鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

はばたけ日本のオペラ

2006-02-19 | Weblog
 瀬戸内寂聴作のオペラ「愛怨」を国立オペラ劇場で観賞した。うかつなことに日本語でオペラを上演すこととは思わなかったので、正直感動した。これまでカルメンや蝶々夫人など数々の本場オペラを見ているが、いつも思うのは日本人がなぜドイツ語、もsくはイタリア語でオペラを演じるのか、なぜ日本語でやらないのか、と不満を感じていた。それだけに幕が開いて、ヒロインのソプラノ歌手が日本語で歌い出したのにびっくりした。、思わず左右の字幕を見ると、セリフが日本語で書かれてあったのにまた驚いた。
 「愛怨」は8世紀の奈良朝時代、宮廷の琵琶奏者、大野浄人は遣唐使として唐に赴き、光貴妃から名曲「愛怨」を伝授してくるよう命を受ける。その出発前に最愛の桜子と結婚し、子供をもうけるが、遣唐使船は難破し、南海に打ち揚げられものの2年間、行方知れず、となってしまう。難破の報を聞いた桜子は猿沢池に身を投げ、死んでしまう。そのことを知らない浄人は得意の賭け囲碁で食いつなぎ、たまたま阿倍仲麻呂の知遇を得て、玄照皇帝にお目見えする。そして、光貴妃から「愛怨」の曲を演奏してもらい、桜子の双子の妹、柳玲と出遭う。浄人を唐につなぎとめよう、と考えた玄照皇帝は囲碁大会を開催し、優勝者に柳玲を娶らせる、と宣言する。柳玲に愛を告白しては拒否され続けていた猛権は闘志を燃やし、なんとしても優勝しようとしてイカサマを企むが、浄人に見破られ、敗北する。そして、前夜に柳玲が浄人に名曲「愛怨」を密かに伝授していたことを告げる。「愛怨」は誰にも公開してはならない秘曲とされており、破れば死罪とされていたので、柳玲は薬を呑んで自殺を図る。
 で、死の床に就こう、という時に安禄山の乱が起き、宮廷は混乱に陥る。しかし、どんな混乱になろうとも浄人と柳玲の愛の事実は永遠に残る、と二人は合唱して、幕は降りる。主役を務めた二人は多分そんなに有名な歌手ではないが、熱演でまずまずの出来栄えであった。一幕の途中で中国の民衆が浄人の棹がへなへなとかいう下品な表現があったのが少し気になったが、全体として舞台装置や衣装、助演の連中も卒なく務め、見飽きることなく、観客の拍手を浴びていた。最後のカーテンコールには原作の瀬戸内寂聴さんも一緒になって手を振っていたのはよかった。
 休憩時間に瀬戸内寂聴さんが著作「美しいお経」を買い上げた人にサインするサービスを行っていたのも愛敬だった。
 で、全く知らなかったのだが作曲の三木稔氏は日本史オペラとして1975年以来、連作してきて、今回が8本目だ、という。いずれも日本語で上演してきた、というのだから不明を恥じ入るしかない。春琴抄や源氏物語、浄瑠璃など日本の古典に題材を採って活動を続けてきた。知らぬは鈍想愚感子だけだったのだろうか。こんないい試みはどしどし世界に向けて羽ばたいてもらいたいし、ぜひ、いままで見ていなかった人に再公開してもらいたいものだ。
コメント
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