知人に案内されていった道南の川で、今年最後の釣り行。
気温は12℃。かなり冷えてきた天気と時折降るにわか雨に悩まされながらも、晩秋の美しい渓相にときおり見せる青空をバックにした紅葉の綺麗なことといったらありません。
この川にはサクラマスも頻繁に遡上しているとのことで、自然産卵によるヤマベ(=遺伝子的にはサクラマスと同じ)が豊かな川だそう。暖かくなった時が楽しみな川を紹介していただきました。
釣果はさておき、案内していただいたAさんとは、仕事やネットやプライベートでもう十数年来いろいろなおつきあいがあるのですが、お互いに「まさか一緒に釣りに行ける日が来るとはねえ」と不思議な縁を感じます。
もっとも、Aさんはもう二十年来のフライフィッシャーであり、要は私の方が遅れてきたマイブームのためにようやく話が合ったというだけのこと。
それでも同じフィールドで互いの腕を競い合い、智恵を交換しながらの会話と時間は、人生の印象深い思い出になる要素に満ちています。
年齢が上がってくると、思い出も質の高いものを求めましょう。そのためには釣りは格好のアクティビティと言えるでしょう。
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さて、釣りを通じていろいろな教訓を得ることができるのですが、Aさんとの会話にもハッとする人生の智恵が伺えました。
Aさんは「私はいろいろな会の雑用を引き受けることが多いんです」、と笑いますがそんな様々な会でも釣りをする先輩は多いよう。
「ところが、先輩の中でも上手くなってどんどん釣れるようになる人と、いつまでたっても釣れない先輩がいるんです。」
「釣りの腕というわけですか」
「はばかりながら私なんかもだんだん釣れるようになった方なんですが、釣れる人と釣れない人の差が分かってきたんです」
「へえ、私も釣れるようになりたいです(笑)」
「実はそのコツは、釣りに行った先の地元の人と会話して、魚や川の様子を聞くということなんです。他愛もない会話をしているうちに、釣りの話になると『今はこの手の魚は砂に潜っているから、タナを長く取って海底を這うようにすると釣れるよ』とか、『今はその魚はこんな餌を食べているからそれに似た疑似餌ならいいかも』なんて教えてくれるんですよ。
そして言われたようにやってみると、これがやっぱり釣れる(笑)つまり、地元の人たちと上手なコミュニケーションが取れさえすれば、情報がどんどん入ってきて上手くいく、ということがある反面、ある種の先輩にはプライドが高くて、『そんなの人に訊けるか』と頑張っちゃう人がいる…」
「…で、そういう人は釣れないと(笑)」
本やビデオやネットなど、情報源は様々に広がっているようですが、さらに多様で質の高い情報を得ようと思ったら、人と会話する、人に気に入られる、人とつきあう、という能力が効いてくるモノのようです。
若くてもそういうことに長けていれば、豊かな人生が歩めそうですね。
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もうひとつ、いろいろな趣味にも自分の中で気が狂ったようにのめり込む時期があるかと思うと、憑きものが取れたようにパタッとやらなくなってしまうことがあります。
私も学生時代は狂ったようにスキーをしていましたが、いまはもう時間を割くアクティビティとしては興味を失いかけています。
Aさんもかつては一生懸命に釣りに行ったと言いますが、「最近は年に2回くらいですよ」とのこと。
そうなると一体どんな心境の変化が、マイブームを燃え上がらせたり終演させたりするのでしょう。
「そうですねえ、フライを買うようになったらお終いかな(笑)」
「ははあ、まだ私は作るのも楽しいうちですね」
「でもね、だんだん無くさないようになるし、作ってもカディスだけだとか(笑)」
「あ、そうかも(笑)でもやっぱりカディスなら魚も出ますが他だとあまり出なくて(笑)」
「私も若い時は年に150日くらい山にいるくらい登山三昧だった時期があるんです。ところがそれがあるとき、パタッといかなくなってしまう。(もういいかな)と思っちゃうんですね。視力、体力、気力と歳を取るとある程度衰えてくるものですが、やはり釣りに行かなくなったとすれば気力がなくなるんじゃないでしょうか」
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私も今年は20回以上釣りに出ましたが、まだまだやるたびに面白さが増える一番楽しい時期だったようです。
これはどうやらあまりのめり込みすぎて一気に興味を失うようなことではなく、ある程度までいったらゆっくりスローに楽しみを持続させることを意識した方が良いかも知れません。
男女の間でも、「愛は小出しに末永く」と言いますね。
楽しさを内に秘めつつ、チャンスが来たら存分に楽しめるだけのスキルとフィールド感は養っておく。
人生を長く楽しむ秘訣は案そんなところにあるのかも知れません。
釣りもそこそこに、椅子を出して"ピーク1"でお湯を沸かし、落ち葉降る中でのコーヒー談義。
人生を彩る思い出の一日となりました。