東京芸術劇場プレイハウス、2022年5月25日17時半。
森新太郎演出、高畑充希アニーは前回も観ていて、そのときの感想はこちら。
今回のキャストはヘレン/平祐奈、ケイト/村川絵梨、ジェイムズ/井上祐貴、アーサー/池田成志。
おもしろく観たことしか覚えていませんでしたが、10分ずつ2回の休憩込みで3幕3時間20分、ほぼ変更はなしかな? 下手手前にポンプ、上手手前に玄関前のステップがあってそこが前庭のイメージ、奥はわずかに八百屋になっていて、駅舎になりケラー家のダイニングになりアニーの2階の部屋になりガーデンハウスになる構造です。
前回もケイトに惹かれたけれど、今回もとてもよかったです。何度も観る女優さんだけれど声がいいですよね。そしてすらりと背が高く、とても優美なサザン・ベルっぷり! ヘレンをやってアニーをやった女優さんがいつかケイトをやる、なんて素敵だなと思ったのですが、でもヘレンは6歳かはともかく子供の役で、アニーもはたちの小娘って感じなのに対してケイトはすらりとした大人の女性であってほしいから、やはりひとりがやるのは無理かしら…少なくともアーサーは小男であってほしいですよね(笑)。
前回ほどには感じませんでしたが、アーサーはやはり南部のマッチョな、愛情深くはあるんだろうけど思慮の浅い、ワガママで癇癪持ちな男なわけです。だいたい過去の栄光にすがって軍隊時代の階級の称号で家族に呼ばせているなんてろくな男じゃない。でもそれは家族側が悪いところもあって、そうしておけば彼が機嫌がいいから、それで周りも楽できるからおだてて持ち上げてそれですませているんですよね。本気のぶつかり合いをしていない。だからジェイムズも疎外された気持ちになって歪んで育つんです、かわいそうです。
そこに、遠慮とか配慮とかそうしたいっさいにかまわない、火の玉みたいなアニーが活を入れるんです。そういうお話です。それはアニーの性格でもあるけれど、そうしないとヘレンの魂に寄り添えないからでもある…
ヘレン役は、ホント痣や生傷だらけなんじゃないかと思うような転がりっぷり、ぶつかりぶりなんですけれど、だからこそラストの、水に名前があること、手で綴るスペルはそれを表していることに気づいたときの、瞳に光が宿り知性の灯りが灯る瞬間の鮮やかさが素晴らしいです。それまで、お行儀を覚えても人形のようだった少女が、真に人間になる瞬間…涙せずにはいられません。
そう、犬も馬も賢くて、人間の幼児より知能があると言われています。猿とかね。イルカでもシジュウカラでも、言語らしきものを持って意思疎通している動物は意外にもたくさんいるのです。けれど彼らは文字を持ちません。その記号化、抽象化ができるからこそ人間の文化文明があるのです。愛犬の肉球にスペルを綴っても反応は得られない、けれど人間同士ならそこから全世界が広がるのです。
(三角関数はその延長です。あの数値、あの概念をあの記号で表すことで世界の記述がよりシンプルに容易くなり、それこそ人間は新たな次元を手に入れたのです。たとえ実社会で使わなくてもそのこと自体には敬意を払ってほしいものですよ人間なら。それができない、したくないと言うのは自ら昆虫以下くらいの生き物だと言っているのと同じだと私は思いますし、そういう人間を軽蔑します)
ホームドラマで、南北の歴史や文化が激突する物語で、何より人間の愛や努力や情熱を讃える、激しく美しい舞台です。わかっていても、何度観ても、泣く。今回もとても良きでした。
森新太郎演出、高畑充希アニーは前回も観ていて、そのときの感想はこちら。
今回のキャストはヘレン/平祐奈、ケイト/村川絵梨、ジェイムズ/井上祐貴、アーサー/池田成志。
おもしろく観たことしか覚えていませんでしたが、10分ずつ2回の休憩込みで3幕3時間20分、ほぼ変更はなしかな? 下手手前にポンプ、上手手前に玄関前のステップがあってそこが前庭のイメージ、奥はわずかに八百屋になっていて、駅舎になりケラー家のダイニングになりアニーの2階の部屋になりガーデンハウスになる構造です。
前回もケイトに惹かれたけれど、今回もとてもよかったです。何度も観る女優さんだけれど声がいいですよね。そしてすらりと背が高く、とても優美なサザン・ベルっぷり! ヘレンをやってアニーをやった女優さんがいつかケイトをやる、なんて素敵だなと思ったのですが、でもヘレンは6歳かはともかく子供の役で、アニーもはたちの小娘って感じなのに対してケイトはすらりとした大人の女性であってほしいから、やはりひとりがやるのは無理かしら…少なくともアーサーは小男であってほしいですよね(笑)。
前回ほどには感じませんでしたが、アーサーはやはり南部のマッチョな、愛情深くはあるんだろうけど思慮の浅い、ワガママで癇癪持ちな男なわけです。だいたい過去の栄光にすがって軍隊時代の階級の称号で家族に呼ばせているなんてろくな男じゃない。でもそれは家族側が悪いところもあって、そうしておけば彼が機嫌がいいから、それで周りも楽できるからおだてて持ち上げてそれですませているんですよね。本気のぶつかり合いをしていない。だからジェイムズも疎外された気持ちになって歪んで育つんです、かわいそうです。
そこに、遠慮とか配慮とかそうしたいっさいにかまわない、火の玉みたいなアニーが活を入れるんです。そういうお話です。それはアニーの性格でもあるけれど、そうしないとヘレンの魂に寄り添えないからでもある…
ヘレン役は、ホント痣や生傷だらけなんじゃないかと思うような転がりっぷり、ぶつかりぶりなんですけれど、だからこそラストの、水に名前があること、手で綴るスペルはそれを表していることに気づいたときの、瞳に光が宿り知性の灯りが灯る瞬間の鮮やかさが素晴らしいです。それまで、お行儀を覚えても人形のようだった少女が、真に人間になる瞬間…涙せずにはいられません。
そう、犬も馬も賢くて、人間の幼児より知能があると言われています。猿とかね。イルカでもシジュウカラでも、言語らしきものを持って意思疎通している動物は意外にもたくさんいるのです。けれど彼らは文字を持ちません。その記号化、抽象化ができるからこそ人間の文化文明があるのです。愛犬の肉球にスペルを綴っても反応は得られない、けれど人間同士ならそこから全世界が広がるのです。
(三角関数はその延長です。あの数値、あの概念をあの記号で表すことで世界の記述がよりシンプルに容易くなり、それこそ人間は新たな次元を手に入れたのです。たとえ実社会で使わなくてもそのこと自体には敬意を払ってほしいものですよ人間なら。それができない、したくないと言うのは自ら昆虫以下くらいの生き物だと言っているのと同じだと私は思いますし、そういう人間を軽蔑します)
ホームドラマで、南北の歴史や文化が激突する物語で、何より人間の愛や努力や情熱を讃える、激しく美しい舞台です。わかっていても、何度観ても、泣く。今回もとても良きでした。