■Ravel の Sonatine には、平均律 1巻 23番 Prelude が色濃く反映■
Chopin が見た「平均律・アナリーゼ講座」
第23回 平均律 第 1巻 第 23番 H-Dur ロ長調 Prelude & Fuga
2014.9.27 中村洋子
★平均律クラヴィーア曲集 「 第 1巻 23番 Prelude 」 は、
葬列を想起させる 「 22番 Prelude 」 と、
ゴルゴダの刑場に向かうような、重い足取りの 「 24番 Prelude 」 に、
挟まれています。
★「 23番 Prelude 」 の冒頭 bass バス声部は、
≪ h音 ≫ が、 2小節伸ばされています。
つまり、オルガンポイントである、この H-Dur の主音 ≪ h音 ≫ が、
上声の H-Dur 音階を、盤石のように、支えています。
その上に、16分音符の Motiv が、ソプラノで、
小鳥がさえずるように、歌い、
音階を、清らかに装飾していきます。
★その 16分音符の最初の 4音が、
Fugaの 第 1小節で、 8分音符に拡大され、
Subject の冒頭音として、再登場するのです。
★ 「 平均律 第 1巻 23番 Prelude 」 の冒頭 2小節は、
H-Dur の主音から始まる 「 上行音階 」 に、
要約することができます。
★一方、「 平均律 2巻 23番 Prelude 」 の冒頭 1小節目の上声は、
h音から始まる 16分音符の、H-Dur 「 上行音階 」 で、これは
「 平均律 第 1巻 23番 Prelude 」 と、見事に呼応しています。
★「 平均律 2巻 23番の音階 」 に至るまでの、
目くるめくような音階の誕生、流転、変遷を、
逆に、辿って見ますと、
平均律 2巻 23番の ≪ むき出しの H-Dur 音階 ≫ が、
平均律 2巻 1番 に足跡を残し、そしてさらに、
この 1巻 23番 にまでたどり着く、とも言えるのです。
★これは、平均律 1巻、2巻 による Prelude & Fuga
全 48曲から成る ≪ 大伽藍 ≫ 構造の一端を、
垣間見ることに、ほかなりません。
★H-Dur ( ロ長調 )は、♯ を 5つ持つ、
当時としては、斬新な調性です。
手の位置も、黒鍵を多く弾くため、鍵盤の奥に指を置き、
腕も少し伸ばし気味となるため、23番のもつ 「 軽やかさ 」 は、
この ≪ H-Dur ≫ という調性と、無縁ではありません。
★ しかし、 23番は決して、明るく軽やかなだけではありません。
Prelude 3小節目後半から 4小節目にかけて、
アルト声部として現れる 「 半音階進行 」 は、
前後の 22、 24番と、とても深いところで呼応しているのです。
★Maurice Ravel (1875~1937) の Sonatine (1905年出版) は、
Durand社に、 Ravel との独占契約を決意させた曲です。
Sonatine には、23番 Prelude が色濃く反映されており、
Durand社は慧眼にも、それを見抜いたのです。
★Sonatineの 第 1楽章は、♯ が 3つの fis-Moll で、
冒頭 3小節は、 Bach 23番 Prelude の冒頭 2小節と
同じ Motiv が、浮上します。
この相似点をどう理解し、演奏に活かしたらいいのか、
講座で、分かりやすくお話します。
------------------------------------------------
■日時:2014.11. 9 ( 日 ) 14時~16時30分
■会場:KAWAIミュージックスクールみなとみらい
横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F
( みなとみらい駅『出口1番』出て目の前の高層ビル3F )
■ 予約: カワイミュージックスクール横浜
Tel. 045 - 261 - 7323
----------------------------------------------------------------
■ 講師 : 作曲家 中村 洋子 Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。
09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
初演される。
10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。
10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
Musikverlag Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
自作品が演奏される。
★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
販売中
★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
disk Union クラシック館で、購入できます。
※copyright © Yoko Nakamura
All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲