とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

映画「劔岳 点の記」公開初日に鑑賞

2009-06-22 19:18:11 | 映画


事前に小説を読み、予習もばっちりして映画の公開を待っていた。そして、先週の土曜日に妻を誘って見に行ってきた。公開初日の一番最初の上映である。映画館はほぼ満員。中高年の山好きと思われる夫婦やグループで埋まっていた。

ストーリーについては、小説の感想でブログに載せたので割愛しておく。この映画は、名カメラマンとして名をはせる木村大作の初監督作だ。急峻な剱岳を舞台に、新田次郎の小説の完全映画化である。山を舞台にした映画といえども、危険な場所やシーンはあえて実写とはせず、CGや安全な場所を選んで撮るに違いない。そんな常識を覆し、この映画は全て実写で季節を追って、小説の場所と同じ場所での映像にこだわって撮影してきたという。常軌を逸した監督の狂気といわんばかりの情熱が、素晴らしい映像の山岳映画になったとも言える。

キャストは、
[測量隊]
柴崎芳太郎(参謀本部陸地測量部測量手) - 浅野忠信
宇治長次郎(山案内人) - 香川照之
生田信(測夫) - 松田龍平
山口久右衛門(人夫) - 蟹江一平
[日本山岳会]
小島烏水 - 仲村トオル
[陸地測量部]
大久保徳明(陸軍少将) - 笹野高史
矢口誠一郎(中佐) - 國村隼
玉井要人(大尉) - 小澤征悦
[その他]
柴崎葉津よ - 宮崎あおい 柴崎の妻。
宇治佐和 - 鈴木砂羽 長次郎の妻。
行者 - 夏八木勲
古田盛作 - 役所広司

等の豪華なキャストである

山岳測量シーンは、「これは撮影ではなく苦行である」「厳しい中にしか美しさはない」を基本方針としていたという。役者も大変な撮影であったに違いない。体感温度が氷点下40度にも達する立山連峰や剱岳で山小屋やテントに泊まりこみ、明治の測量官が登った山の当時の足跡を再現しながら、長期間をかけ丁寧に撮影を行ったという。そんな状況下で撮られた映像は本物だけが放つ輝きがある。足跡のない大雪原を、測量隊が一列で進んでいく様子。雲海を照らす夕日の神々しさ。吹雪の中をさまよう測量隊。実際に山に登った者しか見ることのできない景色をフルスクリーンで見られるなんて感激である。よくぞ、こんな映画を作ってくれたと感謝したくなった。

柴崎を演じた浅野信忠や、宇治長次郎の香川照之の淡々とした演技も光る。男たちの謙虚で清廉な態度。そして人への思いやりといった古き日本人の良さが溢れている映画でもある。明治の男たちは、こんな思いで新しい日本を作ってきたのだろうか。夏八木勲演じる行者を山から下ろすシーンは、実際に室道に初雪が降るのを待って撮影されたともいう。全て、本物にこだわって撮影されたシーンは役者も命がけであり、迫力がある。テレビではなく大きい映画館のスクリーンで本物の映像を見て欲しい映画だった。

話が終わり、出演者の名前がスクリーンにでてくると席を立つ人が多いが、この映画だけは違った。バックに写る映像も剱岳を季節ごとに撮られた美しい映像ばかりである。これを見ずして席を立つことはできない。ほとんどの人は画面が真っ暗になるまで立つことはなかった。ちなみに、劇中使用されたクラシック音楽は仙台フィルハーモニー管弦楽団による生音での演奏が使用されたそうである。