電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

岩岡千景『セーラー服の歌人・鳥居』を読む

2019年07月14日 06時04分05秒 | 読書
過日、鳥居『キリンの子・鳥居歌集』を読み(*1)、そのインパクトの強さに、この歌人がどんな境遇で育ったどんな人なのか、興味を持ちました。同じ角川から、岩岡千景著『セーラー服の歌人・鳥居』という本が出ていましたので、読んでみました。

帯には

母の自殺、小学校中退、
施設での虐待、
ホームレス生活

とあり、「拾った新聞で字を覚えたホームレス少女の物語」と紹介されています。いささかセンセーショナルな宣伝ですが、いやはや内容もすごかった。これが実話だというのですから、思わずため息が出ます。

歌人・鳥居の誕生までの経緯もそうですが、むしろ鳥居さんの母親の不幸がいたましい。娘時代に、その父(鳥居から見れば祖父)から性的暴力を受け、それが背景になって家を嫌い、家を飛び出します。女優として、脚本家を目指す夫と貧しい暮らしを続ける中で鳥居さんを出産、しかし両親は離婚。典型的な不幸街道まっしぐらです。どうやらこの家族の不幸の発端は、この祖父にあるみたい。家族を守るはずの家で、子どもが犠牲になった事態だったようです。

とかく変な目で見られがちな「セーラー服姿の歌人」という点について、義務教育である中学校を形式的に卒業してはいるけれど、実質は小学校中退であることから、夜間中学などでもう一度きちんと勉強したいけれどそれが許されなかったことへのアピールで始めたのだそうな。なるほど、それで『キリンの子・鳥居歌集』に

慰めに「勉強など」と人は言う その勉強がしたかったのです

という歌があったのですね。

(*1):鳥居『キリンの子〜鳥居歌集』を読む〜「電網郊外散歩道」2019年7月

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