宝塚大劇場、2025年3月14日13時、4月3日13時、18時(新公)。
東京宝塚劇場、6月4日18時。
12世紀、イングランド。国王リチャード一世(奏乃はると)率いる十字軍遠征が行われていたころ、ノッティンガムの荘園領主ロクスレイ卿(叶ゆうり)のひとり息子ロビン(朝美絢)のもとに、従軍していた父が敵軍に通じていた罪で処刑されたと知らせが届く。罪人の息子としてあらぬ容疑をかけられ投獄されたロビンは、王家の血を引く恋人マリアン姫(夢白あや)とも引き裂かれてしまい…
脚本・演出/齋藤吉正、作曲・編曲/多田里紗、長谷川雅大。遠い昔から語り継がれ、様々な物語が育まれてきたロビン・フッドを、宝塚歌劇ならではの演出で新たに描きあげるミュージカル。雪組新トップスター朝美絢のお披露目公演。
「『ロビンチュア』マイ初日雑感」みたいな記事を、今回珍しく書いていないんですね私…なんでだろう? そうねちねち書くこともない、という感触だったのかな? ちょっとゴタゴタガチャガチャしてるけど、役も多いし、楽しいラブコメ冒険活劇ファンタジーになっていて、まあいいんでないかい?ってくらいだったのかもしれません。
その印象は3回観ても特に変わらなくて、やっぱりゴタゴタガチャガチャしてるけど、まあいいんでないかい?と思いました。ファンが観ると、役が多い分スターの出番は分散しているので「うちの贔屓の出番が少ない!」みたいな苦情はあるのかもしれませんが…
ま、ウルトラソウルのくだりと、ロビンの母親がエレノア王妃(妃華ゆきの)だっていうエピソードはなくてもよかったかもね、とは思います。浮いた尺でもっとみっちり芝居するパートに回してもよかったろうと思うのです。ウルトラソウルはヨシマサがやりたいだけだったろうし、まあおもろいんでいいっちゃいいけど、ロビンとマリアンの入れ替わりはともかく、その前の兵士ふたりの入れ替わりのくだりは何がどう入れ替わっているのかさっぱりわからないわけで、まったくの無駄だったということは強く指摘しておきましょう。エンリコと千乃くんの出番を作りたかったのかもしれませんが、そーいうことじゃないんですよ芝居ってのは…同様にかのゆりとゆきのちゃんの、そして愛陽みちちゃんと希翠くんの出番を作りたかったんだとしても、ロクスレイ卿とエレノアの若き日の恋云々はホントどーでもよかったと思うんだけど、これまたヨシマサがこーいうベタな母子ものを好きなんですよね。ホント退くわー…
あと、マリアンは結局誰とどういう血縁なんでしょうか。リチャードとジョン(透真かずき。ちなみに彼をときおり「アイルランド卿」と呼ぶのは観客が混乱するのでやめた方がいいです)とエレノアが兄弟なのはわかりましたよ? でもマリアンはカスティーリャのプリンセスとされているんだから、エレノアが嫁いだカスティーリャ王側の親族なんじゃないの? その場合、マリアンが一般的に目上の男性への呼称としてリチャードやジョンを「おじさま」と呼ぶことはあっても、彼らはマリアンを「姪」としては扱わないのでは? それと、彼女がイングランド王家に客分?として来ている理由は結局なんなんですか?「やっとわかったわ」「このためだったのね」みたいな台詞が二度ほどありましたが、さっぱりわからないんですけど…エゴサして東京で直してくるかと思ったら、なんの変更もブラッシュアップもありませんでしたよね。ホント残念すぎます…
あと、ちょいちょい会話の掛け合いがおかしい。この台詞に対してこの返しはねじれてるでしょ?ってところで多々あるし、その言葉、変では?とかもっといい言い回しない?ってところも多々多々ありました。なんとかしてほしいです。
まあでも、そのあたりに目をつぶれば、何度でも言いますがゴタゴタガチャガチャはしているけれど役が多くて楽しい芝居だった、と私は思いました。良きお披露目公演となったのではないでしょうか。
ただ、あーさも夢白ちゃんも本来の持ち味というかもっと輝く役どころは別にあるだろう、という気はしているので、次作に熱く期待したく思います。せっかくの暴力的美貌コンビなんだしもうちょっとやってほしいけれど、夢白ちゃんがそろそろ…なのかなあ。『銀の狼』とか観たかったんだけどなあ。このふたりはもっとクラシカルで暗くてドロドロしているような心理ドラマ、ド悲劇の方がハマる気がします。あーさはその顔面の強さもあってキラキラ系アイドルスターと思われがちだけど、そして今回のような純朴な少年が成長して立派な青年に…みたいなのも新鮮に演じられてはいたけれど、ホントはもっと男臭い芝居がハマるタイプなんじゃないかと思うのですよ。トップスターとなるといろいろやることも増えて大変なんでしょうが、代表作、当たり役に恵まれることをお祈りしています。
敵に寝返って主人公の父親を裏切り、ヒロインに結婚を迫るベタベタの悪役ガイ・ギズボーン(瀬央ゆりあ)役のせおっちは、『
不時着』から合流していることもあるし違和感なし、ですね。こちらも役に恵まれていけばちゃんとあーさからスライドしてトップになれるのでは、と私は思っていますので、がんばっていただきたいです(なんかわりと、マイティはなるけどせおっちは無理でしょ、みたいに言う人が多いようなので…その言い方はずんちゃんをナメているようにも聞こえて、いずれにせよ私は不愉快になるのでした)。
あがちんなんかは役不足に見えたかもしれません。かせきょーもアホの子役なので…すわっちも、うーん…はばまいちゃんやまるちゃんは、まあ娘役の役ってこんな感じだよね、という…愛すみれさまもまあ知ってるパターンだしね…やっぱり出番は少ないんだけど、さんちゃんはいいお役だった気がします。あとはこれでご卒業のあすくんのタック神父(久城あす)は、銀橋ソロももらって良き餞でした。
全体としては、新公の方がハマっていた気がします。上級生がやると役不足に見えるものも下級生がやるとちょうどいいし、ファンタジー感は薄まりますがストレートな童話感、ジュヴナイル感が出ていた気がしました。後述。
ファンタスティック・ショーは作・演出/三木章雄。
花ひとみさお披露目ショー、月ちなじゅりお披露目ショーと来てコレじゃ、そらみんなぽかーんとするよね…(笑)お披露目感などいっさいない、単なるいつものミキティショーでした。そしてミキティショー自体がすごく久々だった気がするので、昭和とは言わずとも平成の香りがプンプンするわー、ってな感じで、また私は外野なのでそんなに嫌いじゃなかったのですが、ザッツお披露目!みたいなものを期待していたファンからしたらそら肩透かしだったことでしょう、と思いました。
特にお披露目なのにフィナーレにデュエダンがなかったことは残念でしたね。大昔はそんなショーはたくさんあって、今のように構成がかなり規則的になったのってごく最近のことだとは思いますが、でもなんと言ってもお披露目公演なのでね…「エトランジェ!」場面はあったけれど、あれはあれでいいからフィナーレにやっぱりデュエダンが欲しい、というのがファンというものでしょう。
フィナーレのあーさのソロも珍しいパターンで、それこそミキティのあーさへの愛情や信頼も感じますが、でもなんかさよなら公演みたいで縁起悪いよね、みたいな気になっちゃうファンが多いのも、最近のショーからすると不規則に感じられるからであってさ…ま、これも次作のショーに期待します。
プロローグあとの、あがちんとすわっち(と、なんとせれーな!)のダンサー場面と、その次のかせきょーまるちゃん、せおっちはばまいのオーディション場面が、どちらもいわゆるダンス対決もので印象が近くなってしまったのは残念でしたね。衣装も振付も、やっていることはけっこう違うんですが、「対決」というコンセプトが同じなのが痛かった…新生雪組のいろんなスターを顔見せさせたい、というのはわかるんですけどね。
バイク場面は昔のショーか何か(場面名にあった『まい・みらくる』?)からのリバイバルだそうですが、スピリットオブバイクの夢白ちゃんが素晴らしいですね! ゴールディロックス、かくあれかし! 「私を乗りこなしてごらんなさい」みたいな台詞はコンプラとかなんとかより単にダサいので省いた方がよかったと思いましたが、振付(振付/森優貴)含めてとても素敵でした。ライダー男女がほぼ同じ振りでバリバリ踊るのがまたいいんだよねー! すわんはホントどこにいても踊りのキレで目を惹くなー…!
中詰めはミキティ定番の、これしかないんかなーとやや思わなくもないジャズ。振りはもちろん踊りませんでしたとも!(いい笑顔)なので手拍子がしづらいのには困りました…
ロケットのセンターはエンリコ、ファンなんで嬉しいです! でも脚上げから手拍子が入れやすいよう、気を遣ってくれよおぉ…
フィナーレの大階段板付きセンターはばまいちゃん、ってのはかなり破格で、エトワールもやっているし、まだ次期が発表されたわけでもないのに…とつい思ってしまいました、心が狭くてすみません。続く夢白ちゃんカルメンは素晴らしすぎました。男役たちを次々撫で斬りしていくのもいい…!
パレードのダブルトリオはエンリコと律希くん、白綺華ちゃんにせれーなにありさに音綺みあちゃん、ですよねーというメンツですね。満足です。
私はあーさはハイ真ん中だね、と思うだけなのと、せおっちにはやっぱり惹かれないので、そのシンメであがちんとかせきょーが踊り出すと目が左右に散ってタイヘンだ、という発見を今回しました(笑)。あがちんのことも好きでも嫌いでもないんだけれど、なんせダンスが上手い! 身体能力が半端ない!! そしてかせきょーのパーッとしたオーラ、スタイルの良さ、伸びやかさははやっぱり強いですよ…!
新生雪組、この先も楽しみです!!
大劇場新公も観たので、以下感想を簡単に。
担当は雑賀ヒカル先生。演出変更は特になかったかと思います。
ロビンはエンリコ、苑利香輝くん。108期(!)、抜擢の初主演。でも私は初組子くらいのときの新公であすくんのところをやっているのに「めっちゃ上手いな!?」と刮目して以来ずっと好きだったので、嬉しかったです! ショーでは密かにずっとかせきょーのシンメにいるよね、みたいな扱われ方だったので、もうちょっと待つのか、はたまた使う気があるならもっと前に出さんかい!と思っていたら主演が来たので驚きましたが、素養がありそうな男役さんはまずこれくらいで一度やらせておいて、卒業間際にも再度…というのがいいと思っているので、良き育成かと思います。かせきょーに近いぱーっとした明るいオーラの持ち主で華があって、私は良き大器感を感じています。素直にのびのび、かつ丁寧に真摯に演じていて、とてもよかったと思いました。
しかしヒロインのみなみんともども、せめてこの公演くらいは本公演の役付きをもっと良くしてあげてほしかったです。衛兵とか農民とか、台詞はもらっているにせよ、わかって観ないとわかんないくらいじゃん、それじゃダメだって。ちょっと目立つところをやらせて観客に「アラいいわね」って思わせて、「ああ、あの子が新公やるのね」って思わせてファンに育てていかなきゃ、ダメでしょ? エンリコはシャーウッドの風に入れてもよかったと思うし、みなみんも四大精霊か、なんならクインシー(白綺華)だってよかったと思いますよ…(ToT)
マリアンはこちらも初ヒロインの愛空みなみちゃん、恐るべき105期。私は顔が好きでずっと追って観ていましたが、使う気あったんだ劇団!?と正直思いましたけどね…てか今回はこれで新公卒業の愛陽みちちゃんがヒロインでよかったと思うんですけど、何故に頑として起用しないのか劇団…? それはともかく、ディズニープリンセスっぷりもありつつもしっとりおちついた良きお姫様っぷりで、夢白マリアンに若干漂うカマトト感がまったくなかったのはとてもよかったです。フツーに上手い…大事!
そしてガイの紀城ゆりやくんがすごーくよかった! 『
ライラック』新公主演では地味だなーと思い、新公オスカルは綺麗でちょっとハッとなったけど、こちらも今回の本公演は農民だし…でも、さすが新公主演を経てからの悪役ってホント濃く、バン!と出られていいんでしょうね。本公演はやはりせおっちの癖ツヨ感がやや出ている役になっていると思うんだけれど、新公は物語が求めるド定番悪役、ヴィランになっていてとてもよかったと思いました。なんせ上手くて手堅いしね!
それはカーク・フォレスト(諏訪さき)に扮したかせきょーにも言えて、本役とはまた違う小悪党っぷり、ヴィランっぷりが物語を引き締めていたと思いました。ノリノリの悪役、良きでしたよー!
アラン(咲城けい)は結翔恋くん、ちょっと線が細かったかなー。ミス・オフィーリア(愛すみれ)は麻花すわんちゃん、インパクトあって良きでした・クインシーが音綺みあちゃん、歌えるしこちらもいい爪痕を残していたかと思います。
ウィル(縣千)は律希くん、ホント美形でイイですよねー…わりとしどころのない役だと思うのですが、ちゃんと存在できていました。
愛陽みちちゃんはエレノア王妃で、本公演では若き日のエレノアを演じているだけに手堅かったです。マリアンの乳母ルチアナ(杏野このみ)に回っているはばまいちゃんも手堅い。 本公演の代役もしていた蒼波くんのリトル・ジョン(真那春人)はイケオジで素敵だったなー! デイビット(華世京)の水月胡蝶くんは幼い役作りで、それはそれで良きでした。
エメット(音彩唯)の白綺華ちゃんは女っぽく、スカーレット(華純沙那)の星沢ありさちゃんはめっかわで、これもとても良きでした。
精霊のまるちゃんが可愛かったのと、若き日のエレノアの紗香にいなちゃんが素敵だったのも印象に残りました。
下級生が懸命に演じている分、役不足感がなくて、ファンタジー感も薄まるんだけれどフツーにいい「オトナのお伽話」に仕上がって見えました。そういう作品なんじゃないかなー、と思います。
大劇場公演は約1か月でしたが、東京公演は6週も7週もやってるんですよね…どうぞ大楽までご安全に、飽きずに、事故なく、楽しく上演されますように。
次の『パリアメ』とかせきょーバウも、楽しみです!!!