イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「白いページ」読了

2009年09月12日 | Weblog
開高健 「白いページ」読了
解説を入れると643ページと決して白くはないボリュームだ。
昔は3冊に分かれて売られていたのが今回は1冊で発売されていた。
最近、やたらと師の本が発売されると思いきや、今年は没後20年だそうだ。
そういえば、15年の時には京都伊勢丹で展覧会をやっていた。今年なら余裕で行けたのに、残念だ。

本の中身はタイトルが動詞で統一されているエッセイだ。潮という雑誌に5年ほどにわたって掲載されたものということだ。
全体を通して聞こえてくる師の声は、「本物を知りなさい。」というように感じる。
美術、食、酒、映画、戦争さえも本物を見ないことには真実はわからない。もちろん魚釣りも同じであると語っているように思う。
まるで今の日本に警告を発しているようだ。
何もかもお手軽に済ましてしまう国に未来は無いようだ。まず、経済がそうだ、ビールは発泡酒になり、コンビニでご飯を買い、戦争はゲームの中・・・。
高くても本物を買い、消費を喚起しないと経済が浮上しない。もっと根本の人間が人間である意味もそうだ、本物というものは人間が何世代もかかって継承して守ってきたものだ。それを途絶えさせるということは人間が人間である意味がなくなるということだと思う。継承がないと言うのは言葉を持たない動物と同じだ。

今日の電車の中の吊り広告に、「ユ○クロ栄えて国滅ぶ。」という見出しがあったが、みんなやっぱりわかっているのだ。民○党はこういうことを意識して政治をおこなわなければならないのだ。期待してるぞ。

収録されている中で珠玉はやっぱり「遂げる」というエッセイだろう。小笠原のもっと南へ魚を釣りに行く話で、この本以外にちょくちょく出てくる文章だが、何回読んでも一番の釣りエッセイだ。このブログを読んでくれている人も立ち読みでもいいから一度読んでほしいものだ。釣りを知らない人でもわくわくするぞ。

師はこのエッセイを39歳から44歳の間に書いたようだ。今の僕より年下だ。こんな人と自分を比べるのはおこがましい話だが、師の言葉を借りると、“たじたじ”となってしまうのだ。
なんと僕は小さい人間だろう・・・。
コメント
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