電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番「春」を聴く~その2

2011年02月22日 06時02分25秒 | -室内楽
最近の通勤の音楽は、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番「春」を選んでおります。この曲については、以前にも一度記事にしており(*)、このときはフランチェスカッティ盤や西崎崇子盤を取り上げておりましたが、今回は、ヨセフ・スーク(Vn)とヤン・パネンカ(Pf)による DENON 全集盤(COCO-83953~56) と、ジョナサン・カーネイ(Vn)とロナン・オーラ(Pf)のコンビによる、ロイヤルフィルハーモニック・コレクション中の一枚(FRP-1023)からです。

スークとパネンカの演奏は、ゆったりしたテンポの落ち着いたもので、フランチェスカッティとカサドシュとの小気味いい演奏とはだいぶ印象が違います。むしろ、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタというジャンルにおける意欲的な作品として取り組み、くっきりと描き出している、という印象を受けます。その分、この曲が持っている、「春」という愛称に象徴されるようなはずむような軽快感よりも、音楽の立派さ、構成感のような美質が、しっかりと現れているようです。とくに、パネンカのピアノは、ニュアンスに富む美しい音で、聴きごたえがあります。

もう一枚の、ロイヤルフィルの廉価盤も楽しいものです。Wikipedia によれば、ジョナサン・カーネイという演奏家は、1963年生まれのアメリカのヴァイオリニスト、指揮者で、アシュケナージの推挙によりロイヤルフィルハーモニー管のコンサートマスターとして活躍した、とあります。2002年からは米国ボルチモア響のコンサートマスターに就任しているとのこと。1687年のストラディヴァリウスを有し、現代音楽を得意とし、指揮者としては、1996年にナイマンのピアノ協奏曲を録音しているそうな。いっぽう、ロナン・オーラは1964年生まれの英国のピアニストで、欧米圏を中心に活動する一方で、EMI 等に録音を行い、現在は英国の音大・音楽学校の教授として活躍中だそうです。いずれも40代の演奏家です。私は初めて聴きますが、ゆったりめのテンポでじっくり取り組みながら楽しい音楽を聴かせてくれる、なかなか魅力的な演奏です。

この季節は、晴天にさえ恵まれれば、どんどん雪融けが進みます。融けた水が流れ、土を潤します。球根は目覚め、おそるおそる芽を出し始めます。若いベートーヴェンの作品24は、本来は第4番イ短調作品23と2曲セットで発表される予定だったとのことですが、どういう事情か単独で発表されたものらしい。通称「スプリング・ソナタ」は、聴く者に幸福感を感じさせてくれる、お気に入りの音楽です。

■スーク(Vn)、パネンカ(Pf)盤
I=10'55" II=6'35" III=1'10" IV=6'55" total=25'35"
■カーネイ(Vn)、オーラ(Pf)盤
I=9'55" II=6'22" III=1'13" IV=6'38" total=24'08"

参考までに、前回取り上げた演奏は、次のとおりでした。

■ジノ・フランチェスカッティ(Vn)、ロベール・カザドシュ(Pf)盤
I=7'00 II=4'50 III+IV=7'28" total=19'18"
■西崎崇子(Vn)、イェネ・ヤンドー(Pf)盤
I=9'35" II=5'43" III=1'08" IV=6'33" total=22'59"

(*):ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」を聴く~「電網郊外散歩道」2007年3月
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