僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

確定申告相談会場で 

2010年02月04日 | 日常のいろいろなこと

先日、近くの市民会館に設置された「確定申告相談会場」へ行ってきた。
確定申告の場に足を運ぶ、というのは、初めての経験である。

長年、公務員として市役所に勤めていたので、税金は給与から自動的に引かれているし、年末になれば、人事課から回ってくる年末調整の用紙に書き込むだけでOKであり、わずらわしい手続きも何もする必要はなかった。

しかし、退職したら、そういうわけにはいかない。当然のことであるが、税の申告は、自分でしなければならないのだ。あぁ、面倒やなぁ。

僕は、38年間市役所に勤めていたからと言っても、その3分の2は議会事務局に所属していたし、他には、総務課の法規の関係や、広報の関係に携わっていたのがほとんどで、税務に関しては、ほぼ無知と言っていい。だから、確定申告というものがどんなものなのか、詳しく知らない。いつか入院した年に、医療費控除を受けるため、確定申告をしたことがあったが、これは妻が提出に行ってくれた。それに、書き方がわからない時は、そういうことに詳しい職場の職員に聞けばよかった。でも今年からは、まわりに聞く相手もいない。あぁ、孤独やなぁ。

妻が藤井寺市役所からもらってきてくれた「所得税の確定申告の手引き」という説明書と、申告用紙(下書き用紙も入っている)を広げて、いよいよ書類との格闘が始まった。書かれてある堅苦しい文言を、一字一句理解するのは、なかなか難しい。

去年は3月まで市役所から給料をもらっていたので、その分の源泉徴収票と、4月から受け取っている年金の源泉徴収票の2枚を用意する。これが、僕の去年1年間の収入額と、納めた税額の証明となる。(退職金は、独立したもので、すでに確定した税を引かれて支給されているので、確定申告には特に入れる必要はないそうだ)

それぞれの金額を、所定の欄に記入し、その下に所得の合計額を記入する。

その次は所得から差し引かれる金額(所得控除)の記入と計算だ。

まず、社会保険料控除。
3月までは、健保組合への掛け金は、給料から自動的に引かれていた。
そして、退職後は同じ健保組合の任意継続というものに切り替わったので、
4月から翌年3月までの1年分の掛け金を一括して納めた。それらの掛け金を合計した額を、ここへ書き込む。

続いて、生命保険と地震保険の額を、それぞれの欄に書き込む。
そして、それに配偶者控除と、誰もに適用される基礎控除(ともに38万円)を加えたものが、所得から差し引かれる額、つまり所得控除額となる。

これで、所得金額と、所得控除金額が確定した。

所得金額から、所得控除額を差し引いた額が、課税される所得金額となる。
そして、これに対する税額を、説明のとおり計算してはじき出す。

この税額から、僕が3月まで受けた給与と4月からの年金にかかる税(つまり、既に支払っている税金)の額を引くと、ようやく申告納税額にたどり着くのである。あ~しんど。

僕の場合は、既に支払っている税額のほうが多かったので、この計算式ではマイナス何万円かになった。マイナスというのは、つまりその金額の還付を受けることができる、というわけである。

いちおう、これだけ計算して、下書き用紙に書き込み(用紙には他にもいろいろ書き込む欄があるけれど、主なものは今あげたものである)、給与、年金の源泉徴収票や生命保険会社から送られてきた証明書などを漏れなく封筒に入れ、寒風の中を、市民会館の確定申告相談会場へ向かったのである。

「は~い、整理番号を取ってくださ~い」
会場では、オレンジ色の派手なジャンパーを着た職員が、次々とやってくる人たち(主に中年女性と年寄り)に声をかけている。待合室はほぼ満席である。僕も93番の札を取って、長椅子の狭い隙間を見つけて「すんませ~ん」と会釈しながら座り込んだ。

「50番の札をお持ちの方ぁ、どうぞ、会場内に入ってくださ~い」
オレンジのジャンパーが大声で呼ぶ。
僕の番まで、まだ、かなり時間がかかりそうだ。

しばらくすると、誰かが肩をトントン叩いた。
振り返ると、ニット帽をかぶった見覚えのある顔がニッコリ笑っている。
「あ、おひさしぶりですね~」と僕も立ち上がってあいさつした。
元藤井寺市の議会事務局長で、僕より1年先に定年退職をした人である。

「もう、退職をしはったんですか?」とその人に聞かれたので、
「そうです。去年3月に…」
「はぁ、そうですか。で、今は何をしてはりますのん?」
「いやぁ…」それを聞かれると、つらい。
「まあ、そのぉ、別にぃ…」と言葉を濁す僕。
「あぁ、なるほど…」と、相手が助け舟を出してくれる。
何が「なるほど」なのか、よくわからないけれど。

どれくらい待っただろうか。
やっと「93番の札をお持ちの方ぁ~」の声がかかった。

中へ入る。
会場は広々としており、あちらこちらにテーブルがあった。
入り口の案内の職員が、「どうぞ、こちらの席に…」と案内してくれた。
そこに、今度はオレンジのジャンパーではなく、市役所の正規の制服を着てネクタイを締めた若い男子職員が座っていた。
「どうぞ、どうぞ、お座りになってください」と立ち上がって一礼する。
感じのいい職員さんである。

僕は、おもむろに書類を取り出して、
「いちおう下書きを書いてきたんですけど」と言いながら、去年3月に退職をしたので3月までは給与収入があり、4月からは年金収入になったことや、社会保険控除のそれぞれに内訳を説明したりした。

「はい、はい、そうですね。こちらは、これで結構ですよね」
と、若い職員は僕の説明を聞きながら、てきぱきと書類に目を通していく。

2ヵ所ほど、僕のミスがあった。
「これは、あちらで税理士さんにまた御確認ください」
彼はそう言って、会場の奥のほうを指差した。

奥のほうには、パソコンがずらりと並び、その前でぱたぱたと入力しているのが税理士さんなのであろうか。それを、横から覗き込んでいるのが、どうやら、相談に来た一般の人のようである。

「この項目は、別の計算式がありますので…」
と、目の前の職員が、僕の間違っていたところを丁寧に説明してくれ、
「じゃぁ、あちらの椅子に座ってお待ち願います…」
と言ったのであるが、僕はその時、何気なくその若い男子職員の胸に付けられていた名札を見た。

「あれぇ…?」
その名札には、「田○出」という苗字が書かれていた。
これはとても珍しい苗字である。しかも僕は、この苗字に覚えがあった。

そうだ。藤井寺市に隣接している▽▽市の議会事務局長が、「田○出」という苗字だった。

僕はこの局長とは勤めている市役所は違うけれど、昔からよく知っていた。15年前に実施された大阪府下の市職員の海外研修旅行に、僕は松原市役所から参加させてもらったが、彼は▽▽市役所から参加し、顔見知りになった。

それから10年以上経ち、2、3年前、その「田○出」さんが▽▽市の議会事務局長になり、再び交流が始まった。地域ブロックの議会事務局長会というのがあったが、その中でも、僕は「田○出」さんと一番仲がよかった。

目の前にいる男子職員の名札を見て、
「あのぉ、話は違うんですけどね…」
「は…? 何でしょうか」
僕は、彼の胸の名札を指差して、
「そのぉ…『田○出』さんというのは、非常に珍しい苗字ですよね」
「あ、そうですね。よく言われるんですよ」
「ところで▽▽市役所にも『田○出』さんという方がおられるのですが…」
と、僕がゆっくりとした口調で言うと、
「はい。あれは、私の父です」と、答えが返ってきた。

げげげげげげぇ~。

僕はびっくりして、
「へぇ~、息子さんですか? お父さんのこと、よく知ってるんですよ」
僕はあらためて、前に座っているその職員の顔を見た。
顔は、全然似ていない。息子のほうが、段違いにハンサムである。
ただ、愛想がよくて親切なところは、父親と一緒だ。

僕は、彼のお父さんと僕が知り合った経緯などを手短に話した。
彼のほうも、自分のことを少し話した。
「藤井寺市役所に就職したときは、会計課だったんですが、そのあと税務課に来ました。もう30歳なんですよ」と彼は笑い、
「また市役所に御用の際は、どんなことでもお申し付けください」
礼儀正しく、笑顔でそう言ってくれた。
「ありがとうね。お父さんによろしくと伝えておいてね~」

思いがけない「出会い」に心弾ませながら、僕は次の場所 → 税理士さんに正しい確定申告書を作ってもらうコーナーへ、歩いて行った。

                  (続きは、また次回にて)

 

 


 

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