電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

フリードマン『フラット化する世界』(上巻)を読む

2006年07月16日 09時19分05秒 | -ノンフィクション
出張の空き時間を利用して、トーマス・フリードマン著『フラット化する世界』の上巻を読みました。経済の大転換と人間の未来、という副題が付されています。新聞の書評等でも取り上げられているようで、ベストセラーの一角に食い込むかもしれません。たしかに興味深い内容です。

情報通信技術が進歩して、単に便利になっただけではない経済や社会のしくみの変化が起こっているらしい、とは多くの人が感じていることでしょう。本書の上巻では、世界中のあちこちで起こっている実際の変化を、「フラット化」という視点で跡づけています。

「フラット化」というのは、たとえばピラミッド型の組織構造を取っていた企業が、トップと一般社員の間の階層を減らして、学校のようななべぶた構造に近付けるようなことを意味しています。これに類した現象が、世界規模で起こっている、というわけです。たとえば、多くの企業で実施している電話による相談が、インドのコールセンターにアウトソーシングされている実態~インドで高い教育を受けた人々と米国の労働者の間に、経済的な差以上の知的能力の違いはない。そうであれば、光ファイバーによる電話通信網は、電話相談という業務に関して、高い教育を受け仕事を希望するインドの人々と米国の労働者とを、同じ条件に置いてしまう~まさにフラット化する、というのです。

第1部「世界はいかにフラット化したか」
-第1章「われわれが眠っているあいだに」
-第2章「世界をフラット化した10の力」
--(1)ベルリンの壁の崩壊と創造性の新時代
--(2)インターネットの普及と、接続の新時代
--(3)共同作業を可能にした新しいソフトウェア
--(4)アップローディング:コミュニティの力を利用する
--(5)アウトソーシング:Y2Kとインドの目覚め
--(6)オフショアリング:中国のWTO加盟
--(7)サプライチェーン:ウォルマートはなぜ強いのか
--(8)インソーシング:UPSの新しいビジネス
--(9)インフォーミング:知りたいことはグーグルに聞け
--(10)ステロイド:新テクノロジーがさらに加速する
-第3章「三重の収束」
-第4章「大規模な整理」
第2部「アメリカとフラット化する世界」
-第5章「アメリカと自由貿易~リカードはいまも正しいか?」

世界中で進行する現象を、それが良いことか悪いことか従来の視点で判断する前に、まず「フラット化」という視点でニュートラルにとらえてみよう、ということかと思います。その意味では、たいへん成功していると思います。ただし、もちろんのことながら、主張に賛同するかどうかはまた別の問題ですが。

『銃・病原菌・鉄』以来の、ひさびさに骨のある本。下巻が楽しみです。
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