音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■第 5回 平均律・アナリーゼ講座は、6月8日です■

2010-04-29 19:46:05 | ■私のアナリーゼ講座■
■第 5回 平均律・アナリーゼ講座は、6月8日です■
                  2010.4.29 中村洋子


★昨日は、第4回平均律・アナリーゼ講座でした。

私でさえ、出かけることをためらうほどの大雨でしたが、

それにもめげず、大勢の皆さまにお集まりいただきました。

熱心な皆さまの、探究心に触発され、

充実した講座とすることが、できました。


★次回のお知らせです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中村洋子「バッハ 平均律クラヴィーア曲集 アナリーゼ講座」

▼第 5回 第 1巻 第 5番 ニ長調 前奏曲とフーガ
        ( シューマン生誕200年を記念して ) 
 
▼シューマン 「予言の鳥」と、バッハ平均律 1巻 5番との深い関係

 日時:2010年 6月 8日(火) 午前 10時 ~ 12時 30分
 会場:カワイ表参道 2F コンサートサロン・パウゼ
 会費:3,000円 ( 要予約 )  Tel.03-3409-1958 

★平均律クラヴィーア曲集第 1巻 全 24曲を
 4曲ずつのセットとしてみる場合、
 第 5番は、第 2セットの初めの曲となります。
 第 1番 ハ長調と、深くつながっていながらも、
 全く新しい、明るく生命力に満ちた曲です。

★前奏曲とフーガについて、構造の詳しい説明とともに、
 この名曲を日常の練習曲としても、
 どのように応用するか、詳しくお話いたします。
 無味乾燥な芸術性の乏しい練習曲に、
 感性をすり減らすことなく、幼いピアノ学習者の皆さまが、
 無理なく、自然にバッハの豊かな世界に、
 ひたっていくことを願っております。

★6月8日は、生誕200年のシューマンのお誕生日でもあります。
 第 3回、第 4回講座で、ショパンやベートーヴェンが、
 バッハをいかに深く吸収し、その結果として、
 「雨だれ」や「月光」を作曲したか、お話いたしました。

★名曲の条件とは、どれだけバッハに由来しているか、
 それにかかっているとも言えます。
 例外なく、シューマンも終生、バッハ研究を倦むことなく続けました。
 バッハの無伴奏ヴァイオリン作品に、
 ピアノ伴奏を創作することさえしています。
 これは、単なる編曲でなく、バッハの世界を
 「自分に取り込もうとした切実な内的要求」によるものです。
 シューマン後期の作品「森の情景」Op-82 ( 1848~49 )の
 7番「予言の鳥」も、色濃くバッハの影響、
 特に平均律 5番との緊密な関係が読み取れます。
 本物のシューマンを弾くためにも、
 バッハの勉強は欠かせません。


● 今後のスケジュール

第6回 7月14日 ( 水 ) 第6番 二短調 前奏曲とフーガ 
    午前10時~12時30分 
    会費:3,000円
■カワイ表参道
  〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-1 
  Tel.03-3409-1958 
  http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
  omotesando@music.kawai.co.jp

                         ( 大根の花 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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■平均律クラヴィーア曲集1巻4番・前奏曲は、深刻に重々しく弾くべきか?■

2010-04-27 19:09:59 | ■私のアナリーゼ講座■
■平均律クラヴィーア曲集1巻4番・前奏曲は、深刻に重々しく弾くべきか?■
                  2010・4・27 中村洋子


★寒い4月です。

咲き始めましたツツジも、冷たい風に揺れています。

明日の平均律アナリーゼ講座には、

たくさんの皆さまのご予約をいただき、とても、嬉しいです。


★今回の「 4番・嬰ハ短調 」については、

フーガのテーマの“ 音形 ”が、「十字架の形をしている」と、

平均律の解説書には、繰り返し記載されています。

まるで、エンドレステープのようにしつこく、

孫引きに孫引きが、重ねられています。

テーマを構成する各々の音を、和声上の機能から考えますと、

私は、このテーマは、十字架の形にはなっていないと、思います。


★前奏曲も、それに引っ張られるように、

“ 重々しく弾かなければいけない ”、

“ 深刻に弾くべきだ ”として、

「子どもには早すぎる、レッスンには使えない」と、

敬遠されている方が、多いのではないでしょうか。


★平均律1巻を、4曲ずつのセットと見る場合、

4番は、最初のセットの最後の曲です。

喜びに満ちた 1番と、合わせ鏡のように、

見つめ合っている曲、と言うことができます。

同時に、遥か彼方の24番とも、呼応しています。


★4番前奏曲の 36小節目、アルトの 2拍目 Ais,Gis の 8分音符に、

バッハ自身が、珍しく、スラーを付しています。

同様に、3拍目 H,Ais にも、スラーを付しています。


★バッハがスラーを、わざわざ記したのは、

そこが、とても重要な個所であると、知らせるためです。

自筆譜では、この部分が、とても目に入りやすい、

目立つ場所に、据えられています。


★このスラーは、24番の要の場所にも、同様に記されています。

36小節目の、このスラーの部分が、

4番のフーガの、テーマに育っていくのです。

また、このスラーは、実は、

バッハ・フランス組曲の舞曲とも、深い関係があるのです。


★明日の講座では、バッハ・フランス組曲と、

この前奏曲4番についても、お話いたします。


★この4番は、もったいぶったり、秘密めかして、

深刻に弾く必要は、全くありません。

心の底から、歌い、共感して演奏できるような曲しか、

バッハは、作曲していないのです。

                       ( シャガの花 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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■ベートーヴェンの自筆譜は、指摘されているように乱雑?■

2010-04-26 17:33:35 | ■私のアナリーゼ講座■
■ベートーヴェンの自筆譜は、指摘されているように乱雑なのでしょうか?■
 ~第 4回 平均律アナリーゼ講座を明後日にひかえ~
                      2010・4・26 中村洋子

★ドイツの出版社から出版いたします「チェロ三重奏」の、

校正作業などで、慌ただしい毎日です。

Ries & Erler社からの「チェロ組曲第1番」の楽譜出版、

「チェロ組曲第2番、3番」の CD完成 と、

立て込んできました。


★明後日の 第 4回「 平均律クラヴィーア曲集 」アナリーゼ講座

の内容について、このブログで、たくさん書きたいことがありますが、

なかなか、手が回りませんでした。

講座で力を込めて、お伝えしたいと思います。


★今回の講座は、特に、ベートーヴェンの「月光ソナタ」と、

「 平均律 4番 前奏曲とフーガ 」との関係を、お話いたします。

ベートーヴェンの自筆譜は、「乱雑で、大変読みにくい」と、

どの本にも、判で押したように、書かれています。

今回、「月光ソナタ」自筆譜と、初版本楽譜を、詳細に検討してみました。


★ “ ベートーヴェンの自筆譜は、なんと音楽的で、

イマジネーションを、かきたてるものであるか ”

それが、私の感想であり、発見でした。


★確かに、彼独特の癖のようなものがあり、

読む場合、それに慣れる必要はあります。

例えば、月光ソナタ 1楽章。

4分の 4拍子ですが、付点 2分音符の表記の仕方が、独特です。

まず、2分音符のみを記し、付点は、3拍目の場所に、

小さな点が、書かれているだけです。


★当初は、「この点は何か?」と、訝しげに見ました。

2分音符の音を伸ばして、3拍目に到達したところで、

さらに、その付点により、“もう 1拍分延長したい”という、

演奏中に、湧きあがってくる気持ちと、

ぴったりと、一致した記譜法だったのです。

慣れてしまいますと、心地よいばかりか、

この「 月光ソナタ 1楽章 」の曲想とも、よく合っているのが分かります。


★ベートーヴェンの記譜法は、また、バッハの自筆譜や、

ショパンの自筆譜の特徴と、共通点をたくさんもっており、

実は、これが音楽上、非常に大切なことである、

ということにも、気付きました。


★初版本を見ますと、愚直なまでに、

ベートーヴェンの癖を再現している

実に、素晴らしい楽譜です。

ベートーヴェンの明らかな音のミスがありますが、

あえて、そのまま、記載しています。

これは、ピアニストが判断すればよいことである、

という校訂者の意図である、と思います。


★私が時々、書きますように、

余分なおせっかいで、校訂者が、

勝手に直してしまうことが、よくあります。

そういうことがない、この初版本は、

賢明な校訂であると、思います。


★フレージングを表現する「 スラー 」についても、

ベートーヴェンは、「 符頭から始める 」、あるいは、

「 符頭で終える 」ことを、

あえて、していない個所が、たくさんあります。


★例えば、スラーを始める位置を、

符頭から、すこし離れた場所としたり、

スラーが終わる場所を、本来の終わるべき音符より、

さらに、先のところまで、伸ばしている。

あるいは、スラー全体が、宙に浮いているように、

描いている、などです。

これらを “ 乱雑 ” と、とらえていたのでしょう。

しかし、ここにこそ、ベートーヴェンの音楽を解き明かす、

カギが、実は、潜んでいるのです。

この初版本は、かなり、それを忠実に再現しております。


★そのベートーヴェンの、スラーの付け方を見て、

「どこかで見たような覚えがある」と、感じました。

そうです、まさに、ショパンの自筆譜でした。

つまり、ショパンが、

このベートーヴェンの月光ソナタで見られる、

スラーの書き方を、使っていたのです。


★現在、入手できるベートーヴェンの「月光ソナタ」の実用譜は、

小奇麗に手直しされ、ベートーヴェンの自筆譜と初版本から、

読み取れる意図が、消え去っています。


★これだけ、科学が進歩した時代ですのに、

どうして、作曲家自身の意図を忠実に反映した楽譜を、

入手することが、できないのでしょうか。。

もし、そのような忠実な版で、日常的に勉強することができれば、

楽曲の解説書や、説明、論文など大半は、

不必要になってしまうかも、しれませんね。


★ベートーヴェンの「月光ソナタ」 1楽章の自筆譜は、

残念ながら、曲頭の10数小節が欠落しています。

初版本で、欠落部分を見ますと、

小節の途中で、次の段落に移っているところがあります。

自筆譜でもそのように、記譜されていたことでしょう。


★この考え方、記譜の方法は、どこかで見たことがございませんか?

そうです、「 バッハ 」です。

このブログで、何度も書きました「 バッハの記譜法 」です。


★ベートーヴェンの、「小節の後半から、新しい段落が始まる」という、

この記譜を、見ながら弾きますと、

実に、容易に、音楽的に、演奏することができます。

この点について、講座で詳しくお話いたします。


★ショパンは、バッハから学んだものを、

「 エチュード 」や「 前奏曲集 」に、結実させました。

「 月光ソナタ 」を、勉強していますと、

その中に、たくさんのショパンの曲のアイデア、断片が発見できます。

つまり、ショパンは、「バッハ」から直接、学んだだけでなく、

ベートーヴェンが、「 バッハ 」から学んだものを、

ベートーヴェンを通じて、さらに深く学んでいた、ということができます。

              ( 山吹の花 )
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■私の作品「無伴奏チェロ組曲第3番、2番」の CD が完成■

2010-04-23 21:44:31 | ■私の作品について■

■私の作品「無伴奏チェロ組曲第3番、2番」の CD が完成■
                      2010.4.23   中村洋子


★昨秋、ヴォルフガング・ベッチャー先生に録音していただきました、

私の作品「無伴奏チェロ組曲第3番、2番」のCDが、ついに完成しました。

「 順番としては、3番を先にしたほうが、ヨーロッパでは好まれるでしょう」

という先生のご意見で、変則的ですが、3番、2番の順といたしました。


★先生の演奏もさることながら、音質も、特筆すべき名盤となっています。

録音とマスタリングをお願いいたしました杉本一家さんが、精魂込め、

最高の質に仕上げてくださいました。

数々の名盤を、お作りになってきた杉本さんですが、

そのなかでも、ご自身のマスターピースとなりそうです。


★一般のショップには出ませんので、

ご希望の方は、カワイ表参道 1F 楽譜売り場で、

お求めになれます。


★ CD ブックレットの一部です。

●無伴奏チェロ組曲第3番 
① 「前奏曲」        
② 「鶺 鴒(せきれい)」    
③ 「唐紅に水くくるとは」    
④ 「秋の森」          
⑤ 「木の実時雨」        
   「晩秋の朝霜」       
   「木の実時雨」         
⑥ 「錦 秋」          

●無伴奏チェロ組曲第2番
⑦  「悲しみの歌 と フーガ」  
⑧  「私は、そよ風になりたい」
⑨  「私は、突風になりたい」  
⑩  「霜の花」         
⑪  「冬の荒海」         
    「揺らめく蝋燭の炎」        
    「冬の荒海」        
⑫  「漂 白」

●「冬 の 庭」           
                  
●「夜色楼台図」 
             
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●無伴奏チェロ組曲第3番 

私は、チェロ組曲を書き続け、全6曲とする予定です。
それぞれの組曲は、季節を象徴し、それが回りめぐり、
循環するように作られます。
この第3番は、日本の「秋」を歌います。
第 1楽章「前奏曲」のテーマは、雅楽の有名な旋律を基に発展させました。
私が08年に発表しましたCD「龍笛とピアノのためのデュオ」のなかの
「胡国の春」という曲で、龍笛がこの旋律を奏でています。
このテーマは、音階の第1から第4音までが、C-D-E-Fisで、
西洋音楽の「リディア調」に一致します。
第5音から上は、G-A-B-Cで、「ミクソリディア調」に、一致します。
C-Fisから導きだされる増 4度音程が、特徴的な効果をもたらします。
雅楽の故里である西域「シルクロードの世界」がもつ生命力を、
日本の山の秋に、移し変えました。

第 2楽章の「鶺鴒(せきれい)」は、私が好きな詩人・三好達治の「鶺鴒」と
いう詩に、触発されました。
“小川の石が丸いのは、みんな私の尻尾で叩いたからよ”、
という微笑ましい内容の詩です。
ほとばしる清流。
白い水しぶきを浴びながら岩の端にへばりつき、一心に尾を振るう鶺鴒。
奥深い山での、人の知らない自然の営み、秋の一こまです。

第 3楽章「唐紅に水くくるとは」。
紅葉で錦織り成す山々。
赤、黄色ととりどりの紅葉が清流を伝い、舞い、回り、走ります。
どこか不気味で狂気を孕んだような風景。

第 4楽章「秋の森」は、静まり返った秋の深い森の中。
木の実の落ちる音が聞こえるような静寂さ。
「バルトーク・ピッチカート」
(弦が指板に当たり、跳ね返る音まで入る)が、森の空気を伝えます。

第 5楽章「木の実時雨」、「晩秋の朝霜」、「木の実時雨」と、
繰り返されます。

第 6楽章「錦秋」は、お能の「紅葉狩り」の物語を表現しました。
全山錦と化した紅葉の山に誘われ、迷い込んだ貴公子が、
絶世の美女にお酒を振舞われます。
眠り込んだ貴公子を、鬼の姿に戻った美女が、襲いかかる怖いお話です。
貴公子を秋、美女を万物が枯れる冬と、とらえることも出来るでしょう。

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●無伴奏チェロ組曲第2番 

日本の北海道などに居住する少数民族「アイヌ民族」には、
即興の「叙情歌」が残されています。
即興歌のメロディーは、完全 4度音程の逆付点リズム
(タ、ターン、タ、ターン)や、
シンコペーション(タ、タータ)を特徴とします。
風雪に耐え、力強いものがあります。

メロディーは、ほとんど同じ類型でできていますが、
アイヌの人々は、そのメロディーに、思い浮かぶさまざまな想念、
追憶、喜び、悲しみを乗せて歌ったそうです。
私は、その中の「Yaysamanena」と呼ばれる歌に、心惹かれました。
夫が川で水死した妻が、夫を偲んで歌います。
「私は、思い出すと、清い涙が流れて、どうしようもない。
私はそよ風になりたい。突風になりたい。
私は空に舞い上がり、飛びながら木立の幹や葉先をかすめる。
悪い川、ろくでなしの川、恋しい人よ、神になった夫よ、
見知らぬ村に行ってしまったのか・・・」と、続きます。
私は、この歌のメロディーに触発され、それを元に主題を作りました。
そして、この歌の内容を膨らませ、チェロ組曲の2番を作曲しました。

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●「冬の庭」            

2008年、ベッチャー先生へのお誕生プレゼントとして、
作曲しました小品です。
ソジェットカバートSoggetto cavatoで、
お祝いの言葉「 happy birthday boettcher 」が、
織り込まれています。
ソジェットカバートとは、音階の幹音をアルファベットに
置き換えて作曲する手法で、
ラヴェル作曲「Menuet sur le nom d'HAYDN 
ハイドンの名によるメヌエット」や、
ドビュッシーの「Hommage a Haydn ハイドンを讃えて」が、有名です。

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●「夜色楼台図」           

私は、与謝蕪村(1716~1783)の水墨画「夜色楼台図」に
触発されて、この曲を作りました。
晩年、60歳を過ぎてからの蕪村の傑作。
禅僧の句である「夜色楼台雪万家」を、自ら書にしてこの画に添えています。
漆黒の雪雲が、古都の夜に、重く覆いかぶさっています。
つぶ雪でしょうか、わた雪でしょうか、音も無く、大粒の雪を降らせています。
大きな館、小さな民家、家々の屋根は、等しく真っ白に染まっています。
古都を囲むように聳える山並みは、輝くばかりの純白。
深々と、冷え込んできました。
蕪村は、鳥となって、この古都の夜を見守っているようです。
世の中の雑音がすべて吸い取られる、無音の世界です。
しかし、目をよく凝らすと、家々の窓にはほんのりと灯りがともっています。
館では、楽しい宴の最中でしょうか。
小さな家から漏れてくるのは、家族みんなで囲炉裏を囲む明かりでしょうか。
赤ちゃんをあやしている、お母さんの子守唄も聞こえてきそうです。
暖かい団欒の様が、目に浮かぶようです。
蕪村の理想郷を、描いたのかもしれません。

                  ( CDブックレットなどの写真 )
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■■ 斎藤明子さんの ≪ バッハ演奏会 ≫ のご案内 ■■

2010-04-17 00:37:49 | ■ お薦めのコンサート ■
■■ 斎藤明子さんの ≪ バッハ演奏会 ≫ のご案内 ■■
       ~ 無伴奏チェロ組曲1、2、3番を 10弦ギターで~
                    10.4.17 中村洋子


★私が、心から信頼しています、

数少ない日本の音楽家のうちの一人、

斎藤明子さんの 10弦ギターによる

「 バッハ無伴奏チェロ組曲 1、 2、3番 」 の演奏会を、

ご紹介いたします。


★演奏会: ≪ 斎藤明子の 10弦ギターで聴くバッハ ≫

日時: 明4月18日(日曜日)午後 3時 15分から、

会場: 池袋・自由学園明日館講堂 ( ℡ 03-3971-7535 )
    JR池袋・メトロポリタン出口から、徒歩5分
    フランク・ロイド・ライト設計の明日館と、向かい合わせの建物

チケット:3000円 ( 当日 )
前売りは2700円= ℡03-3937-2608 ( 緑の街ミュージックフレンズ )


★斎藤さんは、昨年9月、軽井沢・大賀ホールで、

ヴォルフガング・ベッチャー先生が、私のチェロ組曲 2、3番を

録音してくださった際、わざわざホールまで、訪ねていらっしゃり、

ベッチャー先生の演奏を、集中して聴き、たくさんのことを学び、

吸収されました。


★その美しい結実が、今回の「バッハリサイタル」となり、

さらに、6月6日には、

ベッチャー先生が録音された私の 「 無伴奏チェロ組曲3番 」 を、

10弦ギターで、日本初演されます。


★斎藤さんの略歴です

東京都出身。4歳よりギターを始める。
当時日本のギター界は、幼児教育の可能性を探り始めたばかりで、
その第1号として育てられる。
15才でデビューリサイタル開催。
翌年、スペインの世界的ギタリストである
ホセ・ルイス・ゴンサレス氏に認められ、スペインへ1年間留学。
慶応義塾中等部、女子高等学校卒業後、
大東音楽アカデミーに入学、中村洋子にソルフェージュ、
和声学、アナリーゼを学ぶ。
その後、1988年キジアナ音楽院にて特別ディプロマを得る。
スイス政府支給の留学金を得てスイス・バーゼル音楽院に留学、
オスカー・ギリヤ氏に師事。
1987年第30回東京国際ギターコンクール第1位、
1989年ミュンヘン国際音楽コンクールギター部門
ファイナリストとなり奨学金を授与されるほか、
国内外の数々のコンクールで優勝・入賞を果たす。
アイルランド、ギリシャ、ウィーン、
ニューヨークのカーネギー・リサイタルホールなどでリサイタルを行ない、
国際的な評価を得る。
ソニーレコードより、スペインの楽曲を集めた“スペイン”(1992年)、
中南米の作品を集めた“アール・ソヴァージュ”(1993年)、
自身のアレンジによる、クラシックの名曲を集めた
“ギターロマンティック”(1995年)を発表。
1997年に軽井沢に移住。
自然の中での生活で、日本人本来の生活観や感性に触れる。
そんな折に中村洋子氏の作品と出会い深く共感し、
大切なレパートリーとなっている。
現在は通常のギターよりも低い音域を広げた、
10弦ギターを使用している。

★以下は、音楽雑誌 「 現代ギター」の 09年 10月号に

掲載されました、私と濱田滋郎さんとの対談です。

ここで、斎藤さんの音楽について、詳しく述べられています。



■斎藤明子さんと ≪ 星の林に月の船 ≫

濱田 このたび、お作品のCD を2 枚、お聴かせくださ
いましたが、どちらもたいへん興味深く味わせていただ
きました。初めに、ソプラノの五十嵐郁子さん、ギター
の斎藤明子さんの演奏された〈星の林に月の船〉という
作品、全体で50 分近くもかかる〈日本の十二ヶ月〉と
いう作品、これはソプラノ独唱とギターですが、ソプラ
ノは歌詞なしのヴォカリーズになっているのが、ある意
味で、ギターをより良く生かすことにもなり、傾聴いた
しました。ヴォカリーズにされた、ということの意図は
どのへんにおありだったのでしょう。

中村 歌の部分を、フルート、ヴァイオリン、1 オクタ
ーヴ下げたチェロなど、ギターと器楽による二重奏でも
演奏できることを、作曲当初から意図していました。日
本語の詩を伴なった歌曲集ですと、残念ながら、日本人
以外には、なかなか理解しづらい面があるからです。音
楽の基本はやはり人の声によるものですので、このCD
を聴いて、他の楽器による演奏もしていただくのが私の
希望です。

濱田 斎藤さんのソロでは、〈十三夜〉という曲が、微
妙にテンポを変えた2 つのヴァージョンで、聴かれます。
これも興味深く、明子さん(まだ、ほんの少女でいらし
た頃から知っているので、ついこう呼んでしまいます)
の演奏も、素晴らしいセンスを示されていると、思いま
す。明子さんとは、どのように知り合われ、作品をいくつ
も彼女に書かれるほど親交を重ねられてこられたのでし
ょうか。彼女について、アーティストとして、また人と
して、中村さんがどのように見ていらっしゃるか、プロ
フィールを交えて、お聞かせください。


■音楽理論を、完璧に身につけたギタリストが斎藤さん

中村 彼女が、慶應女子高を卒業した19 歳頃からの師
弟関係です。その頃、故 寺西春男・桐朋学園大教授が、
「大東音楽アカデミー」という音楽の専門学校を開設されて
いました。そこは普通の音大では別々の教科として、無
味乾燥な授業が行なわれているソルフェージュ、楽曲分
析、和声、対位法を、その人が取り組んでいる曲を通じて、
総合的に教えることを目指していました。明子さんは、
そこの第一期生でした。

 彼女は大東アカデミーに限らず、私の教えた生徒の中で
最も優れた音楽家でした。彼女は、ギタリストに欠けている
音楽理論を真摯に学び、ピアノやヴァイオリンなどの
素晴らしい演奏家と比べて、同等か同等以上に完璧に
生きた理論を身につけました。
日本のギタリストに最も欠けている理論面を、
彼女はデビュー当時から、完全に克服していたのです。

 彼女は現在軽井沢に住み、夫の尾尻雅弘さんと、3 人
のお子様に囲まれ豊かな自然に親しみながら、着実に音
楽活動をされています。

濱田 もう1 枚のCD ですが、これは、私もかねがね演
奏ぶりに敬服の念を抱いているドイツのベテラン・チェ
リスト、ヴォルフガング・ベッチャーさんの純然たるソ
ロですね。タイトルは『ベッチャー、日本を弾く』とあ
りますが、すべて中村洋子作曲。殊に〈無伴奏チェロ組
曲1 番〉は、8 章からなる力作で、日本の山国の、私た
ちもつい忘れがちな田園生活にちなむ小品が並んでおり
ますね。ベッチャーさんが作品に込められたものを、じ
っくり読み込んで素晴らしく弾かれていると感じました
が、そもそもこの大家と知り合われた経緯、ベッチャー
さんに関してなど、少しお話しいただけましたら……。


■ベッチャー先生のこと

中村 ベッチャー先生は、はっきり言いまして、日本で
はあまり知られた方ではありません。最近の風潮として、
若手をもてはやすコマーシャリズムのせいで、本当の芸
術家が人口に膾炙することは、残念ながらほとんどあり
ません。しかし、現在のヨーロッパではベッチャー先生
は、最も力を持った最高のチェリストという評価が定ま
っているようです。10 年ほど前、先生が日本で公演をな
さるに当たり、「アンコール用に、〈荒城の月〉を弾く予
定であるが、ピアノ伴奏のチェロ用に編曲されたもので
なかなかいいものがない、新しく編曲をお願いしたい」
という依頼がきました。それがそもそもの馴れ初めです。

 それ以来、先生とはとても親しくお付き合いをしていた
だいております。私の〈チェロ組曲第1 番〉も喜んで録
音してくださいました。また、2 台チェロ、3 台チェロ、
12 人チェロの新作やピアノトリオなどもヨーロッパで初
演していただき、折にふれ再演されています。またこの
9 月には、私の〈無伴奏チェロ組曲第2 番〉と〈3 番〉を、
新たに録音していただきます。とても楽しみです。

 ベッチャー先生は、1935 年ベルリン生まれ、現在の
ベルリン芸術大学で、ブラッヒャー、ペッピングに作曲
理論、クレムにチェロを学び、カラヤン時代のベルリン
フィルで、1976 年まで、首席チェロ奏者を務めました。
その後、ベルリン芸大の教授に就任すると共に、同フィ
ルのコンサートマスターだったブランディスさんなど
と「ブランディス弦楽四重奏団」を結成しました。また、
ソリストとしても世界各国で活躍されています。先生の
楽器は、ヴェネチアのマッテオ・ゴフリラー(1722 年)
という名器です。故 パブロ・カザルスも、このゴフリラ
ーでした。


■神経を逆なでするような現代音楽は、求められているか?

濱田 中村さんは「作曲とは聴き手との心の交流でなけ
ればならない」と思っていらっしゃるのではないでしょ
うか。芸大で学ばれた頃といいますと1970 年代ですか、
「その頃は、前衛に非ずば、現代音楽に非ず」というよ
うな風潮が強く、聴いてわかりやすい音楽を書くことは、
むしろ蔑まれました。この点は、どのように感じていら
っしゃいますか。

中村 日本の「前衛」作品は、ほとんど欧米の作品のパ
ッチワークでしたので、たとえば、ブーレーズが新作を
発表しますと、すぐに日本の有名な作曲家がそれを模倣
した作品を書く。そして驚くべきことに、それを誰も気
が付かず、オリジナルと見て高く評価している。という
風潮を実に興味深く眺めていました。

 私は、それよりも西洋音楽の根幹を成す和声、対位法、
フーガを徹底的に身につければ、本物の何かが見つかる
のではないかと思い、黙々と勉強を続けていました。
奇抜なアイディアや、威嚇するような汚い音、
悲鳴のように神経を逆なでする騒音で作られた音楽を
人は本当に必要とするのでしょうか。

 そのような音楽ばかりですと、そういう音楽は衰退
するばかりで、本当の音楽を愛する方にも見放されてい
く運命だと思います。音楽は作曲家の恣意的な自己主張
のためにあるというより、むしろ聴く人と弾く人のため
のものです。私の〈無伴奏チェロ組曲第1 番〉は、音楽
の専門家からはほとんど反応がありませんが、音楽を心
から愛する、普通のたくさんの皆さまから「毎日、必ず
聴きます」「これは、私のための音楽です」などの反応を、
日本とドイツの双方からいただいております。

 ベッチャー先生も作品についてのそのような評価を、
心から喜んでくださり、ドイツで、何度も弾いて
くださっています。
「この作品は、これから世界でたくさんのチェリストが
弾きます」と、おっしゃっています。この曲の楽譜が近々
ドイツの歴史ある出版社から出版される予定です。


■ギター二重奏の曲≪もがみ川≫も、斎藤さんご夫妻で演奏

濱田 ここに「山形新聞」(2008 年9 月9 日付)の記事
コピーがあり、松尾芭蕉の『奥の細道』にちなんで、山
形民謡〈最上川船唄〉に基づくギター二重奏の曲〈もが
み川〉を書かれ、斎藤明子さんと尾尻雅弘さんとのデュ
オで初演されたことが載っています。実は私、父母が山
形県出身で、父親が〈最上川船唄〉を口ずさんだりして
いたものですから、とても親近感があります。この作品
について、また、民謡を作品に使われることの意味、お
もしろさ、あるいは難しさなどについてお話ください。

中村 あまり知られていませんが、コダーイやバルトー
クに限らず、ベートーヴェンやブラームス、チャイコフ
スキーなどの作曲家も、民謡を研究し、そこからテーマ
を紡ぎだしています。ベートーヴェンは、40 代で、スコ
ットランド、アイルランド、ウェールズなどの歌曲を編
曲しています。大作曲家が、なぜ、そのような仕事をし
たか? これは、自分の滋養とするためであることは、
間違いありません。ブラームスは、「鉄道が通るような
ところの民謡は、もう駄目だ」と言いながらも、膨大な
民謡を収集していました。チャイコフスキーとストラビ
ンスキーが、同じ民謡の旋律を使って有名な作曲をして
いることはご存知の通りです。

 民謡とは、人々が長い間にわたって伝唱してきた旋律で、
無駄がなく展開に耐えうる力強いものが多いのです。
しかし、安易に媚びて編曲したものとは
峻別しなければなりません。


■バッハの前奏曲のような、斎藤さんの≪十三夜≫

 CD『星の林に月の船』には、ギターソロの〈十三夜〉
という曲も入っています。明子さんの〈十三夜〉は、録
音する際、試みとして彼女に2 つのテンポで弾いていた
だきました。
 まるで、バッハの前奏曲を聴いているような、
構成のしっかりした高潔な演奏でした。バッハの前奏曲も、
いろいろな奏者が異なるテンポで弾かれているのですが、
1 人の奏者が2 つの異なるテンポで演奏した
美しい例として記録したいと思い、この2 つを曲集『日
本の十二ヶ月』前後に収録しました。この曲は、1 月~
12 月まで、チャイコフスキーの〈四季〉のように書いた
曲です。作曲後、どうしてもギターソロ曲を書きたくな
ったのです。2 つのテンポを収録することで、前奏曲と
コーダに似た構成となりました。

 8 月18 日、来日中に急逝されました世界的なソプラ
ノ歌手、ヒルデガルト・ベーレンス先生に、去年音楽祭
でお会いした時、先生のほうから「あなたの曲が入った
CD が欲しい」とおっしゃいました。そのCD を贈呈さ
せていただきましたので、今年ご感想をお聴きしたいと
思っておりましたが、とても悲しく残念でなりません。


■相性がたいへん良い、ギターとチェンバロ

濱田 ところで、最近ある演奏会で中村さんがチェンバ
ロを弾かれたと伺いました。ギターとチェンバロの相性
は、いかがでしょう? 例えば、ポンセにもこの取り合
わせの曲がありますが……。

中村 ギターとチェンバロの相性はたいへんいいと思い
ます。その演奏会は、2 台のギターとチェンバロ、フル
ートの編成でしたが、ベッチャー先生が、冗談で「3 つ
のピチカートとフルートだね」とおっしゃっていました。
 弦を弾はじくという点では、ギターとチェンバロはよく似
ており、特に、チェンバロのリュートストップとギター
の組み合わせが美しく感じられました。以前、ミーント
ーン調律したチェンバロのための曲を書いたことがあり
ます。これからの計画として、斎藤さんとチェンバロと
ギター二重奏、ピアノとギター二重奏の仕事も考えてお
ります。

濱田 ギターはフレットが入っていてどうしても平均律
ですが、それでも名手たちの中には、押さえた指で弦を
微妙にずらし、ミーントーンかは知らず微妙な音程を作
り出せる人がいます。音程感覚にはそのように敏感であ
りたいですね。

中村 同感です。ミーントーン調律の曲は〈Wolf in the
sky〉という名前で、うなりの少ない美しい3 度と、耳
障りなうなり(wolf )が出る4 度の音程を効果的に使
いました。この調律で現出する和音の性格は、現代の和
声法とは違う体系となると思いますが、“宇宙的な響き”
がしたかもしれませんね。
 
 ミーントーン調律で作曲された古い作品を研究します
と、現代の平均律で調律された長三和音、短三和音、減
三和音、増三和音、属七の和音、減七の和音のカテゴリ
ー分けが、まったく異なってくることがわかります。当
時の人々は、テレビも拡声器も電子音もない静かな静粛
な環境で、この響きの差をじっくりと聴き分け楽しんで
いたのでしょう。騒音にさらされている現代人の耳は、
かなり大雑把になっています。
 日本のお箏についてですが、お箏はフレットがないの
で、古典的調弦をすれば、耳のいい奏者はうなりの少な
い美しい音程を、瞬時につくりながら演奏できるはずで


■優れた演奏家と“ 共同創作 ”、その結果が私のギター曲

濱田 ところで、中村さんにとって「ギター曲を書く」
というのは何か特別なことでしょうか。例えば、ベルリ
オーズなども「ギターはまことに特殊な楽器で、これの
ために作曲することは、ギター奏者でなければできない」
と、述べているのですが……。

中村 私の場合、どういう楽器を選択するかは、優れた
演奏家と“共同創作”できるかどうかにかかっています。
現代の進歩したギター奏法であれば、ベルリオーズの考
えは杞憂でしょう。

濱田 それにちなんでナルシソ・イエペスは、言ってい
ました。「私のために書いてくれる作曲家は、けっして
ギターのことをあれこれ調べてくれるな。ただ純粋に“音
楽”を書いてくれさえすれば、実際に弾くことはこちら
で考えるから」と。つまり、ギターに馴れすぎるとルー
チン・ワークになりやすい。それが嫌だ、というんです
ね。中村さんの場合、ギターという楽器のメカニズムが、
すっかり頭に入っておられるのでしょうか。

中村 私はまず、書きたい曲想があり、その奏法が可能
かどうかを斎藤さんと検討するという方法をとります。
しかし、イエペス流の考えを極端に推し進め、作曲家が
奏者に無理強いをするような作曲法は好みません。反対
です。
 有名な日本の現代曲の作品で、ある楽器の音域を越え
た音が書かれており、作曲家が奏者に「それならば、自
分で弾いてごらんなさいよ」と言われたという笑い話も
あります。


■10弦ギターのもつ、大きな可能性

濱田 斎藤明子さんの場合、10 弦ギターを使われていま
すが、彼女のための作曲に当たっては、当然このことも
考慮されるのでしょうか。

中村 作曲家にとって、10 弦により低音をより多く使
えるのは、非常に作曲しやすいと思います。西洋クラシ
ック音楽は、「バス」を基本に、その上に和声をつくり、
対位法を構築していきますので、私にとって、バスの音
域が広がるということは、たいへんに大きな自由を得た
ような気がします。一番いい例がオルガンです。バッハ
のオルガン作品を聴きますと、ヨーロッパの音楽がいか
に、バスを土台として構築する音楽であるか、如実にわ
かります。

 しかし、10 弦ギターで作曲する場合でも、一般的なギ
ターが6 弦であるため、6 弦ギターでも演奏できるよう、
常に、OSSIA(あるいは、この奏法も可、の意味)を意
識して書いております。尾尻さんは、7 弦ギターをお使
いで、これもかなり融通の効く楽器です。

濱田 お作品は、室内楽、器楽が主のようにお見受けし
ますが、今後「このような作品をぜひ書きたい」という
構想をお持ちですか? また、ギター曲の畑では? 2
枚のCD を聴いた上で、もし、ベッチャー先生と明子さ
んのデュオを念頭に、チェロとギターの曲など生まれた
ら……と夢想しますが……。


■チェロの曲は、すべてギターで演奏可能

中村 ギターとチェロの組み合わせは、とても、美しい
と思います。また、斎藤さん、尾尻さんご夫妻のデュオ
の計画も進めていきたいと思っております。ベッチャー
先生のために、既に〈10 曲のチェロデュオ〉という曲も
書いていますので、それらをギター用に直して、弾いて
いただくことも可能です。これは、平易な演奏法で作曲
し、当初は先生とお孫さんの二重奏用でしたが、先生が
コンサートでも演奏されるようになった曲です。教会旋
法で書いたり、バロックの舞曲であったり、楽しいワル
ツなど、誰でも楽しみながらチェロを学習できるような
曲で構成しています。そして、最後の曲は、一転して、
12 音技法の楽しい曲で、その名前は〈ドデカフォニック・
ダンス〉です。

濱田 それでは、今日は本当にありがとうございました。
これからも、素晴らしい作品をお聴かせくださいますよ
う願っております。

         
                      ( 斎藤さんとベッチャー先生:大賀ホール )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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■ 第 4回 平均律・アナリーゼ講座のご案内 ■

2010-04-05 00:48:27 | ■私のアナリーゼ講座■
■ 第 4回 平均律・アナリーゼ講座のご案内 ■
                  10・4・5 中村洋子


≪第 4回 平均律クラヴィーア曲集・アナリーゼ講座≫
              第 1巻 4番 嬰ハ短調 前奏曲とフーガ

平均律・嬰ハ短調から何を吸収して、Beethoven「 月光 」ができたのか?


講師:中村 洋子
日時:2010年 4月 28日(水)午前 10時~ 12時半
会場:カワイ表参道 2F コンサートサロン「パウゼ」
会費:3000 円 (要予約)
参加ご予約・お問い合わせは カワイミュージックスクール表参道
Tel. 03-3409-1958 omotesando@kawai.co.jp


★平均律クラヴィーア曲集第 1巻全 24曲は、

4曲ずつのセットとして、見ることも可能です。

この4番は、最初のセットの “ まとめ ” となる重要な曲です。

しかし、解説書などには、“このフーガのテーマは、

十字架の形をしている”など、もったいぶった説明がされており、

はたして、子供に弾かせていいのかしら?と、

躊躇される先生もいらっしゃるかもしれません。

しかし、そうではありません。


★この前奏曲を、バッハは、

「 フリーデマン(長男)のためのクラヴィーア小曲集 」のなかに収録し、
 
10歳前後の子供たちに、弾かせていたのです。

まずは、前奏曲だけでも、お子さんたちが、

楽しんで接することができるように、アナリーゼし、

演奏するのに必要な、具体的なヒントもご提案します。


★また、ベートーヴェンが、この 4番から何を学び、

「 月光ソナタ 」 を創作するさいの滋養としたか、

それについても、お話いたします。

ベートーヴェンの 「 ピアノソナタ全 32曲 」は、

バッハの平均律を理解せずには、真の演奏はできません。


★フーガにつきましては、たった 5つの音から成る主題が、

実は、平均律全 24曲を支配する、

新しい重要なモティーフとなっています。

その点を詳しく、ご説明し、さらに、日常のレッスンで

「 ソルフェージュ 」 にも、応用できるよう、

分かりやすく、お話いたします。


★この講座は、音楽を、バッハを、

心から愛している方々のためのものです。

難しいことはやさしく、分かりやすいことは、

さらに深く、ご説明いたします。


●第 5回 6月 8日(火)5番 ニ長調 前奏曲とフーガ
 
6月 8日は、ロベルト・シューマンの生誕二百年の誕生日です。

「森の情景」Op.82 ( 1848~49 ) の 7曲目 「 予言の鳥 」 と、

平均律 5番 ニ長調との、密接な関係についても、お話いたします。


■講師:作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、ギター、声楽、雅楽、室内楽などの作品を発表。2003 年~ 05年、アリオン音楽財団《東京の夏音楽祭》で、新作を発表。
自作品「無伴奏チェロ組曲 1番」などをチェロの巨匠W.ベッチャー氏が演奏したCD『W.ベッチャー 日本を弾く』を 07年、発表する。08年 9月、CD「龍笛&ピアノのためのデュオ」とソプラノとギターの「星の林に月の船」を発表。
09年10月、「無伴奏チェロ組曲第 2番」が、W.ベッチャー氏によりドイツ・マンハイムで初演される。08~09年にかけ、「バッハのインヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を開催。
10年「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」が、ベルリン「 リース&エアラー社 」 「 Ries & Erler Berlin 」から、出版される。
*プログ:「音楽の大福帳」 http:// blog.goo.ne.jp/nybach-yoko


                         ( 土佐ミズキ )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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■独・ヴィッテンで、私の「 チェロ組曲第 3番 」が、初演されました■

2010-04-02 17:10:17 | ■私の作品について■
■独・ヴィッテンで、私の「 チェロ組曲第 3番 」が、初演されました■
                   10.4.2     中村洋子


★ 3月 22日、ドイツ西部、ルール地方にあります

「 ヴィッテン 」市の Emmaus-Kirche 教会で、

私の作品 「 無伴奏チェロ組曲第 3番 」 と、小品「 冬の庭 」が、

ヴォルフガング・ベッチャー先生により、初演されました。


★コンサートの翌日、ベッチャー先生から、Fax が入りました。

「 会場は超満員で、コンサートは大成功でした。

ポスターを、郵送します。

6月 12日、あなたの作品 ≪ ピアノとチェロのための 二重奏曲 ≫ を、

ベルリンで、姉と初演します 」


★届きましたポスターは、オレンジの地色に、

曲目、演奏家、作曲家などが、黒々と書かれています。

伝えたい情報のみです。

センスが良く、簡素です。

芸能人と見まごうような、けばけばしい写真を載せた、

日本の豪華なポスターとは、大違いです。


★演奏会での曲目は、

バッハ「 無伴奏チェロ組曲 」第 5番 ハ短調、

私の 「 無伴奏チェロ組曲 」第 3番と「 冬の庭 」、最後に、

バッハ「 無伴奏チェロ組曲 」第 3番 ハ長調 、という順でした。


★バッハは、6曲のチェロ組曲を書いていますが、

私は、5番が、その頂点であり、1番から 5番に向け、

上りつめていくと、思います。
  
この考え方は、私自身がチェロ組曲を 3曲書いたことと、

インヴェンションや、平均律のアナリーゼ講座を、

続けているからこそ、言えることです。

バッハがチェロ組曲全 6曲を、一つの作品として構想して、

作曲したことは、間違いないと思います。


★先生が、「 5番 」 からコンサートを始められたことに、

驚きましたが、私の組曲 3番が、C音から始まり、C音で終わりますので、

コンサート全体を、 “ Cの調 ” で束ねたいという、

先生の意図が、強く、迫ってきます。

私の作品の後、明るく喜ばしいバッハの 「 組曲 3番 ハ長調 」で、

プログラムが、閉じられました。


★3月21日は、バッハのお誕生日でした。

その翌日に、バッハと私の作品でコンサートを開いていただく、

これほどの喜びは、ありません。

その2日前には、チューリヒで、室内楽作品が初演され、うれしい1週間でした。


★ヴィッテンでのこの演奏会を、ドルトムントの楽譜出版社の方が、

聴きに、行かれました。

ヴィッテンまでは、10キロ足らずだそうです。


★彼からのメールによりますと、

「 補助椅子を出すほど、たくさんの聴衆でした。

バッハの組曲は、『繰り返し』 のところが、信じられないほど

創造的なファンタジーに、満ちていました。

聴衆は、あなたの曲を、大変に気に入り、

ベッチャー先生は、アンコールをせざると得ませんでした。

それは、中村さんの 「 第 1チェロ組曲 」 の最終楽章でした。

いい音楽でした、本当に! 」


★彼は、休憩時間に、ベッチャー先生とほんの少しお会いし、

彼が近く出版する、私の ≪ チェロトリオ ≫ のテスト印刷楽譜を、

お見せしたそうです。


★私の推測ですが、バッハの 「 繰り返し 」 のところで、

先生は、ピッチカートを使われたのだと、思います。

先生の研究によりますと、バッハの時代も、ピッチカートは、

現在考えられている以上に、多用されていた、ということです。

ご自身の勉強、研究に基づいて演奏される、

その信念に敬意を表したいと、思います。


★先日の「 第 3回平均律アナリーゼ講座 」 で、

参加者の方と、お話したのですが、

ご自身で勉強して、自分なりの表現で、バッハを 演奏したとき、

「 その弾き方は、おかしい。どの楽譜にそう書いてあるの!!!」 と、

「 先生 」 から、批判されたそうです。

「 “ 権威 ” のある楽譜に書いてあること以外は、してはいけない 」

という考え方は、本当の意味で ≪ 権威 ≫ であるバッハとその音楽、

その世界 から、最もほど遠く、バッハを否定してしまうものです。


★演奏者が、真摯に追求した表現であれば、そのすべてが、

第一級の芸術作品、演奏になりうる、というのが、

バッハの音楽の真髄です。

それほどバッハの音楽は、豊穣で、おおらかな世界なのです。


★この 「 チェロ組曲 3番 」と「 冬の庭 」などを含む、

私の新しい CDが、4月末に発表予定です。

皆さまに、先生の芸術を是非、聴いていただきたいと思います。

                    
                        ( 演奏会のプログラム )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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