米国とカナダの国境にあるナイアガラの滝で、日本人留学生の20歳の女性が滝に転落して行方不明になったというニュースを見たとき、
「えっ? ナイアガラの滝へ落ちたっ? まさか!」
2年前にナイアガラの滝を訪れたことのある僕は、思わず声をあげた。
新聞によると、女性は写真を撮ってもらおうとして、滝を見下ろす場所にある鉄柵にのぼり、バランスを崩して川に落下、そのまま滝にのまれたという。ある報道では、傘を差したまま鉄柵にのぼった、とも言われている。
その日本人女性はカナダのトロントの語学学校に通っていたそうである。
どうしてそんなところへよじ登って写真を撮ってもらおうとしたのか…?
滝の見学場所の記憶をたぐり寄せながら、考えてみた。
現場は、滝がすぐ目の前に迫っているところである。
川の水が滝壺へのみ込まれていく写真を撮ろうとすると、鉄柵から身を乗り出すようにして撮影しなければならない。まして、そこに人物が入ると、なかなかカメラアングルがむずかしい。普通に撮ると、滝の迫力が伝わらず、川だけを背景に写真を撮っているような感じになってしまうからだ。つまり、脚立か何かにのぼって、上のほうから滝を背景に人物を撮ると、臨場感あふれる写真になるっていう感じなのだ。
ただし写真を撮ってもらうために鉄柵にのぼってそれをまたぐ…というのは、
誰が見ても、川へ落ちてしまうと思うのだけど…。
写真で説明すると、わかりやすい。
↑これは、ナイアガラの資料写真です。
カナダ滝の全景がわかります。
観光客は、半円形に広がる滝の右端の、
川が滝へ落ちる場所で見学することが多い。
その場所がここ。
僕が行ったのは1月で、周囲は雪に覆われていた。
ナイアガラへの観光客はたいていこのポイントに来るのだが、
この時は、季節外れだったのか、人影はほとんどなかった。
女性がのぼったという鉄柵の高さも、これでわかるだろう。
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女性は鉄柵にのぼり、バランスを崩して、
滝の約25メートル手前の川に落下。
そのまま滝にのまれた、という。
川は、満々と水を湛えている。
これが、ちょうどそのあたりの鉄柵と思われる。
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滝の様子を、もう少しリアルに撮ろうとすれば、
鉄柵から身を乗り出して撮影することになる。
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ただ、滝のすぐそばに建物があり、その2階から見ると、
ナイアガラの滝が、かなりわかりやすく眺望できる。
鉄柵にのぼらず、この位置から撮ってもらっていたら、
滝も人物もうまく撮れていただろうに…と悔やまれる。
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ナイアガラの警察当局のある警官は、
自分は35年間、この仕事をしているが、
鉄柵から落下した事故は初めてだ…
と、会見で語っていた。
ナイアガラ滝を目の当たりにすると、
迫力どころか、恐怖が先立つほどである。
そんな場所だからこそ、観光客は用心に用心を重ねるのだ。
鉄柵の位置も、もちろん、それなりの高さがある。
それをよじのぼり、またぐ人って、いるだろうか。
今回の事故は、僕としては、どう考えても信じられないのである。