電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮部みゆき『かまいたち』を読む

2006年08月22日 21時56分49秒 | 読書
宮部みゆきの比較的初期の作品が集められた、新潮文庫版『かまいたち』を読みました。これは、彼女の『霊験お初シリーズ』などの時代小説の原型に近い作品なのでしょうか、以前親しんだ世界に近い設定、登場人物からなっている作品が含まれています。

第1話、表題作「かまいたち」は、江戸を震撼させた連続殺人の真犯人がわからないまま、事件を目撃したおように恐怖が忍び寄るという推理小説ふうの仕立てです。こういう設定は、実にうまいです。
第2話「師走の客」、骨董趣味の失敗はよくある話ですが、犬と蛇がからむ一幕は、平岩弓枝さんのシリーズにありそうな落ちですね。
第3話「迷い鳩」、お初には女の着物の袖に付いた血が見える。だが周囲の者には見えない。これは一種の幻覚ですが、それを霊験(超能力)と設定したところに、このお話の始まりがあります。柏屋にからむ女中の失踪、鳩を飼っていた男の水死、主人の
原因不明の衰弱、そしてろうそく。最後に、江戸町奉行・根岸肥前守が身分を明かします。偶然にも、平岩弓枝さんの『はやぶさ新八』氏が仕える主人ですね。
第4話「騒ぐ刀」、脇差がうめき声をあげるという。そんな馬鹿な、と思うけれど、本編では妙に説得力があります。お初を助けて戦う小太郎という犬も、各地に伝わる「妖怪と戦い倒れる犬」伝説(*)をふまえた設定なのでしょうか。たとえば信州信濃の光前寺、早太郎伝説などです。

(*):山形県にも、鶴岡市大山の椙尾神社のメッケ犬伝説などが伝わっています~犬たちの伝説
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