電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ラヴェル「ダフニスとクロエ」を聞く

2006年08月10日 07時36分10秒 | -オーケストラ
ここしばらく、通勤の音楽にラヴェルの「ダフニスとクロエ」を聞いておりました。この曲は、第一次世界大戦の前夜に完成・初演されたもののようで、指揮者ジョージ・セルは高校生くらいの年齢だった時期です。すでにピアニストとして活動しており、リヒャルト・シュトラウスのアシスタントとして宮廷歌劇場の仕事をしていたといいます。才能を愛するシュトラウスが職を探してくれていたそうですが、戦争の危機を感じたオットー・クレンペラーの推薦により、彼の後任として当時ドイツ領だったアルザス地方の音楽の中心、シュトラスブルグ歌劇場の若い音楽監督として赴任する前の時期(*)です。要するに、音楽には野心的だが世間知らずの若造に危険なポストを譲って逃げ出した、ということか。独仏の狭間で揺れる歌劇場のポストから1年で去り、プラハのドイツ歌劇場の副指揮者・コーチから再スタートします。若年とはいえ、1年間のトップ生活からアシスタント生活への逆戻り。満たされなかった野心と自負が、指揮者ジョージ・セルの辛らつさの根底にあるような気がします。

----第2組曲----
(1) 日の出
(2) 年老いた羊飼いラモンが、パンの神がクロエを救った理由を説明する~ダフニスとクロエはパンとシランクスの愛を無言劇で演じる
(3) 全員の踊り。ダフニスはニンフたちの祭壇の前で、2頭の雌羊を捧げて信心を誓う~酒神バッカスの扮装をした若い娘たちが登場~ダフニスとクロエは優しく抱き合う~楽しい騒ぎ、全員の踊り。
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ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏は、速いテンポでくっきりと描き出すもの。特に「全員の踊り」のあたりの、たたきつけるようなリズムの推進力は迫力があり、オーケストラの爆発するような活力を感じます。ラヴェルの音楽の持つ激しい側面を見るような思いです。

もう一枚、サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団の演奏は、バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲版です。この中で、第3部《パンの神とニンフの祭壇の前》が第2組曲に相当します。ただし、こちらは女声合唱が入り、華やかです。テンポもゆったりしていて、いかにも劇場の中にいるような祝祭的な雰囲気です。

■ジョージ・セル指揮クリーヴランド管 (CBS-SONY FDCA-507)
total=15'00"
■サイモン・ラトル指揮バーミンガム市響 (東芝EMI TOCE-4026)
I=5'25" II=6'51" III=4'43" total=16'59"

(*): TON さんの George Szell Chronology より ~ 若き日のセル(1)
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