電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

プロコフィエフ「交響曲第2番」を聴く

2009年03月07日 06時00分14秒 | -オーケストラ
最近は、通勤の音楽の音楽として、プロコフィエフの交響曲第2番を聴いております。若いプロコフィエフがハイドンをモデルにしたという1917年(26歳)の「古典」交響曲に続き、1924年(33歳)に作曲した、第2番目の交響曲。しかし、こんどは古典的なソナタ形式を踏まえた4楽章のスタイルではなく、2楽章のみ。Wikipediaによれば、フランス六人組に対抗して、「鉄と鋼でできた交響曲」を書こうとしたのだとか。あくまでも奔放な問題児プロコフィエフの面目躍如といったところでしょうか。

演奏は、小沢征爾指揮ベルリンフィルによるもので、ポリドールの紙箱全集からの一枚。CD-R用の薄型ケースに入れて車に持ち込み、週末には自宅のステレオ装置で、音量を上げて楽しむ(娘に苦情を言われることもある)生活です(^o^)/

第1楽章 - Allegro ben articolato 今聴いても、相当に強烈なコワモテの音楽ですが、当時はもっと攻撃的に受け止められたことでしょう。ロシア・アヴァンギャルドの殴りこみ、別名「なめんなよ交響曲」かも。ただし、単なる前衛的な不協和音の連続ではなく、ピアノを生かしたリズミカルな響きは、あくまでもプロコフィエフらしい、見通しの良いものです。何度も聴いて耳に馴染むと、これはまたこれで、前期プロコフィエフらしい痛快な魅力があります。ben articolato は、「意美音(*)」でも出てこなくて、残念ながら意味がわかりませんでした。
第2楽章 - 主題と変奏。数字は、目安となる、本CDでの経過時間です。
- 主題 - アンダンテ。木管にあらわれるのが主題でしょうか。
- 第1変奏 - リステッソ・テンポ(同じ速さで)。神秘的なバレエの一場面のようなゆったりした音楽です。(1'59"~)
- 第2変奏 - アレグロ・ノン・トロッポ。速度を速め、一部に裏拍のような面白いリズムが登場します。(4'45"~)
- 第3変奏 - アレグロ。活発な動きを持つ音楽です。(7'19"~)
- 第4変奏 - ラルゲット。再びゆったりした楽章。プロコフィエフらしい透明な響きが魅力的です。バックでピアノが静かにリズムを刻みます。(9'25"~)
- 第5変奏 - アレグロ・コン・ブリオ。再びピアノが鳴り出し、不協和音が噴出する、「てめえら、なめんなよ」風の野蛮な雰囲気の音楽です。(15'14"~)
- 第6変奏 - アレグロ・モデラート。低弦ごりごりで始まります。やっぱり「なめんなよ」風で、なかなかの迫力です。(17'51"~)
- 主題 - アンダンテ・モルト, ドッピオ・モヴィメント(2倍の速さで)。木管に主題が回帰し、プロコフィエフらしい硬質の叙情が存分に歌われます。好きだなあ、こういう音楽(^o^)。 (22'29"~)
主題と六つの変奏、そして再び主題という、拡大されたソナタ形式とでも言えばよいのか、静かでチャーミングなところもあれば、ハードな面もあり、多彩な変化を存分に聴かせる楽章です。どちらかといえば、天性のメロディ・メーカーであるプロコフィエフらしさ、彼の持つ叙情的な側面があらわれているのは、こちらの楽章のほうでしょう。

楽器編成は、ピッコロ、フルート 2、オーボエ 2、イングリッシュホルン、クラリネット 2、バスクラリネット、ファゴット 2、コントラファゴット、ホルン 4、トランペット 3、トロンボーン 3、チューバ、ティンパニ、トライアングル、カスタネット、タンブリン、小太鼓、シンバル、大太鼓、ピアノ、弦五部、となっているそうですが、ピアノが含まれているのが珍しいところです。

■小澤征爾指揮ベルリンフィル
I=12'10" II=24'49" total=36'59"

(*):音楽辞書なら意美音-imion-
こちらは最近になって知ったサイトですが、当方のような素人音楽愛好家には、たいへん便利なところです。

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4 コメント

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Unknown (よんちゃん)
2009-03-07 09:40:19
こんにちは。

小澤征爾/ベルリンフィルによる全集盤を持っています。
2番を聞いた時の衝撃は凄かったです。1番との落差があまりにも大きかったので、音楽についていくことができませんでした。
何回も聞きなおし慣れてはきましたが、僕にとって1楽章は荒ぶる神がたけり狂うというイメージがあります。
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よんちゃん さん、 (narkejp)
2009-03-07 11:57:33
コメントありがとうございます。小沢盤、なかなかいいですね。この第2番は、第1番との落差が大きいようですが、もともとプロコフィエフは音楽院の問題児で、師のリャードフらを嘲笑するなどだいぶてこずらせたらしいです。その意味では、生きのいい前衛性は彼の本質で、それがロシアの叙情的な旋律と結びついているところに、魅力があるように思います。フランスの六人組が、古典交響曲の作曲者を誤解し、時代遅れの古典主義者と間違えたのかも(^o^)/
それで、「なめんなよ」と啖呵をきったのがこの曲、という理解ではどうでしょうか(^o^)/
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articulation (balaine)
2009-03-08 03:27:11
"ben articolato"は、「十分に明瞭な発音で」というような意味だと思います。
音楽の世界で"articulation"とは、「個々の音節、音符を明瞭にはっきりさせること」というような意味合いで使われます。「もうちょっとこのフレーズの中でアーティキュレーションを明瞭に演奏した方がいいんじゃない?」というような感じでしょうか。
1個の音符を切れ切れにはっきりさせるというよりは、全体の中で1音1音を明瞭にさせてフレーズを考えるというような、流れの中のそれぞれの音の明瞭さを十分に出しなさい、というようなプロコフィエフの意図を指示するための言葉だと推測致します。

プロコフィエフの音楽を考える際に、作曲年はとても意味があります。ロシア革命前後の海外「逃亡」時なのか、ロシアに戻って来て社会主義体制の中で肩肘張って作曲したのか、個人的に楽しく創ったのか、体制や共産党を意識しながら創ったのか、、、で音楽が全然違います。根底を流れるメロディや和音には共通するものが見られますが、作曲した時のプロコフィエフの心の葛藤や悩みが音楽に出ているようです。
「なめんなよ!」(笑)。確かにそういう心も持っていたかもしれませんね。
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balaine さん、 (narkejp)
2009-03-08 07:16:40
コメントありがとうございます。なるほど、ben articolato は、articulation をはっきり、という指示ですか。それならよく理解できます。アメリカで芽が出ず、ヨーロッパに軸足を移していた時期で、結婚して子供も生まれている頃でしょうか。前衛音楽を書いていた左派作曲家には、大戦間期の生活は、たぶん不満足なものだったのでしょうね。それで、かちんときて、「なめんなよ」と(^o^)/
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