電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブラームス「ピアノソナタ第3番」を聞く

2006年09月10日 09時29分38秒 | -独奏曲
ブラームスのピアノソナタをまじめに(?)聞いたのは初めてかもしれません。この1週間ずっと通勤の音楽で聞いていました。今朝は早朝から河川清掃のボランティアがあり、帰宅・朝食後にシャワーを浴び、ゆっくりとこの曲を聞いています。演奏はブルーノ・レオナルド・ゲルバーで、1992年にオランダのライデンにあるスタッツヘホールザールでデジタル録音された、DENONのCD(COCO-70533)です。

第1楽章、アレグロ・マエストーソ。ピアノの重低音と、鐘の音を模したかのような強い第1主題の印象が圧倒的な音楽です。
第2楽章、アンダンテ・エスプレッシーヴォ。静かだが文字通りエスプレッシーヴォな、沈潜する音楽。
第3楽章、スケルツォ、アレグロ・エネルジコ。短いが、下降する音型がきらめく光のよう。
第4楽章、インテルメッツォ、「回想」、アンダンテ・モルト。短い楽章ですが、ところどころに、えっ、今の、なんか不協和音と違う?と思うような箇所がある。
第5楽章、フィナーレ、アレグロ・モデラート・マ・ルパート。とにかくすごいテクニックを要求される音楽みたい。

急ー緩ー急ー緩ー急、という楽章構成になっているようで、名前はピアノソナタという範疇に入るようですが、モーツァルトやベートーヴェンの時代のピアノソナタとはずいぶん受ける印象が違います。やっぱりリストやワーグナーの同時代の音楽という感じです。これだけピアノの低音を響かせた、迫力のある演奏を要求するのは、ピアノという楽器の性能や表現力が格段に向上していたからでしょう。

作曲された1853年は、熱力学の第二法則とかベッセマーの旋回式弾丸が発見・発明された年というよりも、日本で言えばもう明治維新が目前の頃。産業革命を経て鋼鉄が大量に生産され、鉄道が普及し軍艦や大砲が鋳造されていた時代です。フレームもピアノ線の質も、劇的に改善されていたのではないか。迫力ある強靭な低音の上に、つぶやくように展開されるエスプレッシーヴォな響きから、理系人間はそんなことを考えます。

R.シューマンにより、「新しい道」と劇的に紹介されたブラームスは、どうして以後ピアノソナタを書かなかったのか。もう三曲も書いちゃったから?シューマンより多く書くのは義理が立たない?クララ・シューマンに怒られる?別の方面に作曲意欲を燃やしていたから?

職場に演奏経験のある同僚がいて、ブラームスのソナタのことを「えれぇ難しい」「なんでこんなとこでこんな跳躍をするんだよ!と思っちゃう」と言っていました。私は技術的なことは皆目わかりませんが、「へー、そうなのか」と妙な納得。依然としてたくさん謎なブラームスです。でも、録音も素晴らしく、聴き込むほどに味のあるブラームスの音楽です。併録されている「ヘンデル・ヴァリエーション」も素晴らしいが、これはまた別の機会に。

参考までに、演奏データを。
■ブルーノ・レオナルド・ゲルバー(Pf)
I=9'44" II=11'27" III=4'12" IV=3'12" V=6'58" total=35'33"
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6 コメント

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ゲルバー (吉田)
2006-09-10 14:58:29
このCD、ことあるごとに取り出して聴きます。ブラームスのロマンティックな味わいが、良くも悪くもとても濃くて、一時期は取り付かれていました。

ゲルバーの爽やかな弾きぶりがいいです。
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はじめまして♪ (麻由子)
2006-09-10 16:39:32
こんにちは♪

私のブログにコメント&トラックバックくださり、

どうもありがとうございました♪



そうなんですよね~!

ブラームスは、ピアノソナタを3曲しか作っていないのです。

ピアノ弾きの間では、第1番が一番ポピュラーのように感じます。

(自分が弾くことを考えると、そうなる!?・・笑)



私は、ソナタ第3番の第2楽章にとても惹かれてしまい、

楽譜を見たら、頑張れそうな気がして、手をつけてしまいました!

最後まで弾き通せる日を夢見て。。。♪



こちらは、とても読み応えのあるブログですね。

面白いです♪



私も、LPからCDへの変化の経験者です。

カセットテープも画期的だったのですが、

それも今では、今昔物語となりましたネ。



これからも、時々訪問させていただきますね♪

どうもありがとうございました!
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吉田さん、 (narkejp)
2006-09-10 19:05:27
コメントありがとうございます。ゲルバーの演奏、最初はベートーヴェンのソナタで聞き始め、ブラームスもいいなぁと注目。ほかにどんな録音があるのか、興味があります。CDのジャケット写真は西洋の悪魔みたいな眉毛の描き方がちょいと「微妙」ですが、演奏は素晴らしいですね(^_^;)>poripori

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麻由子さん、 (narkejp)
2006-09-10 19:19:33
コメントとトラックバックをありがとうございます。おほめにあずかり、光栄です。

音楽は、ただ好きで聞いているだけのことですが、新潮社のクレストブックスで『パリ左岸のピアノ工房』等を読むと、大人になってからピアノを楽しむのもいいなぁ、と思います。

今も帰省中の子どもが隣でピアノを弾いていますが、まさか父親の趣味が影響してピアノ好きになったとは思ってもいないでしょう。でも、実は相当に影響しているんだよな、と内心そうつぶやいているのです(^_^)/

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ピアノソナタ第3番 (畑山千恵子)
2007-10-25 14:39:16
私は、ゲルバーのベートーヴェンがあっても、ブラームスまでは聴いていません。いずれ、じっくり聴いてみたいものです。
この5月、今やドイツを代表するピアニストとなったペーター・レーゼルとゲルハルト・オピッツのブラームスピアノ作品全集を聴き比べ、この第3番が最後になりました。どちらも甲乙つけがたい演奏であることを改めて感じ取りました。また、最近、若手のアンドレアス・ボイデのものもよくできたもので、ドイツのピアニストによるブラームス演奏としてもお勧めしたいものです。
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畑山千恵子 さん、 (narkejp)
2007-10-25 21:14:22
コメントありがとうございます。ゲルバーのベートーヴェンは、録音が出るたびに購入していましたが、最近はちょいと新譜にうとくなってしまっています。まだ完結はしていませんよね。いい演奏だなあと思っていました。ペーター・レーゼルやゲルハルト・オピッツなど、まだ聴く機会を得ません。できればN響アワーなどに登場するといいなぁ、と思います。
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