「あるヨギの自叙伝」(パラマハンサ・ヨガナンダ著)1983 p441
「復活された先生、魂を三界に束縛するカルマについてもっと教えてください」
私は、この全知の師の話にいつまでも聞き入っていることができたらどんなに幸せだろうと思った。私は先生の生存中、一度にこれほど多くの英知を吸収したことはなかった。私は今初めて、生と死の市松模様のような世界の、謎に包まれた空白の部分(注釈1)について、明確な認識を得ることが出来たのである。
(注釈1)死んで生まれ変わるまでの、一般にはよく知られていないプロセスのこと。
この世界の多くの人は、生まれて後、いつか自分が生きていることに気付くが、ただ偶然に生まれたと想い込み、やがて死を迎えて、また生まれてくるまでの間の事をほぼ憶えていない。
「地上から来た魂が長く幽界に住みつくことができるようになるためには、その前に、肉体的カルマや欲望をすべて果たし終えなければならない。(注釈2)」先生はわくわくするような美しい声(注釈3)で説明された。
「幽界には二種類の魂が住んでいる。まだ果たしきれぬ地上のカルマをもち、それを果たすために地上に再生する必要のある者は、肉体の死によって地上から幽界に来ても、一時的訪問者として、幽界の定住者とは区別される。
(注釈2)肉体五感に関わる強い性癖や、肉体の身の快楽や種の保存に関わる強い欲求のこと。 食生活や生殖等、肉体の維持機能に関することは何も悪くはないが、利己的にその欲望に翻弄されることは常に災いのもとであり、これを建設的に扱うことが求められる。確信犯やら、つい血迷って・・などの性癖も、果たし終えていない・・カルマということだろう。
(注釈3)高次の存在の声音は、低次の存在が聞けば、精妙で軽く、高い音域に聞こえるようである。周波数の低い(粗い)ノイズ音よりも、周波数の高い(精妙な)音域のほうが格段に美しく聞こえるのは、たとえばステレオでもデジタル機器でも同じことで、誰でも高い周波数域の美しい音色の方が良いに決まっているはずだ。ただ、この時の師とのやり取りは、音声の他に内面のテレパシー伝達も複合されているかもしれない。
地上のカルマをまだ果たしきっていない魂は、幽界の滞在期間が終わって幽体を脱ぐ時期が来ても、すぐに高い観念界にはいることは許されず、引き続き、十六の粗い要素で出来た肉体と十九の精妙な要素で出来た幽体に交互に身を包んで、地上界と幽界の間を往復しなければならない。
また、霊的にもっと未熟な魂の場合は、肉体の死によって幽界に移っても、その間のほとんどが死の眠りという深い昏睡状態に陥っているため(注釈4)、幽界の美しさすら意識しない。そして、幽界でしばらく休憩すると、再び物質界での経験を積むために地上に帰って行く。こうして何度か訪問の旅を繰り返しているうちに、彼はしだいに精妙な幽界に自分を順応させることが出来るようになるのだ。
(注釈4)魂には肉体、幽体、観念体のすべて(の波動帯)が既に備わっているが、肉体レベルの波動域だけの開発・習熟者のことを”未熟な魂”と表現していると考えられる。つまり「私は死んだら終わりの物質肉体人間にすぎない」と信じ込んでいる場合など。
未熟な魂は、さすがに地上界(地球のような世界)で生きることには相当に疲れるだろうし、死んでからようやく休息・一息入れることが出来るということだが、しかしながらこの世界で良く言うところの永眠なんかではない。
例えるならば、小学生がいきなり中学の教室に入れられても、何が何だかで・・勉強机の上の腕枕で?気持ち良く眠ってばかりいるようなものだ。その小学生は、また彼にとってふさわしい教室でようやく目を覚ます(生まれ変わる)という事だ。そうやって確実に進歩する。
一方、幽界の定住者は、すべての物質的欲望から完全に開放されているので、もはや粗雑な波動で出来た地上の世界に帰る必要はない。彼らに残っているのは、幽体のカルマと、観念体のカルマだけだ。彼らは幽体を脱ぐと、より霊妙で限りなく精緻な観念界に昇ってゆく。そこで、宇宙法則によって定められたある一定の期間を過ごすと、今度は、幽界で果たしきれなかったカルマを完全に取り除くために、再び新しい幽体を身に着けて、ヒラニャローカまたはこれに似た同様の高い幽界の星に生まれ変わってくる(注釈4)のだ。
(注釈4)宇宙の無限にも及ぶ恒星や惑星は、無駄にあるわけもなく、それだけ無数の多次元的諸世界があるということだ。生まれ変わりは地球のみに限ることなく、星と星の転生も当然なのである。「天の住まいはたくさんある」・・というイエスの言葉も残されているように、天とは雲の上の夢のような幻想的な天国世界ではなく、具体的に云えば「宇宙の中にある無数の星の世界」ということだし、地球もそのうちの1つのカテゴリーに属する惑星世界である。
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