日生劇場、2014年10月15日ソワレ、23日ソワレ、24日マチネ。
19世紀末のパリ。公爵家に生まれながら、自らが信じる正義のため、真実の報道を使命としたアラン・ド・オルレアン(早霧せいな)はル・ジュールナル新聞社を設立し、若き新聞王と呼ばれていた。しかしジュールなる新聞に不正を暴かれた父が自ら命を絶ったことでアランを憎むフランソワ(夢乃聖夏)はいつか復讐を果たそうと彼を執拗に追い続けていた。ある日ブルターニュを訪れたアランは、偶然立ち寄った孤児院でコリンヌ(咲妃みゆ)という少女と出会うが…
原作/細川智栄子あんと芙~みん、脚本・演出/生田大和、作曲・編曲/太田健。1979年から84年に連載された少女漫画を舞台化した、新生雪組トップコンビのプレお披露目公演。全2幕。
原作漫画の感想はこちら。
いやあ、いいお式でした。で、二次会は? そんな気分にされられる、まさしくチギみゆ結婚披露宴参列体験と言える幸せな観劇でした。とにかく観終わった後の多幸感がたまりません。これこそエンターテインメントが、宝塚歌劇が世に与えるべきもののひとつでしょう。
私は個人的には、志は果たされ愛は成就したが恋人は死して還らない…みたいな悲劇に涙してスッキリするタイプの観劇の方が好みなのですが(^^;)、それでもこういうラブラブハッピーで少々のご都合主義などものともしない、正義は果たされ愛は勝つ!みたいな一大娯楽作品はもっともっと高く評価されるべきだと考えています。だって理想ってそういうことだし、人々がこれを観てなかなかそうはなっていない現実をそういうふうにただしていこう、って奮い立つ、そういうきっかけになるのがフィクションの役割だと思うのですよ。ただの夢物語でいいってことじゃない。これが理想だなんてテレて認められない向きもあるでしょうが、もっと素直になるべきなんですよ。だからみなさん参列しましょう、まだあと少し公演していますよ! そしてマジで来年の博多座はこれでいいんじゃないでしょうか。フランソワやリシャール(彩凪翔)の演じ手が変わったりしたらまた感じが変わって楽しいと思うなあ。全ツでもいい。とにかく広く世に観られるべき作品だと思います。
そういう意味では、生まれてなかったでしょ?という頃の大昔の少女漫画を原作に持ってきて、かつ宝塚歌劇らしく男性キャラクターにきちんとフィーチャーして構成しなおした生田先生の手腕は本当に素晴らしい。やっぱり原作があった方がいいんじゃ…というのはこの際言うまい。とにかくテレず臆せずこれでもか!とやる姿勢が素晴らしい。
そしてそれをやりすぎなのでは、と観客を引かせることなく、イヤミなくテレなく体現して見せた新トップコンビが素晴らしい。ああ、本当にいいところにお嫁にいってよかったね俺たちのゆうみ…!と感慨もひとしおです。
次期トップ娘役就任とセットでの組替え、というのは近年ではまりもや蘭ちゃん、みりおんなんかもそうでした。事前にまったく接点がない相手と周りのお膳立てでめあわされる感じが本当に昔風ですが、こんなに上手くいくケース、かつ新婚感が漂うケースは珍しいかもしれません。
きりまりは息ぴったりのダンサーコンビになり、双方の性格からして新婚カップルというよりはアスリートの先輩後輩、師弟みたいになっていて、それはそれでさわやかで愛らしかったです。
蘭ちゃんは娘役スキルが高くて誰にでも上手く添え、結果的に相手を三人持つことになっても大輪の花を咲かせて今卒業していこうとしています。
みりおんは残留が決まったので、これからかな。相手を選ばないという意味では欄ちゃんに近いタイプだと思うし、とにかくまずは彼女の力量が存分に発揮できる役に巡り会ってほしいと思います。というかアイーダさせないなら劇団ホント馬鹿。
それでいうとゆうみちゃんはみりおの相手役という目もあったろうしこのまま月組にいてたまきち待ちだってできたでしょう。でもチギちゃんでよかった、ホントよかった。
そしてチギちゃんもいい相手役に来てもらえて本当によかったと思うのです。芝居心はあるタイプだと思う、でもなんと言っても特技・美貌で歌はアレレ、ダンスは普通、そして背がちょっとね…となると、相手役を選ぶし組のトップスターとしてのあり方もなかなか難しいものがあったと思うのです。
でもゆうみちゃんとセットで真ん中に立つなら、みんながみんな全力で支え愛し慈しむと思うのです。チギちゃんが本当にてらいなくゆうみちゃんを受け入れ可愛がり、テレもせずがんばってみせてくれるから、みんなが守りたくなる、支えたくなる、輝かせてあげたくなる。そういう求心力を持ったトップコンビが生まれたと思います。
宝塚歌劇は演目を鑑賞すると同時にスターの活躍を見るところであり、団体芸としての組の輝きやパワーを楽しむものだから、この先の雪組が本当に楽しみです。ボン・ボヤージュ! ましてさらにだいもんが来るんだぜ、れいこが育ってるんだぜ、タイヘンだあ!!
というワケでタイヘンよいともみん、タイヘンよいナギショー、タイヘンよいきんぐ、タイヘンよいまなはるを観ました。大ちゃんは確かに、ロンサール伯爵はマドレーヌ夫人(美穂圭子)の父親ではなく夫にしてもよかったかもしれません。バイト貴族が素敵だっただけにね。カリも使われていてよかったと思うなあ。
やりすぎを心配されるアンナの有沙瞳ちゃんですが、私はそんなふうには感じなかったな。ちゃんとお姫様系もできると思います、普通に育ててください。
ヒメやあゆみちゃん、カレン姉さんがきちんと仕事して、ユキエちゃんはちょっともったいなかったけど、他に若手も役名をもらってみんながんばっていて、とてもよかったと思いました。
オルレアン公爵(夏美よう)の比重を原作より増やしたのもアランを主人公として立たせるためによかったと思いましたが、歌はなくてもよかったかな…なんてね。
話はスピーディーですが雑だったり乱暴な感じはなく、若い観客にはこれくらいの方が眠い『ベルばら』なんかより100倍いいだろうし、韓ドラの超展開に慣れている熟年層あたりにもウケている感じでよかったと思います。転換もスムーズでわざとらしい役者の出入りやお衣装替え時間稼ぎがない感じ。
キャラクターがきちんと立てられていて主要キャラクターにはきちんと歌わせていて、ちゃんと収拾して着地してフィナーレまでついて、素晴らしかったと思います。
脚本的に引っかかったのは数点だけ、かな。ブルターニュの孤児院が後半「施設」と呼ばれるところは統一してほしいと思いましたし、オルレアン公爵の過去の悪事についてはもっと簡潔に説明してほしかったです。予習のために原作漫画を読んだだけだったのできちんと覚えていないのですが、「テロリスト」ってのは原作にあった表現かなあ? どうも最近の流行の言葉に感じました。あの時代の少女漫画ならむしろ「アナーキスト」を使っていたのでは? なんにせよ支援者である公爵がテロリストと表現するのはいかにもおかしい。反政府派とかにすべきでは?
あとこの、大義の前に小さな悪事は見過ごせるのか、みたいなテーマはけっこうデリケートな問題なので扱いに繊細であってほしいのですが、それでいうと冒頭の北部鉄道社長とアランとのやりとりはいかにもまずかったと思います。ここは再演があればぜひ修正していただきたい。まあたいていの観客は流して聞くところだと思いますけれどね。
ここでジュリアン(央雅光希)が言っていることは字面だけだとけっこうあたりまえでまっとうなことなのですよ。政府に命じられて鉄道を敷く、そのために土地を買い上げたってだけなんですから。鉄道ができれば周りの暮らしも便利になるし喜ばれる、という側面は見過ごせないものです。
でもダメでしょ? ここはジュリアンの悪事をアランが暴いて、ジュリアンが逆恨みするって場面でしょ? だからジュリアンはもっと明らかに悪いことをしていなくてはなりません。安い値で買い叩いたとか住民を脅して追い出した、程度ではぬるいと思う。もっとひどいことをやっていて、もっとずるく儲けていて人のことなんか考えてなくてむしろ虫けらみたいに思っていて、もっと泣かされた人がいて、その真実を明かし正義を求め新聞を通じて悪を告発し糾弾している正義のヒーロー、にアランを見せなくてはいけない流れです。セリフをもっと工夫してほしい。
さらに、逆恨みや報復、妨害を恐れるシモン(叶ゆうり)に対して「受けて立つ」と凛々しく答えるアランですが、ジュリアンは自殺を選んでしまいます。それに対する葛藤をどう描くかはまた非常にデリケートな問題だと思います。正義と人命とどちらが重いかって話なんですからね。ジャーナリズムの責任の重さに怖れを抱いたり、でも死んで逃げるのではなく生きて償ってほしかったと怒ったり、もっと描きようがあったと思います。少なくともジュリアンが死んで当然だと思っていたり、その死を他人事のようにしか感じてなくて自責の一片も見せないような人間にアランが見えないよう細心の注意を持って演出していただきたいです。
そうだ、あと、コリンヌがプロポーズを受諾したとき、それを受けてプロポーズ自体を保留にしたことがわかりづらかったと思いました。コリンヌがリシャールと想い合っていることを鑑みて、リシャールの目が治ったら改めてプロポーズする、孤児院のために無理やりいやいや来てもらっても嬉しくない、待つけど絶対に自分に惚れさせてみせるよ、くらいのことをきちんとセリフで言わせないと、何がどう棚上げになったのかわからないなと思いました。
コリンヌの就職のところもちょっと言葉が足りなかったかな。「アランの新聞社でカメラマンとして働かせてくれるってこと!?」みたいなダイレクトな台詞があってもよかったと思いました。
それくらいかな。
あとはもう…壁ドンも杖グイもあすなろ抱きも二度抱きも素晴らしかったし、ぶっちゃけセックスすることを「結婚する」「お嫁さんになる」と表現する世界観での押し倒しと寸止め場面も素晴らしすぎましたね。出色の一幕幕切れだったと思います。
キザなプロポーズも素晴らしい、ギャラリーがん無視で熱いキスしちゃうのも素晴らしい、原作から足された結婚式で終わるのも素晴らしい。抱き寄せられてるのにさらに顔を寄せちゃうコリンヌが可愛すぎる。きゃはっ!みたく抱きつくのがかまととギリギリなのに可愛いなんて奇跡的すぎる、それを「はっはっは」と笑って迎えるのが馬鹿っぽいギリギリなのにきゅんきゅんするなんて奇跡的すぎる!
幸福感満載のフィナーレのデュエダンがまた素晴らしい。かーわーいーいーーーーー!!!!!
というワケで、今週うっかり再参列していたら笑ってください…オー・ルヴォワール。
てか言いたいよね「ウイ」って!!!
19世紀末のパリ。公爵家に生まれながら、自らが信じる正義のため、真実の報道を使命としたアラン・ド・オルレアン(早霧せいな)はル・ジュールナル新聞社を設立し、若き新聞王と呼ばれていた。しかしジュールなる新聞に不正を暴かれた父が自ら命を絶ったことでアランを憎むフランソワ(夢乃聖夏)はいつか復讐を果たそうと彼を執拗に追い続けていた。ある日ブルターニュを訪れたアランは、偶然立ち寄った孤児院でコリンヌ(咲妃みゆ)という少女と出会うが…
原作/細川智栄子あんと芙~みん、脚本・演出/生田大和、作曲・編曲/太田健。1979年から84年に連載された少女漫画を舞台化した、新生雪組トップコンビのプレお披露目公演。全2幕。
原作漫画の感想はこちら。
いやあ、いいお式でした。で、二次会は? そんな気分にされられる、まさしくチギみゆ結婚披露宴参列体験と言える幸せな観劇でした。とにかく観終わった後の多幸感がたまりません。これこそエンターテインメントが、宝塚歌劇が世に与えるべきもののひとつでしょう。
私は個人的には、志は果たされ愛は成就したが恋人は死して還らない…みたいな悲劇に涙してスッキリするタイプの観劇の方が好みなのですが(^^;)、それでもこういうラブラブハッピーで少々のご都合主義などものともしない、正義は果たされ愛は勝つ!みたいな一大娯楽作品はもっともっと高く評価されるべきだと考えています。だって理想ってそういうことだし、人々がこれを観てなかなかそうはなっていない現実をそういうふうにただしていこう、って奮い立つ、そういうきっかけになるのがフィクションの役割だと思うのですよ。ただの夢物語でいいってことじゃない。これが理想だなんてテレて認められない向きもあるでしょうが、もっと素直になるべきなんですよ。だからみなさん参列しましょう、まだあと少し公演していますよ! そしてマジで来年の博多座はこれでいいんじゃないでしょうか。フランソワやリシャール(彩凪翔)の演じ手が変わったりしたらまた感じが変わって楽しいと思うなあ。全ツでもいい。とにかく広く世に観られるべき作品だと思います。
そういう意味では、生まれてなかったでしょ?という頃の大昔の少女漫画を原作に持ってきて、かつ宝塚歌劇らしく男性キャラクターにきちんとフィーチャーして構成しなおした生田先生の手腕は本当に素晴らしい。やっぱり原作があった方がいいんじゃ…というのはこの際言うまい。とにかくテレず臆せずこれでもか!とやる姿勢が素晴らしい。
そしてそれをやりすぎなのでは、と観客を引かせることなく、イヤミなくテレなく体現して見せた新トップコンビが素晴らしい。ああ、本当にいいところにお嫁にいってよかったね俺たちのゆうみ…!と感慨もひとしおです。
次期トップ娘役就任とセットでの組替え、というのは近年ではまりもや蘭ちゃん、みりおんなんかもそうでした。事前にまったく接点がない相手と周りのお膳立てでめあわされる感じが本当に昔風ですが、こんなに上手くいくケース、かつ新婚感が漂うケースは珍しいかもしれません。
きりまりは息ぴったりのダンサーコンビになり、双方の性格からして新婚カップルというよりはアスリートの先輩後輩、師弟みたいになっていて、それはそれでさわやかで愛らしかったです。
蘭ちゃんは娘役スキルが高くて誰にでも上手く添え、結果的に相手を三人持つことになっても大輪の花を咲かせて今卒業していこうとしています。
みりおんは残留が決まったので、これからかな。相手を選ばないという意味では欄ちゃんに近いタイプだと思うし、とにかくまずは彼女の力量が存分に発揮できる役に巡り会ってほしいと思います。というかアイーダさせないなら劇団ホント馬鹿。
それでいうとゆうみちゃんはみりおの相手役という目もあったろうしこのまま月組にいてたまきち待ちだってできたでしょう。でもチギちゃんでよかった、ホントよかった。
そしてチギちゃんもいい相手役に来てもらえて本当によかったと思うのです。芝居心はあるタイプだと思う、でもなんと言っても特技・美貌で歌はアレレ、ダンスは普通、そして背がちょっとね…となると、相手役を選ぶし組のトップスターとしてのあり方もなかなか難しいものがあったと思うのです。
でもゆうみちゃんとセットで真ん中に立つなら、みんながみんな全力で支え愛し慈しむと思うのです。チギちゃんが本当にてらいなくゆうみちゃんを受け入れ可愛がり、テレもせずがんばってみせてくれるから、みんなが守りたくなる、支えたくなる、輝かせてあげたくなる。そういう求心力を持ったトップコンビが生まれたと思います。
宝塚歌劇は演目を鑑賞すると同時にスターの活躍を見るところであり、団体芸としての組の輝きやパワーを楽しむものだから、この先の雪組が本当に楽しみです。ボン・ボヤージュ! ましてさらにだいもんが来るんだぜ、れいこが育ってるんだぜ、タイヘンだあ!!
というワケでタイヘンよいともみん、タイヘンよいナギショー、タイヘンよいきんぐ、タイヘンよいまなはるを観ました。大ちゃんは確かに、ロンサール伯爵はマドレーヌ夫人(美穂圭子)の父親ではなく夫にしてもよかったかもしれません。バイト貴族が素敵だっただけにね。カリも使われていてよかったと思うなあ。
やりすぎを心配されるアンナの有沙瞳ちゃんですが、私はそんなふうには感じなかったな。ちゃんとお姫様系もできると思います、普通に育ててください。
ヒメやあゆみちゃん、カレン姉さんがきちんと仕事して、ユキエちゃんはちょっともったいなかったけど、他に若手も役名をもらってみんながんばっていて、とてもよかったと思いました。
オルレアン公爵(夏美よう)の比重を原作より増やしたのもアランを主人公として立たせるためによかったと思いましたが、歌はなくてもよかったかな…なんてね。
話はスピーディーですが雑だったり乱暴な感じはなく、若い観客にはこれくらいの方が眠い『ベルばら』なんかより100倍いいだろうし、韓ドラの超展開に慣れている熟年層あたりにもウケている感じでよかったと思います。転換もスムーズでわざとらしい役者の出入りやお衣装替え時間稼ぎがない感じ。
キャラクターがきちんと立てられていて主要キャラクターにはきちんと歌わせていて、ちゃんと収拾して着地してフィナーレまでついて、素晴らしかったと思います。
脚本的に引っかかったのは数点だけ、かな。ブルターニュの孤児院が後半「施設」と呼ばれるところは統一してほしいと思いましたし、オルレアン公爵の過去の悪事についてはもっと簡潔に説明してほしかったです。予習のために原作漫画を読んだだけだったのできちんと覚えていないのですが、「テロリスト」ってのは原作にあった表現かなあ? どうも最近の流行の言葉に感じました。あの時代の少女漫画ならむしろ「アナーキスト」を使っていたのでは? なんにせよ支援者である公爵がテロリストと表現するのはいかにもおかしい。反政府派とかにすべきでは?
あとこの、大義の前に小さな悪事は見過ごせるのか、みたいなテーマはけっこうデリケートな問題なので扱いに繊細であってほしいのですが、それでいうと冒頭の北部鉄道社長とアランとのやりとりはいかにもまずかったと思います。ここは再演があればぜひ修正していただきたい。まあたいていの観客は流して聞くところだと思いますけれどね。
ここでジュリアン(央雅光希)が言っていることは字面だけだとけっこうあたりまえでまっとうなことなのですよ。政府に命じられて鉄道を敷く、そのために土地を買い上げたってだけなんですから。鉄道ができれば周りの暮らしも便利になるし喜ばれる、という側面は見過ごせないものです。
でもダメでしょ? ここはジュリアンの悪事をアランが暴いて、ジュリアンが逆恨みするって場面でしょ? だからジュリアンはもっと明らかに悪いことをしていなくてはなりません。安い値で買い叩いたとか住民を脅して追い出した、程度ではぬるいと思う。もっとひどいことをやっていて、もっとずるく儲けていて人のことなんか考えてなくてむしろ虫けらみたいに思っていて、もっと泣かされた人がいて、その真実を明かし正義を求め新聞を通じて悪を告発し糾弾している正義のヒーロー、にアランを見せなくてはいけない流れです。セリフをもっと工夫してほしい。
さらに、逆恨みや報復、妨害を恐れるシモン(叶ゆうり)に対して「受けて立つ」と凛々しく答えるアランですが、ジュリアンは自殺を選んでしまいます。それに対する葛藤をどう描くかはまた非常にデリケートな問題だと思います。正義と人命とどちらが重いかって話なんですからね。ジャーナリズムの責任の重さに怖れを抱いたり、でも死んで逃げるのではなく生きて償ってほしかったと怒ったり、もっと描きようがあったと思います。少なくともジュリアンが死んで当然だと思っていたり、その死を他人事のようにしか感じてなくて自責の一片も見せないような人間にアランが見えないよう細心の注意を持って演出していただきたいです。
そうだ、あと、コリンヌがプロポーズを受諾したとき、それを受けてプロポーズ自体を保留にしたことがわかりづらかったと思いました。コリンヌがリシャールと想い合っていることを鑑みて、リシャールの目が治ったら改めてプロポーズする、孤児院のために無理やりいやいや来てもらっても嬉しくない、待つけど絶対に自分に惚れさせてみせるよ、くらいのことをきちんとセリフで言わせないと、何がどう棚上げになったのかわからないなと思いました。
コリンヌの就職のところもちょっと言葉が足りなかったかな。「アランの新聞社でカメラマンとして働かせてくれるってこと!?」みたいなダイレクトな台詞があってもよかったと思いました。
それくらいかな。
あとはもう…壁ドンも杖グイもあすなろ抱きも二度抱きも素晴らしかったし、ぶっちゃけセックスすることを「結婚する」「お嫁さんになる」と表現する世界観での押し倒しと寸止め場面も素晴らしすぎましたね。出色の一幕幕切れだったと思います。
キザなプロポーズも素晴らしい、ギャラリーがん無視で熱いキスしちゃうのも素晴らしい、原作から足された結婚式で終わるのも素晴らしい。抱き寄せられてるのにさらに顔を寄せちゃうコリンヌが可愛すぎる。きゃはっ!みたく抱きつくのがかまととギリギリなのに可愛いなんて奇跡的すぎる、それを「はっはっは」と笑って迎えるのが馬鹿っぽいギリギリなのにきゅんきゅんするなんて奇跡的すぎる!
幸福感満載のフィナーレのデュエダンがまた素晴らしい。かーわーいーいーーーーー!!!!!
というワケで、今週うっかり再参列していたら笑ってください…オー・ルヴォワール。
てか言いたいよね「ウイ」って!!!