宝塚大劇場、2022年4月23日13時(初日)、24日11時、5月30日13時(千秋楽)
東京宝塚劇場、6月18日13時半(初日)、23日18時半、28日18時半、30日18時半(新公)、7月5日18時半、19日18時半。
今より少し遠い昔、ヴェスペール王国の王都マルクトでは、北の一番星が最も高くなる星祭りが始まろうとしていた。十年に一度、セフィロトの花が咲く今年の星祭りでは、旅芸人一座による余興やダンス大会、そして王女の花婿選びが行われるとあって、街は多いに盛り上がっている。田舎領主オルゴン家の末息子、ルーチェ・ド・オルゴン(礼真琴)は故郷を出て大学に進んだものの、卒業後は友人のレグルス・バートル(瀬央ゆりあ)が経営する弱小探偵事務所の手伝いをして暮らしていた。恋人のアンジェリーク(舞空瞳)との関係も十年になるのにいっこうに進展せず、縁談が持ち上がったアンジェリークを引き留めなかったことをきっかけに喧嘩別れしたきり。そんなある日、探偵事務所に奇妙な依頼が舞い込んで…
作・演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/青木朝子、編曲/多田里紗、オリジナル作曲/吉田優子。2011年に上演され、好評のうちに翌年に続編が上演されたシリーズ第三弾。
マイ初日の感想は
こちら。シリーズ1作目の感想は
こちら、2作目は
こちら。
お芝居もショーも楽しくて、私には珍しく東京公演は追加、追加で予定外にたくさん観てしまいました。まあ、はるこのご卒業公演でもありましたしね。出かける予定があって東京大楽を見られないのが残念です…無事の完走をお祈りしています。
さてしかし、特にお芝居に関しては、問題というか齟齬を感じていないわけではなかったので、まずはそのお話をしたいと思います。毎度話が長いというかつっこみがうるさいというか前置きがくどくて申し訳ございません。
さて、前2作は言わずと知れたちえねね時代の小品でした。それが10年の時を経てこっとんでの、きちんと尺が95分あるお芝居になることになったのです。
こっちゃん自身はちえちゃんのすごくファンでリスペクトもしているんでしょうしそれは全然良きことで問題ないのですが(礼音の礼、なんですよね?)、トップスターとしてもトップコンビとしても特性というか在り方というかタイプが実はけっこう違うので、そこはスタッフ側が、要するになーこたんがもっと気を遣ってより似合うよう作品を仕上げてあげてもよかったろう、と私は思う、という話です。もちろん尺が尺だけに前2作と違ってもうちょっとストーリーに背骨がないと、シリアスみもないと…ということで宰相オンブル(綺城ひか理)パートが生み出された、のはわかるのですが、要するにそれよりも肝心なのは主人公の在り方、生き様だろう、ということです。やはり全体にシリーズ物として既存の客を喜ばせる方に気が行っちゃってて、お話の根幹が揺らいでないかいなーこたん?ということです。
ルーチェは2作目において、ヒロイン・シルヴィアの弟として登場したキャラクターでした。こまっしゃくれて小生意気で婚姻制度に懐疑的な弁の立つ少年…みたいな役どころでしたでしょうか、今手元に映像がなくて見返すことも検証することもできずイメージで語っていますすみません。結局、シスコン気味だから姉の結婚に反対していただけだった、とか自分がガールフレンドと喧嘩中だから姉とその婚約者に八つ当たりしていただけだった…ということが明かされて、お話は終わったんじゃなかったでしたっけ? なので私が初日雑感に「要らねんじゃね?」と言ってのけた「Love Detective」(ちょっと宝塚楽曲っぽくないけどこっちゃんはこういう歌も本当に上手いので、私は大好きな曲なのですが、しかしタイトルが絶妙にダサいななーこたんいいぞ!(笑))のあとの銀橋上手とっつきで言う台詞は、前作の自身の台詞を自嘲的に繰り返している…という場面だったんですね、失礼いたしました。
それはともかく、なので何故ルーチェがそんな人間になってしまったかということは今回の作品で明かされていて、それが死に際の母親の手を取れなかったことを悔やんでいるから、とされているわけです。でもこれ、感覚的にはわからなくもないけど、理屈としてはちょっとわかりづらいですよね。
彼はこの行為の何を嫌がり怖がり忌避していたのでしょうか? 愛する母親が病み衰えていて死にかけていて、知らない人みたいで単純に怖かった? それはわかります。子供は死や病とは無縁に暮らしているものだから、初めての死臭にとまどい恐れ嫌い逃げた、というのはわかる気がするからです。あるいは王子さま呼ばわりが気恥ずかしかった? あるいは、人はどんなに愛し合い慕い合っても死によって引き裂かれることがある、だからすべて無意味なんだ…とやや厭世的に考えるようになってしまった? だから傷つかないようそもそも近寄らなくなってしまった、だからアンジェリークとも本格的な恋人同士のおつきあいに進めないでいる…そういうことなのでしょうか?
実はここがクリアになっていないと、主人公が抱える障害がよくわからなくて駄目なのです。物語とは基本的に主人公が障害を乗り越えてハッピーエンドに至るものなので、まずその障害がわからないという、土台がグラグラしていることになるからです。それが今回のこの作品が、よくよく考えるとモヤる原因なのです。
死からは誰も逃れられないし、人の心も変わることがあるのだから、今どんなラブラブアツアツな関係でも絶対に永続しない、それで別れたとき悲しい思いをするくらいなら最初から関係を持たない方がマシ…とルーチェが思い込んでいる、とするならば、「確かにいずれ誰もが死ぬし残念ながら心変わりをすることもありえるんだけれど、でもだからこそ縁があったのならそれまでの時間は思い切り愛し合おう、それこそが人生の実りだ」みたいなことを確信するようになる事件を用意して、主人公がその境地に至ってヒロインに告白してハッピーエンド、って流れが作れるわけです。だからそれならたとえばユリウス(天寿光希)は、オルゴン家からお暇をもらって田舎に帰って趣味の芝居三昧の楽隠居することになった、それでお別れの挨拶に来た、とかにする手があるわけです。愛別離苦、けれど慈しみ合い楽しかった日々がなかったことになるわけではない、別れを恐れて誰ともつきあわないなんてそれこそ人生の無駄ですよ、とユリウスがルーチェを諭し励まし、アンジェリークのもとへ向かわせる…というような流れが考えられるわけです。今とほぼ同じでも、実はだいぶ違ってくるわけです。
でも今はなんか。ルーチェの状態が茫漠としています。どちらかというと、相手の好意に対して素直に応えられない、今ひとつ応える自信がない、みたいな状態だとされているようにも見える。でもそのテレやひねくれや意地っ張りや自己評価の低さの原因は特に語られていないわけで、だとしたら乗り越えさせようもないので、お話としてどうしたらいいのかなんかよくわからないことになっちゃってるわけです。花婿選びの課題をクリアしたからどうこう、というのは実は障害にもその克服にもなっていません。だってこんなの、誰が勝ち残ろうが当のアンジェリークがルーチェ以外の相手を選ばないことはハナからわかっているからです。だってアンジェリークが愛しているのはルーチェなんですから。愛がすべてに勝つことは宝塚歌劇では自明のことだからです。
そもそも、この国の王位は男子が相続しているようですが、現コーラス王(朝水りょう)には娘しかいないんだから、王女の夫を次期国王とする、なんてまだるっこしいことをやっていないで、王女が王位を継げるようにすればいいだけのことなのです。アンジェリークは「強くなりたい」と言いますが、それは身代金目当てかはたまた父王の政敵による陰謀だったのかはわかりませんがとにかく誘拐されかかった過去があるからで、次こそは悪い人たちに勝てるようにせめて自分の身は自分で守れるようになろう、と剣術の稽古をすること自体は間違ってはいないしできないよりはできた方がいいだろうけれど、実は本質的な解決にはなっていないわけです。体力、筋力的に女性は男性に劣ることがある、護身術でできることには限りがある。けれど為政者としての能力に性差はないはずなのであり(周りが認めるか、といった環境はともあれ)、父の役に立ちたい、いつまでも叔父の家でただのお嬢様をやっているよりは王宮に戻って王女として働きます、と言うひっとんアンジェリークなら、「王位は私が引き継ぎます! 議会の承認とかいろいろ必要だろうけど、努力します、がんばります!」とか言えちゃいそうなんですよね。それこそが悪者に勝つことにもなるでしょう。もちろん王位についても悪者に狙われることはありえるだろうけど、王位を狙う悪者に対して先に王になってのけちゃうってのはやはりひとつの勝利だと思います。
そしてこういう展開こそが、こうした世界観のお話を現代に上演する意義でもあるでしょう。架空のファンタジー世界まで現実の女性差別意識に囚われる必要はないのです。宝塚歌劇が愛がすべてに勝つユートピアを描くなら、そこは男女平等も達成されるユートピアであるべきなのです。
だからルーチェが「僕が国王になんてなれると思いますか」と悩むのも、そもそも王者こっちゃんに継げない国なんかないよって点で若干失笑ものでむず痒いのですが、ルーチェはわりとフツーの一青年なので、そら確かにこんなフツーのそこらの男が王女と結婚しただけで次の王になるとかこの国ほんま大丈夫かいな、とはなるので、観客はこのルーチェを応援しづらくてモヤるのです。
そもそもルーチェたち学生時代の友人5人組はモラトリアムとかなんとか歌っていますが、ルーチェ以外の4人は好きなこと、やりたいことをちゃんとやっていて、ただ今のところ芽が出ていない、それだけでは食べていけてないというだけであって、これはモラトリアムではなく修行期間というか下積み期間なだけなんだと思うんですよね。やりたいことが見つけられないでいる真のモラトリアムなのは、実はルーチェだけなんです。レグルスの助手みたいなことをしているけれど、彼は別に探偵になりたいわけではない。この方がよほど問題で、彼は大学まで出してもらっておきながら卒業後も何もせず、ただガールフレンドとの些細な口喧嘩を気に病んで日々を送っているだけの男になっちゃってるんですよね。そんな25歳、駄目だろう。礼真琴がやっていても許せないくらいです。
モラトリアム男が目覚めるお話なら、お話はルーチェが何かやりたいことを見つける流れにならなくてはいけません。それは、恋した相手がたまたま王の娘だったので僕は次の王になるみたいです、みたいなことでは駄目なんだと思うのです。そんな王のなり方はあかん、どんな架空ファンタジー世界でもあかん。
もしこの流れなら、ルーチェはレグルスの手伝いをする過程で困っている人々の手助けをすることに喜びややりがいを見出す、というような流れにするべきです。レグルスが目指しているのは安楽椅子探偵みたいなことで、本当は街を骨持ってさまよい歩いて迷子の犬を探すなんてことはやりたくないので、ルーチェが代理でやって見つけて感謝されて自分も達成感に震えて嬉しくなる…みたいにするといいと思うのです。で、世のため人のために働くことって、突き詰めれば要するに為政者になっちゃえば上からまとめて民のためにいろいろできるんじゃね?って流れにできるかもしれないじゃないですか。それで彼こそが王に向いているのだ、とするのはお話としてできる流れだと思うのです。
でも、アンジェリークが王になって、ルーチェは単なる王配で、普段は街で探偵の手伝いをやっていて、次の仕事はダアト追跡だ!…とかの方が収まりがいいかもしれないし、続編が作りやすくなるかもしれません(笑)。まあまあ平和そうな国ではあるけれど、妻が公を、夫が民間を担当してよろず相談引き受けます、というのは最強カップルだし、この国イヤ組?も最強で幸せだねえ…って大団円、いいじゃないですか。このあたり、もっと深く考えて作ってもよかったと思うんですよね今回の作品…
今回はオンブルの暗躍がお話の背骨になっているわけですが、ここは彼の王へのほとんど逆恨みというかこじらせ愛みたいなものが犯行動機(笑)なので、シリアスすぎていないところはシリーズ全体の明るいトーンから浮きすぎていなくていいな、とは思います。
でも王が娘を彼にではなく甥のローウェル公爵(輝咲玲央)に預けたのは、別に彼を信頼していなかったとかそういうことでは全然なくて、身内のことは身内で、とただ親戚に頼っただけだと思うんですよね。たとえばそのころにはまだローウェル公爵夫人はご存命で(今回出てきていないのは亡くなった設定だからだと思われます。まあ本当のところを言えばキャラとして必要がないとか配する生徒がいないとかの都合はあるんだろうけれど、わりとどこの家も母親役の夫人がいないことになっているのはやや気になりました。中年女性に表だった役割を与えない現実を架空ファンタジー世界でまで踏襲しなくていいんだぞなーこたん!)、でも長く子供に恵まれていなかったので、とかの事情があったのかもしれないし、対してオンブルは妻を亡くしていて男手ひとつでロナン(極美慎)を育てていて大変そうに見えたのかもしれません。だから王には全然悪気はなかったんだけれど、でもオンブルの方はショックだったわけで、これはもう王と臣下のコミュニケーション不足が問題なのであって、誰か取りなしフォローする人がいるとよかったんでしょうけれどヴィゴー大司教(大輝真琴。この国の宗教はキリスト教ではないんだろうから、司教といえど妻帯し子供を持つことは許されているようですね)はそういうふうに気が回るタイプではなかったということなのでしょう…ここも夫人が出てこないので、やはり男手ひとつでジュディス(小桜ほのか)を育てるのにてんやわんやしていたころだったのかもしれません。
まあでも、復讐なのか意趣返しなのかはともかく、王の娘に息子をあてがい孫を手の内に入れて外戚として権勢を振るう、というのは王の血筋に生まれなかった男ができうる最高の栄達点でしょうから、まあそう動くよね、というのはわかります。そう言い聞かされて育ったロナンが、父のために良き息子であろうとして父の命令に従い、しかしそれとは別のところで恋が生まれてしまって、割り切ろうとはしたけれど…というのは良きドラマでした。
ただ、なので主人公のルーチェと悪役たるオンブルの決闘場面がお話上のクライマックスになっているわけですが、ここがまたモヤるわけです。「子供をいいなりにしようとするな、子供の好きにさせてやれ」みたいなことをルーチェがオンブルに叫ぶわけですが、一般論としては至って正しくとも、ルーチェ自身の実感がこもった言葉では全然ないので、上滑りして聞こえるのです。
だってルーチェには父親との葛藤がないからです。ここにクライマックスが来るのなら、ここの台詞はルーチェがロナンを慮って言っているように聞こえて実は自分のことを言っている、オンブルに言っているように見えて実は自分の父親に言っている、という構造になるべきなんだと思うのです。そういう真実の叫びだからこそ響くんでしょう? でも、ルーチェの父親たるオルゴン伯爵は今回影も形もありません(回想場面ではまっきーがやってるけど)。なんならユリウスがレオニード(音波みのり)にその夫のことを「ご主人様」と言っていることから、伯爵家の当主はマリオに代替わりしているのでしょう(そもそもレオニードもすでに「伯爵夫人」と呼ばれていましたね)。この世界の爵位は生前に譲れるものなのでしょうか? マリオ、アルビレオ、シルヴィア、ルーチェ兄弟姉妹の父親は、存命なのかしらん…?
ともあれ、ルーチェが父親に対して屈託があるとすれば、それはむしろ命令とか干渉とかよりもネグレクト気味であることのように、私には思えました。この世界の貴族は称号も爵位も領地や財産もすべて長男総取りで次男以下には何もないのか、はたまた何かが残してもらえるのかはわかりませんが、次男のルーチェはずいぶんと幼いころから実家を出されて王都に留学させられています。もちろんその方が最高級の教育が受けられる、とかはあるのかもしれませんが、実際のルーチェは寂しがって泣き暮らしているようでもあり、彼にとってはあまり良くなかったのではないでしょうか。そして大学卒業後も、領地に戻って伯爵家の仕事を手伝う、みたいなことはまったくしないですんでいる…というのは放任と言えば聞こえはいいけれど、家族としては無視されていると言ってもいいくらいなのではないのかしらん? なんにせよ、結婚相手まで父親に決められているロナンとは父子の在り方が全然違う。そもそもルーチェはロナンを「言いなりでいいのかよ!」とか責めますが、放任されてなんでも自由にできるはずなのに好きな人への告白すらしていないルーチェに、誰かに何かをしろと責める権利などあるのだろうか…ともモヤるのです。
ことほどさようにルーチェの立場、生き方、その障害がきちんと設定されていないから、その乗り越えるべき障害とその象徴のように立ちはだかる悪役、それを乗り越え退治してハッピーエンド、とお話が綺麗に流れていかないのです。今、全体になんとなく可愛いし元気だしいじらしいしにぎやかでわちゃわちゃしていて楽しいのでなんとなく騙されていますが、実はこの作品は構造としてけっこうもろい。たわいない、くだらないとかよりそのもろさが、緩さが、一本筋の通ってなさが、もう一歩感動を呼ばない原因なんだと思います。
惜しい、実にもったいない。綺麗な構造と真実の想いがあれば、たとえたわいのない喧嘩ップルの痴話喧嘩話だろうとしょうもないお家騒動だろうと、もっとぐっと感動できるものになったはずなんです。なーこたんならできたと思うんですよ、でもシリーズということに引っ張られすぎたり、なんとなくお話を作ってしまった部分があるんだと思うのです。なんせ忙しそうだしね! でもそこはがんばって踏ん張ってほしかったぞ、とは言っておきたかったのでした。
その点にさえ目をつぶれば、本当に可愛いハッピーラブコメで、楽しく観られたのでした!
ホントこっちゃんは上手い、なんでも上手い。開演アナウンスからもう声が若くて青くて甘いルーチェ仕様なの、ホント卑怯でそこからもうニヤニヤしちゃう。ピカチュウかルーチェか、みたいなまっ黄っきのお衣装がまたぱーっと明るく似合うことよ!
なーこたんお得意の勢揃いオープニングもよく考えられていて、とても上手い! ひっとんアンジェリークの手をペンギンみたいにして横にちょこちょこツーステップしてルーチェを追っかけていくみたいな振り(伝われ)も、めっかわすぎました。花婿選び最終決戦の時に着てくるドレスは、私は初見で吹いちゃったくらい、小さい子供が塗り絵で描くような稚拙な色とデザインのお姫様ドレスで目も当てられない、というのが本当のところだと思うんだけれど、それを着こなす頭身バランスとプリンセス力にまさしくひれ伏す思いでした。
せおっちも温かなお人柄の出るいいお役でしたよね。ただ私はレグルスとティア(有沙瞳)がつきあって長いカップルだということは全然わからなかったし、そういう設定ならもっとちゃんとそういう台詞なりエピソードなりいちゃいちゃなりがないとラストが効かない、と思いました。そのラストも、アレじゃプロポーズなんだか、稽古場が欲しいティアがただ同居を承諾しただけなのか全然わかんないじゃん! 最後にチューすりゃいいってもんじゃないよ、もっとダイレクトにわかりやすくやってくれよー、とは何度でも言っておきたいです。
くらっちは無双でなんでも上手いから安心として、水乃ちゃんは棒だからこういうお役、というのは裏目に出たと私は思っています。特に最初の機械の性能の披露?のくだりは機械の動作音のSEを入れないと、あの紙が最初から箱に入っていただけにしか見えないでしょ! イヤ最初から入ってるんだけど、舞台としては機械がギコギコ動いてあの絵ができた、って見えるようにしないと、笑ってるアニス(水乃ゆり)がバカみたいでしょ!
せおっち同様私があまり興味がないぴーですが(ホントすみません…)、しかし今回ホントに上手いんだなと刮目させられました。歌も演技もとても安定していて、声もよく通りますしね。セシル(天華えま)、とてもよかったです。
あかちゃんもさすが。そして美味しい役まわりをもらっているかりんさんは本人比で日々良くなっていると思うのですが…私はファンなので「父上、私は本当はジュディスと結婚したい!」「ロナン…!」で毎度泣くのですが(私は小桜ほのかが苦手なのですがしかし上手いとは思っていて、特にこの台詞は毎回ホントいいので本当に悔しいのでした…)、しかし番手と歌劇団の推し都合でやらせてもらっているだけで本当はここをもっと上手い人がやると芝居はより締まるのではなかろうか、と思わないではない…ああバウ大丈夫かな…と小姑になりそうなくらいにはこじらせているので上手く語れませんすみません。
みっきぃもさすが。そしてはるこにいろいろありがとうなーこたん…! 初日に歌い出したときには「なんてことしてくれんの!?」と手に汗握りましたしそれは大劇楽でもまだそうだったけれど(ショーにあったようにみっきぃが歌いはるこは踊る、でなんの問題もなかったのに、はるこの餞別に歌を贈るなーこたんてば…!)、東京に来たらさすがに安定してきてやはり場数…!と思いましたよね。サービス男装は初演と変わらない可愛らしさで、ホントすごいよねジェンヌって…!と感動しました。通いまくった宙組の『
シェイクスピア』で観たドレスをたくさん着てくれて、それも嬉しかったです。
新公も観られたので以下簡単に。
ルーチェはさんちゃん、咲城けいくん。これを土産に組替えですね、がんばれ! 声が特徴的で本公演のリドル・ル・カインがぴったりの印象で、出だし超緊張していてそらこっちゃんのようには歌えないよね…というなかなかしんどいスタートでしたが、その後は健闘していたと思います。ただやはりずいぶんとほわほわしたキャラにはなっていたかな…あとお化粧はもっと良くなる気がしました。そういう意味でも組替えはチャンスでしょう、がんばれー!
アンジェリークはうたち、詩ちづるちゃん。こちらは先日組替えしてきたばかりですがもう大活躍で嬉しいです。ひっとんのお衣装には着られて見えるところもあったけれど、歌が上手い芝居がいいディスコ場面のダンスもめっちゃよかった!とベタ褒めしたいです。ソロ、泣かせてくれました…!
レグルスはかのん、天飛華音くん。さすが新公主演経験者、落ちついていました。5人組だけでなく新公全体の扇の要になっていたと思いました。優しそうでいい人っぽそうで、芝居が的確で声がいい。本公演でもこれから組の大きな戦力になっていくことでしょう。
ティアは星咲希ちゃん、手堅かったけどあんま可愛くなかった気が…すすすすみません…
セシルは稀星かずとくん、これが絶妙に上手かった! 本役のカストルを観てると背が足りないのかな?とか思っていたのですがそんなことはなく、すらりとスマートで、歌が上手く、このキャラらしいへっぽこぶりとがんばりぶりを嫌味なく見せていて、大物感を感じました。これからが楽しみ!
アニスはアヤネミランダカー、綾音美蘭ちゃん。本役さんとは役作りを変えてきていましたが、どうかなー…私はちょっと微妙に感じてしまいました、すまん。
アージュマンド/アンヌ(瑠璃花夏)は乙華菜乃ちゃん、可愛かった! オペラでガン見してしまいました。
ローウェル公爵は羽玲有華くん、個人的MVP。説明台詞も歌もしっかりしていて、新公だとタルくなりそうな場面を上手く締めていたと思いました。
レオニードは水乃ゆりちゃん、すみませんやはり棒だった気がします…はるこのあのまろやかさとキュートさ、お茶目さはやはりなかなかに得がたいものだったのです…
フォション(ひろ香祐)は透綺らいあくん。うーんフツー…てかこの役、本役も微妙だと個人的には思っているのでした…
マダム・グラファイス(万里柚美)は紅咲梨乃ちゃん、良き押し出しでした。
コーラス王が奏碧タケルくんで、最近えくぼが素敵な美形として注目しているので、もっとおもしろいところに配役されればいいのにーと歯噛みしました。
ロナンは大希颯くん、押されているのでしょうが私は苦手なのでしたすみません…
オンブルは鳳真斗愛くん、濃くて上手かったですねー!
そしてジュディスの鳳花るりなちゃんが私好みの派手めの顔の美人で色っぽくて歌が上手くて、もう夢中でした! かりんさんロナンと彼女のジュディスの組み合わせが観たかった…!(強欲)てかジュディスって大司教の娘のわりにはあんな悪女系のお衣装なのはなんでなんでしょうね? アレは高級娼婦か悪い方の女優崩れみたいなキャラが着るお衣装ですよ…むしろ役の設定としてはそっちの方がおもしろかったかもしれません。金蔓としてしか思っていなかったお坊ちゃんといつしか本気の恋に落ちちゃって、けれど身分違いだし向こうは王女と結婚しようとしている…ということに悩む、というベタだけどわかりやすいヤツでよかった気がしました。新公はそのセンにめっちゃ合っていたろうと思うんですよね…!
それから可愛くて夢中という点ではポルックス(詩ちづる)の藍羽ひよりちゃんも可愛かった! お衣装が違っていたのはなんでだろう? うたちのでは小さすぎて入らなかったのかしらん…
あとはエメロード(美穂圭子)の都優奈ちゃんが、いつでも本公演いけますけど何か?な歌いっぷりでさすがでした。
るりはなはブラン(白妙なつ)だったので、まあしどころがなかったかな…ユリウスの紘希柚葉くんはちょっと変わった声でしたが、良きお芝居でした。あとはルベル(天飛華音)に大抜擢の馳琉輝くん、ピチピチピカピカでした。良き。
レビュー・エスパーニャは作・演出/藤井大介。
スペインに絞ったのが大勝利で、久々に良きダイスケショーを観た気がしました。
まあこっちゃんが歌える踊れるということもあってどの場面にも出る!くらいに働かされていたので、全ツ版はありちゃんも加わるし、もう少し休ませてあげてもいいのでは…とは思いましたけれどね。
でもでも、友会のおかげで10列目どセンターにお友達と並んで座ったことがあったんですけれど、もうもうこっちゃんから目が離せませんでした。タカラヅカのトップスターにやってもらいたいことを全部、存分に、惜しげもなくやってくれるんです! キザる、微笑む、スカす、伏し目、ウィンク、ニヤリと笑う、キメる…もうもうたまりませんでした! いつもはこっちゃんの歌を聴きながらかりんさんやはるこ以下好きな娘役をオペラで追っていることが多い私も、この日ばかりはずーっとこっちゃんガン見でしたよ、はー楽しかった! タカラヅカのショーってやっぱこうじゃなくちゃね!と思います。
出だしはなんのこたない『アパショ』なんだけれど、アサコはともかく大空さんのナゾの唸り声からしたらずっと素敵な(オイ)スキャット?からの静かな「オーレ」、ライト! 黒幕飛んでハットも飛ばしてビカーッ!と始まるショーにテンション上がらない人なんていないでしょう! ざかざか降りてくる組子の隊列が美しい。白と紫のお衣装も素晴らしかったです。マントぶん回すのは『ネバセイ』と被っとるやんけ、というつっこみはそれでも一応しておきますけれどね…でもいいとなったらすぐやる、という節操のなさも大事かつ良き、ではありますかね。
プロローグのシメはあかちゃんとぴー残り。ここの娘役ちゃんもいつも識別しきりたいと思いつつ果たせませんでした、無念…
セビーリャの春祭りはせおっちカバーロの「NINJIN娘」、かりんさんしか観てないので全貌がよくわかっていませんすみません。ここのなんてことない青スーツの姿、ホント若くて身体の薄っぺらいリアル青年に見えてもうときめきしかないんですよー。男役が男に見えてときめく、なんてことあまりなかったんだけどな私…???
何度観るんだって『ファンサン』ひまわりのお衣装ですが、ここのザナホリアたちにもくらっち、るりはな、ミランダカーと観たい子たくさんいるのに目が足りません!(マイ楽で下手にいると教えていただいた鳳花るりかちゃんをチェックできましたありがとうございました!)
そして、今のは前座だったんだなと思わせるパティオ祭りのこっちゃん登場! ライトかっけー!! エルモサSははるこ。ホント男役に負担をかけない、そして相乗効果でお互いを艶やかに色っぽく見せる、美しく軽やかなダンスをするんだよねー! でもそこからひっとんボニータが出てきてこれがまたバリバリ踊るんだからすごい。まさか田原俊彦がこんなにカッコいいとは…! ここもエルモサにこりらや水乃ちゃん、うたちがいるのに目が足りないんだー!
続いて中詰め、とっぱしはかりんさんですが毎度風呂上がりかな?みたいな滝汗で出てくるので、いつかしれっとドライに美しく出られる日が来るといいね、と常に念じています…歌は毎度力一杯タイプですが、いいんですのびのび育て…(ホントか?)
そしてこっちゃんが美穂姐さんと柚長従えてええ声で歌う贅沢さよ…! センターが水乃ちゃんうたちというのもアツい! スター銀橋渡りではあかちゃんにすっぽり包まれるはるこが本当に愛らしくて泣きました。コーラスも東京ではすごく良くなっていましたよ…!
みっきぃが歌い男役のススピカたちにこっちゃんが囲まれる場面では、かのんがやっぱり硬質の色気で目立つ気がしました。でもタケルのことも観ていたよ…!
からの、ダルマひっとんのプリンセッサ、キター! ホントええ脚や…! 火祭りラストのトップトリオ銀橋残りもとても良きでした。
そして闘牛祭りへ。みっきぃの破格の扱いに唸りました。そして闘牛士こっちゃんとトロ(雄牛)なのに女装?のせおっちとのラブ??場面へ。イヤしかしこっちゃんホントすごいな…(ここもマイ楽でトロのるりなが観られたー!)
続くオラシオンひっとんのダンスの素晴らしいことよ! こういうお衣装だとちょっとちゃぴを彷彿とさせますよね。こっちゃんが出てくるまでは完全にトップスターで、せおっちに対しても全然遠慮してなくて、そしてせおっちが振り遅れて見えるのが好きでしたすみません。そして圧巻の「オンブラマイフ」へ…ねえ、こんなに沁みる歌声ってあります??? 浄化されますよね…
フィナーレとっぱしはかりんかのんから。ロケットは東京では初舞台生バージョンではなくなりましたが、主席の娘役ちゃんがそのまま星組配属になってキーパーソンを務めているのにほっこりしました。
そして彼ジャケを着た(笑)ひっとんが路線男役と次々踊り、こっちゃんの登場を待ち、娘役と次いで男役と群舞、そして白いお衣装での炎のデュエダン、バチバチでとても良きでした。男役のお衣装がついこの間もこの組のなんかで着たヤツじゃん…ってのは残念でしたけどね。さらにみっきぃエトワールのパレードまで、盛りだくさんですお腹いっぱいですでももう今すぐアタマからもう一回観たいです、となる、元気な、エネルギュッシュな、熱い、楽しいショーでした。志摩スペイン村、行ってみたいです!(笑)
こっとんにはもっともっとショーの傑作が来るんじゃないかなあ…ここにありちゃんが来るとかホント楽しみだなあ…まあまあファン歴が長い私ですが、わりと雪と星に疎いところがあったので、今の星組が一番好きかも…! 次の全ツもかりんさんバウも、楽しみにしています!!