駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』

2009年12月02日 | 観劇記/タイトルか行
 四季劇場・秋、2003年2月5日マチネ。
 1930年代のブロードウェイ。銀行の跡取り息子ボビー(この日は荒川務)はダンスに夢中。母親の命令でいやいやながらに砂漠の町の劇場を差し押さえに行くと、男勝りの元気な娘ポリー(濱田めぐみ)に出会って一目惚れ。彼女が劇場オーナーの娘だと知ったボビーは、劇場を救うため、大物プロデューサー・ザングラー(広瀬明雄)に成りすまして彼女に近づくが…作曲/ジョージ・ガーシュウィン、作詞/アイラ・ガーシュウィン、台本/ケン・ルドウィッグ、振付/スーザン・ストローマン、演出/マイク・オクレント。93年に劇団四季に登場したミュージカル・コメディの再演。
 確か、私が初めて観た四季のミュージカルでした(94年3月、日生劇場)。オリジナル・ブロードウェイ・キャスト版CDは愛聴盤です。底抜けに楽しいアメリカン・ミュージカルで、タップシーンとキスシーン(笑)がてんこ盛りの、よくできた舞台です。今回も楽しく観てきました。劇場サイズもちょうど良かったと思います。
 ただ、私が大人になってしまったためか、もうちょっとお芝居の部分がナチュラルでもいいのではないか、もうちょっとキャラクターにリアリティがあってもいいんじゃないかとは思ってしまいました。その方がよりのめり込めると思うんだけれどなあ…今は、ダンスシーンのためのキャラクターというあり方になっている気はします。もちろん、それでいいという判断での作りなのでしょうが。
 ボビーはお茶目でキレのいいダンスを見せ、ポリーは伸びやかな歌声を聴かせ(しかし四季の女優さんはたいていこういう歌い方になるのかしらん? パンチが効いた地声でもちろんいいんだけれど、誰で聞いても似て聞こえる…)てよかったです。
 やや残念だったのがアイリーン(八重沢真美)の、声は色っぽかったんだけれど「ノーティー・ベイビー」の踊りながらの歌が一杯一杯だったことと、必ず出てくる金髪で人がよくてアタマちょっと悪くてというタイプの女の子パッツィー(谷内愛)があんまりグラマラスじゃなかったこと。やはりせめてもっと巨乳じゃないとな!
 ともあれ、合わせて踊り出したくなるような楽しい三時間でした。満足。
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レニングラード国立バレエ『竹取物語』

2009年12月02日 | 観劇記/タイトルた行
 オーチャードホール、2003年1月25日ソワレ。
 今年の新作は日本最古の物語を幻想的に再現したきらびやかな絵巻。かぐや姫(草刈民代)や帝(ミハイル・シヴァコフ)、竹取の翁(ラシッド・マミン)、求婚者たち、月からの使者などが登場する二幕もの。音楽/カロシュ、演出・振付/ボヤルチコフ。
 急に仕事先から招待券をいただいたので行ってまいりました。
 私は結局のところ『白鳥の湖』が一番好き、とかほざいているようなミーハー・クラシックバレエファンなので、新作というのは不安でしたし、幕開けからあちこちに節をつけた全身緑色タイツの「竹林」が出てきたときにはどしぇーっとなったものでしたが(同伴した友人は「カッパ」とか言うし…)、最後にはけっこう感動してしまいました。やはりなんでも観てみるものですね。
 一幕目がやや退屈だったのは、バレエの華ともいうべきパ・ド・ドゥがほとんど見られなかったからでしょうか。姫も天上の楽士たちも月光もひとりで勝手に踊るか黒子(?)に支えられるかなんですもの。二幕になると姫と帝のなかなか哀惜なコーダがあってやはりうっとりさせられたのでした。
 かぐや姫の装束が、十二単を着て踊るわけにいかないとはいえなんだかもんぺというかアジアの小娘のようなパンツ姿(?)だったのと、帝がやたらと正座するのがヘンだった他は、日本の風俗もよく研究されていてよかったように思います。こういうのがヨーロッパ人にはファンタスティック・オリエンタル・エキゾチック・ジャパネスクなんでしょうねえ。レヴェランスもおじぎでした。
 最後がほろりとさせられたのは、姫と帝の愛と別れもあるのですが、翁の嘆きがまたよかったから。姫は翁がくれた衣を返して月へと戻り、翁はその衣をかき抱いて嘆き、竹林の中で息絶える。衣を返す行為が、高貴の人が愛情の証に衣服を与える行為のようにも、また現世のものは現世に置いていく異世界の人の掟のようにも見えて、なかなかせつなかったです。
 帝は日嗣の御子、太陽の子であるから月の世界のかぐや姫とは相容れなかったのだ、とか、姫が求婚者たちに与えた課題をある謎かけに移してしまうとか、いろいろ新解釈・工夫・暗喩などもあったようですが…今後上演を重ねればさらに洗練されてくるのかもしれません。
 ダンサーでは竹の精を演じたエルビラ・ハビブリナが鮮やかでした。また草刈民代もしっとりと麗しく、オデットのときのようにロシア人の白鳥に並ばれるとプロポーション的に見劣りするというようなこともなくて、よかったのでした。
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『さぶ』

2009年12月02日 | 観劇記/タイトルさ行
 新橋演舞場、2003年1月10日マチネ。
 雨の降る両国橋の下を、少年が泣きながら駆けていた。経師屋「芳古堂」の見習い職人さぶ(萩原聖人)である。店できつくしかられて飛び出してきたのだ。そのあとを同い歳の見習い職人栄二(市川染五郎)が追いかけてきた。栄二は器用で男前、さぶは不器用で仕事の覚えも遅いが、お互いに支え合う仲だった…おのぶ/雛形あきこ、おすえ/寺島しのぶ、「綿文」主人徳兵衛/江守徹、その内儀美代/波乃久里子、「芳古堂」主人芳兵衛/大和田伸也。原作/山本周五郎、脚本・演出/ジェームス三木。
 配役からして若い女性客が主な観客かと思いきや、さすがに場所柄か、渋い客席でした。老夫婦など男性率も高かったです。
 その客層に合わせたのか、ゆっくりと静かな、世話物ふうの展開でした。修学旅行なのか社会見学なのか、高校生が団体で入っていましたが、彼らにはスローすぎてかったるかったかもしれませんね。でも、最後にはやはり引き込まれていたようで、よかったです。
 許すんだ、迎えに行くんだ、間に合ったんだと筋がわかってなお、誰が何をどう言うか、どう動くか、固唾を飲んで見守る空気が劇場内に張り詰めましたからね。
 市川、萩原、雛形といった彼らがテレビでも見てきたような俳優さんが、その場で、生身でお芝居して、時にとちったり逆に明らかなアドリブ入れたりしながら物語を進めていき、舞台劇のアップがあるわけでもない制限となんでも描き出してみる無限を感じてくれるといいな、ともはや気分は若者を見守るおばちゃんです。
 ともあれ、私も原作を読んだときには事件の真犯人に
「えええ?」
 とやや納得しがたいものを感じたのですが、今回はずいぶんと素直に受け止められて、よかったねええと幕が下りるのを見守れました。
 寄せ場のシーンをカットしたことで原作に比べるとややライトな青春劇になっていることは確かで、初日すぐの新聞評などはあまり誉めていず、不安だったのですが、私はそれでもおもしろく感じました。さぶものぶ公(よかった!)もすえも演技が確かだったし。栄二は、舞台用の発声をしていて、それがかえってすごく実直でまっとうな青年に見えてしまっていたところが、栄二としてはどうかしらん、とだけちょっと思いましたが。むしろテレビでやっているようなナチュラルなしゃべり方の方が栄二っぽかったのかもしれません。
 つまりこのお話は、栄二がごく普通の好青年であっては成り立たないのではないかしらん、と私は思うからです。栄二が見舞われた災難というものは現実の社会ではどこにでも転がっていて誰の身にも降りかかるものかもしれませんが、お話としては、栄二が才走っていてやや賢しらな青年であったからこそ、なのだと思うのです。栄二には自分が人よりちょっとは優れているという自負が確かにあったはずで、だからこそなんでこの俺がこんな目に、という思いがより強く、まあそういうこともあるさ、ここからまたがんばろう、などとはなかなか思えず、騒ぎが大きくなったという構造になっているのだと思うのです。のぶが言うとおり
「だから頭のいい人はだめなんだ!」
ってことですね。
 けれど、そんな栄二が自分を振り返り再び歩き出すのは寄せ場での経験があったからこそで、そのくだりをカットしている以上、やはりこのお芝居での栄二は多少好青年よりでもやはりよかったということなのでしょうか…うううむ。
 まあでもおもしろかったし、役者さんはみんな着物での所作が美しくて見ていて気持ちがよかったし、花道ってやっぱりいいし、よかったからいいか。
 栄二が酔って綿文に乗り込むのは原作でもお正月でしたでしょうか。このお芝居では正月公演を意識してなのかそういう設定にしていて、獅子舞の芸を見せたりというサービスがよかったです。あと、綿文の何も考えていないふたりのお嬢さん(尾上紫、鴫原桂)がまたいかにもそれっぽくてよかったなああ。
 そうだ、ひとつ。あの音楽はどうなんでしょう。ファドみたいなやつ。わりとじっくりしっとりしたお芝居だったので、
「さあここからドラマチックに盛り上げますよ!」
 というタイプの音楽はやや耳障りに感じました。かといってまったく何もないのも興冷めなのかもしれませんし、和楽ではいかにもすぎて嫌われたのでしょうか…うううむ。
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宝塚歌劇月組『長い春の果てに/With a Song in my Heart』

2009年12月02日 | 観劇記/タイトルな行
 東京宝塚劇場、2002年11月19日マチネ。
 脳外科医ステファン(紫吹淳)はパリ医学界のホープだったが、手術中に患者を死なせてしまい、解剖医に転身。精神科医ナタリー(汐風幸)との婚約も解消し、親友ブリス(大和悠河)と毎日午前様の荒れた暮らしを送っていた。ガールフレンドのフローレンス(大空祐飛)のモーションにものらりくらり。そんなある夜、アパルトマンの玄関に片方のスニーカーと、ひとりの少女エヴァ(映美くらら)をみつける…原作/アレクサンドル・アルカディ、脚本・演出/石田昌也、作曲/西村耕次。フランス映画『世界で一番好きな人』を舞台化。
 幸せな今年の舞台納めとなりました。さすがはフランス映画! しかしあのマッチョで単純なことで有名な石田先生が、よもやこんな繊細でロマンティックでいい話を手がけようとは…わからないものです。でもかなり手を加えているらしいので…ますますうれしい驚きです。
 大劇場公演を観た知人が「退屈した」と言っていたのであまり期待していなかっただけに、すごく楽しく、うれしかったです。ショーもたっぷりみっちりしていてよかったし、ものすごく堪能しました。濃く深く感じる三時間でした。今年のマイ・ベスト・ステージと言っていいでしょう。
 私にとっては月組は、こういう現代を舞台にした群像劇が意外と上手い組、というイメージがあります。ゴージャスなコスチューム・ロマンもいいけれど、こういうシックでお洒落でおちついた物語もいいものです。
 実は、一番よかったのはキャラクター設定とストーリーでしょうか。各人がほんとうに魅力的で、リアリティがあって、どこか傷つき悩みながらも懸命に生きている、心優しき人々、という感じでした。
 だから、役者としての演技が一番よかったのは、ステファンのライバル医師クロードを演じたワタルさん(湖月わたる)だったかな。貧しい生まれで苦学をして医者になり、愛を知らず、人を信じず、大病院の院長の御曹司であるステファンを憎み、金の亡者で…そして、非業の死を遂げる。白衣姿のスマートなこと、脚の長いこと! 銀橋のソロの力強かったこと! 台詞うろ覚えですが、病室で
「おまえのことを友達だと思っていいか?」
「おまえにじゃない、エヴァにだよ」
 と言ったときの優しい口調! 宝塚歌劇でたくさんの人間が死ぬところを見てきましたが、あんなにすすり泣きを誘っていた男の死は初めてでした。ブラボー!!
 次に、元麻酔医で、画期的な脳外科手術法を発表したもののその奇抜さ故に学会を追放され、今は美容整形外科医のアルノーを演じたキリヤン(霧矢大夢)。第5場のレストランのシーンが、別に何気ないんだけど、すごく誠実にナタリーのことを想っていて、でもステファンとも友達でもあるし…っていう感じのいい人ぶりがすごーく出ていて、出番は少ないんだけれど、第13場では本当によかったねええとこれまた泣きそうになりました。私、最初ナタリーは、ステファンのためにアルノーのところへ復帰を頼みに来たのかと思ってしまったんですよね。それで折れちゃうアルノーって悲しいなあ、つらいなあと思っていたら…ううう、よかったです。やっぱり感涙。
 そのナタリーは、すごくきれいだったし良かったんだけれど、最初の見せ場である第2場Bでのステファンとのやり取りがちょっときりきりしていて、そこだけがもったいなかったです。微妙に裏声が出ない歌も妙にセクシーでせつなくてよかったです。
 フローレンスは、本当はもうちょっとアメリカ女らしい、柔らかい女臭いフェロモンが出ているタイプに演じられるとよかったんでしょうねえ。ユーヒくんでは美人すぎたか。でもまあ過不足なかったと思います。アルノーに比べたらブリスはずっとバカっぽかったから(笑)、こちらはフラれてしまうのかと思っていたけれど、こちらのカップルも上手くいってよかったです。第16場のブリスは確かにちょっとよかった(笑)。
 エミクラちゃんは、実は6年後のエヴァになってからのほうが良かったと思います。幼い演技、というのは意外と難しいものなんだなあ、と痛感しました。精進!
 ショーアップがまたすばらしかったです。ナイトクラブのオープニング、長すぎず、かっこよく、物語の世界へ導いてくれました。手術着のダンスシーン、素敵すぎます。こういう衣装で踊って様になるのって、宝塚歌劇以外ありえません。ポロ競技場の乗馬ダンスシーン、若干長く感じたのは馬乗りとしての気恥ずかしさ故でしたでしょうか、でもこれまた衣装がいいし、やっぱり良かったです。ウサギの夢のシーンなんかもおそらく宝塚オリジナルでしょう、良かったです。エヴァの手術を巡るセリのシーンも良かった(歌詞の「栄光」という言葉にはちょっとぴんとこなかったのだけれど)。そして最終16場。うっとり…
 主題歌も良かったです。これくらい繰り返して歌われると覚えられるし。…はっ、ほめすぎ? でも本当にいい舞台でした。仕事が忙しいからってすっぽかさないで本当によかった!

 ミュージカル・レビューと名打たれたショーは、リチャード・ロジャース生誕100周年記念の華やかなもの。作・演出/岡田敬二。これがまた良かったです。
 オープニングの、どんどん増えてきらびやかになっていく鍵盤のセットが素敵。
 ワタルさんのピルエットが素敵。
 ウィンクしちゃう肖像画が素敵。
 30年近く昔のショーの一場面をリメイクしたとはとても思えないおしゃれな「少年時代」の場が素敵。
 キリヤンの歌声が素敵。
 タイのプリンセスとヨーロッパの兵隊さんとの場が素敵(私はトップコンビにはいつでも組んでいてもらいたい派なので、プログラムを見たときには、第2章でリカさんにルイちゃん、第4章でエミクラちゃんにタニちゃんを当てるのはどうかと思いましたが、前者はダンスの切れが良く後者は映りが良く、これはこれで良かったです)。
 そしてチャイナ・ドールの場では、第16場の短くも鮮やかなのがとにかく秀逸。太股の肉付きの良さがちょうど良くて、あれこそ脚線美です。鳥のようなお人形のような棒のようなじゃダメなんです。
 続く17場では花組時代から定評だったリカさんのダルマの美しさが炸裂! 上着の丈がまた絶妙(あの裏地の色はもっと濃い緑の方がいいのでは、とだけは言いたいですが)で、あのハイレグ、あのバックシーム…たまりまへん。
 第6章ではチズさんの色艶ある歌声が本領発揮、ロケットの衣装はカワイイし(被りものより鬘派なんです、私)、パレードの羽には団体さんからどよめきが起きる豪華さで、最後は会場と合唱、圧巻です!
 当日はリカさんのお誕生日で、お芝居のほうではいくつかアドリブがありました。おめでとうございます。こちらも幸せでした。
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