電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

『古代への情熱~シュリーマン自伝』を読む

2010年11月15日 06時02分19秒 | -ノンフィクション
読書の秋のせいか、近ごろ古典づいています。『宝島』『二十四の瞳』等に続き、角川文庫で『古代への情熱~シュリーマン自伝』を読みました。

若い時代のシュリーマンの不遇は、たいへんなものです。家庭的な境遇も良いとは言えず、本人の運も悪い。でも、窮すれば通ずで、書物の丸暗記という破天荒な語学修得法で、商売の道を駆け上がります。まあ、簡単に言えばクリミア戦争の際の武器密輸で大儲けをした、ということでしょうか。しかし、シュリーマンと死の商人との違いは、子どもの頃に読んだギリシア神話の、トロイア戦争の記述が歴史的事実だと信じていたことでした。財をなしたシュリーマンは、若い夫人とともに、信じた場所の発掘を開始します。そしてそれが、歴史的大発見の幕開けとなったのでした。

ご存知シュリーマンの『古代への情熱』です。中学生のときに一度読んで以来、半世紀近く過ぎてからの再読は、しみじみと時の流れを感じます。古代の遺跡は廃墟であるが故に不変ですが、私たちの生活はどんどん変わっていくのですね。個人にとって、永遠不変なものが望ましいとは限らない。日々の生活の中で移ろいゆく時の流れこそが、個人にとっては価値あるものだと思うようになりました。少年時代には、そんなことは思いもしなかったのでしたが。

秋の日に、少年時代の読書を再度ふりかえる味わいは、なかなか良いものです。
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