実業家のテッドは空港のバーで見知らぬ美女リリーに出会う。彼は酔った勢いで、妻ミランダの浮気を知ったことを話し、「妻を殺したい」と言ってしまう。ミランダは殺されて当然だ、と断言するリリーは協力を申し出るが…男女四人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防を描く傑作ミステリ-。
以下ネタバレで語ります、興味ある方で未読の方はご注意ください。
なんとなく、女性の作家の手による作品かと思っていました。女性キャラクターの解像度が高い気がしたので。そしてテッドを変にいい男に描いていなくて、彼の持つ自画像よりはしょうもない感じをきちんと描写しているところとか…あと、女性キャラクターが無駄に死なないところとかね。いや確かにミランダは死ぬんですけれど、でも男性キャラもちゃんと(?)死ぬし。
何より、リリーのキャラクターがいいな、と思いました。まあお話としてはこういうラストにせざるをえなかったんでしょうけれど、別にどこか南の島で海を眺めながらカクテル飲んでる描写で終わってもよかったと思います。
リリーの殺人には意味がある。それが彼女なりの理屈にしかすぎないのだとしても。そんな自分だけの理由を女を殺す男は山ほどいるし、だったら女もいていいはずなのです。イヤ健全な社会間ためにはどちらもいないのがそりゃ理想に決まっていますが、仕方ないでしょ社会がそんなあるべき健全な姿をしていないんだから…リリーにとってはこれが妥当な生き方だった、ただそれだけ。それを、彼女を変にサイコパスに描くこともなく、哀れでかわいそうな感じにも描かず、わりと淡々と、ドライに書き進めていたのが、清々しくてよかったなーと思ったのです。やれやれやってしまえー、とか応援しちゃいましたよねフツーに…とかくこの世は女に取ってクソすぎる。
視点人物が変わっていくので、最初に見えた風景が違って見えていって…というのはミステリーとして、また小説としてまあまあありがちな手法だと思いますが、ちゃんとスリリングで読みやすく、おもしろかったです。
ただ、確かに訳しにくいタイトルではあるし、キャッチーな邦題でもあるかと思うのですが、この作家の以後の邦訳が『ケイトが恐れるすべて』『アリスが語らないことは』と女性キャラクター名をタイトルに打ち出していく方式なのは、ちょっといかがなものかとは思いました。最新作は『だからダスティンは死んだ』で、これは男性キャラクターの名前だと思いますが…これで一周?して一度ケリをつけるのかな? なんにせよ、女性キャラクターは物語都合で安易に殺されがちなので、そういう搾取もやめていってほしいものだな、と思うのでした。思うに多くのもめごとは男同士で済ませてくれればそれで済むよ、ってものが多いんだろうしね…
それにしても空港のバーとビジネスクラスがこう危険だとは知りませんでした(笑)。清貧に生きていきますね…
以下ネタバレで語ります、興味ある方で未読の方はご注意ください。
なんとなく、女性の作家の手による作品かと思っていました。女性キャラクターの解像度が高い気がしたので。そしてテッドを変にいい男に描いていなくて、彼の持つ自画像よりはしょうもない感じをきちんと描写しているところとか…あと、女性キャラクターが無駄に死なないところとかね。いや確かにミランダは死ぬんですけれど、でも男性キャラもちゃんと(?)死ぬし。
何より、リリーのキャラクターがいいな、と思いました。まあお話としてはこういうラストにせざるをえなかったんでしょうけれど、別にどこか南の島で海を眺めながらカクテル飲んでる描写で終わってもよかったと思います。
リリーの殺人には意味がある。それが彼女なりの理屈にしかすぎないのだとしても。そんな自分だけの理由を女を殺す男は山ほどいるし、だったら女もいていいはずなのです。イヤ健全な社会間ためにはどちらもいないのがそりゃ理想に決まっていますが、仕方ないでしょ社会がそんなあるべき健全な姿をしていないんだから…リリーにとってはこれが妥当な生き方だった、ただそれだけ。それを、彼女を変にサイコパスに描くこともなく、哀れでかわいそうな感じにも描かず、わりと淡々と、ドライに書き進めていたのが、清々しくてよかったなーと思ったのです。やれやれやってしまえー、とか応援しちゃいましたよねフツーに…とかくこの世は女に取ってクソすぎる。
視点人物が変わっていくので、最初に見えた風景が違って見えていって…というのはミステリーとして、また小説としてまあまあありがちな手法だと思いますが、ちゃんとスリリングで読みやすく、おもしろかったです。
ただ、確かに訳しにくいタイトルではあるし、キャッチーな邦題でもあるかと思うのですが、この作家の以後の邦訳が『ケイトが恐れるすべて』『アリスが語らないことは』と女性キャラクター名をタイトルに打ち出していく方式なのは、ちょっといかがなものかとは思いました。最新作は『だからダスティンは死んだ』で、これは男性キャラクターの名前だと思いますが…これで一周?して一度ケリをつけるのかな? なんにせよ、女性キャラクターは物語都合で安易に殺されがちなので、そういう搾取もやめていってほしいものだな、と思うのでした。思うに多くのもめごとは男同士で済ませてくれればそれで済むよ、ってものが多いんだろうしね…
それにしても空港のバーとビジネスクラスがこう危険だとは知りませんでした(笑)。清貧に生きていきますね…