■イタリア協奏曲とワルトシュタインにある長いトリルの意味■
~第3回「イタリア協奏曲アナリーゼ講座」:
和声、構造を理解し、それをどう演奏に活かすか~
2016.8.20 中村洋子
★記録的な酷暑が続いています。
昨晩は、震えるように大きな大きな月でした。
夜風には、もう秋が感じられます。
★東京で「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」、
名古屋で「Wohltemperirte Clavier Ⅰ平均律クラヴィーア曲集 第1巻」、
金沢で「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」のアナリーゼ講座を、
開催中ですが、先週8月10日は金沢での第2回イタリア協奏曲講座でした。
★ゴルトベルク変奏曲を勉強していますと、
いたるところにBeethoven が、顔をだします。
「BachをBeethoven が学び尽した」というのが、正しいのですが、
「あっ、ここもBeethoven 、ここもBeethoven 」と、
逆に、ゴルトベルク変奏曲を見るたびに、
Beethoven を実感します。
★イタリア協奏曲については、いままでそれほど
“Beethoven 先生はお出でにならない”と、思っていました。
★しかし、そうではありませんでした。
イタリア協奏曲1楽章の112小節目から115小節目の
冒頭までの右手上声「d²」の、3小節間続く長いtrillトリルや、
116小節目から始まり、119小節目冒頭までの
右手上声「c²」の3小節間続く長いtrill。
その各trillの下声左手は、
16分音符のmotifモティーフによる動きです。
★Beethoven のピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」
(Klaviersonata Nr.21 C-Dur Opus53 Waltstein)の、
3楽章51小節目右手上声~54小節目まで続く、
4小節間の「g²」のtrillトリル。
この下声左手は、16分音符の分散和音が絶えることなく
奏されます。
★上記の三つの譜例を弾き比べ、あるいは聴き比べてください。
イタリア協奏曲の構成原理を、
Beethoven は「自家薬籠」と、しています。
★イタリア協奏曲にお話を戻しますと、
112小節目から続く「d²」の長いトリル、
116小節目から続く「c²」の長いトリルは、
どんな意味があるのでしょうか?
★長く引き延ばされた音が、
トリルによって装飾されていますのは、
その音が、とても重要な音である、ということを、
意味しています。
★何故、重要なのか、それをどう演奏すべきかを、
9月28日の金沢第3回「イタリア協奏曲」アナリーゼ講座で、
お話いたします。
--------------------------------------------
●中村洋子 Bach《イタリア協奏曲》アナリーゼ講座
~第3回:イタリア協奏曲の和声、構造を理解したうえで、
どう演奏に活かすか~
■日 時 : 9月28日(水) 午前10時~12時30分
■会 場 : カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9
(尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 有料駐車場をご利用下さい)
■予 約 : Tel.076-262-8236 金沢ショップ
--------------------------------------------
★カワイ金沢「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」アナリーゼ講座は、
第1楽章を3回にわたって、開催しております。
★第1回目は、Bachの後期様式の、一見、明快シンプルに見える和声が、
実に複雑で、読み解き難いものであること、
しかし、それゆえに、イタリア協奏曲が、ここまで魅力的で人々の心をとらえて
離さない理由をお話しました。
★第2回目は、三部形式をとっているかのような第1楽章が、
実は、後に完成される「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の
先駆けとして、変奏の技法を尽くしていることを、ご説明しました。
★第3回目は、これをどう演奏に活かしていくかを、
具体的にご説明いたします。
イタリア協奏曲の構造は、Bachの「counterpoint 対位法」の
粋を集めた作品です。
★その傑作の本当の価値を踏まえて校訂された楽譜が、
Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886-1960)版なのです。
この楽譜を読み解き、演奏に活かすためには、それなりの努力と、
音楽に対する真の愛情が必要です。
-------------------------------------------
■講師: 作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。
・2008~09年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
・2010~15年、「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、
東京で開催。
自作品「Suite Nr.1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
「10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。
・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」の
SACDを、Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
(disk UNION : GDRL 1001/1002)。
・2016年 ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
≪クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!≫
~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、
演奏法までも分かる~(DU BOOKS社)を出版。
・2016年、ドイツのベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
「訳者による注釈」を担当。
※copyright © Yoko Nakamura
All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲