僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

ソウルの 怪奇 “ いだてん爺 ”

2019年09月25日 | 旅行

前回、昔の韓国旅行でのいくつかの体験談を書きましたが、旅行の中で最も珍妙かつ驚きの体験をした話は、まだ書いていませんでした。

珍妙と言えば、ソウルで、街の中をぶらぶら歩いている時に急に足を引っ張られてビックリしたことがあります。何ごとかと思えば、道に座っている靴磨きのおっさんが、僕の片足をつかまえて「靴を磨かせてくれ」と言ったのです。人生、いろいろ「足を引っ張られる」こともあるかと思いますが、本当の足そのものを引っ張られるなんて、後にも先にもこれ一度だけですわ(笑)。僕は「いりまへん!」と断ってすぐにその場から離れましたが、転んで怪我でもしたらどうするんや。無茶なことするわ、この靴磨きのおっさん。

それともうひとつ。商店街のような賑わった通りを歩いていると、今度は横からいきなり腕をつかまれ、店の中に引きずり込まれそうになりました。相手は店の男で「ここで何か買ってくれ」と僕の腕を引っ張ったのです。これまた日本では考えられない荒っぽい行為でした。

とまぁ、いろいろあったのですが、最も珍妙なことが起きたのは、ソウル駅の前の地下街での出来事でした。

真昼の地下街はビジネスマン風の人たちが多く歩いていた。僕はこの近くにあるはずの南大門へ行きたかったので、地下街の一角にあったソウル駅周辺の案内地図の前で立ち止まり、勉強してきたハングル文字を読みながら、南大門の方角を確認し、そして再び歩き始めた。

そのとき、何か妙な動きをする男が後方にいることに気づいた。

僕が案内図の前で立ち止まっていた時、後方にその男が立ち止まっていたのは知っていたけれど、僕が歩き出すと同時に、その男も後ろからついて来るように歩き出したのだ。僕が振り向くと、その男はすっと横を向き、 「関係おまへん、何にも関係おまへんで」 という顔をしている。それでも一定の距離を保ちながらついてくる。その仕草がいかにも怪しく見えた。そして僕は、今度は急に立ち止まって後ろを振り向いた。すると

あぁ、やっぱり 。その男もピタッと立ち止まったのである。そして男は再び、「怪しいもんやおまへん、おまへん」という仕草で横を向く。その動作がますます怪しい。

見ると、その男はかなり年配者であった。老人と言ってもいいほどだ。体つきは小柄で、風貌はちょっと怪異だった。目の焦点が合っていない。

前を見ると、地下道は前方で突き当っており、T字路になっていた。通路が右と左とに分かれている。「よぉし、まいてやれ」。僕はまた歩き出した。そして突き当りを右に曲がるが早いか猛然とダッシュして、50mぐらい全力疾走し、左側にあった上り階段の方に体をひねり、ダダダダ~っと跳ぶように駆け上がって、地上まで残り数段の所まで行った。僕はマラソンランナーのはしくれだったし、毎日走っていたので脚力には自信があった。

「フン。どうだ爺ちゃん。参ったか!」 と階段の下を確認しようと振り返ると

僕のすぐ後ろ、目と鼻の先とも言える階段の2、3段下に、その男がこちらを向いて立っていたのである。呼吸ひとつ乱さず、じいっと、焦点の定まらない両目を、僕のほうに向けて

「うそっ!」 僕は驚きのあまり腰が抜けそうになった。どうにか胸を張るようにして、その男に「なんだよ!」という顔をしてみせた。男は無表情のままだ。僕はすぐにまた男に背を向け、残りの階段を一気に地上まで駆け上がった。

地上に出て、少し先に信号があったので広い道路を走って渡った。さすがにもう、その男はついて来なかった。

そして、いま渡って来たの道路の向こう側、地下の出入口付近でその男が立っているのが遠目に見てとれた。

やれやれ。ホッと胸をなでおろした。

いったい何のために僕を尾行するような真似をしたんだろう? それも信じられない足の速さで。まるで忍者だ。

今もその時の光景が鮮やかに目に浮かぶ。ホント、不気味だった。

日本人とみて、何か文句を言ってやろうと思ったのか、それとも客引きだったのか? でもそれだったら話しかけてくればいい。黙ってあとをつけるようなことはしないだろう。どういうつもりだったんだろう?

それにしても、僕が地下の通路と階段を全力疾走したにもかかわらず、影のようにピタッとついてきたのにはビックリ仰天しました。ホント、謎だらけです。

そして謎のまま、数十年の歳月が経ちました。

この正体不明の男のことは、

ソウルの怪奇いだてん爺

と名付けて、死ぬまで忘れることはないでしょう。

 

 

 

 

 

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