音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■イタリア協奏曲とワルトシュタインにある長いトリルの意味■

2016-08-20 03:40:25 | ■私のアナリーゼ講座■

■イタリア協奏曲とワルトシュタインにある長いトリルの意味■
     ~第3回「イタリア協奏曲アナリーゼ講座」:
        和声、構造を理解し、それをどう演奏に活かすか~

         2016.8.20      中村洋子

 

 

 

★記録的な酷暑が続いています。

昨晩は、震えるように大きな大きな月でした。

夜風には、もう秋が感じられます。

 

★東京で「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」、

名古屋で「Wohltemperirte Clavier Ⅰ平均律クラヴィーア曲集 第1巻」、

金沢で「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」のアナリーゼ講座を、

開催中ですが、先週8月10日は金沢での第2回イタリア協奏曲講座でした。


ゴルトベルク変奏曲を勉強していますと、

いたるところにBeethoven が、顔をだします。

「BachをBeethoven が学び尽した」というのが、正しいのですが、

「あっ、ここもBeethoven 、ここもBeethoven 」と、

逆に、ゴルトベルク変奏曲を見るたびに、

Beethoven を実感します。

 

 


★イタリア協奏曲については、いままでそれほど

“Beethoven 先生はお出でにならない”と、思っていました。


★しかし、そうではありませんでした。

イタリア協奏曲1楽章の112小節目から115小節目の

冒頭までの右手上声「d²」の、3小節間続く長いtrillトリルや、

 

 

 

116小節目から始まり、119小節目冒頭までの

右手上声「c²」の3小節間続く長いtrill

 

 


その各trillの下声左手は、

16分音符のmotifモティーフによる動きです

 

★Beethoven のピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」

(Klaviersonata Nr.21 C-Dur Opus53 Waltstein)の、

3楽章51小節目右手上声~54小節目まで続く、

4小節間の「g²」のtrillトリル

この下声左手は、16分音符の分散和音が絶えることなく

奏されます。

 

 


★上記の三つの譜例を弾き比べ、あるいは聴き比べてください

イタリア協奏曲の構成原理を、

Beethoven は「自家薬籠」と、しています。


★イタリア協奏曲にお話を戻しますと、

112小節目から続く「d²」の長いトリル、

116小節目から続く「c²」の長いトリルは、

どんな意味があるのでしょうか?


長く引き延ばされた音が、

トリルによって装飾されていますのは、

その音が、とても重要な音である、ということを、

意味しています。


★何故、重要なのか、それをどう演奏すべきかを、

9月28日の金沢第3回「イタリア協奏曲」アナリーゼ講座で、

お話いたします。

 

 

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●中村洋子 Bach《イタリア協奏曲》アナリーゼ講座

~第3回:イタリア協奏曲の和声、構造を理解したうえで、
                      どう演奏に活かすか~

■日  時 :  9月28日(水) 午前10時~12時30分

■会  場 :  カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
        (尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 有料駐車場をご利用下さい)

■予 約  :  Tel.076-262-8236 金沢ショップ


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★カワイ金沢「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」アナリーゼ講座は、
第1楽章を3回にわたって、開催しております。

★第1回目は、Bachの後期様式の、一見、明快シンプルに見える和声が、
実に複雑で、読み解き難いものであること、
しかし、それゆえに、イタリア協奏曲が、ここまで魅力的で人々の心をとらえて
離さない理由をお話しました。

★第2回目は、三部形式をとっているかのような第1楽章が、
実は、後に完成される「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の
先駆けとして、変奏の技法を尽くしていることを、ご説明しました。

★第3回目は、これをどう演奏に活かしていくかを、
具体的にご説明いたします。
イタリア協奏曲の構造は、Bachの「counterpoint 対位法」の
粋を集めた作品です。

★その傑作の本当の価値を踏まえて校訂された楽譜が、
Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886-1960)版なのです。
この楽譜を読み解き、演奏に活かすためには、それなりの努力と、
音楽に対する真の愛情が必要です。

 

 

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■講師: 作曲家  中村 洋子

東京芸術大学作曲科卒。
・2008~09年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
・2010~15年、「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、
   東京で開催。

自作品「Suite Nr.1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
         「10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
         ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler  Berlin) より出版。

・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」の        
   SACDを、Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
                                            (disk UNION : GDRL 1001/1002)。

・2016年 ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
    ≪クラシックの真実は
大作曲家の「自筆譜」にあり!≫
      ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、
                                演奏法までも分かる~(DU BOOKS社)を出版。

・2016年、ドイツのベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
        バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
                                                             「訳者による注釈」を担当。

 

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■イタリア協奏曲1楽章のモティーフは、ゴルトベルク変奏曲15変奏と同じ■

2016-08-09 03:07:58 | ■私のアナリーゼ講座■

■イタリア協奏曲1楽章のモティーフは、ゴルトベルク変奏曲15変奏と同じ■
      ~金沢第2回イタリア協奏曲・アナリーゼ講座~
            2016.8.9       中村洋子

 

  

 

★記録的な猛暑の中の立秋です。

日の入りは7月に比べますと、確実に早まり、

虫の音も、聞こえ始めました。


★昨日8月8日は、天皇陛下が国民に向け、

テレビ画像を通じ、ご自身で

≪象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば≫
http://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/12 宮内庁)を、

10分間にわたり、読み上げられました。

私は、金沢でのアナリーゼ講座の準備をしながら、

天皇陛下のお言葉を、ラジオで聴きました。

82歳のご高齢での発言には、胸を打たれ、心が痛みました。

 

 


★それはさておき、気を取り直して10日(水)の KAWAI 金沢での

第2回「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」アナリーゼ講座の勉強に

戻りました。


★これまで、「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」につきましては、

東京、名古屋でアナリーゼ講座を開催しました。

1楽章を講座1回とする内容でしたが、

金沢での講座は、1楽章を3回に分けてじっくりと勉強いたします。


★6月の第1回は、第1楽章の「和声」について、

8月の第2回は、第1楽章の「構造」について、そして、

9月の第3回は、それをどう演奏に活かすかを、お話いたします。


★東京での「イタリア協奏曲」講座は、

「Inventionen und Sinfonien  インヴェンションとシンフォニア」と、

「Wohltemperirte Clavier Ⅰ平均律クラヴィーア曲集 第1巻」の、

アナリーゼ講座を終えた後の開催でしたので、その時点ではまだ、

「Wohltemperirte Clavier Ⅱ 平均律クラヴィーア曲集 第2巻」は、

十分に見ていませんでした。


★名古屋での講座は、平均律2巻の講座を終了してからでしたが、

 「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」は、

手つかずでした。


★そして、今回の金沢講座ですが、

現在、東京で「Goldberg-Variationen」の講座を続けていますので、

そのゴルトベルク変奏曲的視点で、イタリア協奏曲を見ますと、

新鮮な発見に次ぐ、発見です。

 

 


★ハタと膝を打ちました!

「イタリア協奏曲は、 Clavier Übung 

クラヴィーア ユーブンクの2巻に収録され、

ゴルトベルク変奏曲は、まるまる Clavier Übung4巻です」


★この2作品は、一本の太い棒で貫かれています。

イタリア協奏曲は、ゴルトベルク変奏曲の視点で見るべきなのです。

その意味するところは、変奏曲の作曲技法を持ち込んでみる、

ということです。


★その変奏曲の視点を入れたアナリーゼを、

講座で詳しくお話しいたします。


★ Clavier Übung クラヴィーア ユーブンク1~4巻は、

Bachの生前に出版された、Bach公認の出版物です。

 「Manuscript Autograph  自筆譜 」は不明ですので、

初版を徹底的に読み込むことにより、

構造も、どう演奏すべきかも、見えてきます。

 

 


★「Goldberg-Variatione」の前半最後の「15変奏」で、

冒頭1小節目に、

“重い十字架を担いだキリストが、ゴルゴダの丘をよろめき歩む”

受難を、
連想させるような「2度のモティーフ」が現れますが、

これは、平均律第1巻24番で使われるモチーフです。

 

 

★このモティーフは、「15変奏」後半の17小節目バスでも、

同様に、使われています。

 

 


イタリア協奏曲第1楽章に目を移しますと、実は、

35~38小節目にかけても、このモティーフが出現します。

36小節目でも使われています。

 

 


★ここで既に、驚きになっている方がいらっしゃると思いますが、

ゴルトベルク変奏曲15変奏17小節目の

「 es¹ <es¹ d¹><d¹ c¹><c¹b> 」 と、

イタリア協奏曲第1楽章36小節目の

「 <e² d²><d² c²><c² b¹><b¹ a¹> 」は、

驚くほど、同じです。

 

 


ゴルトベルク変奏曲15変奏のモティーフは、

受難を象徴するような沈痛な世界、

一方、イタリア協奏曲では、なんの屈託もなく、

明るく晴れやかです。


★このモティーフは、急に出てきたのでしょうか?

実は、35小節目の前の34小節目はこのようです。

 

 

その上声「b¹ a¹」のモティーフをよく見ますと、

これは、35小節目」の上声3、4番目の音「b¹ a¹」であり、

36小節目上声7、8番目の「b¹ a¹」なのです。


★ということは、この34小節目の8分音符「b¹a¹」が、

35小節目3、4拍目の16分音符「b¹a¹」、

36小節目7、8番目の16分音符「b¹a¹」に、

縮小形として現れているのです。

 

 


★つまり、35小節目の8分音符「b¹a¹」から、

この35、36小節目が作られたと、言えます。


★Bachは当時の慣習で、装飾音を付けるところには、

装飾記号を書き込みませんでした。

しかし、あえてBachが装飾記号を書き込んだところも、

かなりあります。

そこは、大変に重要な意味をもつところである、ということを、

示しています。

構成上、重要な音であることが、多いのです。


34小節目冒頭の「b¹」には、トリル記号がクッキリと、

記されています。

 

 

いかに、この2度の下行モティーフが重要であるか、

ということの証明でもあります。


★それでは、この2度の下行モティーフは、

どこから紡ぎ出されてきたのでしょうか?


★それが、イタリア協奏曲を読み解く重要なカギ

となります。

講座で詳しくお話いたします。

 

 

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■中村洋子 Bach《イタリア協奏曲》アナリーゼ講座
  
 第2回イタリア協奏曲の 「構造」を、初版譜から読み解く

日  時 : 10日(水) 午前10時~12時30分

■会  場 :  カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
     (尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 有料駐車場をご利用下さい)

予 約 :  Tel.076-262-8236        

 

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★イタリア協奏曲アナリーゼ講座の第1回目では、
Bachの「後期和声様式」についてご説明し、
その和声をどう演奏に活かすかを、具体的にピアノで音にしながら、
耳と頭(理論)で体験していただきました。


第2回は、イタリア協奏曲第1楽章がどのような「構造」で成り立っているか・・・
第3回は、演奏するうえで、これまでの分析をどのように活かすか・・・
についてお話いたします。

 

≪tutti(総奏)は強く、soloは弱く弾く・・・≫という、
固定観念に囚われていませんか?

それでは誰が弾いても、同じ単調な演奏となってしまいます
Bachの豊潤な後期和声様式は、決して貧弱に縮こまったものではないのです。

 

「盤石な構成」と「色彩豊かな和音」、この二つが互いに照らし合うような
演奏こそが、
この傑作の真価を発揮できる演奏といえます。
107小節目から110小節目にかけての、美しい反復進行(Sequenz)
見てみましょう。和声進行を支えているバスのみを抽出してみますと、

旋律線を形成します。これは、実は曲の構造の要であるmotifでもあるのです。

 

★Bach生前1735年に出版された初版譜を勉強することにより、
作曲家の意図した構造がしなやかに浮かび上がってきます。

 

 

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■講師: 作曲家  中村 洋子

 東京芸術大学作曲科卒。

200809年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15を、東京で開催。

201015年、「平均律クラヴィーア曲集12巻アナリーゼ講座」全48を、東京で開催。

  自作品「Suite Nr.16 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第16番」
     「
10 Duette fur 2Violoncelli

  チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、ベルリン、リース&エアラー社
     (Ries & Erler  Berlin より出版。

2014年、自作品「Suite Nr. 16 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第16番」の
  
SACDを、Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
       (disk UNION : GDRL 1001/1002)。

2016年 ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
  
クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!
   ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、演奏法までも分かる~
   (
DU BOOKS社)を出版。

2016年、ドイツのベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
   バッハ「ゴルトベルク変奏曲」
Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
  「訳者による注釈」を担当。

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第3回 イタリア協奏曲第1楽章 
              
928() 10:0012:30 カワイ金沢

 

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
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■物問いたげに、G-d³の完全5度音で、前半の幕を閉じる第15変奏-ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座■

2016-08-04 23:54:09 | ■私のアナリーゼ講座■

■物問いたげに、G-d³の完全5度音で、前半の幕を閉じる第15変奏■
    ~オーボエ・ダモーレのTrioを髣髴とさせる第13変奏~
ー第5回「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座ー
                 2016・8・4   中村洋子

 

 

★盛暑です、植木鉢のミニトマトも完熟してきました。

カラスがトマトを一つ嘴にくわえ、電線にとまっていました。

漆黒のカラスと真紅のトマト、

色彩のコントラストに、思わず噴き出しました。


★先週7月30日は、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の

第4回アナリーゼ講座、第10、11、12変奏でした。

遠方から遥々、受講にお出で下さった方もたくさんいらっしゃいました。


★ゴルトベルク変奏曲は、3曲ずつが1セットで、

各セットの三番目、つまり第3、6、9、12、15変奏は、

「カノン」となっています。


第3変奏は同度のカノン、第6変奏は2度のカノン、第9変奏は3度、

第12変奏は4度、第15変奏は5度のカノンとなっています。


調性の中で最も重要な音程である「3度」、「4度」、「5度」のカノンが、

この前半15曲の中に、含まれているといえます。

 

 


★≪3度≫につきましては、

Bachが「Wohltemperirte Clavier Ⅰ平均律クラヴィーア曲集 第1巻」の、

序文で自ら書いていますように、

≪調性を決定するために、最も重要な音程≫です。

 

★例えば、「c」を主音とした場合、長3度上の「e」を置きますと、

「C-Dur」、「c」の上に短3度上の「es」を置きますと、

「c-Moll」となります。


★「C-Dur」の音階は、「c d e f g a h」です。

短3音の旋律的短音階を書きますと「c d es f g a h」です。

つまり、音階の第3音しか、異なっていないのです。

音階の「第3音」が調性を決定するという一例です。


★そして、音階の第4音は「下属音」、第5音は「属音」です。

3度、4度、5度がいかに大切な音程かお分かりになると、

思います。


★その3、4、5度のカノンである第9、12、15変奏が、

前半15曲の中で、隠れた主役であるとも言えます。


★その12変奏の4度カノン、15変奏の5度カノンを、

導き出すのが、「Variatio10 Fugetta」(第10変奏「Fugetta」)

であるのです。

 

 

 

★第4回講座では、「Variatio10 Fugetta」を、

規範フーガ(学習フーガ)の様式で、私が作曲して演奏し、

Bachの雄渾な「Fugetta」と、比較していただきました。


規範フーガに則った「Fugetta」は、小奇麗で整っています。

こちらを良しとする方は、昔も今もいらっしゃるかもしれませんね。

なぜ、Bachがそのように書かなかったか、

そこにBachの天才があります。


★次回の第5回「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」

アナリーゼ講座は、前半の華となる第13、14、15変奏です。

これで講座の第1期は終わります。

 

 

■Bach「ゴルトベルク変奏曲」 アナリーゼ講座

第5回   変奏曲 第13、14、15番

・オーボエ・ダモーレのTrioを髣髴とさせる第13変奏

・一瞬の輝きの中に、様々な要素が絡み合っている第14変奏

・物問いたげに完全5度で曲を閉じる第15変奏

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■日時:2016年9月3日(土)13時半~16時半
■会場:文京シビックホール 練習室
■問合せ:アカデミアミュージック企画部 03-3813-6757
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★第5回は、前半15曲の最後のグループ、第13、14、15変奏です。

いよいよ佳境に入り、三曲が互いに火花を散らし燃焼します。


★第13変奏は、イタリア協奏曲の第2楽章と対比されることもあり、

流れるように優美な曲です。

オーボエ・ダモーレをソロとする華やかなTrioを髣髴とさせます。

曲の冒頭は、一度聴いたら耳から離れないような、

甘く切ない旋律です。

その源流は、初版譜を勉強しますと一目瞭然。

どのように変容し、この13変奏にたどり着いたかに、

驚かされます。


★第14変奏は、主題(Aria)3小節目の下降トリルに対応する形で、

冒頭1小節目に上昇トリルが現れます。

いやがうえにも、この作品のAriaが想起されます。

心を浮き浮きとさせ、一瞬の輝きのようにも聴こえる曲ですが、

実は、多種多様な要素が、複雑に絡み合っています。


★第15変奏は、前半の掉尾を飾る曲です。

1小節目のよろめき歩むような2度のモティーフは、

すぐに平均律第1巻14番フーガの対主題を思い起こさせます。

物問いたげに、G-d³の完全5度音で、静かに幕を引きます。

 

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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