電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

三浦しをん『神去なあなあ日常』を読む

2013年02月02日 06時03分21秒 | 読書
おもしろいという話は聞いておりましたし、書店で人気があるのも承知しておりました。たまたま図書館で単行本を見つけましたので、手に取りました。なるほど、さすがに人気が高いだけあり、おもしろかった。三浦しをん著『神去なあなあ日常』。著者の作品を読むのは『舟を編む』以来で、これで二作目です。

第1章 ヨキという名の男
第2章 神去の神様
第3章 夏は情熱
第4章 燃える山
第5章 神去なあなあ日常

神去村(かむさりむら)とは、三重県中西部、奈良県との県境近くにあると想定された架空の村だそうです。作者の祖父の出身地である、三重県中勢区域を流れる雲出川の上流、旧美杉村がモデルだとのこと。
さらに登場人物が愉快です。
主人公は、平野勇気。横浜育ちで、高校卒業後はフリーター希望でしたが、親の都合と担任の陰謀により、林業に就業することを前提に国が助成金を出している「緑の雇用」制度に勝手に応募され、神去村で働くことになります。
ヨキ:いくら圏外とはいえ、初対面の若者の携帯の電池パックをいきなり捨ててしまうような、野性的でお調子者のパワフル林業マン。本名は飯田与喜。
中村清一:中村林業株式会社の社長であり、山太の父親で祐子の夫。眼光鋭く、進んだ経営感覚と伝統とを調和させている、有能な現場タイプ経営者。
直紀さん:祐子さんの妹。バイク乗りでスピード狂の小学校教師。姉の夫の清一さんを慕っているようですが、年下も嫌いではなさそう(^o^)/
飯田みき:ヨキの妻。強烈に激しくヨキを愛しています。この激しさを受けとめられるのは、たぶんパワフル林業マンだがスーパー適当男のヨキしかいないでしょう(^o^)/

登場人物が、とにかく絶妙におもしろい。村の中にはよくいるタイプの人も登場します。こういう人物造型は、たぶん作家の想像力だけでは無理で、おそらく取材で出会った人たちをデフォルメしたものだろうと思います。
そして、なんといっても迫力満点なのが、伐倒した杉の巨木を村まで一気に落とす場面です。どこが「なあなあ日常」なんじゃ!(^o^)/
ただでさえ豪快な情景なのに、それに乗っていくという設定なのですから、ジェットコースターの比ではありません。摩擦で相当ブレーキはかかっているとはいうものの、かなりのスピードになるはずです。滑走中に幹が回転しないのか、もし少しでも回転したら、乗っている人たちは振り落とされてしまわないのかと心配になります。このあたり、作家の想像力の産物なのか、現実にあることなのか。林業の現場にはとんとうとい者からは、まるで見当もつきません。いちど、林業関係者にきいてみたいものです。

おもしろい。著者の『舟を編む』は、辞書編纂という仕事に着眼した点が成功のポイントだったと思いますが、これは言わば「青春林業小説」というジャンルを開拓したようなもので、いくらでも続編が可能でしょう。と思ったら、本書は文庫化されていて、単行本ではすでに続編が出ているのだそうな。いやはや、いつのまにか時世は進んでいるのですね~(^o^;)>poripori

コメント (2)