四季劇場海、2005年4月7日マチネ。
19世紀中頃、パリ・オペラ座。新作オペラ『ハンニバル』の舞台稽古中、突然背景幕が落下する。みなが「オペラ座の怪人」(この日は村俊英)の仕業だと騒ぐ中、プリマドンナのカルロッタ(種子島美樹)は降板してしまい、コーラスガールのクリスティーヌ(佐渡寧子)が代役を務めることになるが…原作/ガストン・ルルー、作曲/アンドリュー・ロイド=ウェバー、作詞/チャールズ・ハート、台本/リチャード・スティルゴー、アンドリュー・ロイド=ウェバー、日本語台本/浅利慶太、翻訳/安東伸介、演出/ハロルド・プリンス、日本版演出/浅利慶太。全2幕。映画版も公開中。
ウィークデイ・マチネの回だったからでしょうか、とりあえず話題作を安く観たい、という感じのいかにもなおばさまがたの観客が多く、幕間に「なんだか難しいお話ねえ」「『美女と野獣』はよかったわねえ」とそこここでため息がつかれているのが妙におかしかったです。
私からすると、映画版は逆に感情が克明に表現されすぎて、その解釈が引っかかることも多かったのですが、舞台では日本語の歌詞がどうしても苦しく、途中から言葉を聞くのをやめてただ音楽とドラマに身を任せてしまったので、かえって好きなようにお話の中に溶け込めてよかったんですけれどね。
でも、あらすじも何もまったく知らない人が日本版の舞台をいきなり観るのはやはりかなりつらいのかもしれません。クリスティーヌが怪人に抱く父への愛情をスライドさせたような慕情、師匠への尊敬の気持ち、芸術への愛着などといった感情と、ラウルへの幼なじみとしての思い出、大人の男女として再会してからの恋、健康で健全なものへのまっとうな指向などは、はっきり言ってあの日本語の歌詞では伝えきれるものではないと思います。だから誰と誰が何をどう争っているのか、わからなくなっちゃうんじゃないかなあ。加えて舞台というものを観なれていない人には、あの劇中劇の感じや舞台ならではの場面展開の感じがわかりづらいのではないでしょうか。そういう意味でも私は映画版の制作には意味があったと考えているのですけれどね。
ともあれ今回はクリスティーヌがあまりずるくも浅薄にも悪女にも見えず、紳士系よりは狂人系の怪人のせつなさ・悲しさが感じられて、というか自分で勝手にそういうところだけ感じて増幅して味わって、堪能しました。映画版の何がそんなに引っかかったのか、まだ劇場でやっているようならもう一度観に行って考えてみようかな。DVD発売まで待とうかな。
ところで私はジリー母娘のファンなのですが、マダム・ジリー(秋山知子)もメグ(荒井香織)もすごくよかったです。
そうだ、クリスティーヌが怪人から仮面を取り上げてしまうシーン、悲鳴は上げないんでしたっけ? 『ファントム』にはあったのになあ。私はクリスティーヌがここでは怪人の素顔を見なかったのかと思ってしまいました…
19世紀中頃、パリ・オペラ座。新作オペラ『ハンニバル』の舞台稽古中、突然背景幕が落下する。みなが「オペラ座の怪人」(この日は村俊英)の仕業だと騒ぐ中、プリマドンナのカルロッタ(種子島美樹)は降板してしまい、コーラスガールのクリスティーヌ(佐渡寧子)が代役を務めることになるが…原作/ガストン・ルルー、作曲/アンドリュー・ロイド=ウェバー、作詞/チャールズ・ハート、台本/リチャード・スティルゴー、アンドリュー・ロイド=ウェバー、日本語台本/浅利慶太、翻訳/安東伸介、演出/ハロルド・プリンス、日本版演出/浅利慶太。全2幕。映画版も公開中。
ウィークデイ・マチネの回だったからでしょうか、とりあえず話題作を安く観たい、という感じのいかにもなおばさまがたの観客が多く、幕間に「なんだか難しいお話ねえ」「『美女と野獣』はよかったわねえ」とそこここでため息がつかれているのが妙におかしかったです。
私からすると、映画版は逆に感情が克明に表現されすぎて、その解釈が引っかかることも多かったのですが、舞台では日本語の歌詞がどうしても苦しく、途中から言葉を聞くのをやめてただ音楽とドラマに身を任せてしまったので、かえって好きなようにお話の中に溶け込めてよかったんですけれどね。
でも、あらすじも何もまったく知らない人が日本版の舞台をいきなり観るのはやはりかなりつらいのかもしれません。クリスティーヌが怪人に抱く父への愛情をスライドさせたような慕情、師匠への尊敬の気持ち、芸術への愛着などといった感情と、ラウルへの幼なじみとしての思い出、大人の男女として再会してからの恋、健康で健全なものへのまっとうな指向などは、はっきり言ってあの日本語の歌詞では伝えきれるものではないと思います。だから誰と誰が何をどう争っているのか、わからなくなっちゃうんじゃないかなあ。加えて舞台というものを観なれていない人には、あの劇中劇の感じや舞台ならではの場面展開の感じがわかりづらいのではないでしょうか。そういう意味でも私は映画版の制作には意味があったと考えているのですけれどね。
ともあれ今回はクリスティーヌがあまりずるくも浅薄にも悪女にも見えず、紳士系よりは狂人系の怪人のせつなさ・悲しさが感じられて、というか自分で勝手にそういうところだけ感じて増幅して味わって、堪能しました。映画版の何がそんなに引っかかったのか、まだ劇場でやっているようならもう一度観に行って考えてみようかな。DVD発売まで待とうかな。
ところで私はジリー母娘のファンなのですが、マダム・ジリー(秋山知子)もメグ(荒井香織)もすごくよかったです。
そうだ、クリスティーヌが怪人から仮面を取り上げてしまうシーン、悲鳴は上げないんでしたっけ? 『ファントム』にはあったのになあ。私はクリスティーヌがここでは怪人の素顔を見なかったのかと思ってしまいました…