先週の日曜日の日経新聞の「The NIKKEI STYLE」という特集で「土間のある家を楽しもう」という記事がありました。
紹介されていたのは、大阪でかつて工務店だった家を譲り受けたご夫婦が、一階部分を土間にした、という事例です。
この建物は一階が車庫と事務室だったものをリノベーションして床をコンクリートにした大きな空間の土間にしました。
引っ越しの時期がちょうどコロナの時期に重なって、人との接触が制限され好きな映画も見に行きにくくなったころです。
土間は靴を脱がずにそのまま家に入って来れる空間で、このお宅ではそこに椅子を置いて大きなスクリーンを下げて映画も上映できるようにして、今では地域のコミュニティの拠点になっているのだそうです。
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次の記事は、神奈川県藤沢市で農業を営むご夫婦の話題。
自分たちが作った農産物の販売と同時に食をテーマにしたワークショップを開いているこのご夫婦は、味噌作り教室や餅つきなど人が集まるイベントで玄関の靴がいっぱいになり「土間が欲しい」と思ったのだそう。
そこで今まで借りていた家を購入する段になったときに、思い切って玄関からキッチンまでつながる土間を作りました。
「野菜を洗って、その場で水を切っても大丈夫」と水が飛び散っても大丈夫な土間空間に大満足な様子。
そしてこの空間では外と内とが混じり合います。
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機能的に言うと、古い民家などでの土間には以下のような意味合いがあったと言われます。
1.調理や作業を行う生活の中心
2.内外の接点
3.湿度調整
4.汚れを気にしない作業場としての利用
現代住宅では頑丈な壁で仕切られる空間になることで、調理や作業を行う空間を閉じ込めていますし、湿度調整などはエアコンで気にしなくてもよくなりました。
また内外の接点なども玄関先で済ませるか外の空間を利用する暮らしになりつつあるように思えます。
しかし4の「汚れを気にしない作業場としての空間」だけは現代家屋からは切り離されているかもしれません。
以前何度も訪ねた掛川の故榛村純一市長さんの自宅は江戸時代に建てられた築150年の木造邸宅で、かつての村長の住まいの趣が残る古民家でした。
家に入るとそれはそれは広い土間があって左が高い床からの畳部屋、土間の奥には今はもう使われていない立派な「へっつい(かまど)」がありました。
榛村さんに会いに訪ねて行くと、冬の寒い時は畳の部屋にあげていただきましたが、夏などはしばしばそのまま土間にある椅子で話し込んでいたことも多くありました。
私の家にも六畳間の土間があります。
元々は蕎麦打ちを楽しむ空間としてコンクリートの床にして流し台とガス台をつけて、粉が飛び散っても家の中が汚れない趣味の空間として作りました。
その後、魚釣りをするようになってからは、ここが家の流し台ではとてもできないような魚を捌く格好の空間になりました。
さらにはキャンプやワカサギ釣りなどの汚れた道具を一時置いておくのにも恰好な場所でもあります。
屋内でもなく屋外でもないその中間的空間としての土間は六畳と狭くてもなかなかに便利です。
確か民俗学者宮本常一さんにも土間に言及した論文や記事があったはずですがどんなものだったかな。
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