電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

伊坂幸太郎『アイネクライネナハトムジーク』を読む

2019年10月08日 06時02分23秒 | 読書
風邪ひき絶不調状態も少しずつ脱してきましたので、寝床で本を読んだりラジオを聴いたりできるようになりました。手にした本が、幻冬舎文庫で伊坂幸太郎著『アイネクライネナハトムジーク』です。以前、一度読み終えているのですが、登場人物の関連性が一度では把握しきれず、とりあえず保留にしていたものです。

第1話:「アイネクライネ」。妻子に去られた藤間先輩の家庭事情は同情に余りありますが、なにせタイミングが悪かった。はずみでコーヒーをこぼした佐藤くんも、街頭アンケート調査とはいかにも罰ゲーム的。街頭テレビで眺めたボクシングの世界ヘビー級タイトルマッチは、後に再度登場します。また、さらりと登場するのが大学時代の友人で中退し居酒屋店長をしている織田一真と由美の夫婦。二人はすでに二児の親ですが、娘の名前が織田美緒、こちらも後で高校生として登場します。

第2話:「ライトヘビー」。美容師の美奈子さん、客の一人板橋香澄の弟の学と時々電話で話す関係に。ボクシングの試合で勝ったら告白するという話は、実は学くんのことでした。板橋香澄さんは、前話の織田由美さんと友人関係にあります。

第3話:「ドクメンタ」。藤間さんの別居生活の発端は、ハサミを片付けるのを忘れたこと。そういう日常の積み重ねが、ある日、爆発するのですね。運転免許更新にぎりぎりまで行かない性分の人は、何でも早め早めと済ませるタイプの人とは合わないのでしょうか。必ずしもそうではなかろうと思いますけどね〜。免許センターで更新時に五年ごとに会う女性の話は、ほのぼの感があります。

第4話:「ルックスライク」。高校生の久留米和人君は、お父さんにそっくりなのだそうです。同級生の織田美緒さんと一緒に駐輪場でのトラブルに突っ込んでしまい、結婚して深堀姓になっている学校の英語の先生の機転に助けられます。その機転のルーツは、若い頃に交際していた和人くんのお父さんにありました。

第5話:「メイクアップ」。あまり好きな話題ではありません。まさしく、人の不幸を喜んではいけないのですよ。「人を呪わば穴二つ」と言うではありませんか。まあ、だから「憎まれっ子世に憚る」のでしょうが(^o^)/

第6話:「ナハトムジーク」。美奈子と一緒になったけれど、ボクシング世界チャンピオンタイトル防衛戦に失敗し長く低迷したウィンストン小野(学)の再挑戦。壮絶な試合、劇的な幕切れです。これは、映画のクライマックスになりそうです。

うーむ、作者は恋愛小説は得意じゃないと言っていますが、そのせいか、複雑な人物相関図をプロットとして持つのであろう、技巧的な恋愛小説作品のようです。実際、二度目に読み終えて、人物相関図を書こうとして呆れました。「田舎の濃密な人間関係」なんてもんじゃない、これは「都会の複雑な人間関係」そのものでしょう。すでに映画化されているようですが、映画を観た後に読んだほうがわかりやすいのかもしれません。



作者はどうして「アイネクライネナハトムジーク」なんて題をつけたのでしょう。モーツァルトなんて登場していないみたいだし、曲名の訳「小夜曲」に「さよきょく」とルビを振っていますが、「しょうやきょく」ではだめなのか?


コメント (2)    この記事についてブログを書く
« ファーバーカステル・ボール... | トップ | B6判キャンパスノートでダイ... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こに さん、 (narkejp)
2019-10-09 20:25:14
コメントありがとうございます。なかなかおもしろかったですね。人と人とのつながり、全くそうですね。映画も良さそうです。風邪が治ったら、ぜひ観てみたいものです。「ガソリン生活」も、ちょいと現代の技術で「車どうしがしゃべる」ところを実現してもらいたいですね(^o^)/
返信する
読みました! (こに)
2019-10-09 08:08:33
映画も観てきました。
恋愛というよりは人と人とのつながりを描いた感じでした。人と人は意識してなくてもつながりがあるのだ、と普段は全く気に留めていないことを改めて気づかされました。
映画記事のURLを貼っておきます^^
https://blog.goo.ne.jp/mikawinny/e/62d91a3ab9e1b88a6e4457db77b85bc5

伊坂作品映画化といえば
緑のデミオが登場する「ガソリン生活」を映画化して欲しいと思っています♪
返信する

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事