「 赤い 」 花。

下の3つの 「 オレンジ 」 と、中央の無数の 「 オレンジ 」 、

この三者が、大きな銀河のように、縦に流れています。


★トラの足は、右前足が 1本描かれているだけ。

残り 3本は、よく見えません。

無重力で、宙に浮いているようでもあります。

Salvador Dalí サルバドール・ダリ(1904 - 1989年)もきっと、

Rousseau から、学び尽したことでしょう。

Dalí の 「 Dream Caused by the Flight of a Bee

Around a Pomegranate a Second Before Awakening

目覚めの直前、柘榴のまわりを一匹の蜜蜂が飛んで生じた夢 」

の空飛ぶ Tiger は、Rousseau のこの絵から、

着想を得たのかもしれません。


★全体は、 「 緑 」 のジャングル。

そして、左下に位置する 「 トラ 」 が、

この絵画の 「 Theme テーマ 」 です。


トラの細部は、各々性格
の異なる 「 Motif 」 から成り立っています。

背中の縞模様、眉間の縞、尻尾の長さと模様と角度、

金の目と爪、髭・・・等々。

このトラの 「 Theme 」 に、 「 オレンジ 」 、 「 バナナ 」 、

「 花 」 、
「 緑の葉 」 という 「 Motifの集合体である Melody 」 が、

緻密な構図で、絡み合っていきます。


★「 構図 」 と 「 色彩 」 とで、

 「 Harmony 和声 」 と、 「 Counterpoint 対位法 」 を織り成している、

 ≪ 音楽 ≫ なのです

心地よい余韻が、残ります。

私は、このように楽しみました。







Rousseau のこの絵画が傑作であるのは、

“ Counterpoint 対位法 ” が、

縦横無尽に、張り巡らされているからです。

それは、音楽と変わることがありません

Europe の芸術 ( 音楽、文学、美術 ) の価値を判断するのは、

すべて同じメジャー ( 物差し ) で、可能です。


絵画は、いくら優れた画集を見ていましても、

本物を見て得られる情報の、

1000分の1も、ないでしょう。


実用譜(市販の楽譜)を、100年間眺めていても、

作曲家の直筆譜を、数時間学ぶのには、

かなわないのと同様、

絵画の真の魅力を味わうためには、美術館に、

足を運ぶしか、
ありません。


★Rousseau の 作品は 、ある種の 「 記憶 と 夢 」 を基に、

描かれているのかもしれません。

「 記憶 」 について申しますと、

音楽の「 暗譜 」 につながると言えます。

26日KAWAI名古屋で、 「暗譜 」 とは何か、

どのように 「 暗譜 」 するべきか、

についてお話いたします。

 
Bach を確実に記憶することは、

≪ 誰からも奪われることのない、

誰も奪うことができない宝物 ≫ を、

 Bach 先生から、直接にいただくことなのです。


★ 「 暗譜 」 のあと、私たちは Bach の音楽を基に、

その人の個性で、
自分の音楽を、

創造することができるのです。

Rousseau が「記憶と夢」を自由に羽ばたかせて、

描いたように。

 



※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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■“ 現代のBeethoven ”を批判する資格がありや?、Kripsの見事な Tchaikovsky■

2014-02-10 01:12:02 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■

■“現代のBeethoven ”を批判する資格がありや?、Kripsの見事な Tchaikovsky■

             2014.2.10   中村洋子




★“ 現代の Beethoven ” などと、マスコミがもち上げ、

こぞって大宣伝してきた人物の作品が、

本人ではなく、ゴーストライターが作曲していた、

「 聾 」 ではなく、耳が聴こえていた・・・と、

日本中が騒がしいです。


★今回の事件と同種のことは、当ブログで昨年 7月、

Valery Afanassiev ヴァレリー・アファナシエフ ( 1947~ ) の、

著作 「 ピアニストのノート 」 ( 講談社選書メチエ )を基に、

Anatol Ugorski  アナトール・ウゴルスキ (1942~)という

ピア二ストの話で、書きましたので、どうぞご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/m/201307


中山千夏さんが、2月 8日東京新聞夕刊のコラム 「 紙つぶて 」 で、

以下のような意見を述べられています。

『 代作事件 』
≪ 「 別れのサンバ 」 という曲で一世を風靡した長谷川きよしさんは
「 全盲の歌手 」 というレッテルを貼られることは拒否し続けた。
私も 「 元子役の 」 とか 「 女流の 」 とかを、よきにつけても
悪しきにつけても、私の小説の第一義にはされたくない。

どんな人が作曲しようが、演奏しようが、音楽はまず音楽で
評価すべきだ。作者や演奏者の特性は、付け足しである。

「 全盲の 」 音楽家に感動する心の裏には、そんな人間に
大したことはできない、という無意識の差別感がる。

そしてギョウカイには、障害でもなんでも
儲けのタネに利用する
風潮がある。きよしがマスコミに背を向けたのは、それもあったに
違いない。

 一作曲家の代作がバレた。代作事件にしてはえらい騒ぎだ。
大手マスコミが
軒並み謝っている。これまで代作に気づかず、
持て囃したことを反省すると。

的を外すな。よく考えろ。ただ作品をもてはやしたのではあるまい。
 「全聾」のレッテルでわれわれの差別感を助長し、
営業に資したことをこそ、
この際、深く反省し改めてほしいものだ 」

★≪ どんな人が作曲しようが、演奏しようが、音楽はまず音楽で
評価すべきだ。作者や演奏者の特性は、付け足しである ≫

その通りであると、思います。






★詐欺師に騙されないためには、本物を聴き、楽譜を読み込み、

勉強するしかありません。

きょうは、Josef Krips ヨーゼフ・クリップス指揮の

チャイコフスキー 交響曲第5番を、聴いていました。

Krips クリップス の指揮は、本物の演奏です。

DECCA UCCD-3826 1958年録音 Wiener Philharmoniker

( 毎度のことですが、CD の日本語解説には、

「 曲の最後のリタルダンドも洗練されたものとは言い難いが 」

など、意味不明なことが書かれていますが、無視。)


Pyotr  Tchaikovsky ピョートル・チャイコフスキー(1840-1893)

ほど、
現代日本における、指揮者の自己顕示の犠牲になった作曲家、

大仰に飾り立てた演奏で、その真価が誤解されている作曲家は、

いないかもしれません。


★本物の演奏を聴き、楽譜を読み込む、

そうしますと、オーケストレーションが、実にシンプルなのが分かります。

オーケストラが、一つの大きな楽器として、艶やかに鳴り響くのです。

そして、作品の中の ≪ counterpoint 対位法 ≫ を、

見つける努力をしましょう。


★この王道ともいうべき、勉強方法で対処すれば、

偽物が近づこうとしても、近寄ることはできないでしょう。

メフィストフェレスは、尻尾を巻いて逃げていくのです。






★スコアを見ていますと、 Bach の Brandenburg concerti

 ( original title: Six Concerts à plusieurs instruments)

ブランデンブルク協奏曲に似て、

室内楽のように、書かれている部分が大変に多いのです。

意外にも、 tutti 総奏 が、曲に対するイメージと比べ、少ないのです。

それだから、こそ、 ff  の tutti 総奏 が生きてくるのです。


★譜の読み込み方は、 Bach を読むのと変わりないのです。

そうしますと、第 2楽章 Andante cantabile

32小節目から始まります、Cello の甘く伸びやかな、

旋律が、どこから生まれてきたか、分かります。


★36小節目は、Cello としては、やや高い音域にありますが、

それが、逆に高貴な音色となって、forte の効果と相俟って、

この曲、独特の魅力となっています。

2拍目の  「 h1  1点ロ音 」 が、このフレーズの最高音となり、

一度はなだらかに、下降していきます。

その後、また、上昇に転じ、再度、41小節目で、

 「 h1  1点ロ音 」 の repeated notes が Cello により、

奏せられます。


★この repeated notes は、 41 ~ 43小節までの 3小節間、

何度も立ち現れ、ここが第 2楽章の白眉となります。

この第2楽章の 「 h1  1点ロ音 」 の repeated notes は、

実は、1楽章の 3小節目のクラリネットによって

奏される  「 h 」  の 3つの repeated notes から、

有機的に発展してきたものです。


★Krips クリップスは、それを、

見事に、巨視的に捉えています。

聴衆は、それが手に取るように分かります。

構造が分かるように演奏するのは、

至難の技でしょう。


★しかしながら、この分析方法は、 Bach の Wohltemperirte Clavier

平均律クラヴィーア曲集を、勉強していますと、

難なく、手に入ります。

Tchaikovsky のこの曲が傑作である、ということは、

Bach に立脚しているからに、他ならないからです。

Krips クリップスの見事なアプローチも、

西洋クラシック音楽の本筋に、則っているからです。


★ロシアものだからといって、重たく暗いリズムで、

ねっとりと歌い込むことは、Tchaikovsky が、

求めていなかったことは、自明の理です。





★Josef Krips ヨーゼフ・クリップス(1902-1974)は、In 1938, the Nazi annexation of Austria (or Anschluss) forced Krips to leave the country. (He was raised a Roman Catholic, but would have been excluded from musical activity because his father was born Jewish.)[1] Krips moved to Belgrade, where he worked for a year with the Belgrade Opera and Philharmonic, until Yugoslavia also became involved in World War II. For the rest of the war, he worked in a food factory.
 On his return to Austria at the end of the war in 1945 Krips was one of the few conductors allowed to perform, since he had not worked under the Nazi régime. He was the first to conduct the Vienna Philharmonic and the Salzburg Festival in the postwar period.


★Krips は、ユダヤ系であることから、ナチに迫害されました。
 
しかし、 Ugorski ウゴルスキのように、

“ 迫害 ”  を売物にはしていません。 

芸術家は、その作品だけで勝負するのです。


★指揮者がいくら、身振りたっぷり、ジェスチャーを見せましても、

出てきます音楽とは、関係ないことでしょう。

私は、 “ 現代の Beethoven ” に、全く興味もなく、知らないのですが、

聴くまでもなく、このような西洋クラシック音楽の、

本筋、王道である音楽ではないことは、間違いないと思います。


★ ” 現代の Beethoven ” が、ゴーストに依頼した “ 設計書 ”の写真 が、

新聞に出ていました。

そこに描かれているのは、
音の盛り上がり、音響効果だけで作る音楽、

図式として作っていく音楽です。

それでは、
対位法を基本として有機的な成長を 「 構造 」 にもつ音楽を、

決して、作れないからです。

ベートーヴェンのようなクラシック音楽ではない、といえます。


その場、その場のムードを、 「 悲しみ 」 やら、 「 祈り 」 などと名付け、

それらしく作ったとしても、その感情すら偽物と断言できましょう。

いま、世間を欺いた二人の男性が、ヒステリックに断罪されていますが、

それを持ち上げ、賛美し、売り込み、利益を上げたマスコミ、音楽家、

評論家、
音楽産業、そして、このまがい物に騙された人たちに、

彼らを批判する資格があるか、考える必要があります。


★「本当に苦悩を極めた人からしか生まれてこない音楽」
「孤高の作曲家が、凄絶な闘いを経てたどりついた世界、
深い闇の彼方に、
希望の曙光が降り注ぐ、奇跡の大シンフォニー.」
「中世以来の西洋音楽の歴史を包含し、人類のあらゆる苦しみと闇、
そして祈りと希望を描く、`現代に生まれた奇跡のシンフォニー」

「作曲者はベートーベン並みの才能の持ち主」
「現代で一人だけ天才芸術家をあげろと言われれば、それは佐村河内守だ」
http://www.youtube.com/watch?v=xmXnDBG8C7Q

このようなおどろおろしい形容詞で、

彼らをスターに、天才にすべく、

大宣伝を繰り返してきたマスコミこそ、二人を責める前に、

反省すべきではないでしょうか。

この作品を演奏した音楽家たちも、その胡散臭さに、

気付かなかった訳はないと、思います。






★余談ながら、私が愛読いたします 「 銀座百点 」 2014年 2月号で、

俳優の 名取裕子さんが、立派な意見を書かれています。

一部をご紹介いたします。

≪ 名取裕子のつれづれ日記 ≫
「 カラス天狗 」
 海外旅番組でベトナムへ。(略)

戦後、世界最貧国といわれたこの国(ベトナム)は、今、必死で発展しようと
もがいている。環境汚染などの問題意識まで及ばない、という感じだ。

 経済拡大に目が眩んでいるのは私たちも同じ。
平和に慣れた私たちは、大事なものをなくしてゆくことに
気づかないふりをしていないかしら。

 PM2.5は日本にまで飛来し、福島の放射能が流れた海は、世界に
つながっている。水と空気は貧富に関係なく、公平に天が与えてくれた
はずなのに、
今やだれかの利益のために奪われつつある。

 三回目の三・一一がもうすぐやってくるのに、
政府は再稼働に突き進む。

そのうち日本は、防護服を着ないと外出できない国になって、
カラス天狗どころか、「街じゅうが白い宇宙飛行士で溢れている」と
言われる日がこないことを
切に願う、海外帰国熟女の私である。


★私も同感です。

いまや、 『 パンドラの箱 』 が開けられ、ありとあらゆる悪徳が、

飛び出してきました。

しかし、パンドラの箱から、悪徳が出払った後、

箱の底に残り、、小さな声を上げたのは 「 希望 」 なのです。

絶望する前に、まだまだやるべきことがあります。

私は、まずは、Casals のように、明朝起きましたら、

Bach を勉強いたしましょう。





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■平均律第 2巻の 「 扇の要 」 となる 13番 Prelude & Fuga■

2014-02-06 14:04:13 | ■私のアナリーゼ講座■

平均律 第 2巻の「 扇の要 」となる 13番 Prelude & Fuga
  Bach 平均律クラヴィーア曲集 第 2巻・アナリーゼ講座

~ 第 10回  第 13番 Fis-Dur  嬰へ長調  Prelude & Fuga ~
                               2014. 2. 6                             中村洋子              





★第 10回講座は、第 2巻 13番 Fis-Dur です。

12番 f-Moll は、残念ながら

London Manuscript Autograph では、
欠落です。

自筆譜の現存するものをまず勉強した後、

欠落の 4、5、12番を取り上げる予定です。

★ Prelude 13番は、なんと明るく、気品に満ちた曲でしょう!

下声の優雅な付点リズムは、上声に 3連符を伴い、

軽やかなフランス風序曲を、彷彿とさせます。

★最も、注目すべきは、

全 75小節の 3分の 1にあたる 25小節目から、

小鳥の鳴き声にも比せらる、愛らしいトリルがたくさん、

現れることです。

なぜ、ここからトリルが頻発されるか、

それを考えることが、
この曲を解くカギになります。

そして、悲嘆に満ちた次の14番 fis-Moll と、

好対照をなしていきます。






★あの深く、嘆きに満ちた 14番は、

平均律曲集に単独で現れたものでは、
決してありません。

13番 Prelude のトリルは、

13番 Fuga の Subject(主題)頭部のト
リルへと、

つながっていきます。

5小節目から奏される Counter-subject(対主題)の、

冒頭にある、
三つの 4分音符は、

実は、12番 Prelude f-Moll の冒頭から、

紡ぎ出された音型なのです。

★13番 Prelude & Fugaは、

平均律第 2巻の後半第 1曲として、極めて
重要な位置を占めます。

独自の曲順で、平均律 1、2巻全曲の
校訂版を創った

Bartók Bela バルトーク(1881~1945)が、

この 13番を、
彼の版では、1巻目の 24番、

つまり最後の曲として据えたのは、


決して偶然ではないのです。





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 ■ 日  時 :  2014年 3月 11日(火) 午前 10時 ~ 12時 30分

 ■ 会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

 ■ 予約   :      Tel.03-3409-1958

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

       スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。


 ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

 Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

  全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。

★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中





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■平均律第2巻11番 Prelude で、1つのタイの有無がもたらす重大な意味■

2014-02-02 23:58:11 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律第2巻11番 Prelude で、1つのタイの有無がもたらす重大な意味■
          2014.2.2     中村洋子






★2月6日、カワイ表参道で開催します 

「 平均律第 2巻アナリーゼ講座 」 は、第 11番 F-Dur

BWV880 Prelude & Fuga です。

 Bach の London Manuscript Autograph 自筆譜を基本に、

Julius Röntgen ユリウス・レントゲン (1855~1932)の版、

Bartók Béla  バルトーク (1881~1945) 版、

Henle ヘンレ版、Bärenreiter ベーレンライター版を、

比較検討しております。

★Röntgen レントゲン版と Bartók バルトーク 版は、曲によっては、

Fingering がまったく異なるものもありますが、

11番は、同じ Fingering がとても多いのです。


★これは、偶然ではありません。

どちらかが、真似たということではないのです。

カワイ横浜での 「 Chopin が見た平均律アナリーゼ講座 」 で、

たびたび、お伝えしていますように、

Chopin が Bachの平均律に書き込みました Fingering と、

Bartók版の Fingering とが、同一である場合が多いのと、

同じ理由なのです。


Chopin、Bartók、Röntgen の Fingering は、決して、

弾くための、やさしい Fingering ではないのです。

その Fingering で、どのような motif モティーフ が生まれ、

それが、どのように有機的に成長していくか、

それを示唆するのです。



★Julius Röntgen ユリウス・レントゲン (1855~1932)は、

Casals が大変に尊敬していた作曲家、ピアニストです。

大チェリスト Julius Klengel ユリウス・クレンゲル(1859-1933)の、

従弟にあたります。

Casals のピアニストも、長年務めています。

ちなみに、Klengel クレンゲルは、Emanuel Feuermann

エマーヌエル・フォイアーマン(1902 - 1942)や、

Piatigorsky ピアティゴルスキー(1903 - 1976)の、先生です。







★いつものことですが、 Bach の London Manuscript Autograph

自筆譜 を勉強いたしますと、発見の連続です。

あの Casals が、毎朝毎朝、平均律をピアノで弾くことから、

1日を始めた理由が、よく分かります。


★その勉強があってこそ、彼の偉大なチェロ演奏が、あったのです。

毎日、平均律を弾くことで、発見とともに、

たくさんの疑問が、湧いてきます。

その疑問を深く考えることが、また、新たな発見につながります。


★例えば、 11番  Prelude 5小節目 上声の一番最後の音

「 c2  2点ハ音 」 の 8分音符は、6小節目の上声一番最初の 2分音符に、

タイ ⌒ でつながれている版が、よくあります。


しかし、 Bach の London Manuscript Autograph 自筆譜に、

タイ⌒ は、ついていません。


★5~6小節を、一つのまとまりと見ますと、7~8小節の二小節は、

5~6小節を、長 2度下げて、少し変化を加えた

「 反復 」のように、みえます。

これを同型反復とみるか、そうでないかにより、曲全体の分析が、

さらに言えば、平均律全体の解釈が変わってくる、

とも言えるのです。


★7~8小節( 7小節目 上声一番最後 「 b1、 1点変ロ音 」 の 8分音符から、

8小節目上声冒頭の 2分音符 「 b1、1点変ロ音 」 )  を、見ますと、

自筆譜には、こんどは、タイ⌒ がついています。


私も最初は 、5~6小節のタイは、

“ Bach が書き忘れたのかしら ” と思いました。

Henle 版には、何の注釈もなく、当然のように、

タイ⌒ が、書き加えられています。


Bärenreiter ベーレンライター版の 「 新 Bach 全集

Bach Neue Ausgabe  sämtlicher  Werke 」 では、

この場所は、点線でタイ⌒ を描いています。


★Bach が書き忘れたかどうか、真偽は分かりませんので、

Bärenreiter ベーレンライター版の処置は、

注意喚起という意味では、
妥当でしょう。

しかし、その判断は、奏者がするものであると、思います。


★このことは、いろいろなことを考えさせてくれます。

もし、タイ⌒ が 5~6小節のところに、

最初から、堂々と書き込まれていれば、

私たちは、ごく普通の滑らかで、穏やかな部分として、

その部分を深く考えることは、ないでしょう。








私は、 “ Bach が書き忘れたのかしら ” と思った後、

“ Bach が、 あえてタイ⌒ を付けなかったのかもしれない ” と、

考えるようになりました。

タイ⌒ を付けないで演奏する場合、この二つの 「 c2 」 は、

際立って、耳に焼き付きます。

聴く人に、それを一つの motif モ ィーフとして、

認識させるのです。



★繰り返しますが、タイ⌒ を、意図的に付けなかったのであれば、

 c2 ( 2点ハ音 ) の 8分音符と、

 2分音符の二つの音 ( repeated notes )が、生まれます。

 これは、実は、11番 Fuga の 72~76小節に奏される

 ≪ as1 - as1、 g1 - g1、f1 - f1、e1 - e1 ≫

 ( 4組の repeated notes ) と、呼応してくるのです。

 そして、この 72~73小節の 最初の 3つの音

≪ as1、as1、 g1 ≫ は、

 次の12番 Prelude  f-Moll の冒頭 ≪ as1、as1、 g1 ≫ に、

 ぴったりと、対応することになるのです。





この連鎖は、それ以降の曲にもつながっていくのです。

つまり、平均律全体の捉え方まで、変わってくるのです。

非常に大きな意味を、もっています。


★Bach がタイ⌒ をあえて付けなかったのか、あるいは、

書き忘れたのか、それを考え続けることにより、

このような、新たな発見が出てくるのです


★Henle版のみを信奉し、

ボロボロになるまで弾きこんでも、

このような疑問も、発見も通り過ぎてしまうのです。

 



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