goo blog サービス終了のお知らせ 

駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

四月大歌舞伎『木挽町のあだ討ち』『黒手組曲輪達引』

2025年04月12日 | 観劇記/タイトルか行
 歌舞伎座、2025年4月9日11時(昼の部)。

 文化9年、春の夕刻。西国の某藩で勘定方を務める伊納清左衛門(市川高麗蔵)の屋敷では、妻の妙(中村芝のぶ)と嫡男の菊之助(市川染五郎)がなごやかに話をしている。菊之助は一月後に元服を控えた、前髪立ちの爽やかな若者である。そうした中、清左衛門は人払いをして下男の作兵衛(市川中車)と何か談合している様子。そこへ本家から、次郎衛門(市川猿三郎)が目付を伴い来訪したとの知らせがあり…
 原作/永井紗耶子、脚本・演出/齋藤雅文。2023年に単行本化され、直木賞、山本周五郎賞を受賞した小説を歌舞伎化。全2幕。

 著者は今から11年前に四国こんぴら歌舞伎大芝居を取材して、スタッフさんたちの奔走する姿を見て「いつか、この熱を書きたい」と願ったそうです。それが素晴らしい形で結実したんですね、胸アツです。
 私も受賞前に読みましたが、おもしろかったことは覚えているのですが細かい筋は忘れていました(笑。私の読書はいつもこんな感じなのです…)。原作は確か連作短編集の形で、芝居小屋の役者さんや裏方さんたちがそれぞれの章で主役になっていって、その通底に菊之助のあだ討ちの進捗があり、最後に真実が明かされて…という、ある種のミステリー仕立てだった気もします。歌舞伎では菊之助を主役に据えているので、一幕ラストに実際の事件の真相が知れる形になり、よりわかりやすく、ある種単純化、大衆化されたのかなとも思いますが、そういうわかりやすさ、親しみやすさって歌舞伎の醍醐味だもんな、とも思ったりしたのでした。
 新作歌舞伎としてよくできていたと思いますし、バックステージものとして演劇ファンなら嫌いな人なんていないだろうし、染五郎というぴったりの主演を得て、綺麗に仕上がったと思いました。今後もいい感じに座組を変えて再演されていくといいですね。新作歌舞伎ってけっこういくつも立ち上がるけれど、それが再演され続けてきちんと歌舞伎の財産になっていくか、古典にまでなっていけそうか…というのはまた別の話だな、とか、いくつか観てきて素人ながらに感じられるようになってきたので。
 もちろんまずは数打ちゃ当たるでいろいろたくさんやってみることが大事で、そこから取捨選択して育てていくことも大事、ということなのかな、と思います。宝塚歌劇もオリジナル作品が打てるうちが華であり、それだけの体力が組織にあることがまず大事なんですもんね。古典よりわかりやすく観やすいだろうから、というナンパな理由でついつい足を運びがちな私ですが、作品を育てていく一助になれるようなファンでいよう、とも思うのでした。
 そんなわけで今回は、フツーに満足しました。芝居はこれからさらに練れていくのでしょうし、もう少し手を入れられるものでもあると思いましたしね。そういう意味でも発展性があると思いました。でもとにかく染五郎と中車さんがよかったので(あとは壱太郎さん、猿弥さんとかも)、満足です。
 森田座の篠田金治役は幸四郎さん。ちょいちょい台詞に詰まり、二幕ではプロンプターの声がよく聞こえたのは残念でした。ここを親子でやる趣向はわからなくもないし、そういうメタ要素もあっても別にいいんだけれど、芸に響くんじゃ問題ですね。お疲れなのかもしれませんが、パパがんばって!と念じちゃいました。
 パパと言えば(笑)中車さんはさすがで、ご主人一家とお家大事に粉骨砕身低頭平身の忠義者のお役なのですが、若様相手の情熱あふれる芝居のくだりが、演技が熱くてペーソスどころかユーモア出ちゃってちょっとドリフ感すら出かけるくらいだったんですけれど、真相と心情が出る場面だったので、そこで観客のテンションがぐっと上がって集中度が増したんですよね。それまで、そんなに重い、濃い話じゃないなとさわさわしていた客席の空気が、一変したのです。これがもう本当に小気味よかったです。
 そしてそれらを全部受ける形の染五郎さんはもちろんずるいくらいに美しく凜々しく爽やかで、でも弱くて迷いもある真面目な優しい、青年になりかけの少年みたいなお役を瑞々しく演じていて、台詞も美しく、そりゃ周りみんなぐらりときちゃうでしょ!世話焼いちゃうでしょ!!って感じで素晴らしかったです。いなせなお姉さんぶるほたるの壱太郎、お兄さんぶる一八の猿弥さんの情愛がまた染みました。
 もうひとりの木戸芸者、五郎は虎之介さん。読売めいた客席登場もあって良きでした。やじゅさまも素敵、その妻の雀右衛門さんも素敵。あと菊之助ママの芝のぶさんもホント声が素敵で、うっとりしました。武家の奥方、かくあるべし…!
 幕切れも華やかで素晴らしく、また新春のころに再演されるといいのでは?など思ったりしました。

 後半の『黒手組~』は(ここで切るのが正しいのかも私はわからないのですが)作/河竹黙阿弥。歌舞伎の十八番『助六』のエッセンスが散りばめられているとのことですが、私には元ネタがわからないのでなんでこーいう展開になるの?とよくわからないところもありました。また、「時勢に応じた演出」というのもこの演目につきもの、ということなのでしょうか? 権九郎/助六の二役を演じた幸四郎さんがここでは「どじゃーす」の大谷選手に扮して、デコピンまで登場していました(笑)。ただ、このくだりを多少巻いているのか、予定では15時45分だった昼の部の終演時刻がこの日は33分でした。まあ巻くよね、夜の回の開演まで30分ってのは酷すぎますもんね…
 新造の白玉は米吉さん。
 しかし醜男が女郎を身請けするも、女郎にはイケメンの間夫がいて…ってのも盗まれる宝刀云々と同じくらい歌舞伎あるあるな設定ですね。そしていかにも男性が好きそうな話です。要するにこちらとしてはちょっと「ケッ」ってところはありますね。
 ラストは大立廻り。「こうらいや」の傘も出て、華やかで楽しゅうございました。








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『鎌塚氏、震えあがる』

2025年04月10日 | 観劇記/タイトルか行
 世田谷パブリックシアター、2025年4月8日18時。

 山深い場所にそびえ立つ大御門伯爵家の別邸、通称「幽霊屋敷」。そんな屋敷に暮らすのは、女主人・大御門カグラ(天海祐希)とたったひとりの使用人、「完璧なる執事」こと鎌塚アカシ(三宅弘城)。子供のころから霊感が強く、見えるはずのないものが見えるカグラの能力のせいか、怪奇現象が絶えない屋敷でアカシは日々怯えながら働いている。そんなある日、一年前に病死したカグラの姉の夫・相良ナオツグ男爵(藤井隆)が娘アガサ(羽瀬川なぎ)を伴って屋敷にやってくる。彼らはアカシの長年の想い人、上見ケシキ(ともさかりえ)を女中として同伴していたが…
 作・演出/倉持裕。シリーズ第7弾、全1幕。

 大空さんが北三条伯爵家の女主人役として出演したシリーズ第5弾は観ていて、そのときの感想はこちら
 このときはラブコメドリフだった印象がありますが、今回はホラーコメディとのこと。とにかくユリちゃんが出るというので、そして池谷のぶえも出るというので、おもしろいに違いない、と前売りに参戦し、敗れ敗れてなんとかお友達に工面していただきました…
 …でも、なんか、あまりおもしろくありませんでした。すみません私は、ですが…
 ずっと本多劇場でやってきたのを世田パブに移したから大味になったのだ、というようなことを言う感想も観ましたが、それは感じなかったかな。お屋敷の三面を見せる盆は健在で(美術/中根聡子)、舞台のサイズ感なんかも変わらないように思えましたし。全作出ているわけではないともさかりえが今回は出ていて、でもケシキさんの身の上がけっこう変わっているのは、シリーズ全体を通す軸としては鎌塚氏と彼女のそこはかとない色恋があるのかと思っていた私としては驚いたのですが、まあ未来がないこともないと思える展開ではあったのでそれもいいかなと思えましたしね。
 ただ、プログラムのあらすじからここに転記したようなカグラの設定が、作中では特に語られていなかったように思うのです。怪しい森でケシキさんが迷子になっていて、そこに鎌塚氏が現れて始まりましたが、それだけじゃなかったですか? そしてユリちゃんの登場はけっこう遅いので、幽霊屋敷とか霊能力云々ってのもどうもよくわからないままに話が進んでいた気がします。むしろ吊り橋が落ちたことで閉じ込められた山荘ものみたいになるのかな、と思わせていませんでした…?
 さらに言うと、結局アガサの母親が姪であるカグラの娘ではなくアガサを優先して助けたことが悪かったんだ、ってこと? てかアガサはそれを引け目に感じていたってこと? でもカグラの方は仕方なかったととっくに納得していたということ? でもそれならアガサがカグラの養女になることで何がどう解決するの? アガサには母親がいなくとも父親のナオツグはいるのに、変じゃない? まあこのシリーズの世界観は貴族制度があるなんちゃって日本のようだから、戸籍がとか養子制度がとか言っても仕方ないのかもしれませんが…なんか、私には話がよくわかりませんでした。
 まあお話の細かいところがよくわからなくても、おもしろけりゃそれでいいとも言えるわけですが、なんか…笑いどころが少なかった気がしませんか? 役者はみんな上手いので、リアクションその他そうした芸での笑いはちゃんと取れているんだけれど、脚本そのもののおもしろみがないというか、ちゃんとしたギャグが少ないというか…倉持さん、息切れしてきちゃったのでは?とか思ってしまいました。
 なので役者には満足したんですけれど(期待の池谷のぶえは絶品でした。あとこの可愛らしいお嬢さんは誰だろう、達者だなとか思っていたら『虎に翼』の玉ちゃんで仰天!)、観劇としては消化不良というか、もうずっとこんな感じならよほど贔屓の役者が出ても今後はパスかな、とかちょっと思ってしまったのです…
桜の園』に続き、ユリちゃんの華は絶好調ですね。ラスト定番のトートツな懐メロ歌唱も、高音が怪しいところを含めて(笑)よかったです。最近舞台づいているんですね、でもいつもなんでも「ユリちゃん」な気もするので、もっと全然違うタイプの舞台との出会いがあるといいのにな、とかも勝手に案じていたりします。












コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三月大歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』

2025年04月05日 | 観劇記/タイトルか行
 歌舞伎座、2025年3月13日16時半(夜の部Bプログラム)、27日11時(昼の部Aプログラム千秋楽)

 竹田出雲、三好松洛、並木千柳の合作により、1748年に人形浄瑠璃として初演。1701年に江戸城内で播州赤穂藩の藩主・浅野内匠頭長矩が高家筆頭・吉良上野介義央に刃傷に及び、即日切腹の上、浅野家が改易となり、翌年に元浅野家国家老・大石内蔵助良雄以下四十七人の赤穂浪士が吉良邸に討ち入った事件を素材にした演目で、約五か月のロングラン公演。同年十二月には歌舞伎に移入された、歌舞伎狂言の中でも屈指の人気作。江戸時代から『太平記』の時代に置き換えて上演され続けている。今回の通し上演は30年ぶり、ダブルキャストで上演。

 昼夜AB両パターン観るのがベストでしょうが、素人の私にはちょっと重いかな…と思い、くわしいお友達の助言を聞いて昼Aと夜Bのチケットを取りました。要するに仁左衛門さんが由良之助の方、ということですね。でもいざ観てみたら、もう一方のパターンも観てみたかった…!となりました。演劇ファンのサガですね…(^^;)
 というわけで、勉強しつつ、楽しく観ました。ない段もあるけれどいつもより休憩時間が短かく上演時間は長く、観るだけでも体力勝負でしたが、次はいつあるかわからない通し上演ですので、観られてよかったです。

 昼の部は開演10分前から始まる口上人形による配役発表からスタート。いちいち拍手すると次が聞こえないので野暮だとかとにかくたくさん呼ばれるのでキリなくて疲れるとかも聞きましたが、贔屓の役者にだけ大きく拍手するといいのでは、という意見も目にしました。そ、そんな…とまれ、人形の首が一回転しちゃったりして、なかなかユーモラスで期待が高まりました。お話は壮大な悲劇なのでは、と思うのだけれど、要するにあくまでもエンタメってことなのかな、と思ったりもしました。
 まずは「大序」の鶴ヶ岡社頭兜改めの場から。人形浄瑠璃のうち、時代ものの初段は神社仏閣などの神聖な場所を舞台とする場面から始めるのが通例だそうで、歌舞伎で今もこの゜大序」が上演され続けているのはこの作品だけだそうです。いつもよりゆーっくりな、これも儀式的な要素があるのだろう幕の開き方で、板付きの役者さんは全員うつむいている人形振りから始まりました。ここに魂が入り、役者が顔を上げて動き出して芝居が始まる、という演出なのです。ときめきました…!
 足利直義/中村扇雀、塩冶判官/中村勘九郎、桃井若狭之助/尾上松也、顔世御前/片岡孝太郎、高師直/尾上松緑。
 私は『忠臣蔵』に関しては知識がある程度なくはなかったのですが、桃井若狭之助にあたるキャラにピンとこず、最初はけっこうとまどってしまいました。上野介にあたる高師直にいびられているのは、まず彼だったので…でも内匠頭にあたるのは塩冶判官だよね?と…増やされたお友達キャラ? 若く生真面目そうな松也さんの若狭之助と、同じく生真面目そうではあるけれど冷静な勘九郎さん塩冶判官が、凜々しくすがすがしかったです。
 でもとにかくいいなあ、と思ったのが高師直の松緑さんでした。単純に、楽しそう…(笑)このお役をやるのって、楽しいんじゃないかしらん。主役はもちろん由良之助であり塩冶判官の物語なのかもしれないけれど…
 阿久里にあたる顔世御前の孝太郎さんも美しい。
 でも、これに入れあげる師直とか、確かにおもしろみはあるんだけれど、でも若狭や判官へのいびりにいちいち笑いが起きるのはなんなんだろう…とは感じました。確かにベタないびりでユーモラスでもあるけれど、ドリフ的な笑いではないし、判官たちからしたら理不尽ななじりであってムカついて当然で、フラットな観客も眉をひそめるところではなかろうか…笑う人はどの立場で観てんねん、とはちょっと感じました。
 続いて三段目、足利館門前進物の場、同松の間刃傷の場。「進物場」はしっかりユーモラス、コメディ場面なので、笑っちゃうのが自然で、だからこそ全体の笑いの塩梅が難しいのかもしれない…と思うようになりました。
 加古川本蔵/嵐橘三郎、鷺坂伴内/片岡松之助。
 そして「喧嘩場」、私はここが一番おもしろい、というか見どころだと感じてしまいました。なので師直のいびりにいちいち湧く笑いにホント違和感…抱き留められた判官が最後に刀を投げつけるところとか、その無念さを思って泣いちゃいましたよ私……
 四段目、扇ヶ谷塩冶判官切腹の場、同表門城明渡しの場。
 大星由良之助/片岡仁左衛門、石堂右馬之丞/中村梅玉、薬師寺次郎左衛門(板東彦三郎)、斧九太夫(片岡亀蔵)、原郷右衛門(中村錦之助)、大星力弥(中村莟玉)。
 上演中の客生の出入りを禁ずる「通さん場」と呼ばれる、「遅かりし由良之助」の場面ですね。この台詞はないし、国家老が切腹に間に合うようやってこられるわきゃないのですがそれはそれ。判官のご遺体を整える由良之助の手つきの優しさよ…からの、すぐにも報復だと逸る若手を抑える貫禄。芝居の醍醐味を観ました。
 昼の部ラストは、三段目の「裏門」を舞踊劇にした「道行旅路の花聟」。
 早野勘平/中村隼人、おかる/中村七之助。
 麗しすぎて目が潰れるかと思いました…ここの伴内は巳之助さんで、コミックリリーフとして素敵でした。

 夜の部は五段目、「山崎街道鉄砲渡しの場」「同二つ玉の場」。
 早野勘平/中村勘九郎、斧定九郎/中村隼人、千崎弥五郎/板東巳之助。
 私が盗まれる宝刀と並んで歌舞伎あるあるだと思っている、女を女郎に売るの、あるいは請け出すののお金にまつわる、落としただの盗まれただののあれこれ…なお話でした。隼人さんが一瞬しか出ない極悪人のお役で、なんかちょっとおもしろかったです。勘九郎さんの勘平は、なんか日々の暮らしにだいぶくたびれている感じ…
 六段目、「与市兵衛内勘平腹切の場」。
 おかる/中村七之助、おかや/中村梅花。
 ここはスーパー梅花タイムだと思いました。思わぬ行き違いからの愁嘆場、大メロドラマ展開なんですけど、おかるの身売りをめぐって、あるいはそのお金をめぐって、あるいはその父親・与市兵衛(中村吉三郎)の生死をめぐって、不運なんて言葉では言い表せないトンデモな事態になってしまうのでした…おかやの嘆きよう、なじりよう、暴れようは胸に迫りました。
 七段目、「祇園一力茶屋の場」。
 由良之助/仁左衛門、平岡平右衛門/松也、斧九太夫/片岡亀蔵、おかる/七之助。
 これまた有名な「由良さん、こちら」の場面ですね。しかし仇討ち他野心を秘めた男はカムフラージュのために遊び人の振りをする、というのは定番なのでしょうか…たとえば『バレンシアの熱い花』なんかの展開も、こうしたところから引かれているのかもしれませんね。
 しかしここはそれより平右衛門とおかるの兄妹のいちゃいちゃ展開に、私は素直に驚いてしまいました…何コレAの巳之助さん時蔵さんでも観たかった…!
 そしてついに十一段目、「高家表門討入りの場」「同奥庭泉水の場」「同炭部屋本懐の場」「引揚げの場」。ここの配役表はすごくて、確かに実際の赤穂浪士の討ち入りメンバーは全員が名前を知られているわけですが、それを全員分いちいちもじってあるのでしょうか…でも、ここに入れるのはやはり歌舞伎役者さんは冥利に尽きるんでしょうね。またも歌舞伎あるあるの生首案件ですが、まあ史実だし仕方ない…花水橋に逆三角形に居並ぶ浪士たちの姿は、完全に大階段男役群舞のトップスターを頂点とした燕尾場面を彷彿とさせました。晴れ晴れとした引き揚げで幕。実際には、このあと幕府の処分が揉めに揉めたあと、お家再興も叶わないままに全員切腹、ということになるので、切腹までやっておしまい、となる『ザ・カブキ』なんかの方がお話としては正しいのではないか、と思わなくもないですが…浄瑠璃版ともここで終わり、なのかな?
 ちなみに、仇討ちとか復讐とかって今の観点からするとアレなので…みたいな意見はよく聞きますが、私はこれは正義を貫く物語、ご公儀の片手落ちの処分を不服とした申し立ての敢行の物語であって、単にやられたからやり返すというお話ではないのだな、と感じました。もちろん暴力はいついかなるときもダメなので、それはアレなんだけれど、やっぱり単純に悪いのは吉良であり正しい処分を下せなかった将軍なのであって、それを正そうと思ったらこれしかなかった、というのはあるのかな、と思いました。それでも血で血を洗う、たくさんの人命が失われすぎている事件に発展していて、周りの家族その他はたまったものではないわけですが、それでも正義を取る、理屈を通す…という考え方は、私は嫌いじゃないというか、乱暴だけどそうすべきであると考えてしまうので、ラストにはさすがにそこまでのすがすがしさ、晴れ晴れしさは感じないながらも、お話として納得できたな、など感じたのでした。

 仁左衛門さんの由良之助がどうこう、みたいなことは私ごときには語れません。また5年後くらいに、もっと若い座組でまた通しで上演してくれたら、もっとじっくり観られていろいろわかってくるのかな、とか思ったりもします。
 そういう機会を、また作っていただけるとありがたいです。









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『カルメン』

2025年03月10日 | 観劇記/タイトルか行
 新国立劇場オペラパレス、2025年3月8日14時(千秋楽)。

 スペインのセビリア。伍長モラレス(森口賢二)が兵士たちと街を警護する。田舎娘のミカエラ(伊藤晴)が幼なじみの軍人ホセ(アタラ・アヤン)を探しに来て、モラレスたちにからかわれる。鐘が鳴り、煙草工場から女工たちが休憩に出てくる。男たちはカルメン(サマンサ・ハンキー)の噂をする。現れた当のカルメンはホセに目を留め、手にした花を投げつけるが…
 原作/プロスペル・メリメ、台本/アンリ・メイヤック、リュドヴィク・アレヴィ、作曲/ジョルジュ・ビゼー、指揮/ガエタノ・デスピノーサ、演出/アレックス・オリエ、管弦楽/東京交響楽団。フランス語上演、全2幕。

 以前、レニングラード国立歌劇場の来日公演を観たときの感想はこちら
 新国立のは初めて観ましたが、現代バージョンなんですね! 幕が上がると鉄骨の格子みたいなのがバーンとあって、ALSOKみたいな制服の警備兵たちがゾロゾロ出てきて、街の若者や観光客みたいな人たちもカジュアルな服装で、スマホに自撮り棒付けて記念撮影してたりして、おおぉこういう世界観…!となりました。ピンクのデニムで現れたミカエラは、田舎娘にも清楚にも見えなかったけれど、控えめでおとなしい女性であるらしいことは演技で見て取れました。ホセはスーツ姿だし、赤いボディコンワンピのカルメンはライブハウスのスタンドマイクで「ハバネラ」を歌い、対バンのボーカルと喧嘩して怪我を負わせる…(笑)ホセはこのビルの警備会社の現場責任者みたいなスーツ組なのかな?
 まあでも、お話はいつものオペラのままなので、特に問題なく観られました。前半は2幕まで、つまりホセがカルメンたちの仲間になるところまでですが、驚いたことにホセはスニガ(田中大揮)を殺さないし(スニガは逃げおおせる)、その前にホセはカルメンと寝てないんですね…! 直接的な描写ができなくても、オペラだって踊りやイメージで描写することは可能のはずですが、そんな暇がない展開なので…原作がどうだったか忘れましたが、柴田先生の『激情』って天才では…!?と奮えました。
 後半は第3幕第1、2場とされていましたが、4幕構成にしているパターンも多いですよね。それはともかく、ここからはわりと転がるように一気なのでした。ミカエラはホセの母親の危篤を告げに来ますが、結局亡くなったのかは明示されていませんでした。闘牛士の行進がセレブのレッドカーペットになっていましたが(笑)、エスカミーリョ(ルーカス・ゴリンスキー)はちゃんと闘牛士姿で現れてくれました。でもセレブの仮装か、映画の衣装という設定だったのかもしれません。彼は死なないし、そういえばカルメンの夫ガルシアも出てきませんね。どこまでがオペラの改変なのかな…
 オペラのラストは、ホセが「俺を捕まえてくれ! 俺が殺したんだ!」と慟哭して、おしまい。その哀れさにさすがにほろりとさせられましたが、しかしその直前のカルメンとの会話は完全に平行線なわけで、男の身勝手さにもあふれていて腹立たしかったので、ホントもういい加減にしてー!とキレたいくらいでした。要するに、なんだかなーな話だぜ…!とも思うのです。また女が死ぬ話だしね…現代にも応用できるくらい普遍的な物語である、というのもわかるけれど、要するに世の男どもが「俺がこんなに言っているのにわかってくれない女が悪い、かわいそうなボクちゃん…」みたいなメンタリティを未だ改善することがないから、いつまでも上演されているんだろうし同工異曲の物語が生まれるんだろう、とも思いました。
 カルメンが愛したのは何よりも自由、自分の意思で選択し責任を引き受け自分の足で生きること、でした。ホセを愛したことは確かにあった、でもそれは刹那の恋で情熱が冷めれば別れて次の恋に移るものだった、ただそれだけ。ホセとの恋で彼女は変わらなかった、ホセには彼女を変えられなかった、ただそれだけのことなのです。でもホセにはそれが認められない、理解できなくて、俺が変われば彼女も変わってくれるだろうとか、もっとがんばれば愛してくれるだろうとか見当違いの方向に走ってしまう…愛とはそんな取引ではないのに。相手を尊重しない欲望は暴力でしかないのに、それはもはや恋でも愛でもなく単なる幻想、執着なのに…世の男がそういうことを理解する日はいつ来るのでしょうか。これから生まれてくる男児たちを、おまえは世界の王ではない、と教えて育てるしかありませんかね…
 去る者を追って刺し殺して自分のものにした気になるなど、愚の骨頂です。カルメンは男なんてものはてんで信じてなかったでしょうから、こうなることも予期していたことでしょう。でもその定めから逃げないのもカルメンなんだよね、死んでも自分の意思を通す…殺されても、自分は自分で誰のものにもならない、という意思表示。誰でも心は自由だからだ…!という原作『ベルばら』の台詞が聞こえるようでした(ところでアニメ映画、いいですね…! 遠征先の博多で見たんですけど(笑)原作厨としてクサす気満々で見たのに号泣でしたよ…特に後半、原作のスピリットをよく汲んでいて秀逸でした!)。
 なので『激情』のラストでカルメンがホセに手を差し伸べて微笑むのは、ホセの幻想なんだな…とよくわかりました。一方で我々女は、いつか男が変わってくれて永遠の愛が存在するようになることを願っているので、そんなロマンチック・ラブ・イデオロギーのためのラストシーンでもあるんだと思います。そう、男が変われば世界はもっと良くなるのです。良かれ悪しかれこれまで世界を作ってきたのは男なんだから、そして今この有様なんだから、おまえらが反省し変われよ、としか言えません。でも男たちはそんな面倒なことはせず、我が身を可愛がるこうしたお話を量産し続けるんだろうなあ…ケッ、です。なので女の女による女のための物語をもっともっともっと作っていかないといけないんだな、と心底思いました。

 新国立の4階席に初めて行きましたが、客席は問題なかったんですけどロビーが閉塞感アリアリで、もっとマシな設計がなかったんかい、と思いました。トイレもないし…でも視界も音響も特段問題なかったです。
 歌手はみんな上手かったなー。日本人は聴き劣りするのかしらん?とか失礼なことを案じていたのですが、ミカエラが声量もあって繊細かつエモーショナルで絶品でした。フラスキータ(冨平安希子)とメルセデス(十合翔子)もとてもよかったです。ダンカイロ(成田博之)とレメンダード(糸賀修平)は芝居っけがあってチャーミングでした。変なブラボーおじさんはいなくてよかったです。
 衣裳はリュック・カステーイス。現代ふうにするにしてももっとモダンでスタイリッシュにする手もあったと思うんですけど、そういう意識はなく、わりと雑多な現代風俗という感じで、そこは残念だったかもしれません。隣の女性ふたり組は「やっぱりドレスとかが見たかったわよねえ」とおっしゃっていました。
 合唱は新国立劇場合唱団、児童合唱はTOKYO FM少年合唱団でしたが、この「少年」ってのは子供のことで、団員には少女もいるんじゃないのかな? 出ていたのは男児ばかりでしたが、キーが合うなら少女でも問題ないのでは、この時代に…とふと思いました。レッドカーペットのセレブには車椅子の老紳士キャラがいたりして、多様性が感じられた気もしたので…でもこれもちょっとよくあるパターンにすぎなかったのかな? 残念です。
 ところでフランス語上演だったのでホセが「ジョゼ」で、なんかキュートでした(笑)。久々のオペラ、堪能しました!




 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宝塚歌劇月組『ゴールデン・リバティ/PHOENIX RISING』

2025年03月02日 | 観劇記/タイトルか行
 宝塚大劇場、2024年11月21日13時、12月7日11時、12日18時(新公)。
 東京宝塚劇場、2025年2月4日18時、26日18時。

 19世紀後半、アメリカ。鉄道駅に多数の店舗を構えるレストラン「カーヴィー・ハウス」が西海岸に初進出。その支店に無法者たちが押し入ってくる。騒ぎを止めるべく呼ばれた保安官のライマン(風間柚乃)は、何故かひとりのウェイターに銃を突きつける。その男こそ彼らの目的である、列車強盗団「ワイルドバンチ」の生き残り、ジェシー・サンダー(鳳月杏)だった…
 作・演出/大野拓史、作曲・編曲/玉麻尚一、高橋恵。月組新トップコンビお披露目のミュージカル・クエスト。

 最近の私にしては回数を観ているのですが、すごく気に入ってリピートした、とかいうことは別になく、単に事前に頼んでおいた分を断れずすべて観るしかなかった…みたいな感じです。マイ初日雑感も書いていないくらいですからね、好きも嫌いもなくて単になんか引っかかりませんでした…
 ショーは景気がいい感じがして、ハイになっているうちに終わるのでまあ楽しかったんですけれど、芝居は…別にトンチキだとは思わないけれど(右手の展望台から頭の展望台までのジャンプだって、まあ別にいいっちゃいいのでは、と思いました。ちゃんと観える席が限られるのが残念ですが、シルエットの映写で表現ってのも目新しかった気がしましたしね)、やりたいことを詰め込みすぎていてとっちらかっていて散漫でしょ、とは感じたし、何より主人公ジェシーの魅力が私には皆目わからなかったので、お話にノレないまま終わってしまった…というのが大きいかな、と思います。
 イヤちなっちゃんはカッコいいですよ、3メートルあるあんよも見事だし、お披露目にしてすでに盤石なトップスターっぷりも素晴らしいですよ。でもそれと脚本・演出が主人公を素敵に描けているかってのは別問題だからさ…
 まず、殺人だけは絶対にしない列車強盗団の生き残り、って設定がどーなんだよ、という、ね…団は、時代が変わって強盗がしづらくなって解散したの? ひとりずつ射殺されたり逮捕されたりして自然消滅? それともいろいろしんどくなったジェシーが足抜けしたの? 説明、ありました…? まあそこは重要ではないのかもしれないけれど、とにかく今は何もしていなくてただ無為にウェイターなんぞをやっている…というだけのことなのかもしれないけれど、それは何故? なんか気が抜けちゃった、みたいなこと? じゃ、強盗をやめたくてやめたんじゃないってこと? 何か違うことをやりたくてやめたんじゃなかったってこと…? わからないので共感しづらいのです…
 殺人はしない、というポリシーをいいことのように描いている気がしましたが、でもそれでやっていることは強盗なんだから、やっぱり立派な犯罪ですよね? 多少は義賊っぽい存在だったのだとしても、たとえ多少汚い、怪しいお金ばかり盗んでいたんだとしても、被害者を出してしまう犯罪ですよね。しかも殺人はしないんだとしても銃撃戦には毎度なったんだろうし、厳密には殺してないなんて言えないのでは? 少なくとも相手に怪我をさせてますよね? 
 ダークヒーローとかアンチヒーローでもいいんだけど、だったらバリバリの、ちゃんとした?強盗って設定でもよかったのでは?とも思わなくもないです。だって殺さなきゃ殺される、奪わなきゃ生きていけない、そんな過酷な時代だったんじゃないの? なら仕方なくない? それでも「仕方ない」とは思えなくて、悩みながら、傷つきながら生き抜いて、今は時代が変わって普通に働けば生きていけるようになったけれど、罪悪感からか心理的には世捨て人のようになっている…みたいなことなら、まだ理解できたかもしれません。
 別にこのとおりじゃなくてもいいんだけど、とにかくなんか今のジェシーの様子には私は納得しづらくて、そういう過去を持ったっぽい、そして現状こうなジェシーという人に、残念ながら私は魅力を感じられなかったんですよね…
 で、ライマンに協力を頼まれて応じるのには理由があるんだと思いますが、別に明示されなくてもいいけど多少の説明は要りません? 過去の罪状を公にされたくなかったら、とか、その罪で逮捕され収監されたくなかったら…といった脅迫があったんだと思うんだけど、違うのかな? 未だに賞金首なの? でも、ジェシーの罪ってそれだけのものなのかよくわからず、なんで強盗にホイホイつきあってんの?って気がしちゃったんですよね。もちろん、ディーン(礼華はる)やリッキー(彩海せら)たちのような、無法者に憧れているだけのただの今どきの若者で単なる牧場育ちのヤンキー青年で銃の腕も怪しいような奴らにやらせていたら、無駄な人死にが出そうと懸念して手を貸すことにしたのかもしれませんが、このヤングたちの描写も曖昧なのでホントにしょーもないワルなのか、単に口だけイキってる若者なのか、私は当初判別できませんでした。なのでますます展開についていけず…
 そのあとも、ジェシーはサーカスの女性たちにモテたりしていて、そりゃ美形だし優しいし気が回るし物腰も丁寧だし、そこらのガサツでマッチョで脳筋な男たちとは違う…のはわかるけど、それだけじゃやはり主役のチャームとしては弱かないですかねえぇ?
 アナレア(天紫珠李)はいいんですよ、キャラもドラマもストーリーもしっかりできているし、あまし氏にすっごく似合ういいお役だと思いました。親切にしてもらって、ジェシーに感謝してちょいっとキスして、でも巻き込めないから黙って去る…というのもわかる。でも恋愛はこれからですよね? まあ、人生の目標が持てないでいたジェシーが、アナレアの隣にいたい、ってだけで動いて、ツワナキ島までやってきたので、ふたりで寄り添ってチューしてハッピーエンドでここからはまた別のお話…ってのもまあ、いいっちゃいいんですけど、ね…うぅーむ。
 ドラマがありそうなのはむしろライマンで、彼を主役に据えてもお話は作れそうでしたけどね。悪代官に弱みを握られて悪事に荷担せざるをえない悪徳保安官実はいい人…ってのは、十分主役の要素でしょう。おだちんがよかっただけに、全体としては妙に噛み合っていない感じが私はしたのでした。
 るねっことうーちゃんをその悪代官コンビに起用するのはいい布陣だなと思いましたが、一方でこれからバリバリ使っていかなきゃいけない路線のぱるあみはいつまでもニコイチにしていてもいいことないし、いつまでもこんな若造役を振っている場合じゃないと思うんですよ…みちるも明らかに役不足に感じましたし、そこにみかことおはねというまた無駄遣いが…新聞記者役のりりちゃんは大事にされているんだなあ、という印象で、お話のいいスパイスになっていましたが、メインのドラマにはあまり関係していませんでしたしね。むしろアイダ(花妃舞音)がいいお役で、まのんたんファンとしてはありがたかったです! サーカス団の末っ子、おしゃまな少女(『エリザベート』のシシィの「パパみたいに」のときのドレスを着ていて、「♪弟たちとはサーカスごっこができる」を思い起こさずにはいられません…!)、主役ふたりを案じてその恋心をそっと押す役回り…
 ヤスの二役は、私は最初同じ人かと思ってしまいました。移動サーカス団の団長だから「亭主元気で留守がいい」なのかとばかり…てらくんがちょいと目立つお役で、その妹のれいあちゃんも。あとは最強の妃純凜さまね…
 他はちょっと見どころ、しどころがなかったのではないかしらん…
 まあ、でっかい汽車が豪勢で出せてよかったね、ということなのかもしれません。ハワイアンだかポリネシアンだかよくわからないけれど、ダンスも祝祭チックでおめでたい感が出てよかったし…みたいな。お披露目公演なので肩の凝らないハッピーエンドの作品を、というコンセプトに関しては、まったくもって賛成です。ラストシーンのぱやぱやした音楽がことに好き(笑)。古き良きMGMミュージカル感が楽しかったしね。独立とか自治とか選挙とか専制国家から民主国家へ…みたいな、現代社会批評にもなりそうなメッセージ性は、やや中途半端に感じましたけれどね…

 大劇場新公は観られたので、以下簡単に感想を。新公の担当は橋本詩織先生。大きな改変はなかった…かな?
 ジェシーはきどくん、七城雅くん。二度目の新公主演ですね。前回の『応天~』ではその少年性が生きただけだった気もしなくもなかったですが、その後どんどん垢抜けてきて、今やなかなか目を惹く男役さんになってきた気がしています。スカステニュースのインタビューでも語っていましたが、三白眼っぽいせいなのか芸の持ち味が暗くて、私はそこが魅力的だと思うんですけど、本人はちなっちゃんみたいなからりとしていてあっけらかんとしたジェシーをやりたくて悩んでいるようでしたね。ただ立っているだけでも何か含みがあるように見えてしまう…という特性は、でも武器にもなると思うんですよねえ。私は新公ジェシーは自身の過去を深く悔いていて引きずっている感じがして、こちらの方が共感しやすく、観やすく感じました。歌も手堅い。ここからさらに場数かな、と思います。ホントはショーのアイドル場面なんかはもうここをセンターでやらせなきゃ駄目なんだと思うんですよ…
 アナレアは初ヒロインのみゅーずちゃん、美渦せいかちゃん。手堅かったけれど、ややそれだけに感じてしまい、何故この抜擢?という感じはしたかな…新ヒロイン爆誕!みたいな輝きには欠けていたと思うので。だったら二連続になっちゃうけど本役も替わるんだし、乃々れいあちゃんにやらせた方がよかったのでは…と思いました。ニンっぽいし。パール(彩みちる)はカマトトに見えました…
 ライマンはまひろん、真弘蓮くん。いつでも上手く渋い、いつまで新公にいるんだ…でもこれも上手すぎ渋すぎるとお話の軸がどこにあるのかさらにナゾになっちゃうお役な気がして、バランスって難しいものだなー…など感じました。
 悪役のケイン将軍(英かおと)とモートン(夢奈瑠音)はわか、一輝翔琉くんとオディセ、、雅耀くん。わかはいつ上手くなるんだ…と私はずーっと言っているんですけど、『ロマ劇』新公抜擢のあとがホント続かないですよね…オディセは美貌が光って、悪役スーツ眼鏡っぷりがとてもよかったと思いました。
 みかことおはねのところがみうみんとのりんちゃん、ああもったいない…てかまのんちゃんもジェシー・スミス(桃歌雪)じゃなくてモンタナ(白雪さち花)やフレンチー(妃純凜)みたいなところをやらせてみた方がおもしろかったろうし勉強になったのではないかしらん? いやいちごちゃんもゆららちゃんも手堅かったんですけどね。
 ディーン以下無法者6人衆には次代の若手男役スターたちが配されていたようでしたが、ピンとこず…ヤス団長のところのしゅりんぷはさすがにしっかりしていたかな。軽業師たちには次代の若手娘役が…以下同文。
 エリザベス(白河りり)は静音ほたるちゃん、好き! 休演も心配していましたがわりとすぐ戻ってきてくれて嬉しかった…手堅かったかと思います。ソーマ(大楠てら)の月乃だい亜くんも儲け役でしたよね。
 公演としては全体に手堅かったけれど、すごくよかった新公かと言われると…うぅーん、な印象ではありました。東京も無事に上演できたので、そちらでより成長が見られたのならよかったなと思います。まあまあ好評に感じたので…


 Takarazuka Spectacularは作・演出/野口幸作。
 上海は孔雀が出てくるけどインドも韓国も特に鳥モチーフではなく、鳳凰縛り…ではなかった気もしますが、まあ月や羽根扇は出ていたし、とにかく景気が良くてわっさわっさと進む楽しいショーだったので、それで十分です。ゴンドラも最高にデカかったしね!(笑)
 エイトフェニックスは美颯りひとくんガン見でした。えくぼが可愛いってのもあるけど、表情の作り方が好みなんですよねー、いい色気を発していました。顔ばっか見てて脚やお尻はそれほど見ませんでした(笑)。
 プロローグのチャイナパートで俺たちのまのんたんが七城くんとカップルで降りてきていて胸アツ…てか銀橋に出たのに仰天して、マイ初日は立ち上がりかけましたよ…(出禁になります)今まで3列目の一番端とかでずっと誰かに被っていたというのに…!
 というわけで真ん中は、全員がハケてちなじゅりが残ってやっと観られました(笑)。みんなのお着替えタイムを捻出するためのこういうトップコンビ居残りタイム、嫌いじゃないです。ロケットはここに早々に入りましたね。
 続いてオダチンカーン場面、何がフェニックスなのかはさっぱりわかりませんが、おださんの早変わりが本当に素晴らしいのでもう十分です。二番手スターさんなんだし、もっとカッコいい場面をもらってもいい気もしなくもないですが、こういうおもろいのもできちゃうからしょうがないよね…!
 続く上海場面は、なんかオサアサミドリとかでこういう場面やってそう…など思いました。あまし氏がミドリっぽく感じられるのかも。イヤ素晴らしいですよねこの仕上がり、このトゥーランドット雄孔雀のゴージャスさ…! ちなぱるの絡みには私はあんまり萌えなかったので、あまし氏とバードのふたりばっかり観ていました。
 そしてタイ場面、俺たちの(しつこい)まのんたんがあみちゃんとカップルでセンターに…! また感涙。てかちょっと前までまだむにむにしていたのに、あっという間にシュッと痩せちゃって、もうそこまででいいからねー、と念じながら観ていました。指先や腕の使い方が美しくてうっとり…そこから中詰め、客席下り。そしてまた、今度はトップトリオで銀橋残り、景気が良くてとても良き。
 しっとり韓国場面、ぱるりりのセンターにるねっことおはね、うーちゃんとみかこ。なのに続くアイドル場面にすぐまたばるが出てくるランボーさよ…てかさっきも言いましたがこういう場面はもうぱるあみじゃなくていいと思うのよ、るおりあや七城くんやわかでいいんだと思うのよ…使っていこう?
 次の、ちなつが歌ってあまし氏がバリバリ踊る場面、大好きです。アムネリスのケープですよね…! 総踊りではさすがに最後列ほぼ一番奥だったまのんたん、いつもニコニコで常にキビキビ踊っていてとても良きでした。
 退団のぐっさん、つーさん餞別場面もとても良き。
 続いてみちるセンターのヨジャドル場面、娘役にもフツーのドレスじゃなくてアイドル衣装を作ってくださいよ…! でもまのんたんと静音ほたるちゃんが並んで観られたので私的にはウハウハでした。
 そしてフィナーレですね。男役群舞の歌は西城秀樹、似合っていました。そしてデュエダンのあまし氏のドレスが本当に好みでした! デコルテのVカット、フレンチスリーブ、スリットの入り方、赤の色味…!! 還暦に着たいドレスです!!!(冒涜)パレードの真っ白ふわふわのあまし氏もよかったなー、今年のブクマはここの写真がいいです! ラインナップのまのんたんは下手花道端っこ。でももうどこにいても見つけられるスキルがありますから私…!
 主題歌も覚えやすくて元気が出ていい感じでしたが、飛翔の場面で歌われる第二主題歌みたいなのもノリが良くて良きでしたね。お衣装もどれもよかったなあ(衣装/加藤真美)。ストレスなく突っ走れる、これでもかと押し寄せるんだけど体感の短いショーで、楽しかったです。


 次は『ガイドル』ね、役がないんだよねー…アデレイドはみちるとあみちゃんの役替わりが発表されて、これはまあいいのではないかと思います。新公、まのんたんでどうかしらん? サラはれいあちゃんでいい気もするけど、キツく見えちゃうかなー…のりんちゃんとかにチャレンジさせてくれてもいいんですよ!?とも思うけど、さてどうかな…
 確か新演出になるはずですが、是非ともくしゃみの意味をよく考えて、この古臭い話を現代日本で上演して笑えるように、上手く工夫していただきたいものです。それだけはお願いしたい…!
 その前の全ツ『業平』は、純粋に楽しみにしています…! 初演、続演も観ていますがあまり記憶がないんですけれどね。あとハッピーエンドではなく悲恋で、引き裂かれて終わるので、まあ『あかねさす~』とかもそうなんだけれど、ちょっと中途半端感があるというかスッキリしないで終わる感じがあったので、そこがどうかなー…こちらもブラッシュアップに期待しています!
 何はともあれ新生月組、良き船出で何よりです!







 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする