電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

抜歯手術後に処方された抗菌薬サワシリンについて

2024年07月01日 06時00分02秒 | 健康
たびたび化膿して悩みの種になっていた親知らず(埋伏智歯)と炎症が広がり抜歯することになった第二大臼歯の手術が終わり、翌日から抗菌薬として「サワシリン錠(250mg)」を1日3回、毎食後、4日間処方されました。術後はおとなしくしているしかない生活でしたので、Wikipedia や手持ちの『生化学辞典(第3版)』を引っ張り出し、例によっていろいろと調べてみました。

  • なぜ「親知らず」と呼ばれるのか。これは、一番奥の第三大臼歯は一番後から、20歳前後になって生えてくるため、親も気づかないことから俗に「親知らず」と呼ばれるのだそうで、「智歯=第三大臼歯」が正式名だそうです。現代では下顎の発達が変わってきており、埋伏したままのことが多いので、20歳前後で炎症を起こすことが多いため、抜歯することが多いとのこと。私の場合は古希を過ぎてからの抜歯手術で、あまりないケースだそうな。
  • いわゆる歯周病は、バイオフィルムというぬめりを作って外部からの攻撃に対し防御するタイプの細菌による感染症である(*1)。嫌気性細菌、グラム陰性細菌などが中心。
  • これらの細菌類は細胞分裂によって増殖するが、その際、ペプチドグリカンを成分とする細胞壁を作って増えていく。
  • アオカビから作られたペニシリンは、細菌がこのペプチドグリカンを架橋して細胞壁を生合成するのを阻害し、細胞分裂を止めてしまい、細菌が浸透圧に耐えられずに破裂してしまうために、抗生物質として作用する。真菌類であるアオカビも細胞壁を持つが、成分が多糖類であるキチン質なので、ペニシリンで阻害されない。


      ( Wikipedia より、amoxicillin の分子構造モデル )
  • サワシリンは、ペニシリンと共通のβ-ラクタム環を持つ抗生物質アモキシシリン(amoxicillin)の商品名である。ペニシリンやアモキシシリンなどβ-ラクタム系の抗生物質は、細菌類の細胞壁生合成を阻害し、特にグラム陽性細菌には顕著な効果を示す。

  • これに対し、グラム陰性細菌は、β-ラクタム環を加水分解してしまうβ-ラクタマーゼという酵素を作る遺伝子を持っており、ペニシリン系抗生物質に対して抵抗性を示す。これが抗生物質成分を分泌するアオカビ等の真菌類に対して、絶滅を免れるための細菌類としての抵抗力なのだろう。



ふーむ、なるほど。昔、テレビで「JIN〜仁〜」というドラマが放送されていた頃、ペニシリンが結核や水虫には効かない(*2)ことを不思議に思っていましたが、抗菌スペクトルの背景にはこうした生化学的な理由があったのですね。納得です。と同時に、ペニシリン系の抗生物質が歯周病菌の全部に対して特効薬にはならない理由もよくわかりますし、1回250mg という多めの投与が行われる理由も、歯周病治療の難しさも痛感しました。要するに、できるだけバイオフィルムを作らせないこと、歯みがきや歯科医院での定期的なメインテナンスが重要だということがよくわかりました。

(*1): 歯周病はバイオフィルム感染症〜日吉歯科診療所 より
(*2): 「JIN〜仁〜レジェンド」を見る:その2〜「電網郊外散歩道」2010年12月


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