神奈川県民ホール、2018年11月22日16時(初日)。
1920年代のヨーロッパ。上流階級の女性をパトロンに持つジゴロのダニエル(柚香光)は、気ままに優雅な生活を送っていたが、田舎娘との浮気をきっかけにパトロンを失ってしまう。住んでいたアパートも追い出されて困ったダニエルは、ジゴロ仲間のスタン(水美舞斗)が持ちかけた儲け話に思わず飛びつく。それは、預金者が死亡したり行方不明になっ足りしたために放置されている「睡眠口座」の金を、相続人になりすまして手に入れようという計画であった…
作・演出/正塚晴彦、作曲・編曲/高橋城、編曲/高橋恵、振付/尚すみれ。1993年に花組で初演されたサスペンス・コメディの五演目。
2008年花組中日公演の感想はこちら、2010年花組全ツの感想はこちら、2015年宙組全ツの感想はこちら。直近で観劇したMMG版はこちら。
ちなみに併演のスパークリング・ショー『EXCITER!!2018』の、2009年初演の感想はこちら、2010年再演の感想はこちら、2017年三演の感想はこちら。
何度も何度も語っていますが、私の宝塚歌劇ファン人生は1993年花組東京公演『メランコリック・ジゴロ/ラ・ノーバ!』を観てから始まっているので、何を差し置いても観なければならなかったのでした(笑)。
というわけで、翌日から宙組東京公演が始まるため観に動けるのは初日のみ、ということで超チケ難を潜り込んで観に行って参りました。まあ初日だったよね、てかハコがデカすぎましたよね。
つまり、テンポとか間とか滑舌とか、コメディに特に必要なものがまだまだうまくできていなくて、上滑りしている部分もあったような気がしますし、舞台を盛り上げ支えるような拍手や手拍子とかも全然少なくて、なかばぎくしゃくしつつも、でもなんとかかんとか完走した、というふうには、ちょっと見えた気がしたのです私には。でも、ここからノリをつかんでどんどん仕上げてくると思うし、ファンも楽しみ方や盛り上げ方がわかってくると思うし、確かに若いは若い座組なんだけれど、これで全国回って熱い風を吹かしてこーい!って劇団から与えられた任務を、ちゃんとやりとげられるだろうと思いました。期待しています。
さて、れいちゃんのダニエル、意外や意外、良かったですね。イヤこういう言い方はアレなんだろうけれど。
とにかく歌が心配でしたしそれは引き続き課題だなとは思えたのですが、ひとりで寂しげに歌う「ダニエルのテーマ」が、情感が漂っていていいなとほろりとさせられたんですよね。多少音程が怪しくても、イヤそれは今後背負うものを考えるとホントなんとかもう少しずつでも改善していってほしいんですけれども、でも、とにかくハートが伝わる。こういうふうに歌いたい、こういう想いを届けたいというのが見えるれいちゃんの歌が、私はわりと嫌いじゃないのでした。
そして私はれいちゃんのお芝居はもっと好きなんですけれど、これについてはむしろ不安が私にはあって、それはまとえりもまぁまかもそうだったんですけれど、というかまとぶんもまぁ様もどちらかというとスタンの方がハマりそうなタイプで、というかダニエルってある種の辛抱役でけっこう難しいキャラクターだと私は思っていて上手く演じるのはなかなかしんどいのではないかと危惧していて、今回もれいまいだと逆の方がニンじゃない?とか心配していたんですね。当時、いずれも、えりたんやゆりかちゃんの方が真面目な役にハマりそうに思えた、のです。
でも蓋を開けてみるといずれも、まずスタン役者がすごく軽やかに豹変してみせて、口八丁手八丁の貴族出身というけどそれもどうだか、な天然詐欺師みたいな、でも真の悪人ではない男、みたいなキャラクターをきっちり演じてくれて、それと対比する形でダニエルがちゃんとより真面目で不器用な男に見える…という形で成立してきたように思えました。
ただまとぶんだとなんか、ジゴロで学費を稼いでいる学生…って感じがあまりしなかったし、まぁ様もやっぱりジゴロっていうかなんかもっと華やかな仕事もしてそうだけど…って感じはあったかな。要するに学年とかキャリアもありますが、ふたりともあまり学生に見えなかったのかもしれません。ダニエルの歳はアントワンの28歳と近いのでしょうが、休学しながらも卒業はしようとしている若き苦労人なんですよね。れいちゃんは当時のまとぶんやまぁ様に比べたらぐっと下級生でしょうから、ちゃんと学生に見えて、それがよかったのかもしれません。
あと、ヤンさんのダニエルとは全然違うダニエルで、でもちゃんと成立していて、そこがとてもよかったです。
ヤンさんのダニエルって、当て書きだからあたりまえですけれど、真面目で不器用でちょっとシャイでとにかくナイーブで上手くジゴロ稼業がこなせなくてメランコリックになっているさみしげな青年、って感じだったんですよね。苦学生というのがまず先にあって、友達のスタンに紹介されて学費のために慣れないジゴロを苦労してやっていて、でもそれも不器用だからあまり上手くやれてないしもちろん楽しめてもいなくて、レジーナのことも満足させられていないしアネットに対しても浮気とかではなくてたとえば高い参考書のための臨時収入が欲しくてがんばったんだけど上手く逃げられなくて…みたいな、いい感じのダメダメさがあったと思うのです。それは本当にヤンさんの持ち味、ニンのままのキャラクターだったと思うのです。
しかもダニエルってキャラクターとして本当に辛抱役というか巻き込まれ型でほぼ活躍しない、カッコ良く見せるのが難しい主人公だと思うんですよね。活躍するのは主にノルベールであり、最後にベルチェを連れてくるスタンなんですから。これは魅力的に見せるのが本当に難しい役だと思います。
でも、巻き込まれた中で、フェリシアを守ろうとするし、筋を通そうとするし、ラストはノルベールに対してフェリシアの面倒を見ることを宣言する優しさ、強さ、誠意がある。そういうものこそ、それこそオスカルが言うような男らしさだと思うのだけれど、世間では評価されづらいし物語でも損な役回りになりがちな、そういう複雑な魅力を持ったキャラクターです。それを上手く素敵に見せられることが宝塚歌劇の男役には担わされているんですよね。逆にリアル男性の男優にやられると、けっこう「ケッ」となるキャラクターだと思ったりもするのです(笑)。つまり、私が偏愛しているキャラクターです。
れいちゃんのダニエルは…ジゴロでしたよね(笑)。仕事を紹介したのはスタンかもしれないけれど、もうある種天職なんですよ。すんごい上手に働けてそう(笑)。学生の方が副業になりかけている。
ただ若いから、アネット(春妃うらら)との浮気がバレてレジーナ(華雅りりか)に捨てられて宿無しになるようなポカもする。で、「なんだってんだいったい!」ってガラ悪くキレる。そう、歴代一ガラが悪く、子供っぽいダニエル(とスタン)だったかもしれません、でもそれがまた似合っていたし、そういうダニエル像もあるなと思わせられました。
学費のためにバイトとして始めたジゴロだけれど意外に水が合っていて楽しくなっちゃって、でも若いからミスもして、ちょっと別口で稼ぐかと思って友達の口車に乗ったら詐欺の片棒担がされて、金はないわ妹はできるわ父の親友だという男が借金返済を迫ってくるわで…って、巻き込まれ型のダニエルにちゃんとなっている。そしてそんな中で、ひっとんフェリシア(舞空瞳)への気の遣い方が優しい! 最初はもちろん面倒に思っているんだけれど、「幸せの夢」を歌うあたりから、そしてアネットと再会するくだりからの、地金も見せちゃったしもういいやとなってからの意外な真面目さ、誠実さ、シャイさ加減に私はもうキュンキュンしました。超絶美人だけれど素のれいちゃんにはそういう部分がちゃんとあるんだと思うんですよね、それが上手く表れている。
そして特にラブいことをやっているわけではないんだけれど、ちゃんとラブストーリーに見えましたし、それはひっとんのヒロイン力によるところもあるのかもしれませんが、れいちゃんの魅力でもあるかと思いました。
そしてキレッキレのダンスの鮮やかさ、素晴らしいですね!
ラストシーンは、もうちょっと、深みが出てくるとよりいいかなと思いましたが、それもこれからなのでしょう。千秋楽はみんなキュンキュンでダダ泣きかもしれませんよね。私はもう観られませんが、進化に期待しています。
そしてひっとん! 私は華ちゃんはちょっと男役顔すぎないか?と思っていて、どちらかというとひっとん派なのですが、やっと新公ヒロインが来たと思ったら次は別箱ヒロインと、とんとん拍子で起用されて嬉しい限りです。顔が小さくて手足が長い超絶スタイルと長身は、宝塚歌劇の娘役としては並ぶ相手を選んで難しい場合も多いし、今のところダンスが上手すぎて周りから浮きすぎるきらいがあるのもちょっと問題かもしれません。男役さんへの寄り添い力とか、男役さんとふたりでいるときが一番綺麗に見える、とかも大事なことだと思うので、そのあたりはこれから場数を踏めばいいのかなあ。その上で将来的にはひとりでも光り輝ける娘役さんになれると、ちゃぴ級のビッグスターになれる逸材かもしれません。とにかく期待しています。
フェリシア役は、ちょっと地味に作りすぎかな?と思わなくもありませんでしたが、ミハル以来のどんくさいのろまキャラというよりはおとなしくて引っ込み思案で強く前に出ていけないタイプで…という女の子を、ウザくなく、とてもいじらしく演じてくれていました。可愛かった! こちらもラブ度はもう少し上げていっていけたらいいなとは思いますが、成長と進化に期待しています!
マイティは私は本当にダンスの人だと思っていて、お芝居は実はピンとこないことが多くて、ですね…なのでスタンとしてはもうちょっと軽やかさが欲しかったです。
華ちゃんのティーナ(華優希)は案配がちょうどよかったかなと思いました。あまりアーパーに作るのは今の時代もう古いと思われるので、うまくウザさといじらしさを出す必要があるキャラクターだと思うので。ちょっと華はありすぎたかもしれませんけれどね。
つかさっちバロットは、決してやり過ぎていないのにちゃんとおもしろいという絶妙さがありました。愛ちゃんバロットのやり過ぎだからこそおもしろい、愛しいってのも良かったんですけれど、それはもう芸風の差かな(笑)。
はなこちゃんマチウもとても愛らしくて良かったです。モンチマチウは私には地味に感じられたから…めおちゃんとかそれこそタモを思い出しました。てかショーもホントはなこちゃんは垢抜けてきて、目覚ましいですよね。今の花組路線からしたらやや骨太すぎか?とこっそり危惧していたのですが、劇団が起用する気があるのなら是非とも使っていっていただきたいです。
パンチのあるアネットやいかにもなしっとり感が素晴らしかったレジーナの他にも、絶妙な笑いを取るイレーネ(乙羽映見)やいい女感がたまらないルシル(真鳳つぐみ)、いいウザさだったシュザンヌ(雛リリカ)、色っぽかったカティア(鞠花ゆめ)と、娘役ちゃんがちゃんと仕事をしているのも素晴らしかったです。
ベルチェ(冴月瑠那)とロジェ(和海しょう)は逆でも良かったかもしれません。びっくのフォンダリ(羽立光来)の存在感は素晴らしすぎました。
バート、アルマン、クロードでない客の男でやたら踊れる子がいたなあ、あれは誰だったんだろうなあ…
カフェのジュークボックスらしき音楽があいかわらず邪魔だったりもしましたが、とにかく楽しく観たのでした。
スパークリング・ショーは作・演出/藤井大介。さすがにちょっと人数が足りなくて、階段の数も足りなくて、寂しかったかもしれません。こちらの主演はれいちゃんと華ちゃんで、どちらも歌が弱かったのもショーとしてはつらかった気がしました。歌上手に分業してもらうにしても、主演はある程度は歌わないとならないし、再演となるとキーを合わせて作曲してもらえるわけでもないので、まあしんどいのは仕方ないかな。
でもノリノリだし楽しかったですけれどね。
チェンジ・ボックス場面の混沌さがおもしろくなりすぎていてファンにしかわからなくて全ツにどうなんだ問題、は感じましたが(笑)、豹柄ツナギのマイティってマジ正しい気がしたので無問題です。
そしてハバナクィーンのひっとんの素晴らしさね! 素直に拍手入れたくなりますよねアレは!
ダブルデュエダンのパートナーチェンジも良かったし、この座組ではこれが正解という気もしました。代替わりしても、トップと二番手が同期でしばらくいってもいいんじゃないかなあ。95期はどこも渋滞しているので…
そのあたりを見据えた、いい修行の場になっていると思います。風邪など引かずに、怪我に気をつけて、がんばって全国回って旋風を起こしてきていただきたいです!
1920年代のヨーロッパ。上流階級の女性をパトロンに持つジゴロのダニエル(柚香光)は、気ままに優雅な生活を送っていたが、田舎娘との浮気をきっかけにパトロンを失ってしまう。住んでいたアパートも追い出されて困ったダニエルは、ジゴロ仲間のスタン(水美舞斗)が持ちかけた儲け話に思わず飛びつく。それは、預金者が死亡したり行方不明になっ足りしたために放置されている「睡眠口座」の金を、相続人になりすまして手に入れようという計画であった…
作・演出/正塚晴彦、作曲・編曲/高橋城、編曲/高橋恵、振付/尚すみれ。1993年に花組で初演されたサスペンス・コメディの五演目。
2008年花組中日公演の感想はこちら、2010年花組全ツの感想はこちら、2015年宙組全ツの感想はこちら。直近で観劇したMMG版はこちら。
ちなみに併演のスパークリング・ショー『EXCITER!!2018』の、2009年初演の感想はこちら、2010年再演の感想はこちら、2017年三演の感想はこちら。
何度も何度も語っていますが、私の宝塚歌劇ファン人生は1993年花組東京公演『メランコリック・ジゴロ/ラ・ノーバ!』を観てから始まっているので、何を差し置いても観なければならなかったのでした(笑)。
というわけで、翌日から宙組東京公演が始まるため観に動けるのは初日のみ、ということで超チケ難を潜り込んで観に行って参りました。まあ初日だったよね、てかハコがデカすぎましたよね。
つまり、テンポとか間とか滑舌とか、コメディに特に必要なものがまだまだうまくできていなくて、上滑りしている部分もあったような気がしますし、舞台を盛り上げ支えるような拍手や手拍子とかも全然少なくて、なかばぎくしゃくしつつも、でもなんとかかんとか完走した、というふうには、ちょっと見えた気がしたのです私には。でも、ここからノリをつかんでどんどん仕上げてくると思うし、ファンも楽しみ方や盛り上げ方がわかってくると思うし、確かに若いは若い座組なんだけれど、これで全国回って熱い風を吹かしてこーい!って劇団から与えられた任務を、ちゃんとやりとげられるだろうと思いました。期待しています。
さて、れいちゃんのダニエル、意外や意外、良かったですね。イヤこういう言い方はアレなんだろうけれど。
とにかく歌が心配でしたしそれは引き続き課題だなとは思えたのですが、ひとりで寂しげに歌う「ダニエルのテーマ」が、情感が漂っていていいなとほろりとさせられたんですよね。多少音程が怪しくても、イヤそれは今後背負うものを考えるとホントなんとかもう少しずつでも改善していってほしいんですけれども、でも、とにかくハートが伝わる。こういうふうに歌いたい、こういう想いを届けたいというのが見えるれいちゃんの歌が、私はわりと嫌いじゃないのでした。
そして私はれいちゃんのお芝居はもっと好きなんですけれど、これについてはむしろ不安が私にはあって、それはまとえりもまぁまかもそうだったんですけれど、というかまとぶんもまぁ様もどちらかというとスタンの方がハマりそうなタイプで、というかダニエルってある種の辛抱役でけっこう難しいキャラクターだと私は思っていて上手く演じるのはなかなかしんどいのではないかと危惧していて、今回もれいまいだと逆の方がニンじゃない?とか心配していたんですね。当時、いずれも、えりたんやゆりかちゃんの方が真面目な役にハマりそうに思えた、のです。
でも蓋を開けてみるといずれも、まずスタン役者がすごく軽やかに豹変してみせて、口八丁手八丁の貴族出身というけどそれもどうだか、な天然詐欺師みたいな、でも真の悪人ではない男、みたいなキャラクターをきっちり演じてくれて、それと対比する形でダニエルがちゃんとより真面目で不器用な男に見える…という形で成立してきたように思えました。
ただまとぶんだとなんか、ジゴロで学費を稼いでいる学生…って感じがあまりしなかったし、まぁ様もやっぱりジゴロっていうかなんかもっと華やかな仕事もしてそうだけど…って感じはあったかな。要するに学年とかキャリアもありますが、ふたりともあまり学生に見えなかったのかもしれません。ダニエルの歳はアントワンの28歳と近いのでしょうが、休学しながらも卒業はしようとしている若き苦労人なんですよね。れいちゃんは当時のまとぶんやまぁ様に比べたらぐっと下級生でしょうから、ちゃんと学生に見えて、それがよかったのかもしれません。
あと、ヤンさんのダニエルとは全然違うダニエルで、でもちゃんと成立していて、そこがとてもよかったです。
ヤンさんのダニエルって、当て書きだからあたりまえですけれど、真面目で不器用でちょっとシャイでとにかくナイーブで上手くジゴロ稼業がこなせなくてメランコリックになっているさみしげな青年、って感じだったんですよね。苦学生というのがまず先にあって、友達のスタンに紹介されて学費のために慣れないジゴロを苦労してやっていて、でもそれも不器用だからあまり上手くやれてないしもちろん楽しめてもいなくて、レジーナのことも満足させられていないしアネットに対しても浮気とかではなくてたとえば高い参考書のための臨時収入が欲しくてがんばったんだけど上手く逃げられなくて…みたいな、いい感じのダメダメさがあったと思うのです。それは本当にヤンさんの持ち味、ニンのままのキャラクターだったと思うのです。
しかもダニエルってキャラクターとして本当に辛抱役というか巻き込まれ型でほぼ活躍しない、カッコ良く見せるのが難しい主人公だと思うんですよね。活躍するのは主にノルベールであり、最後にベルチェを連れてくるスタンなんですから。これは魅力的に見せるのが本当に難しい役だと思います。
でも、巻き込まれた中で、フェリシアを守ろうとするし、筋を通そうとするし、ラストはノルベールに対してフェリシアの面倒を見ることを宣言する優しさ、強さ、誠意がある。そういうものこそ、それこそオスカルが言うような男らしさだと思うのだけれど、世間では評価されづらいし物語でも損な役回りになりがちな、そういう複雑な魅力を持ったキャラクターです。それを上手く素敵に見せられることが宝塚歌劇の男役には担わされているんですよね。逆にリアル男性の男優にやられると、けっこう「ケッ」となるキャラクターだと思ったりもするのです(笑)。つまり、私が偏愛しているキャラクターです。
れいちゃんのダニエルは…ジゴロでしたよね(笑)。仕事を紹介したのはスタンかもしれないけれど、もうある種天職なんですよ。すんごい上手に働けてそう(笑)。学生の方が副業になりかけている。
ただ若いから、アネット(春妃うらら)との浮気がバレてレジーナ(華雅りりか)に捨てられて宿無しになるようなポカもする。で、「なんだってんだいったい!」ってガラ悪くキレる。そう、歴代一ガラが悪く、子供っぽいダニエル(とスタン)だったかもしれません、でもそれがまた似合っていたし、そういうダニエル像もあるなと思わせられました。
学費のためにバイトとして始めたジゴロだけれど意外に水が合っていて楽しくなっちゃって、でも若いからミスもして、ちょっと別口で稼ぐかと思って友達の口車に乗ったら詐欺の片棒担がされて、金はないわ妹はできるわ父の親友だという男が借金返済を迫ってくるわで…って、巻き込まれ型のダニエルにちゃんとなっている。そしてそんな中で、ひっとんフェリシア(舞空瞳)への気の遣い方が優しい! 最初はもちろん面倒に思っているんだけれど、「幸せの夢」を歌うあたりから、そしてアネットと再会するくだりからの、地金も見せちゃったしもういいやとなってからの意外な真面目さ、誠実さ、シャイさ加減に私はもうキュンキュンしました。超絶美人だけれど素のれいちゃんにはそういう部分がちゃんとあるんだと思うんですよね、それが上手く表れている。
そして特にラブいことをやっているわけではないんだけれど、ちゃんとラブストーリーに見えましたし、それはひっとんのヒロイン力によるところもあるのかもしれませんが、れいちゃんの魅力でもあるかと思いました。
そしてキレッキレのダンスの鮮やかさ、素晴らしいですね!
ラストシーンは、もうちょっと、深みが出てくるとよりいいかなと思いましたが、それもこれからなのでしょう。千秋楽はみんなキュンキュンでダダ泣きかもしれませんよね。私はもう観られませんが、進化に期待しています。
そしてひっとん! 私は華ちゃんはちょっと男役顔すぎないか?と思っていて、どちらかというとひっとん派なのですが、やっと新公ヒロインが来たと思ったら次は別箱ヒロインと、とんとん拍子で起用されて嬉しい限りです。顔が小さくて手足が長い超絶スタイルと長身は、宝塚歌劇の娘役としては並ぶ相手を選んで難しい場合も多いし、今のところダンスが上手すぎて周りから浮きすぎるきらいがあるのもちょっと問題かもしれません。男役さんへの寄り添い力とか、男役さんとふたりでいるときが一番綺麗に見える、とかも大事なことだと思うので、そのあたりはこれから場数を踏めばいいのかなあ。その上で将来的にはひとりでも光り輝ける娘役さんになれると、ちゃぴ級のビッグスターになれる逸材かもしれません。とにかく期待しています。
フェリシア役は、ちょっと地味に作りすぎかな?と思わなくもありませんでしたが、ミハル以来のどんくさいのろまキャラというよりはおとなしくて引っ込み思案で強く前に出ていけないタイプで…という女の子を、ウザくなく、とてもいじらしく演じてくれていました。可愛かった! こちらもラブ度はもう少し上げていっていけたらいいなとは思いますが、成長と進化に期待しています!
マイティは私は本当にダンスの人だと思っていて、お芝居は実はピンとこないことが多くて、ですね…なのでスタンとしてはもうちょっと軽やかさが欲しかったです。
華ちゃんのティーナ(華優希)は案配がちょうどよかったかなと思いました。あまりアーパーに作るのは今の時代もう古いと思われるので、うまくウザさといじらしさを出す必要があるキャラクターだと思うので。ちょっと華はありすぎたかもしれませんけれどね。
つかさっちバロットは、決してやり過ぎていないのにちゃんとおもしろいという絶妙さがありました。愛ちゃんバロットのやり過ぎだからこそおもしろい、愛しいってのも良かったんですけれど、それはもう芸風の差かな(笑)。
はなこちゃんマチウもとても愛らしくて良かったです。モンチマチウは私には地味に感じられたから…めおちゃんとかそれこそタモを思い出しました。てかショーもホントはなこちゃんは垢抜けてきて、目覚ましいですよね。今の花組路線からしたらやや骨太すぎか?とこっそり危惧していたのですが、劇団が起用する気があるのなら是非とも使っていっていただきたいです。
パンチのあるアネットやいかにもなしっとり感が素晴らしかったレジーナの他にも、絶妙な笑いを取るイレーネ(乙羽映見)やいい女感がたまらないルシル(真鳳つぐみ)、いいウザさだったシュザンヌ(雛リリカ)、色っぽかったカティア(鞠花ゆめ)と、娘役ちゃんがちゃんと仕事をしているのも素晴らしかったです。
ベルチェ(冴月瑠那)とロジェ(和海しょう)は逆でも良かったかもしれません。びっくのフォンダリ(羽立光来)の存在感は素晴らしすぎました。
バート、アルマン、クロードでない客の男でやたら踊れる子がいたなあ、あれは誰だったんだろうなあ…
カフェのジュークボックスらしき音楽があいかわらず邪魔だったりもしましたが、とにかく楽しく観たのでした。
スパークリング・ショーは作・演出/藤井大介。さすがにちょっと人数が足りなくて、階段の数も足りなくて、寂しかったかもしれません。こちらの主演はれいちゃんと華ちゃんで、どちらも歌が弱かったのもショーとしてはつらかった気がしました。歌上手に分業してもらうにしても、主演はある程度は歌わないとならないし、再演となるとキーを合わせて作曲してもらえるわけでもないので、まあしんどいのは仕方ないかな。
でもノリノリだし楽しかったですけれどね。
チェンジ・ボックス場面の混沌さがおもしろくなりすぎていてファンにしかわからなくて全ツにどうなんだ問題、は感じましたが(笑)、豹柄ツナギのマイティってマジ正しい気がしたので無問題です。
そしてハバナクィーンのひっとんの素晴らしさね! 素直に拍手入れたくなりますよねアレは!
ダブルデュエダンのパートナーチェンジも良かったし、この座組ではこれが正解という気もしました。代替わりしても、トップと二番手が同期でしばらくいってもいいんじゃないかなあ。95期はどこも渋滞しているので…
そのあたりを見据えた、いい修行の場になっていると思います。風邪など引かずに、怪我に気をつけて、がんばって全国回って旋風を起こしてきていただきたいです!