煌河グループの御曹司・煌河一己は、北海道のスケートリンクで珠洲雪野と出会う。彼女は、ジュニア時代に天才と呼ばれた選手だったが、ケガをきっかけにスケートをやめてしまっていた。だが雪野の才能を見抜いた一己は、彼女を再びリンクに立たせようと考える…華麗なるアイスダンスの世界を描いた氷上ロマン。
名香智子『パートナー』なんかもそうですが、男女カップルでやる競技で、だから恋愛になりがちで、でもあくまで競技なので恋仲でないほうがいい結果が出ることもあって…みたいなジャンルを扱う物語が大好物です。『パートナー』は競技ダンスでしたが、これは氷上のダンス、アイスダンスの物語です。2007年から約5年間の連載なので、今とはルールなんかも違うでしょうし、参考にしている選手やプログラムも当時のものが多いでしょうが、私も最愛のアイスダンスカップルは未だにメリル・デイヴィス&チャーリー・ホワイト(2014年ソチ五輪金メダル)という人間なので、実に楽しく読めました。というかこの著者の作品はひととおり読んでいるつもりでしたが(ただしハマったことはない…)、何故かたまたまこぼれていて、たまたまこのたびまとめて読むことができました。
絵柄が端正で、作風も端正で、もちろん十分にエモーショナルでドラマチックなんだけれど、キャラ萌えに走るようなところがないのがいい意味でも悪い意味でも特徴の作家かな、と思います。今回もそれがいいほうに出ていた作品だと思いました。なんせ主役カップルの在り方が、特異だけれど、実にいい。私はとても好みでした。なのに展開があまりにあまりなので、ちゃんとくっついてハッピーエンドになるのか読めなくて、いい意味でハラハラドキドキしました。そういう裏切りもやってくれちゃいそうだったからさー…パターンとしてはロマンくんと、って方がよほどわかりやすいんでしょうけれどね。
でも、ロマンは前パートナーと恋愛でこじれてカップルを解消していることもあって、雪野に対してはハナから「恋愛はしない、競技の相手役としてのみ」と宣言して関係を始めているので、途中揺れようとなんだろうとそれは自業自得なワケです。雪野にだってその気がないわけではないときもあったけれど、結局うまくハマらなかった…このあたりも『パートナー』とちょっと似ています。実際、そのほうが上手くいく、ってのも絶対にあるんだと思うんですよねえ…まあ、夫婦や恋人同士など、リアル・カップルが多い競技ではあるかとは思いますが。
一己には選手経験があるからそのあたりも理解できる、ってのは強みですが、何よりデカいのは要するに彼にはお金があったことです。彼はスポンサー、パトロン、プロデューサー、マネージャーっぽいことが向いている存在で、なおかつコーチや振付家もできるタイプでもあった。これは強いですよ…! 例えば女子スポーツを扱った少女漫画だと、まあ古くは『エースをねらえ!』の宗方コーチとか、まあ恋仲にもなるんだろうけど最初はもっと高圧的な、全然上の絶対的な指導者、みたいな形で登場するわけじゃないですか。そういう押しつけがましさはないんですよね、もっとずっとロマンチック。調子良すぎる、ってのもあるけれど、それくらい恵まれた中でさあどうするどうなる、ってドラマは描けるものだし、少女漫画ですもの、それくらいの夢やロマンやドリームやファンタジーも欲しいよねー、ってなるってもんです。しかも一己の復讐に関する筋は韓ドラチックで、これまたたまりませんでしたし、いろいろな線が複合してちゃんとドラマを織りなし大きな物語のうねりとなって、ちゃんと大団円ハッピーエンドまでたどり着いているんですから、ホントすごい手腕だと思います。大ベテラン作家さんですが、さすがすぎます…!
ある種、理想の関係なんじゃないかなあ…競技には選手生命がつきものですが、競技でない単なるアイスダンスなら一生の趣味でしょうし、それくらいのスケートなら今の一己でもできるんでしょうし、素敵なことだと思います。結局は愛し合う者同士がただ手をつないで並んで滑るだけで楽しい…というようなものなのでしょう。
日本ではスケートリンク経営がビジネス的に難しい問題なんかも早々に盛り込まれているのもよかったです。それでいうと一己が一度は政略結婚するところとか、雪野もそれを受け入れるところとかも少女漫画コードではだいぶアレなんだけれど、大人の少女漫画だから十分アリなんですよね。ビジネスは大事です。香織さんにはスザナとかラリサとかを思わなくはないんだけれど、大丈夫、彼女にはお金があるから…(笑)もちろん傷ついていないわけはないんだけれど、賢い人なんだし、まだまだ若いし、引きずるよりもさくっと別れたほうがいいに決まってますからね…それでいえばロマンにもきっともっといい相手がいつか現れるのでしょう。
美しい物語でした。カバーイラストも、毎回が雪野とロマンのカップルの全身ポーズに一己のアップ、というのがとてもよかったと思いました。
名香智子『パートナー』なんかもそうですが、男女カップルでやる競技で、だから恋愛になりがちで、でもあくまで競技なので恋仲でないほうがいい結果が出ることもあって…みたいなジャンルを扱う物語が大好物です。『パートナー』は競技ダンスでしたが、これは氷上のダンス、アイスダンスの物語です。2007年から約5年間の連載なので、今とはルールなんかも違うでしょうし、参考にしている選手やプログラムも当時のものが多いでしょうが、私も最愛のアイスダンスカップルは未だにメリル・デイヴィス&チャーリー・ホワイト(2014年ソチ五輪金メダル)という人間なので、実に楽しく読めました。というかこの著者の作品はひととおり読んでいるつもりでしたが(ただしハマったことはない…)、何故かたまたまこぼれていて、たまたまこのたびまとめて読むことができました。
絵柄が端正で、作風も端正で、もちろん十分にエモーショナルでドラマチックなんだけれど、キャラ萌えに走るようなところがないのがいい意味でも悪い意味でも特徴の作家かな、と思います。今回もそれがいいほうに出ていた作品だと思いました。なんせ主役カップルの在り方が、特異だけれど、実にいい。私はとても好みでした。なのに展開があまりにあまりなので、ちゃんとくっついてハッピーエンドになるのか読めなくて、いい意味でハラハラドキドキしました。そういう裏切りもやってくれちゃいそうだったからさー…パターンとしてはロマンくんと、って方がよほどわかりやすいんでしょうけれどね。
でも、ロマンは前パートナーと恋愛でこじれてカップルを解消していることもあって、雪野に対してはハナから「恋愛はしない、競技の相手役としてのみ」と宣言して関係を始めているので、途中揺れようとなんだろうとそれは自業自得なワケです。雪野にだってその気がないわけではないときもあったけれど、結局うまくハマらなかった…このあたりも『パートナー』とちょっと似ています。実際、そのほうが上手くいく、ってのも絶対にあるんだと思うんですよねえ…まあ、夫婦や恋人同士など、リアル・カップルが多い競技ではあるかとは思いますが。
一己には選手経験があるからそのあたりも理解できる、ってのは強みですが、何よりデカいのは要するに彼にはお金があったことです。彼はスポンサー、パトロン、プロデューサー、マネージャーっぽいことが向いている存在で、なおかつコーチや振付家もできるタイプでもあった。これは強いですよ…! 例えば女子スポーツを扱った少女漫画だと、まあ古くは『エースをねらえ!』の宗方コーチとか、まあ恋仲にもなるんだろうけど最初はもっと高圧的な、全然上の絶対的な指導者、みたいな形で登場するわけじゃないですか。そういう押しつけがましさはないんですよね、もっとずっとロマンチック。調子良すぎる、ってのもあるけれど、それくらい恵まれた中でさあどうするどうなる、ってドラマは描けるものだし、少女漫画ですもの、それくらいの夢やロマンやドリームやファンタジーも欲しいよねー、ってなるってもんです。しかも一己の復讐に関する筋は韓ドラチックで、これまたたまりませんでしたし、いろいろな線が複合してちゃんとドラマを織りなし大きな物語のうねりとなって、ちゃんと大団円ハッピーエンドまでたどり着いているんですから、ホントすごい手腕だと思います。大ベテラン作家さんですが、さすがすぎます…!
ある種、理想の関係なんじゃないかなあ…競技には選手生命がつきものですが、競技でない単なるアイスダンスなら一生の趣味でしょうし、それくらいのスケートなら今の一己でもできるんでしょうし、素敵なことだと思います。結局は愛し合う者同士がただ手をつないで並んで滑るだけで楽しい…というようなものなのでしょう。
日本ではスケートリンク経営がビジネス的に難しい問題なんかも早々に盛り込まれているのもよかったです。それでいうと一己が一度は政略結婚するところとか、雪野もそれを受け入れるところとかも少女漫画コードではだいぶアレなんだけれど、大人の少女漫画だから十分アリなんですよね。ビジネスは大事です。香織さんにはスザナとかラリサとかを思わなくはないんだけれど、大丈夫、彼女にはお金があるから…(笑)もちろん傷ついていないわけはないんだけれど、賢い人なんだし、まだまだ若いし、引きずるよりもさくっと別れたほうがいいに決まってますからね…それでいえばロマンにもきっともっといい相手がいつか現れるのでしょう。
美しい物語でした。カバーイラストも、毎回が雪野とロマンのカップルの全身ポーズに一己のアップ、というのがとてもよかったと思いました。