駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

ホアキン・コルテス『LIVE』

2009年12月12日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 東京国際フォーラム、2003年11月29日マチネ。
 スペイン旅行に連れていってもらった友人に、またまた連れていっていただきました。

 ひとりで踊るにはでかすぎる会場なんじゃないかと思いましたが、ステージの左右に大きなスクリーンがすえられてあって、顔や足のアップが写されたりするのでした。まあ、まあまあいい席だったのでステージの方が十分見えましたけれどね。セクシーでワイルドなダンサーの花の顔を望む観客もいるでしょうから、これはこれでおもしろい装置でしょう。
 女性ダンサーのフラメンコに比べて男性ダンサーの踊りは当然直線的に感じましたが、とにかく力強くてかっこよかったです。スーツ着たりして踊ったりもしていたけれど、普通に裸かそれに近い衣装で踊っていた方がスッキリしていたし素敵だったかも。でもコートを脱いだりするところにもまた美学があるんでしょうね。
 暗いステージでダンサーにだけライトが当たっていたりするときは、飛び散る汗や身体から上がる湯気が目で見えて、それがまたインパクト大きかったです。
 この日が楽だったのかバック陣もノリノリで、アンコールはどうも予定外だったようでもあり…? 楽器担当や歌手がそれぞれ踊り出しちゃって、照明の人が慌ててる感じで、観客はノリノリになるし、楽しかったです。

 そういえば、旅行中の仕事を頼んでいった後輩にお土産としてフラメンコらしきCDを買って帰ったのですが、後に聞いたところ、中身は歌ではなくて手拍子・足拍子だけが入っていたんだそうな! それだけを鑑賞する文化が向こうにはあるんですねえ。さすがだわ。
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『兵士の物語』

2009年12月12日 | 観劇記/タイトルは行
 紀尾井ホール、2003年11月5日ソワレ。
 休暇をもらって、兵士(西村雅彦)は母親と婚約者(酒井はな)の待つ故郷へ向かう。小川のほとりでしばし休もうと愛用のヴァイオリンを奏ではじめると、人間のふりをした悪魔(西島千博)が現れ、一冊の本とヴァイオリンを交換してくれと持ち掛ける…作曲/イゴール・ストラヴィンスキー、脚本/ラミューズ、翻訳/岩切正一郎、演出/山田和也・豊田めぐみ、振付/石井潤・西島千博。指揮/西本智実、演奏/ロシア・ボリショイ交響楽団「ミレニウム・ヴィルトゥオーゾ」。

 もとはロシアの民話で、アファナシエフの『脱走兵と悪魔』というお話にストラヴィンスキーが曲をつけ、「読まれ、演じられ、踊られる物語」としたもの…なのでしょう。不思議な舞台でした。母校の学祭でも公演があったなんて知りませんでした。
 独特の不思議な音階とリズムの音楽はスリリングで、それを演奏する7人もときにモブになりコロスとなってお芝居に参加し、指揮者も役者となって物語に加わりつつ舞台全体を支配しているような、不思議な構成でした。全部台詞で進行するわけでもなくて、ときおり兵士が朗読する形になったりもします。逆に婚約者/王女のちのお妃役者はほとんどしゃべらず、ちょっとした身のこなしやバレエの躍りで存在を知らしめたりするという、これまた不思議な、まさに「音楽劇」でした。

 90分の一幕もので、非常に緊密な舞台だったとは思いますが、お話的には…すみません、
「で?」
 と思ってしまいました。もとが寓話だからそういうものなのかもしれないけれど…ネタバレですがぶっちゃけて言うと、このお話は
「もってるものに、もっていたものをつぎ足そうと思っちゃいけない。しあわせはひとつで充分。ふたつあれば、ないのも同然」
 ということなようなのですが…一介の兵士が翻弄されるその不条理さはおいておいて、人間とはそうしたものと感じるべきで、しみじみするべきなのでしょう…が、すみません、あっけなく感じてしまった。だから、「かわいそうね」とか「気をつけないとね」とかの、もう一押しがないとわりとダメなお子様の私には、大人っぽい作品であったというところでしょうか。

 でも、ともに初めて見るバレエダンサーなのですが、西島さんは登場したときから
「おお、蛇?」
 と思わせられる悪魔っぷり。酒井さんは本役?としては後半の王女/お妃なのでしょうが、婚約者の面影として一瞬だけ舞台に出てきたときの印象が本当に鮮烈で、兵士が開いた肖像画だか写真だかのイメージを見事に体現していて、感動しました。ただしこのふたりのパ・ド・ドゥは、この日が初日だったせいかやや息の合わないところもあり、ちがった意味でスリリングに感じましたが。
 西村さんは実はよくわからなかった…キャラクターというものがあるようなないような役だからなんだろうけれど。台詞が聞き取りづらく感じられたところが多かったのも残念でした。

 では何を目当てに観に行ったのかと言えば、指揮者の西本さんなんですけれどね。
 自分と同い歳で、ロシアのオーケストラの首席指揮者を務めちゃうような人で、凛々しくて素敵だと最近話題の人ですね。期待に違わず、うなじのところでひとつにまとめたサラサラのストレートヘアが素敵で、舞台衣装である紫のシルクのシャツと蜘蛛の巣のような柄の入った黒のフロックコートが素敵で、きびきびと振られるタクトが素敵で、後ろ姿が素敵で、指揮していないときにストゥールに腰掛けて佇む様子が素敵で…あらあらなんてミーハーなんでしょ。パンフレットの、メッシュの入ったやや短いヘアスタイルの写真もかっこようございました。ははは。
 仕事で気忙しい中の観劇だったのがやや悔やまれました。あ、初めて行く劇場で、きれいで楽しかったです。
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『フィリップ・キャンデロロ ファンタジー・オン・アイス』

2009年12月12日 | 観劇記/タイトルは行
 新横浜PHスケートセンター、2003年11月3日マチネ。
 2001年に『フィリップ・キャンデロロ ジャパンツアー』として始められた公演の三回目。プロアマ問わずハーモニーを重視し、アクロバットなどスケーティング以外のパフォーマンスも取り入れた「美と巧み」のアイスショー。

 フィギュアスケートは好きで、テレビで放映していたりするといそいそと見ているのですが、生フィギュアは初めて、しかもアイスショーというものを初めて見てみました。いや、いろんな意味でおもしろかったです…
 まず、スケートリンクってもっと大きくて、スケーターが豆粒くらいにしか見えないんじゃないかとなんとなく思っていたのですが、全然そんなことなくてよかったです。
 まあ席をスーパーアリーナと張り込んだこともあるのですが。
 アリーナ席を通常のリンク上に作って、リンクを一回り小さな長方形に仕立てていたのですね。なので、すぐ側でジャンプもスピンもコケるのも見られました。でも、あの半円状のカーブを削いでしまったことで、演技のスピードとダイナミックさは減っているんでしょうねえ…
 あと、選曲がベタなのには笑いました。これってスケーターによるディナーショーとかのノリに近いんでしょうか。
 オープニングにSMAP「世界で一つだけの花」でゆるゆるのダルタニアンですよ? 続く曲は確かKinki-Kidsでしたよ? フィリッパ・ジョルダーノの「ハバネラ」もあったし…なんてベタな…でもまあわかり易かったのはたしかです。

 ダルタニアンがゆるゆるだったように、往年のオリンピックメダリストたちもバリバリの現役だったのは10年前のことで、演技がショーアップしてアクロバティックと言えば聞こえはいいものの、スピードもないしキレもなくなっていることは事実でした。でも、明らかに手抜きで流している感じの人も、力は落ちていても楽しんで真剣にやっている感じの人もいました。
 さすがにおっさんになったけど真面目で誠実な感じだったビクトール・ペトレンコ(アルベールビルのゴールドメダリスト。しかしおっさん呼ばわりしといて実は私と同じ歳!!)。
 まだまだイケてる美青年「ふう」なアレクセイ・ウルマノフ(リレハンメルゴールドメダリスト)。
 手術から復帰したという、まだやや痛々しい感じだったスルヤ・ボナリー(91-95ヨーロッパチャンピオン)。
 まだジュニアなのでしょうが手足が長くて可愛くて元気一杯だった浅田真央。
 男性ふたりのペアによるアクロバット・スケートという不思議なコンビのウラジミール・ベセデイン&アレクセイ・ポーリシュク。
 そして我らがキヤンデロロと、コロスというか群舞というかの女性6人組「キャンデロレッツ」。「オースティン・パワーズ」に扮したのには、私は映画は未見でテーマ曲とポスターしか知りませんでしたが、そっくりでウケました。
 エンディングはみんなが少しずつ型違いの白いお衣装でそろえて、なかなか夢見心地でした。
 タイトでシピアなスケートを観るなら競技を観に行った方がいいのでしょうが、これはこれで楽しい経験でした。
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新国立劇場バレエ団『マノン』

2009年12月12日 | 観劇記/タイトルま行
 新国立劇場、2003年10月29日ソワレ。
 パリ近郊の宿屋の中庭。馬車が到着し、修道院へ入る予定の美しい娘マノン(この日はアレッサンドラ・フェリ)が老紳士とともに現れる。老紳士はマノンに気があるらしく、マノンの兄レスコー(ドミニク・ウォルシュ)は彼女の見受けの相談を持ち掛ける。外に残されたマノンは、その場にいた神学生デ・グリュー(ロバート・テューズリー)と一目で恋に落ち、老紳士から盗んだ金で駆け落ちする。だがその場にいた富豪のムッシューG.M.(ゲンナーディ・イリイン)もまた、マノンに関心を持ち…アベ・プレヴォによる18世紀の小説『マノン・レスコー』をもとに作られた1974年初演のバレエ。振付/サー・ケネス・マクミラン、音楽/ジュール・マスネ。全3幕。

 なんというか…すごく繊細で、美しいものを観た気分でした。
 原作の小説は、どうやらもう少し複雑で、退廃した社会とか官能美とかアモラルななんとかかんとかとかを含んでいたようなのですが、舞踊劇になった分シンプルになっているというか、キャラクターに深みや一貫性が一見してないようにすら見える、なんだかその場だけの喜びに輝いている感じが、はかなげで不安げで不器用そうで、もっと賢しらに生きればいいのに、でも愛って結局そういうものかしら、このふたりってばもう…という感じになってしまったのでした。特にデ・グリューのソロがたくさんあって、なんだかほろりとさせられたくらいでした。

 4つのパ・ド・ドゥが有名ですが、どれも素敵でした。出会いのシーン、パリの下宿で同棲生活を送っている最中の言葉にすると
「あなたが好き!」
 と言い合っているだけの感じのシーン、一度別れたあと
「仕方なかったんだもん…」
 みたいな感じのシーン、流刑地から出奔した沼地の道行きのシーン。ぶんぶん振り回しているふたつ目と、くたくた崩れていくよっつ目がことに印象的でした。
 あと、お兄さんがよかったです(この人とかデ・グリューとか、ファーストネームじゃないのはなぜなんだろう…)!
 酔っぱらいシーンもよかったし、実は全幕通して一番嫌らしくて芝居としておもしろかったんじゃないかという1幕2場の、デ・グリューの留守の間に妹と富豪とで踊る金と誘惑のパ・ド・トロワ! ひゃー、って感じでした。しかしこの富豪はこれで殺人罪に問われんのか…そして売春で捕まっても買春は罰されないのか……うーむ。

 マスネはオペラで『マノン』を作っているそうですが、このバレエで使われる40数曲はすべてマスネの他の作品の楽曲から持ってきて組み合わされているそうです。うっとりとロマンティックでドラマティックで、物語によく合っていたと思います。
 あと、セットやお衣装が素敵でした。特に、マノンのスカートというかチュールというかが、ガーゼとかジョーゼットのような素材なのか、しなしなと足に絡み付く感じで、色っぽくてはかなげでぎりぎりのだらしなさもあって、よかったと思います。
 この演目が国内のバレエ団で上演されるのはこれが初めてだそうで、図らずもその初日を観たわけですが、コール・ド…とは言わないかな、脇役さんたちがものすごくよかったことは特筆したいと思います。女優、娼婦、紳士、兵士たちみんな、きびきびしていてかつ徒っぽくて、よく揃っていてかつ個性的で。群舞はこの時代・社会の猥雑さをすごくよく表現していて、物語の世界に奥行きを与えていたと思います。
 しかしこのバレエ団は、というか劇場は内紛というかなんかガタガタしているんでしたっけ? なんか会場でもらったパンフレットだか機関誌だかにそんなようなコラムがあって…大変だなあ…
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