僕がこの3月まで38年間勤めてきた市の市長選挙の投票がきょう、行われる。
いや、厳密に言うと、今現在、行われている最中である。
その市というのは、大阪府松原市である。
市長選挙の投票というのが、これまで、松原市ではわりに少なかった。
候補者が一人だけで、無投票、というのが多かったからだ。
したがって、ここ35年間の市長選挙というのは無風状態に近いものだった。
しかし、ずいぶん昔になるが、大荒れに荒れたこともあった。
昭和49年…(僕が役所に入って3年目だ)。
松原市では、全国ニュースに報じられるような政変劇があった。
社会党系のH市長が、松原市内の地区(当時はそう呼んでいた)に対して次々と巨額の予算を投入したものだから、議会から猛反発を受けた。そのあげく、議会はついに市長の不信任案を提出し、それを可決した。
この場合、市長は、辞職するか、議会への対抗措置として議会を解散するかのどちらかを選ばなければならない。H市長は、議会を解散する道を選んだ。
予算をめぐる長と議会の対立から、議会が解散に追いやられたのはわが国でも前代未聞のケースとして、連日、全国の新聞・テレビ等で報じられた。
昭和49年の暑い夏の盛りのことだった。
議会は解散させられて、汗だくの選挙に臨み、新しい議員たちが出揃った。
そして、この新しく選ばれた議員たちが、再び市長を不信任議決した。
これでH市長は、自動的に失職することになった。
そのあと出てきた元職員のD市長が、昭和49年から27年間、市長を務めた。
…なんと、27年間である。ずいぶん長い在職期間である。
本来なら7期だから7回選挙があるはずだった。が、ほとんどの選挙は対立候補が出ず、無投票当選を続けた。そして、そのD市長が健康上の理由で辞職したのが平成13年で、そこに出てきた次の市長は、これも元職員のN市長だった。
僕は、その政変劇のあった昭和49年の翌年である昭和50年から議会事務局に配属されたので、D市長が出発したころに議会での公務員生活がはじまったわけだ。だから、政変劇の詳しいことは知らない。人から話を聞く程度だった。
さて、27年間勤めたD市長のあとを継いだN市長は、かつての僕の上司であった人だった。お酒が好きで、よく飲みに連れて行ってもらった。とても温厚な人で、どちらかと言えば、政治家向きではないような気がした。しかし、4年の任期を経たあと、次も選挙に出たが、対抗馬が出ず、無投票で当選した。松原市の市長選は、本当に無投票が多い。住民に市長を選ぶ機会が与えられないというのも、深刻な問題ではあるが、とにかく対抗馬が出ないのだ。これはいかがなものか。
N市長は、平成13年から市長になって8年間、市政をつかさどってこられた。
不運なことに、ここ数年で松原市民病院が膨大な赤字を抱えることになり、これを閉鎖しないことには、松原市全体に悪影響が及ぶ、という緊急事態に至った。だいたい、市民病院は、まじめにやればやるほど赤字が嵩むのである。
去年11月、N市長は苦渋の選択をした。
松原市民病院を閉鎖することに決めたのである。
今の時代を象徴するようなニュースに、マスコミが飛びついた。
僕が事務局長をしていた議会にも、多くの報道陣が詰め掛けた。
N市長自身は、最後まで病院を閉鎖したくなかったようであるが、諸情勢がそれを許さなかった。まさに、断腸の思いで病院閉鎖を決められたのであろう。
そして、6月16日で2期目の市長任期が切れるのをきっかけに、次の選挙には出馬しないという声明を、3月の議会で発表した。その議会での発表の様子が載った新聞の写真に、市長の後ろに僕の顔が写っていたことは、いつかこのブログで書いたことがある。(すみません、関係ない話で…)
そして、今回の市長選挙は、2人の、新人同志の対決である。
病院の閉鎖に賛成をした自・公・民の推薦を受けた元自民党市議のSさんと、共産党の推薦を受け、病院閉鎖に待ったをかけ、福祉最優先政策を声高にとなえる団体役員のUさんとの一騎打ちとなった。Sさんは1週間前まで市議会議員だったので、よ~く知っているが、Uさんは、顔を知っている程度で話したことはあまりない。
元自民党市議のSさんは、一昨年から去年にかけて1年間、議長をしていたので、僕は特にこの人とは、その1年間は毎日のようにいっしょだった。会議や管外出張でいろんなところへも行った。彼は38歳という若さであり、何でも決断が早いし、勉強熱心で、行動的である。
現在その投票の真っ最中であり、午後10時ぐらいには大勢が判明するだろう。
選挙のことだから、フタを開けて見ないとわからないが、やはり、自民・公明・民主の推薦を受けているSさんが、かなり有力であろうと思う。
開票事務に参加する役所の友達から、大勢の判明次第メールを送ってもらうことになっているが、地元のNHKニュースでも報じるだろう。
今夜の投票結果が楽しみである。
しかしこれまで鳴かず飛ばずだった松原市の行政が、これからどう大きく変革していくのか…。よっしゃ、やっと面白い展開になってきたぞ~という時に、定年で退職…というのもね、なんだか、映画で延々と退屈なシーンを見せられて、さぁ、ここからだ~! というクライマックスになったとたん「はい、もうあたなは終わりだから出てください」と映画館から追い出されたような気もしないではない。なんだかなぁ…。
まあ、これから職員給与も大幅に削減されるなどの思い切った政策が展開されていくと、仕事の方もますます大変になってくるので、自分が辞めた時期は、いい潮時だったのかなぁ、と言えるかもしれない…。
どちらにしても、今夜の結果は、待ち遠しいなぁ。