電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」を聴く

2013年11月03日 17時06分50秒 | -オーケストラ
通勤の車の中でふと耳にした NHK-FM で、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」が流れていました。そういえば、この曲をずいぶん耳にしていないなあと思い出し、翌朝からポール・パレーのCDを車に持ち込み、さらに夜にネット上でパブリック・ドメインとなった録音を探しました。すると、あるある。ステレオ録音に限定しても、アンセルメ、ストコフスキーなど、1950年代末のものがけっこうある(*)ようです。

冒頭の、低めの音域を主体にしたフルートの旋律が印象的で、オーケストラとハープが眠たげに響きます。やがて、魅惑的な響きが妖精や水の精たちを追いかける牧神を表すのか、それも飽きた牧神が再び眠りに就く、といった音楽。
交響曲のようなかっちりした構成感とも、ワーグナーの楽劇における付随音楽のような劇的な迫力とも無縁な、とりとめもない響きの印象を積み上げることで描いた音楽。
あるいはまた、「さあ○○の曲を聴くぞ!」というような決意は不要で、むしろ「気分直しにドビュッシーでも聴いてみようかな~」というような気分にマッチする音楽です。



ストコフスキーの録音は、ゆったりしたテンポで奏でられる響きの移ろいに身をまかせながら、消えゆく音の余韻にひたるようなタイプの演奏です。独特の雰囲気を持った演奏で、これはゆったりしたテンポが好きな人にはとても好かれそうです。
アンセルメの録音は英デッカによるもので、比較的速めのテンポで演奏される曲の全体の響きを聞かせるだけでなく、聞かせどころのパートを積極的にクローズアップするタイプ。マルチマイクとミキシング技術の精髄と言ってよいかと思います。
ポール・パレー指揮デトロイト交響楽団による演奏は、さらに速いテンポで、どちらかといえば率直でストレート、かつ清新な印象です。でも、若い頃にはローマ大賞を受賞した作曲家でもあったパレーらしく、ドビュッシーの音楽の雰囲気がしっかりと表現されています。これだけは Philips Super Best 100 という廉価シリーズのCDで、UCCP-7077 という型番のもの。マーキュリーによるワンポイント録音で収録されており、当時の録音技術の制約はあるものの、たいへん鮮明で自然な録音です。実は私はこのCDがお気に入りで、別の曲目でも何度か記事(*2~4)にしております。

演奏時間は、特にストコフスキーのものが、驚くほどの違いがあります。もしかすると部分的なカットの有無等の問題があるのか、そこらへんは調べていませんが、テンポに大きな違いがあるのは確かです。

参考までに、演奏データを示します。( )内は、録音年です。
■ストコフスキー指揮ヒズ・シンフォニー・オーケストラ(1957)
I=11:20
■アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団(1957)
I=8'56"
■ポール・パレー指揮デトロイト交響楽団(1955)
I=8'20"

(*):クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label など。
(*2):ドビュッシー「夜想曲」を聴く~「電網郊外散歩道」2007年6月
(*3):涼しい風が入ってくる~ポール・パレーのドビュッシーを聴く~「電網郊外散歩道」2006年8月
(*4):ポール・パレーのサン=サーンス「交響曲第3番」を聴く~「電網郊外散歩道」2005年8月

コメント