駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

韓流侃々諤々neo 14『赤と黒』

2024年09月07日 | 日記
 2010年、NHK・SBS共同制作、全17話。原題は『悪い男』。BS11で全17話で見ました。邦題は、愛と復讐、みたいなものをイメージしてつけたんでしょうね。ま、いかにもではあります。
 というかコレ、私、多分放送当時見ています。見ていないわけがない、ただし今回見ていても記憶は全然戻らなかったけど…でもこのむりくりな日韓合作感とか、主演の兵役で全20話予定が尻すぼみで終わったのとか、なんかうっすら記憶がある気がするのです…
 主役はキム・ナムギル演じるシム・ゴヌク。貧しいながらも両親とともに楽しく暮らしていた少年時代に、自分が父とは血がつながっておらず、母が財閥会長との間に産んだ子供だったと突然知らされて、その財閥ホン家に泣く泣く引き取られて…という、まあベタベタな、財閥もの、復讐ものです。
 ヒロインはハン・ガイン演じるムン・ジェイン。やはり貧しい生まれで、でも美術の仕事をしていて、財閥会長夫人のアシスタントをしています。ちょっと玉の輿を夢見たお金持ちの男にフラれたところに、ひょんなことからゴヌクと知り合って…という感じ。やや卑屈というか、上昇志向も中途半端な、暗めなところがよかったですね(笑)。
 ゴヌクは引き取られてホン・テソンという名になり、徐々に家族になじむものの、一年たったところでDNA鑑定をしたら血がつながっていなかったことが判明し、家を追い出されます。そのときに背中に大きな傷が残る怪我をさせられるは、迎えに来たもとの両親が交通事故で亡くなるはと散々で、長じて復讐に走るわけです。
 で、本当の息子だった、として入れ替わりに引き取られてきたのがキム・ジェウク演じるホン・テソン。ただし、会長夫人のシン・ミョンウォン(毎度のアボジオモニーズ、キム・ヘオク)はゴヌクのことはわりに可愛がったものの、テソンに対しては生さぬ仲として厳しく当たったようで、彼はすっかりグレたボンボンになったのでした。
 キム・ジェウクは実際に日本語が堪能なんですよね。それで無理やり日本の場面が作られたのかもしれません。それか、日韓合作ありきだったのでこの配役になったか…
 ヘシン財閥はもともと現会長夫人の祖父のものだったようです。現会長は、入り婿ってことはないんでしょうけれど、会長夫人からしたら夫の功績というよりはもともと実家の財産、自分の会社だという意識が強く、なのに夫が勝手に外で作った子供を押しつけられて、そりゃ嬉しいはずもありません。こういうドラマってこうした意地悪な継母が仇役になることが多いけれど、そもそも浮気した男が悪いんであって、その透明化は許しがたいですね。今回もホン会長はわりに鷹揚ないい人っぽい描かれ方で、私はちょっと納得いきませんでした。すべての元凶なのに…
 この夫妻には長男テギュン、長女テラ、次女モネがいるのですが、もしかしてテギュンとテラはシン夫人の連れ子なのかも。テラに関してはそんなような台詞がありました。テギュンはテラより年長なのかどうかもよくわからず…テギュンがゴヌクの罠にはまって失脚するより以前から、なんとなく後継者はテラ扱いだったようでもあり…カットのせいもあるのかもしれませんが、こういう設定のドラマなんだからこのあたりの血縁関係や利害関係はもっとはっきり提示したもらいたい、と思いました。少し年の離れた末娘モネが、唯一会長夫妻双方の血を引く娘なのかもしれません。
 ゴヌクはモネを誘惑し、テソンの秘書に収まって…みたいなところから、ドロドロの復讐劇が始まっていきます。
 テソンにはソニョンという恋人がいて、彼女もまた出自が貧しく、家族の反対に遭い、どうやら自殺ないし事故死してしまったようなのですが、その転落死にもまたゴヌクの影が…彼はソニョンと養護施設で姉弟のように育った仲だったのでした。なんかこのあたりは、結局どういうことだったのかよくわからないままに終わってしまったかも…
 そう、なんか全体に、設定はいいんだけれどストーリーに生かしきれていない印象のドラマで、萌えきれないままに最後はかなりドタバタして終わってしまった感じなんですよね。それが残念でした。こういうドラマはラストのカタストロフが大事なのに…!
 モネはまだお子ちゃまな女子大生なのでその嫉妬とか憎悪とかは可愛いものでしたが、テラはオ・ヨンスの薄幸そうな知的美女っぷりもあっていいキャラだったんですよね。家のために政略結婚して、可愛い娘にも恵まれて、でも夫は結婚前からの恋人と未だに仲が続いていて店を持たせてやったりしていて…悔しいし悩んでもいるけれど、気丈に平気なふりをしているところに、ゴヌクがひっそりと、優しくそばにいてくれるのにぐらりときて…というのは萌え萌えドラマチック展開だったのです。ゴヌクの方でも、モネのことはテキトーにあしらえても、テラに対しては同情もあったりして心が揺らいじゃうような描写があったのにー! それとジェインへの戦友、共闘感との間で揺れるような…そこがロマンスの醍醐味だったのにー!
 そして、「息子」の座を奪った存在に見えるテソンも、実際にはシン夫人に冷たくされ父親である会長はそれをそこまでフォローしてくれず、疎外感を抱いたまま成長し、人生になんの目標も持てないでいる悲しい青年なのです。ゴヌクは彼の秘書として働き、その実足を引っ張り出すわけですが、テソンの寂しい素顔に触れて友情めいたものも感じ出し、復讐の思いが揺らぐのです。ココがミソでした。
 ジェインは次の玉の輿手段としてテソンを狙い、けれどテソンが意外にいい人でとまどい、そしてテソンの方はジェインに惚れるのに、ジェインはやっぱりゴヌクが気になって…という関係性。このこじれ方を、もうちょっと丁寧にせつなくやって、盛り上げられていたら、同じオチでも印象はだいぶ違ったと思うんですよねー…どうしても、悪役たるシン夫人に関する描写がザルになっていたし、こじれ方が甘いからスッキリさ加減も減ってしまって、全体としては残念な出来のドラマになってしまっていたかな、と思いました。
 日本編も、まあまあちゃんとした役者が出ているんだけど、みんな片言日本語をしゃべっているように聞こえてくるから不思議です…
 でも、楽しく視聴しました。やはり韓ドラのこのノリ、全然嫌いじゃないのです…







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韓流侃々諤々neо 13『太陽の末裔』

2024年08月29日 | 日記
 2016年KBS、全24話。BS japanextで全16話で見ました。
 主人公はソン・ジュンギ演じるユ・シジン。韓国軍、特殊戦司令部の大尉。
 ヒロインはソン・ヘギョ演じるカン・モヨン。ソウルの大病院に勤める外科医。どちらかというと彼女視点で物語が進むので、彼女の方が主人公っぽいかもしれません。韓ドラでは兵役のエピソードはけっこう出てくるものですが、本物の職業軍人のキャラクターってなかなかいなくて、ちょっと馴染みがありませんものね。韓国の軍隊は対アメリカ的には自衛隊と近い関係なのだと思いますが、視聴者にとってもおそらくそこまでメジャーじゃなくて、モヨンの視点から特殊な仕事の、けれど魅力的な異性と知り合ってしまい…というとまどいやときめきとともにストーリーを追う形になるんだと思うのです。
 特殊戦、というのがまたミソで、実在するのかファンタジーなのか謎ですが、要するに単に戦争に駆り出されるのとはちょっと違って、紛争地域で要人警護をしたり、人質の救出作戦を請け負ったりするようなチーム、とされています。シジンはそのアルファチームのチーム長で、コードネームは「ビッグ・ボス」。若いわりには階級も上でもちろん優秀でチームの人望も篤いナイス・ガイ、素顔は飄々としていて軽口ばかりの一見優男ですが…という感じ。イヤもうこのキャラ造形がお見事でした。
 対するモヨンもとてもいいヒロインでした。カットされていたのかはたまた特に描かれていなかったのかはわかりませんが、勉強ができたし理系科目も嫌いじゃなかったのでそちらに進学した、どうせならお金を稼げる方がいいから医者になった、と嘯く女性で、家が医者一家なのでいやいや…とか幼いころ難病だったのを救ってもらったから…みたいな設定がなく、こちらも飄々としているのです。でも決してクールで冷酷ということはなく、かといってしゃかりきにタダでなんでも面倒見ます、なんてこともしないタイプです。病院内でもそれなりに出世したい、少なくとも正当に評価されたい、という要求はあって、でも腕もないのに愛想と賄賂で同期の女性がのし上がっていくようなのには歯噛みして、セクハラパワハラにも噛みついて、そうしたら干されて紛争地域への医療奉仕に行かされてしまい、シジンと再会して…というような展開です。アラサーなんだろうけれどこれまた飄々としていて、周りに結婚しろとか子供はどうするんだとか言うようなキャラがいないのもいいし、本人も美貌を褒められると「美人ですけど何か?」と返すような茶目っ気があり、変に煮詰まったり焦ったり悩んだりしていない、中年とは言わないけれどもうピチピチの若さではない、しか充実した日々を送っていて自分の足で立っている等身大の女性、というすがすがしい造形なのが素晴らしかったです。ソン・ヘギョは私にとっては『ホテリアー』のセカンドヒロインで『オールイン』や『秋の童話』のヒロインで、女子大生になるやならずやみたいなお役をやっていた印象が強い女優さんでしたが、まあ綺麗なお姉さんになっていて変わらず素敵な女優さんで、うれしかったです。
 四角関係…というかセカンドカップルは、シジンの部下ソ・デヨン(チン・グ)と女性軍医のユン・ミョンジュ(キム・ジウォン)が構成しました。デヨンは上士とのことですが、つまり下士官なんでしょうね。おそらく歳はシジンより上なのかなと思いますし、副チーム長で信頼し合っていてプライベートでも仲はいいんだけれど、ずーっとお互い敬語で話すんですよ、それがめっちゃ萌えました。任務を離れたらタメ語、とかじゃないの、ずっとお互いですます調でしゃべってるの。仲良しのふたりのそういうプレイなんだろうな、と思いました。チン・グがまた、私が以前韓ドラを見ていたころはまだ線の細い美青年枠のスターだったと思うんですけれど、いい感じに幅が出て男臭くなっていて、質実剛健なこのキャラにぴったりでした。
 ミョンジュは特殊戦司令部司令官の一人娘で、医師免許取得の際にモヨンと面識があった…んだったかな? 父親がシジンと結婚させようとして配属して、でもふたりともその気がなく、司令官の手前は婚約者同士のように振る舞うんだけれど、実際に出会って恋に落ちたのはデヨンとミョンジュで…というような関係性です。デヨンの階級が低いので、このおつきあいは司令官には認めてもらえないだろう、というある種の身分差の問題が発生しているのでした。
 ひょんなことから出会ったシジンとモヨンが、それぞれ派兵、派遣されたモウル(どのあたりがモデルなんだろう? 宗教描写は避けられているのかなとも思いましたが、イメージとしてはイスラム圏の、町もあるけれどたいていは砂漠…みたいな国、地域?)で再会して、お話は進んでいきます。8割方モウルでのお話だったかな? オールロケだったんでしょうか、すごいなあ…
 で、こういうドラマは日本では作られないな、とホント感心してしまったんですよね。そこがホント見どころありました。
 つまり日本でやろうとすると、もっと自衛隊プロパガンダみたいなものになっちゃうか、でないと『VIVANT』みたいなのになっちゃうんだと思うんですよね。あれはキャラクターの設定は似ていたかもしれないけれど、展開のさせ方が脚本的に、設定的に荒唐無稽すぎて変におもしろい方にいっちゃってましたし、ラブも絡めていましたけど、まあザルで残念な出来でした。それからすると、もっと全然ちゃんとしていました。
 まず、ヒーローもヒロインもどちらも人命を扱う仕事をしている、という捉え方が秀逸すぎました。もちろんシジンの方は必要なら暗殺めいたことまでするのが任務なんですけれど、自分も命懸けで、そういうギリギリ仕事で、一方でモヨンの方は医師なので、救える命はそれがどこぞの大統領だろうが村の子供だろうが全力で手を尽くす、という真剣さで働いているのです。その裏表なような、対等なような、な構造が抜群に効いていました。例えばヒロインがスーパーヒーローに守られるだけ、みたいな形にはまったくなっていないのです。ふたりが対立もする、共闘もする、なんなら彼女が彼の命も救うまである。
 その中でヒーローも、軍人なんだけれど、軍務で動いているんだけれど、でもそれは単に国家の利益のためではなくて、彼にとっての国家は国民を守るためにあるもので、国民の利益になるものだと信じられる任務については全力でがんばり、怪しいものには反抗する気骨がある人間として描かれています。そしてそれが主人公のキャラだから、信条だから、ではなく、この世界線ではこれが正しい考え方であり理想であり正義だ、ここが守るべきラインなのだ、とされているのです。この一線が引ける創作家が日本にはいないと思うんですよね、残念なことに…だから、特殊戦なんて架空の組織だと思うんだけれど、これを自衛隊に移してドラマにすることなんて日本では絶対にできないと思うのですよ。たとえやっても、ヒロインはこういう形では立てられないと思うんですよね…それが情けなくて、絶望的な気持ちになります……
 周りのキャラやひとつひとつのエピソードもとても良くて、なんとなくカットや編集には気づいていましたが、これはフルバージョン見たいな!と思いました。あとソン・ジュンギの顔がめっちゃ好みだったので(笑)、他のドラマも見てみたいです。
 セカンドカップルの方もホントいいんですよー! ミョンジュ父はいつものアボジオモニーズで、でもあまり軍の高官なんて役をやる印象がないおじさま役者だったので、それもちょっとおもしろかったです。
 オチもよかった。今回は無事だった、でも次はわからない。でもそれはみんなそうで、別に軍人じゃなくても、みんないつ車に撥ねられるかわからないし、未来なんて不確かなんです。だから好きなら、逃げずに食らいついて、つきあい続けるしかない。そういう前向きなラストシーンだと思いました。モヨンがぐだぐだ悩みすぎてかわいそうな自分に酔っちゃうようなタイプのヒロインじゃなくて、本当によかったです。それは医師という仕事から学んだシビアさもあるのかもしれない。でも大人だな、いいな、と自然に思えるのです。こういうヒロインの造形も、日本のドラマではまだまだないと思うのですよ…
 あとは、けっこう前のドラマだと思うんだけれど、モヨンの同僚にちゃんと車椅子の医師がいること。障害者でもごく普通に働いている、という描写が普通にあることが素晴らしい。これも日本のドラマにまだ全然ないでしょう。あとは助手席の相手にキスするために、運転手が自動運転スイッチを入れる描写! すごくないですか!? 韓国ってもうそんななの!? 驚いたし激しくときめきましたよ…!
 ホント全然進んでる…!と打ちのめされつつ、楽しく見てしまいました。有料チャンネルでないフルバージョン放送、お待ちしています!!








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『記憶ティアラ』マイ初日雑感&再びのトップ娘役絶対必要論

2024年08月26日 | 日記
 初日が開いて一週間、宝塚歌劇星組大劇場公演『記憶にございません!/Tiara Azul』を観劇してきました。
 原作映画は未見。三谷幸喜氏自身がプログラムに書いていますが、彼の作品は舞台より映画はライトなので、まあそれをさらにダーイシがどこまでいじってくるかによるかな…など思いつつ、とりあえずフラットに観ました。わりと映画まんまだったらしいですね? 田原坂46以外は、かもしれませんが…これもご当地アイドルというよりは選挙のキャンペーンガールみたいな感じで、まあまあ意味も出番もあり、楽しかったのでよしとしましょう。
 プロローグが今の政治や総理に不満を抱く民衆の声ソングで、そこからセットがハネたら大階段で、組閣のときによく見る赤絨毯の階段になっていて、大臣らしきスーツ姿の男女がバリバリ踊ってトンチキな「献金マンボ」を歌う…まあ、つかみはオッケーでしたね(笑)。その後も、暗転は多いかなとは思いましたが、それなりに上手く舞台化できていると思いました。わりとみんなに役があるのがいいな、とも思いましたしね。
 そもそもの映画からして、政治風刺の意図はなく、単なる政権コメディ、群像人情喜劇として作られているわけで、現実の政治がもはや笑い事では済まない事態になっていることを考えるとちょっとどうなんだ、と思わなくはないのだけれど、でもやっぱりそれを描くのは宝塚歌劇の役割ではないなとも思うので、そう割り切って観れば、こっちゃんの上手さ、達者さ、チャーミングさが光り生かされた、良き演目に仕上がっていたかと思いました。ちょっと『食聖』なんかにノリが似ているというか…こういうわちゃわちゃした群像コメディが今の星組は上手いんだな、と感じました。あと、現代ものなんだけどファンタジー、みたいな塩梅もちょうどいい気がしました。ざらりとした気にさせられるところもないこいもないことも含めて、ですが…
 私が意外に萌えて、かつおもしろく観てしまったのがありちゃん井坂(暁千星)さんとひっとん聡子(舞空瞳)さんの不倫ターンです。これは映画ママなんでしょうが、宝塚版ではカットされるのでは?など予想されていたかと思います。でもがっつり浮気していて(笑)、でもそれが自然だし当然だしなんかフツーですごくよかったんですよね。だって記憶をなくす前の黒田(礼真琴)さんってホント嫌な奴だったんだろうし、息子もほぼ育ち上がってて嫁の義務は果たしたんだし、関係が冷え切っているなら浮気のひとつやふたつしない方がむしろ不自然でしょう。聡子が、それでも彼を好きだから帰りを待つの…みたいなキャラにされていなくてむしろよかったです。
 聡子が井坂にどこまで本気なのか、とかはよくわかりませんでしたが、そのグダグダ具合も私にはちょうどよく見えました。アルゼンチンとかタンゴ云々とかも原作にあるのかな? とまれそんな縁があって、かつ夫の首席秘書ということでまあまあいつも近くにいて会うのに便利なんだろうし、ついしなだれかかっちゃって、井坂さんの方でも抵抗しとおすのも面倒でつい…って感じで後悔しているような、仕方ないかと思っちゃってもいるような…ってテキトーな感じが、わりとリアルですごくいいなと思ったのです。井坂さんも以前の黒田さんのことは仕えていても人間として嫌いだったんでしょうし、ぶっちゃけ仕事もできない男だと見下していたんでしょうが、その異種返しとか暗い復讐みたいな側面があまりなさそうな感じが、またよかったです。私がクール眼鏡スーツ男キャラが好みってのもありますが、ありちゃんの井坂さんが冷酷になりきれていない、かといって人間臭すぎもしない、絶妙なしょーもない感じでフラフラしそうなところを懸命にスッキリ立って見せているような感じだったのに、きゅんとしたのかもしれません(笑)。
 あと、ちゃんとダブル不倫なのもよかった(笑)。ひとつの場面で上下に区切って並行で見せるのはよかったですね。まあこのときの黒田さんには記憶がないので、ややかわいそうではありますが…前日に月組全ツ梅芸公演『琥珀色の雨にぬれて』を観たんですけれど、1920年代のフランスの四角関係がロマンチックで、令和(かな?)の日本のそれがダメってのはないだろう、と考えたというのもあります。男性の、とか男役の名誉?を取るならカットするとかマイルドにするとかもありえたのかもしれませんが、ダーイシの露悪っぷりなのかやっぱりある種のミソジニーの発露なのかはたまた何も考えていないのか、そのままやっていて客席もまあまあ笑っていたので(ホンと言うとマジョリティはフツーの主婦なんじゃないの?と思うと、こっそり青筋立てられてるのかもな…とも案じはしますが)、よかったのではないでしょうか。ギリギリの品もあったと思いますしね。
 記憶を取り戻した黒田さんが、記憶がなかったころの純粋さや真面目さも混ぜた新人格の黒田さんになって、心機一転やり直し、聡子さんともやり直したいと願い井坂さんに「妻と別れてくれ」と言う…というのも、情けないっちゃ情けないギリギリでしょうしそれこそ宝塚歌劇でなかなか観ないシチュエーションですが、こっちゃんがやっぱり上手くてちゃんと笑いを取るし、なんとなくほのぼのよかったね、とみんな丸く収まる感じになるのは、やはりトップコンビの魔法があるからだと思うのですよ…!
 なので、ひっとんの後任は立てない、という発表翌日の観劇だったのですが、「六人のオンナ」の場面はしょんぼり観ることになりました…妻のひっとんはともかくとして、ここで黒田さんを囲むのは家政婦の白妙なっちゃん、愛人の小桜ちゃん、秘書のうたち、政敵(?)のルリハナ、元カノ?の都優奈ちゃん…他にも田原坂に今回新公ヒロインの綾音美蘭、新公ヒロイン経験者のひよりんとなのたんがいるというこの多士済々の中で、誰も、ダメなんだ…?って気にさせられるじゃないですか…それは、ないよ……後述。

 カルナバル・ファンタジアは竹田悠一郎先生の大劇場デビュー作。とーってもよかったです! お祭りものは鉄板ではありますが、とても景気のいいショーで、終始楽しく観ました。アルゼンチンのグアレグアイチュ(ってどこ???)で行われているカルナバルからインスピレーションを得たのだとか…
 お祭りに、山車を出してグループで踊りまくるようなダンスチームの、お祭り当日の昼間から夜の本番、そして翌朝まで…といった一応の流れはあり、こっちゃんルカ、ひっとんエリアナ、ありちゃんイグナシオ…という通し役があるような、まあでもプロローグやフィナーレはないっちゃないような…なんですが、とにかく景気が良くて観ていてだんだんハイになって細かいことがどーでもよくなるタイプのショーで、楽しかったからいいのです(笑)。羽飾りがふんだんに使われて、ダルマもガンガン出てきて、ホッタイアレンジかな?のギラギラお衣装やらトンチキお衣装までゾロゾロ出てきて、進化系ひき潮みたいな裸足のデュエダンに泣かされ、フィナーレのデュエダンはこれまでアクロバティックな競技ダンスみたいなバリバリしたものを踊ってきたふたりがゆっくりと、空気を抱き合い動かし合うような、流れるように美しくシンクロする綺麗な振りを踊り、最後に銀橋に出てきて、こっちゃんがティアラをひっとんの頭に乗せる…ハイ、百億点です。
 あと、基本的には小桜ちゃんとシンメでしたが、でもやっぱり二番手娘役格はうたちだったと思うのよ…なんでダメなのよ、何がダメなのよ…正直、こっちゃんがゴネてるの?と邪推してしまう…だってきぃちゃんにもくらっちにもNG出したんでしょうからね。てかそもそも当人が卒業したがっているのを劇団が慰留しているんだとは思いますが…じゃあもういいじゃん、ありうたちかりん政権になっても問題なくない??
 そのありちゃんですが、二番手スターのセンター場面でショーの名場面って生まれていくものだと思うのですけれど、今回のタンゴはマジで絶品でした! こっちゃんとはまた違ったタイプのダンサーなんですよね、そして下級生のころにやたらただ踊らされていたのとは全然違う踊りが、いまやできるようになっているんですよこれは全ファンが惚れ直すヤツ…!! いやぁ圧巻でした。
 早くまた観たい! 次回は月バウとハシゴで行きます!! 台風、遠慮して!!!



 というわけで、これが「星組トップ娘役について」というニュースが出て翌日の観劇だったので、以前、宙組トップ娘役についての発表があったときに書いた「2016年観劇総括(と、トップ娘役絶対必要論と、年末のご挨拶)」の一部を加筆修正して、以下、再掲します。組や個人の名を変えたくらいでほぼ変えていません。つまり、そういうことです。恐ろしいことに、事態は、劇団はまったくなんの前進もしていないのです…

※※※

 さて、今年はまたまたあれこれ激動ですね。雪組トップスターと星組トップ娘役の卒業がすでに発表済みなワケですが…
 ひっとんの後任を立てないとされたことについては、発表が遅かったので怪しいなと思わないでもなかったのですが…正直、ショックです。
 だって夢白ちゃんの相手役を固定せず柔軟に対応します、とは絶対にならないわけじゃん。博多座『ミーマイ』だって『BIG FISH』だって十分柔軟な対応だったじゃん。なんなの?
 小桜ちゃんでは足りない、うたちでは早いというなら、あわちゃんでもみちるでもはばまいちゃんでもじゅっちゃん(これはないか)でも、誰を組替えさせてでも、とにかく誰かを次期トップ娘役として就任させていただきたかったです。誰でもいいわけではもちろんない、しかし誰かが必要です。あまとくんやつんつんを娘役に転向させるとか? でなきゃひっとんを慰留してほしかった。乱暴な物言いなのは承知しています、仮に名を挙げた生徒さんのファンの方々、すみません。
 でもそれくらい、トップ娘役の空位って意味がないことだと私は考えているのです。百害あって一理もないと言いきりたい。
 今のようなトップスター制度、トップコンビ制度が確立されたのは宝塚歌劇100年の歴史の中で昭和『ベルばら』ブーム以降のたかだか30年かそこらでしかない、だからそんなに大騒ぎすることではない…という言い方もできるでしょうが、しかし1/3近くも歴史があるなら十分に伝統だと思います。そしてトップ娘役の不在は過去にほぼ成功例を見ていません。てか成功例ってナニ? 歴史から学ばずして何をどう改善させ、未来につなげていけるというのでしょう。
 ターコさんの前にモックさんが卒業して、ターコさんが卒業するまでの1公演。サエちゃんの前にエミクラちゃんが卒業して、サエちゃんが卒業するまでの1公演。そしてまぁさまの前にみりおんが卒業して、まぁさまが卒業するまでの1公演…これらは暫定的な処置として、まだわからなくもありませんでした。
(イチロさんは、トンちゃんが卒業したあとすぐハナちゃんだった…よね? 違っていたらすみません)
 でもアサコのときは本当に観ていて楽しくなかった、つらかった。当人はミホコと一緒に卒業したかったのを慰留されたのかな、と私は思っていましたが、卒業までの3公演、結局はほぼほぼあいあいが各作品のヒロインを務めながらもトップ娘役扱いはされないという不遇を受け、男役二番手スターのきりやんがショーなどで女役に回ってデュエダンの相手を務めたりと、不規則で不自然な状態が続きました。あまりにもあまりでした。
 のちに当人も相手役がいなかった時期はつらかった、みたいなことを語っていますし、この空位のあと月組トップ娘役に就任したまりもも見本がなくて困惑した、みたいなことを語ったことがありました。あいあいも、打診されて断ったとかではなく、なる選択肢がそもそも与えられなかったのだ、というようなことをのちに語りました。みりおも、当時の娘役たちに目標がなくなって空気が悪かった、とのちに語りました。だからみりおは、何人替わっても必ず相手役を持ったのではないかしらん…
 生徒たちにそんな負担をかけてどーする、と劇団には言いたい。
 何より、常に主演する役目を負うトップスターとって、固定された相手役がいないことは負担になると思うのです。トップ娘役という固有の相手役が持てることはトップスターだけの特権、というよりむしろ権利だと私は思う。そういう共闘するパートナーがいないとしんどすぎて耐えがたいくらい、トップの大任は重いのだと思う。だから劇団には相手役を与える義務があるのではないか、とすら私は思うわけです。
 多様な作品でたくさんの娘役に個性を発揮する機会を、なんておためごかしにすぎません。だってぶっちゃけそんな筆力ある作家がいないじゃん。ヒロインひとりですらまともに描けていないくらいの作品を平気で上演しているくせに、ちゃんちゃらおかしいです。
 誰かを次期トップ娘役にしないということは、みんないいから選べない、と言われているというより、みんなダメだと言われている気が私はしてしまうのです。それが悲しい。
 仮に帯に短し襷に長しだろうがなんだろうが、立場が人を育てるということは絶対にあるんだし、誰かに決めてやらせてみればいいんです。絶対的と思われる二番手格がいたって、そのトップ就任にはガタガタ言う人は必ず存在します。誰に決めたって文句は必ず言われるんですよ劇団は、だからそういうことは無視して誰かに決めるしかないんです。そのために他の生徒をやめさせるようなことだって、今までさんざんしてきたじゃないですか。トップスターを1公演でやめさせることすらやってきたのに、何を今さら日和っているの? 何が怖いの? 何を目指してるの?
 女性は、あるいは日本人は、あるいは宝塚歌劇ファンは、清く正しく美しく、確立された規律に従い遵守する傾向が強いと思います。だから例外を嫌う、不測の事態を嫌う、ということもあるかと思います。でもそれより何より、この措置の意味がわからないから嫌なのです。いいことだと思えないから嫌なのです。
 逆に言えば誰が就任しても、そう決められれば、文句を言いつつも結局は受け入れるし観に行くんですよ。だってファンだから、だって決まったことだから。
 でも、トップ娘役を置かない、という決定は受け入れがたい。少しも早く収拾して、星組次期トップ娘役を決定していただきたいです。
 キムお披露目の際に相手役たるトップ娘役を定めず、ヒロインをダブルキャストで上演したときも、結局その状態は1公演で終わりましたよね。あれもなんの意味もなかったと思っています。今回も早々にそういう判断が下され、方向転換されることを祈ります。
 セクシャルマイノリティなど、多様な愛と性の在り方が顕在化してきた現代において、変わらずマジョリティであるのが男女の異性愛だと思われますが、現実においてはまだまだ幸せな帰結を見ることが少ないじゃないですか。お互いの無理解や無理強いや、不平等な婚姻制度を始めとする社会制度の不備、さまざまな抑圧や偏見、家事育児仕事の不均衡の問題などなど幾多の障害が山とあり、美男美女がお互い対等に愛し合い信じ合い許し合い支え合い幸せになることなど、まさしく夢物語の中にしか存在しないのが現状です。
 その夢物語を紡いでくれるのが宝塚歌劇でしょう。そして私たち観客はそれを観て、ただの夢物語に現実をひととき忘れるだけの逃げ場とするのではなく、現実が目指すべき理想の姿、あるべき未来の指針を見て、より良い明日目指して日々の現実を生きる心の支えにしているのだと私は思うのです。愛し合い、支え合い、人と関わり合いつながり合うことは美しい、と思いたいから、信じたいから、それを見せてほしいのです。だから宝塚歌劇を観るのです。
 青春を捧げて己を鍛え光り輝く生徒たちの真ん中に、常に結ばれるカップルを演じてくれる最も美しい一対の男女(役)がいる…そのことがどれだけ大切で重要なことか、想像できないというのなら、それはあまりに鈍感にすぎませんか? 組のトップスターとトップ娘役は、その男女のカップルを常に演じ、舞台の上で真実の愛を生き、美しい輝きを放ってくれる存在なのです。大切でないはずがない。
 そしてそこにはただひとりのトップスター、そのただひとりの相手役、という魔法が必要なのです。現実はそう単純にはナンバーワンにもオンリーワンにもなれず、一対にもなれていないからこそ、絶対に絶対に必要な魔法なのです。
 誰でもいいなら、どんな組み合わせでもいいなら、その魔法は消えてしまう。というか、それでもファンは、各自の贔屓をすでにそのように愛しているのです。トップになることがすべてではないこともちゃんとわかっているから、トップになれなくても、ならなさそうでも贔屓を愛している。その上で、それでもそこにトップコンビが存在していること、それが大事なんじゃないですか!
 ただひとりの男と、そのただひとりの相手の女、という幻想を女が手放したら、人類は滅亡します。今、その幻想が手放されつつあるから、非婚化と少子化が加速度的に進んでいるんですよ…それでいいの? いいわけないよね??(いやホントはソレでもいいんだけど、それが人類の進化の行き先なんだけど、それはここでは置きます)
 ことありは仲良しだし相性もいいからトップコンビの代わりでもいいじゃん、とは私には思えません。ありちゃんが娘役に転向するとかでないなら、二番手男役スターがトップスターの相手役だとは私は言いたくない。そもそも男女の異性愛すらなかなかまともに描けていないのにBLやろうなんてちゃんちゃらおかしい。というかそもそもそういうニッチなジャンルにメジャーは手を出すべきではないのである! メジャーの矜持を持たんかい!!
 私はトップ娘役の不在に反対です。できる手段で劇団に意見を伝えていきたいと思います。
 …でも「高声低声」に投稿してもボツなんだろうなー……がっくし。
 















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初ソウルひとり旅日記

2024年08月18日 | 日記
 ひとり海外旅行なるものをしてみむとてすなり、と50歳の誕生日を迎えにマカオに旅立ってから5年…コロナ期は都内ホテルステイで誕生日を迎えてきましたが、そろそろ!海外に!行きたい!と思い立ちまして、冬の終わりにはさくっと予約していました。11年ぶり、14度目のソウル、初めてのひとり旅です。
 私は2003年末の『冬のソナタ』再放送にハマったクチで、そこから約10年間くらいが絶賛韓流期でした。ご多分に漏れずペ・ヨンジュンにハマったので(ジャニーズのアイドル俳優が俺様キャラでブイブイ言わせていた当時、あの優しさ、柔らかさは本当に新鮮で衝撃的だったんですよ奥さん…!)「トモトモのヨンヨン日記」というブログを始め(笑)、のちに「トモトモの韓流侃々諤々」と改名して、韓ドラの感想や韓国旅行記を書いていたのですが、ブログサービスの中止でよそに移せないまま塵と消えたのが本当に悔やまれます…(初期のプリントアウトはまだ実家にとってある気もするのですが)
 何故か初ソウル旅行の記録が残っていないのですが、おそらく04年には行っていて、05年、06はともに3回出かけており、以後年1ペースで行っていて、13年9月に行ったのが最後になっていました。14年に仕事でわりと大きな異動をしたので、そんなことも関係していたのかもしれません。チェジュとプサンにも行きました。『冬ソナ』に一緒にハマった母親と行ってロケ地巡りをしたこともありますし、友達とも景福宮などのたいていの観光地は回って、後年はほとんどソルロンタンを食べてチムジルパンに行って、ロッテ百貨店の地下食品売り場でキムチを買って南大門で韓国海苔を買って明洞でシートマスクを買って…みたいな買い出し旅をしていたと思います。
 今回は、初の韓国ミュージカル現地観劇!がメインとなりました。東京以上に暑いとは思っていませんでしたが、楽しい旅となりました。その簡単な日記です。

 飛行機はお昼すぎの便だったので、9時過ぎに自宅を出て羽田空港第三ターミナルへ向かいました。飛行機とホテルだけのフリーツアーでしたが(ちなみに2泊3日で11万円オーバーとか、私は初めてのことだったと思います。たいていは8万円台くらい、安いと4万円台のツアーで行っていたので…)、今どき事前にeチケットが発券されず、チェックインカウンターでおたおたしていたらスタッフのお姉さんが声をかけてくれて、予約番号とパスポートの登録だけでパパパっと紙チケットを発券してくれました。まあまあ前方の窓側席が取れていたようで、ラッキー! スーツケースは機内に持ち込めるサイズだったので預けず、契約しておいたWi-Fiルーターを受け取り、3階のフードコートで豚玉をブランチにいただいて、出国審査に向かいました。パスポートの写真は眼鏡をかけていないんですけど、マスクだけ外して眼鏡のままで立っても顔認証はパスしました。トイレに行ったらもう搭乗時間、くらいだったかな…そんなに混んでいたわけではないんですが、やはり空港って何かと手間取りますよね。
 あ、念願の募金ができてよかったです。私はバブル育ちとはいえ同世代の旅行好きから比べたら全然あちこち行っていないほうだと思うのですが、旅先で両替した現地通貨の余りをずっとしつこく持ち続けていて、でももうドルとユーロと台湾元と韓国ウォン以外はそうそう使わないだろうし、寄付してしまいたい!とずっと思っていたのです。パンダ用の募金箱みたいなのが確か空港にはあったはず…と重い思いをして持参してきたものを、やっと手放せました。能登半島地震復興支援、とされていたようなので、少しでも役立つならうれしいです。まあ量があるだけで額はたいしたことがなかったかもしれませんが…(><)
 飛行機は2、3、2席の小さいもので、お隣は韓国人のおじさまでした。羽根の前で見晴らしが良く、ご機嫌で着席し、映画『ソウルメイト』を再生し始めました。2時間ちょっとの映画でしたが、なんと残り15分ほどというところで到着してしまってオチが見られず、オンタイムが過ぎる…!と歯噛みしました。機内食はチキンと蒸し野菜みたいなの。コチュジャンペーストが付いてきましたが、味がなくてあまり美味しくなかったかな…
 入国審査にはまあまあ並びましたが、並んでいる間にスマホにWi-Fiルーターのパスワードなど入れて、特に問題なく通過。現金は150,000Wほど持っていて、15,000WほどチャージされたT mоneyカードも持っていたので、両替などには寄らずにそのまま空港鉄道と地下鉄で街中へ向かいました。鉄道駅まではまあまあ歩かされる印象でした。11年前もこんなだったかな…? たいてい4人組とかで来ていたので、さくっとタクシーに乗っていたのかもしれません。割り勘すればたかが知れてますからね。
 でも今回は、地下鉄の安さのありがたみを感じたなあ…空港からは300Wプラスでしたが、地下鉄だけならけっこう乗ってもどこでも1,400Wですもんね。東京の地下鉄って4、5駅乗ったらもう運賃が上がるじゃん…ただ、東京の方がバンバン来るし、乗り換えも近いな、とは感じました。ソウルの地下鉄は乗り換え案内アプリが示す移動時間では絶対に着かないです。
 ホテルは新羅にもロッテにも泊まったことがありますが、たいていはロイヤルか世宗、あとはコリアナなんかに泊まってきて、今回は以前も泊まったことがあるサヴォイホテルにしました。というわけで最寄り駅は明洞です。4号線、実は不便なんですよね…2号線が乗換駅がたくさんあって最強という印象です。なので乙支路入口駅から歩いてもよかったんだけど、荷物があるし暑そうだし…と、二度も乗り換えて(ソウル駅の乗り換えは歩かされそうで嫌だったので)明洞駅まで行きました。ホームを降りたとたんにシスターに行き会い、明洞聖堂があるからかシスターをよく見かけるよな、ああ明洞に来たなあ…!と感慨深かったです。
 そして駅も地下街も別に全然綺麗になっていなかった(笑)。ファッションビルとしてのミリオレはなくなってしまったのかな? でもあいかわらずゴタゴタした感じは変わらない出口で、平日の昼間からゴタゴタ屋台が出ている大通りも変わらず、石畳みも綺麗になっていないし、白人さんも日本人観光客もわあわあ沸いてるし、逆に中国人らしき観光客はそれほど見かけないような…?というゴタゴタした中を歩いて、ホテルにチェックイン。ツアーのバウチャーも見せようとしましたが、パスポートを見ただけでキーをくれました。クレカの提示もナシ。
 部屋はダブルベッドのシングルルームで、サイトではシャンプーしかないとなっていましたが、リンスもボディソープも何故かボディローションもありました。洗顔フォームや歯ブラシ、歯磨き粉はナシ。一応小さな環境保全活動として、遠征とかでもマイ歯ブラシと歯磨き粉は持参しているので問題ナシ。もちろん浴衣もありませんが、これも遠征用のパジャマ代わりのTシャツとズボンを持参しているので問題ありません。タオルが2組用意されていたので、なら翌日も掃除やタオル交換は頼まなくていいや、と荷物を心置きなく広げて巣作りしてから、16時過ぎのまだ暑い街へ出かけました。
 化粧品店など流行りで入れ替わっているのかもしれませんが、昔とそう大差はない印象でした。韓流にハマっていたときは、広告に使われているスターを見つけてはキャアキャア言っていたなあ、と思うと懐かしいです。ネットでいい感じのカフェをピックアップしていたのですが、地図のところになく、閉店してしまったのかな…と、流れで別に見かけた、明洞にしては小洒落たお店に入って、マンゴーピンスで一服…てかめっちゃ暑い。滝汗。水筒減る減る。ホテルのエレベーターに天気予報が貼られていましたが、予想最高気温が連日36℃とかでした…
 明日行くつもりの神仙ソルロンタンの前まで行ってみたら、二軒ほど右手に移転していて、元の店舗は工事中でスシローになるようでした。おおお…でも、あってよかった!
 乙支路入口から新沙まで地下鉄で移動して、カロスキルをお散歩。ここもなんかあまり別に綺麗になっていないというか、あいかわらず工事中のビルも多くて、スッキリ栄えきっていない印象でした。以前も何かを購入した記憶があるアクセサリー屋さんがまだあったので覗いてみて、いい感じのお安いピンキーリングがあったので購入。そのまま付けて出ましたが、やや緩くて、旅行中に三度落としました…(^^;)
一本裏手の通りも散策して、ガイドブックでチェックしていた「オーサム・ローズ」というイタリアン・レストランに入りました。店名も看板も内装も薔薇のモチーフで、メニューにも食用の薔薇が取り入れられているそうで、翌日の『ベルばら』気分を盛り上げるためにもここで食事がしたかったのです。店内はカップルもいたけれど基本的に女性客ばかり。小洒落ていて、いい雰囲気でした。グラスの赤ワインも美味しかった! 帰りにピンクの薔薇一輪をお土産?にいただいたのですが、旅先でもらっても…という感じで、ホテルの部屋で愛でて、そのまま置いてきました。お掃除のスタッフさんとかがもらっていってくれたかしらん…
 その後、女性専用スパ「スパ・レイ」に行ってみました。チムジルバンもあちこち行き倒しましたが、ここは初めて。いわゆるスーパー銭湯で、ガイドブックで謳われているような高級スパでは全然ありませんが、小綺麗でコンパクトながらお風呂もサウナもいろいろあって、私はとても満足しました。入場料だけなら20,000Wでした。
 下駄箱に靴を入れて、その鍵を受付に預けて入場料を支払うと、ロッカーの鍵とタオルと館内着をくれる、よくあるシステムです。受付はビルの地下、ロッカーや大浴場は地下2階、ビルの3階には露天風呂もありました。お風呂はぬるめのも熱めのもジェットバスもあり、ミストサウナや、なんかいろいろ効能がありそうな熱い小部屋もいくつもありました。もちろん頼めばアカスリやマッサージ、エステなんかも受けられるようです。露天風呂はぬるめで、雨天でも入れるような屋根がかかっていたので、露天感はあまりありませんでしたが、屋外の解放感はあってとても良きでした。館内着でくつろぐ屋外テラスや、レストランなんかもあります。寝ころべる休憩室には何やら素敵な美術品なんかも飾られていて、雰囲気よかったです。ホテル代わりに泊まっちゃう人も多いようですね。ただし私がいた数時間は、観光客はおそらく私だけで、あとはフツーに現地の方々が老いも若きもゆっくりしに来ている…という感じでした。
 久々の汗蒸幕が本当に気持ち良くて、出たり入ったりぐーたらしたりを繰り返して、フリーWiFiもあるのでネットなどもして、すっかりのんびりしてしまいました。
 でも私には24時を回った誕生日当日は素敵バーで迎えるのよ…!というしょーもなくバブリーなプランがあったので、ぼちぼち支度してまた地下鉄に乗り、緑莎坪まで行きました。新しいのかやたら大きく、深い駅で、地上に出るまでにものすごく時間がかかり(六ヒルみたいなエスカレーターでした)、出たら地図にない歩道橋ががんーんとある大きな道路が通った街で、お店を目指すのに難儀しました。歩道橋からちょうどソウルタワーが綺麗に見えたのですが(あとで知ったのですが『梨泰院クラス』のロケ地だったそうです)、そのソウルタワーが眺められるバーにたどり着きたいのよ…!とウロウロしているうちにラストオーダーの23時に間に合わなさそうになってしまいました。なので、途中で向かうのをあきらめ、手前に朝5時までやっていてバーだけどデザートも出す、みたいなお店の看板があったので、そちらにふらりと入ってみました。ほんのり暗いけれど怖くはない、小さな洒落れたお店でした。
 カウンターで注文と支払いを済ませるシステムで、ガトーショコラとグラスの赤ワインをオーダー。お店の奥のハイテーブルに着いたら、お兄さんがケーキのお皿とグラスとボトルを持ってきてくれて、いいところで止めるよ、という感じでワインをどドボドボ注いでくれました(笑)。グラスの真ん中ぐらいで止めてもらって、超濃厚なチョコレートをパクついているうちに日が変わり、無事にお誕生日を迎えたのでした。満足!
 まだ地下鉄がギリギリある時間でしたが、混んでゴタゴタするのも嫌なので、さくっとタクシーを拾いました。「ミョンドンヨクカジ、カジュセヨ」くらいならちゃんと通じて、何度か通った記憶がある南山をくぐるトンネルを進む道路をスイスイ行って、10分千円くらいで戻れました。
 ホテルのバスでゆっくり洗髪して、ベッドのマットレスもいい感じだったので、ころっと寝ました。まあホテルあるあるですが、冷蔵庫と水道管の音が何やらうるさかったかな…

 翌朝は9時過ぎに起床、昨日よりは薄曇りな感じ。
 支度して神仙ソルロンタンに向かうと、まあまあ行列ができていました…20分ほど待って入れましたが、中は新しく綺麗になっていましたが以前の店舗と作りはほぼ同じ。そしてアジュンマの数が足りていなくて席の回転が遅いんだな、という印象でした。でもソルロンタン(10,000W)はやっぱり美味しかった…! 私はスープを一口飲んだらすぐごはんを投入し、後半は胡椒とキムチを足して味変し、最後までいただきつくすスタイルです。はー、しゃーわせ…
 地下鉄で安国駅へ行き、ぼちぼちお店が開きだした仁寺洞を散策。まあサムジキルが好きなんですけど…アンニョン仁寺洞は以前からあったかなあ? 中庭がフリマみたいになっていて、チャミスルと辛ラーメンのピンバッジを購入(笑)。あとはお土産屋さんで、韓服を模したような可愛い封筒を見つけ(1,500W)、チケット代のやりとりなんかに使ってもらえるかな、とお友達たち用のお土産にまとめて10枚買いました。途中、小洒落たカフェでストロベリーラテで一服…
 僧服というのか、お坊さん姿の男性をここではよく見かけますよね…
 今度は駅の北側に行って、三清洞を散策。景福宮の外壁だけ眺められましたが、やはりいいものですよね…ガンガン歩きすぎて目当てのお店を通り過ぎてしまったりもしましたが、無事にランチにコンスンドゥブチゲがいただけて満足しました。冷房キンキンの室内で熱い鍋、コレですよ…!
 再び地下鉄で、東大門歴史文化公園駅まで移動。私が知っている東大門じゃなかった…! イヤよく見たら通りの向かいにミリオレもドゥータもハローapМもありましたが、なんせ新しくできたらしい東大門デザインプラザが、なんかこう近未来的な、SFチックなどかんとした建物で、みっつの棟がおそらくわざとわかりにくくあいまいにつながっていて、まあ迷子も楽しいっちゃ楽しいんだけどとにかく広くて、オシャレ雑貨のデザインラボなどいろいろ覗きつつウロウロしましたが、やや鼻白んで撤収…
 地下鉄で弘大入口駅へ。乗り換えでは何度も使ってきた駅ですが、街へ出たのは初めて…かなあ? 記憶がありませんでした。というか、まったく趣味でない若向きの服屋ばかりが並ぶ大通りが激混みで、滝汗になりながら撤収…二駅移動した梨大は、大学が夏休みだからか大通りに屋台も出ていなくて、お店もスッキリ上品で、こちらのほうが趣味に合いました。またまた小洒落たカフェでアイスラテをいただき、特に買い物もなく、一度ホテルに戻りました。
 新堂まで移動して、忠武アートセンターへ。韓国ミュージカル『ベルサイユのばら』を観劇。いやーめっちゃよかったおもしろかった、良きバースデー・ナイトになりました! 飲んで帰りたかったけれどいい感じのバーがなかったので、地下鉄でまっすぐホテルに戻り、下のコンビニでロゼのスパークリングワインなど買って部屋飲みしました。ここで150円分くらい持っていた硬貨をすべて使い終えて、満足(笑)。お呂に入って就寝…

 早くも最終日、やはり9時過ぎに起床。荷造りしてチェックアウトし、スーツケースを預けて、最後の一回くらいが足りなくなりそうだったのでコンビニでT mоneyカードに10,000Wチャージ。このあと南大門市場に行くつもりで、そこでは現金しか使えないかなと思ったのですが、それも残り少なかったので1万円を両替。92,000Wになりました。まあまあのレートかな? ちなみにタッチ式のクレカを持参してきましたが、すべて差し込み式で、暗証番号なしで決済されました。
 10時半開店の明洞餃子に並び、開店一番に入れて、カルグクス(11,000W)をぺろりといただきました。付け合わせのキムチがめっちゃ辛かった…!
 で、南大門市場で韓国海苔を買い込みたかったのですが、どうもあまり安くない…まあここから値下げ交渉をがんばるものなんでしょうけれど、なんせ暑いし面倒になっちゃって、何も買わずに、またまた小洒落たカフェがあったのでマンゴーラテで一服。地下鉄で銅雀まで行けば途中は地上に出て、漢江を渡れて眺めがいいので、最後に見納めに往復してから明洞に戻り、コリアマートでがさっと海苔を買い込み、テキトーな化粧品屋さんで十枚セットの一袋を買ったらもう一袋ついてくる、みたいなシートマスクをお土産に買って、ミッション・オールクリア、となりました。
 ホテルに戻ってスーツケースを引き取り、来た道を帰って金浦空港へ。最後の乗り換えで空港鉄道の表示が途中から変わっていて、混乱して迷子になりましたが、なんとか無事に着けました。帰りの便はオンラインチェックインの案内が事前にショートメールで来ていたので、そのまま出国審査。搭乗まで1時間弱あったので、ハイネケンとフライドポテトなどつまんでしまいました。そういえば今回は韓国ビールを飲まなかったな…
搭乗もスムーズで、またしてもオンタイム離陸。『ソウルメイト』の続きを見て、さらに短いからと選んだ『プリシラ』は全然おもしろくなくて、しょんぼり…機内食はシーフードのトマトソースパスタでしたが、これが美味しかった! まあバストはソフト麵みたいな感じでしたが、具もソースも美味しくて、空港で食べたばかりなのに完食しちゃいましたよ…!
 着陸もオンタイム。機内で税関申告書をもらわず、申告する物もないしいいか、と思っていたらなくても出さなくてはならないようで、急遽その場で書いたりもしましたが、問題なく入国できて、京急など乗り継いで帰宅しました。やはり東京の方が早朝や夜はちゃんと気温が下がってマシな気がしました。ソウルは夜中でもホント暑いままでした…!
 なんせ旅慣れすぎているのもあって荷解きは一瞬で終わり、お風呂に入って旅の埃を落とし、一息ついてもまだ20時くらいだったでしょうか。若いころはギリギリいっぱいまで遊んで帰ってきたものでしたが、もうオトナなので早めに帰ってゆっくりするのです…前日とこの日の分の朝ドラの録画再生なんかしていると、無事に日常に戻って来られたぜ、と思えて、旅の疲れも取れるようでした。
 翌日も夏休みにしていたので、洗濯しまくり、足裏マッサージに行って疲労をリセットし、二度目の海外ひとり旅も無事終了…と思えました。スリにも引ったくりにもぼったくりにも遭わず、やりたいことはだいたいやってこられました。テツとしては、楽園駅という名の、線路を囲んで韓屋が並ぶような作りだそうなカフェに行きたかったんですけれど、うまく時間が取れなかったのが残念でしたかね…(あと、行くのにめんどくさそうな場所にあって、暑い中に迷子になりながら向かう元気がなかった…)
 ま、ホント近いし、一応ハングル読めるし、物価がバカ高い気もしなかったので、また気楽に観劇旅行とかにホイホイ来たいな、とは思いました。
 そしてそれとは別に、誕生日にやたら出歩くのももういいかな、と思うくらいにはオトナになりました(笑)。海外旅行は友達と行ってもいいし、ひとりで行くんでも仕事が休めるなら別の時期でもいいんだし、来年以降はまたしばらく実家に帰って、ぐーたらしつつ親に祝ってもらう誕生日にしよう、と考えたのです。うちの親はありがたいことにピンピンしていますが、しかしそれも限りある時間かもしれませんしね…

 とりあえず、来月には親友とふたりで、さくっとロンドン旅行に行ってくる予定です。旅支度は今回でだいぶ準備ができたので、あとは何をしてどこに行くか、いろいろ調べないとなー…ガイドブックは買いました。翻訳アプリと通貨換算アプリは、今回スマホに入れたものそのまま使えることでしょう。
 ロンドン、25年くらい前に仕事で一昼夜くらい行っただけで、全然記憶にございません、なのです…
 楽しみです! おくわしい方いましたら、オススメなとコメントくださいませ!!














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韓流侃々諤々neo 12『ピノキオ』

2024年08月11日 | 日記
 2014年SBS、全20話。BS Japanextの放送で全20話で見ましたが、時間的におそらくカットあり。

 第一話がちょっと変わっているというか、え?テレビの高校生クイズ番組の話? こういうの、韓国にもあるんだねえ…みたいな感じで、なんの話かさっぱりわからないようなところがありましたが、その後はなかなかおもしろかったです。萌え萌えで見ました。後半はちょっと失速したかな…
 簡単に言うと、デマとか偏向報道による被害、みたいなものをテーマにした、なかなか重い物語でした。それをちゃんとラブコメというかホームドラマに落とし込んでくるんだから、韓ドラってやっぱりすごいです。
 主人公はイ・ジョンソン演じるキ・ハミョン。モデルもやっている俳優さんだそうですが、私は初めて見たかな? ハミョンを名乗っていた時代はほぼ子役です。時系列で説明すると、彼の父親が消防士で、とある出火に出動して人命救出に奮闘するんだけれど、悪く報道されて、追いつめられた長男はテレビ局に訴えに出て逮捕され、母親は次男である彼と無理心中しようとして、彼だけが生き残り、ヒロインの祖父に助けられるのです。
 ヒロインは『相続者たち』でも見たパク・シネ演じるチェ・イナ。こういう庶民派ヒロインが絶妙にハマる女優さんですよね…! タイトルは彼女が、嘘をつくとしゃっくりが出るという「ピノキオ症候群」に罹っている、という設定から来ています。童話のピノキオは嘘をつくと鼻が伸びるんでしたっけ? それで周りにすぐバレるので嘘がつけない、ということでしたよね。しゃっくりかどうかはともかく、嘘をつくことに過剰にストレスがかかるような神経症みたいのものは実際にあるのかな?とか思ったのですが、ドラマの中ではイナは嘘だとわかっている話をしゃべるとしゃっくりが出る、というだけでなく、疑わしい、信じ切れないというだけの話をしてもしゃっくりが出ることになっていて、そんな嘘発見器みたいな機能はさすがに人間にはないだろう、とはちょっと思ってしまいました。というか人間は1時間も話せば、大小含めて嘘のひとつやふたつ出るものなのでは…
 それはともかく、イナの祖父はややまだら呆けみたいになっていて、それはイナの父親の兄である長男を子供のころに亡くしているショックのせいもあるようで、助けたハミョンを長男ダルポだと思い込み、記憶がないようだし家族もいないようなので引き取って、一家四人で暮らし始めるのです。イナの父も話を合わせて彼を「兄さん」と呼び、イナも彼を「伯父さん」と呼んで暮らす、のどかで愛ある家族です。イナとダルポは同じ歳で、幼馴染み兼同級生として育つわけです。韓ドラあるあるですね…!
 イナには離婚して家を出ていった母親がいて、彼女がほぼセカンドヒロインです。『キム・サブ』で私が萌え萌えだった、だいもんにしか見えないチン・ギョン演じるソン・チャオクです。家庭人には向かないタイプの職業婦人で、今やプライムタイムのニュース番組のアンカーウーマンを務める敏腕報道記者、有名人です。イナには母親への思慕があって、ずっと母親の携帯電話に近況メールを送っていたのですが、実は彼女はもうその電話を使っていなくて、イナのメールをずっと読んでいたのがキム・ヨングァン演じるソ・ボムジョでした。彼は文面からいつしかまだ見ぬイナに恋をしてしまい…というような関係性です。
 イナとダルポは報道記者を目指すことになり、同期にユン・ユレ(イ・ユビ)という女性も登場してきて、ひょんなことからダルポが自分のことを好きなのでは、と誤解するのですが、そこで四角関係になるというよりは、あくまで気のいい同僚、という感じで好もしかったです。
 また、イナを好きになりやはり報道記者を目指すボムジョは、実はデパートなどを手広く営む財閥の女社長のひとり息子で、よくあるケースなら悪役の恋敵になりそうなものですが、終止好青年だったのもよかったです。母親がビジネスのため、と法律ギリギリ、あるいは裏で悪いことをしているのを知って苦悩するところがまともだし、イナとダルポが惹かれあっていることを知ってからの言動も人としてちゃんとしていました。ここが気持ちよかったのは、この物語においてけっこう大きかったと思います。
 結局、ダルポの父親を偏向報道で悪者に仕立てたのはチャオクであり、イナはダルポにとって親の敵の娘になるという、これまた韓ドラあるあるの絶妙な構造です。チャオクは出世欲や功名心があるバリキャリで、真実よりもテレビ受けを狙うレポートをするタイプの記者なのでした。ここに、ダルポの兄が復讐を謀って…とか、兄弟の邂逅があって…とか、イナとダルポの恋にふたりは「親戚同士」なのだから、と父や祖父が反対したり…とかでドラマはテンポ良く進んでいくのでした。おもしろかったです!
 チャオクがある種の悪役の座を降りてからの後半は、そういう偏向報道には実業家や政府への忖度があって…とか金権政治の弊害が…みたいなことにもなっていくのですが、やや大味というかステロタイプでリアリティがそれほどなく、中身が薄い展開になっていってしまう印象はありました。そこまではドラマでも踏み込めない…ということなのかもしれません。でも偏向報道や報道被害についてドラマでテーマにするところだけでも、十分すごいよな、と思いました。もう十年も前の作品なわけですが、このテーマはまだまだ響く問題です。
 そんな中で、家族として幼馴染みとして惹かれ合ってきて、でも素直になれなくて…みたいな恋をじりじり進めていく主役ふたりがとても愛しいドラマでした。ラストは結婚式の衣装選び?みたいないちゃいちゃで終わるのですが、いじらしくすがすがしく、楽しく見ました。
 ボムジョの母親の女社長が、毎度のアボジオモニーズで(それでいうとイナの祖父もですが。あとチャオクの後輩のおじさん俳優とか、ホントめっちゃよく見る…!)、でもわりと貧乏オモニをやることが多い女優さんだと思うので、女手ひとつで息子を育て上げるためとはいえ、ビジネスや利権のためなら悪いことも悪びれずやる、という冷酷なビジネスウーマンを鮮やかに演じていて、感心しました。役者さんってホントにすごいなあ。だから、息子可愛さに自爆しちゃうような展開はちょっと残念でもあったんだけれど、ボムジョがいいヤツだったこともあって、いいバランスではあったかと思います。食べていくために必要以上の富は、悪さをしてでも得ていいものではやはりないよね…
 各話のサブタイトルは童話から来ているようでした。良き一本でした。












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