電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ベートーヴェン・ハウス編『「第九」と日本・出会いの歴史』を読む

2024年10月13日 06時00分30秒 | -ノンフィクション
彩流社刊の単行本で、ボンのベートーヴェン・ハウス編、ニコレ・ケンプケン著『「第九」と日本・出会いの歴史』を読みました。当地の図書館で借りてきた本ですが、こういう本が出ていたことを初めて知りました。本書はだいぶ前に観た映画「バルトの楽園」(*1)に描かれた坂東俘虜収容所等における演奏会や様々な文化活動の記録で、「第九」だけではない、実際に開催された様々な演奏会等の記録が見事な色刷りの謄写版印刷によるプログラム等の形で残されていたものを再現したものです。実際にボンのベートーヴェン・ハウスで展示され、WEB の形でも記録されたものを全編カラー写真で本にしたものが本書で、32ヶ月の収容所生活の中で100回を超えるコンサート、室内楽の夕べ、リサイタルが開催されていることがわかるそうです。



例えば1916年12月10日の第1回シンフォニーコンサートの曲目は;

第1部
 シューベルト 「ロザムンデ」序曲
 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第2番
第2部
 ハイドン 交響曲変ホ長調「太鼓連打」 
 グリーグ 「ペール・ギュント」第1組曲

となっています。指揮はパウル・エンゲル、ピアノはクラーゼン、私も聴いてみたくなる立派なプログラムです。



1918年4月28日と29日、坂東で行われた演奏会の曲目は;

  1. ハイドン 交響曲ト長調
  2. ベートーヴェン 交響曲第5番
       指揮:パウル・エンゲル

となっています。ハイドンの交響曲はト長調というだけでは特定できませんが、たぶん「驚愕」か「軍隊」あたりではないかと想像します。

また、指揮者パウル・エンゲルがドイツの製鉄大手クルップ社の日本代表であったラントグラーフにあてた求職斡旋依頼の手紙などもあり、リアリティを増しています。色刷りの精緻な印刷技術にも驚かされます。当時のドイツ人捕虜が、第1次大戦直後の日本人に与えた影響は大きなものがあったのだろうと想像してしまいます。これらの印刷に携わった当事者が、すべての記録を携えたまま帰国し、その子孫が遺品を発見して驚き、ベートーヴェン・ハウスに連絡して驚かれ、というような流れが自然に想像できでしまう、実にすごい記録です。

(*1): 映画「バルトの楽園」を見る〜「電網郊外散歩道」2006年8月



YouTube でシューベルトの「ロザムンデ」序曲を見つけました。1967年にリリースされた「グレイテストヒッツ:シューベルト」に収められたもので、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による演奏です。このCDは私のセル関連コレクションにはないのでちょっと嬉しい(^o^)/
Rosamunde Overture



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