白泉社花とゆめコミックス全7巻。
龍の一族の次期当主・シャクヤには、婚約者がふたり。最初の婚約者ルシンが行方不明になったあと、代わりにクワンが許婚になったが、ルシンが記憶を喪失して戻ってきたのだ…三角関係ドラゴン・ファンタジー。
作者によればラストは「三角関係の形が変わっても関係が続いていくというふうにしたかった」とのことで、白黒はっきりさせたがるタイプの(おそらくは多くの)読者にしたら不満だったかもしれませんが、私は嫌いじゃなかったかなー。
私はもちろん最初からクワン派でした。
しかしそれはもちろんシャクヤがクワンと結ばれればいいと願うということではなくて(^^;)、お話の流れから言ってもシャクヤはルシンとくっついて、クワンは当て馬・フラれ役なんだろうけれど、だからこそ私が代わりに愛してあげるから!と肩入れするという、難儀な愛の形なのでした(^^)。
しかし三角関係ものというのは描くのは存外に難しく、どちらかが明らかに当て馬になってしまうとおもしろくないものですし、かといって完全に対等に魅力的に描いてしまうと、ヒロインにどっちをどう選ばせるかが難しくなる…という問題があります。
もちろんセリフにあるとおり、「人の心は一人しか愛せないわけじゃない」のですが、少女漫画は保守的なのか哲学的なのかフィデリティを貫くものですし、だからこそなおさら今回のヒロインの「だからこそ私は一人を選んで愛したい」という選択が美しく感じられるのです。
というわけで、冒頭ではルシンが戻ってきてもクワン、クワンと言っていたヒロインが、今後はクワンがちょっかいかけてきてもルシン、ルシンと言っていく、というようなラストは、美しいし、このお話にふさわしいように感じられたのでした。
なんといっても、死亡フラグが立ちまくりだったクワンが生きていてくれただけでうれしいよ…
これまた物語においては妊娠同様キャラを死なせちゃうのが一番簡単な展開だったりしますが、「死者には勝てない」というのもあってこれまた恋愛の勝敗に関しては微妙な決着になるものです。そんなふうにならなくてよかった…
個人的には、クワンとアマランスの過去エピソードをねちねち読みたかったのですが、きっとその余裕も、そこまでの支持もなかったんだろうなあ(^^;)。
アマランスとは子供のころからのつきあいで共犯者意識もあって、本当の愛情はシャクヤによって教えられたのです…とするのは簡単だけれど、おそらく実際にはそんなに割り切れたものではなかったはずで、そこにこそ萌えますけれどね。だって絶対クワンとアマランスには肉体関係があったに決まっているもん(^^)。白泉社の漫画だからそこまで話が及ばないけれど、恋愛において肉体の問題というのは絶対に不可欠です。今はシャクヤがまだ幼いけれど、今後は特に。それはルシンにとっても同様なわけですが。
まあそれはいい。そういうところをねちねち補完して妄想して楽しむのは、ファンに任せておいていただきましょう。
作品として残念だったのは、やはりクワンの真意が暴かれたりするあたりから、話が錯綜してきて、やや整理が追いついていなかったこと。アマランスにしろインジェイにしろ、立場、意図、真意などについてもっと抑えながら話を進められればなおよかった。ときどき、「誰と誰が何を争ってるんだっけ?」とおいていかれそうになったので。
それからインジェイとの戦いのシーンは、アニメで観たかったねーというか、作者の頭の中の映像をうまく漫画として表現しきれていない気がしました。もともと殺陣のシーンですら表現はそんなに上手いタイプではないと見えたので、ハードルは高いのでしょうが…
もちろんページが足りなかったのか大ゴマなどのはったりも利かせられなかったのが残念でした。
ともあれ、ヒロインが特殊能力を持った「姫」であり、ステキ男子ふたりないしそれ以上にかしずかれる、という構図は少女漫画のファンタジーの一ジャンルと言っても過言ではないくらいに、少女読者のイージーな願望を尽くしたものなのですが、きちんと成立させられているものは意外に少ないので、そこをちゃんとがんばったという点においてははなはだすばらしい作品だと言えると思います。
特にシャクヤがチャーミングなヒロインに描けているところがすばらしい。ステロタイプな主人公キャラでもないところがまたいい。
ときめき重視の普通の女の子っぽいところがあり、がんばりやで真面目で、ちゃんと歳相応な感じ。自分の義務や能力に関してもきちんと自覚していて、考えていて、重く思うときもあるし役立てる喜びに顔を輝かすときもある(後半の肝として力をなくすようになるまでは、あまり自分の力のことを嫌だと思っていないところもいい。ルシンの宿で客の心無い言葉に傷ついたり、という表現はあるのですが)。そのバランスの良さ。
おそらく作者がこのヒロインをちゃんと好きで描いているんだと思います。これも、設定や世界観先行でキャラクターはステロタイプで情熱ナシ、となりがちなファンタジー作品においては大きいことです。すばらしい。
「LaLa」連載作品にしては珍しく、アニメ化なりなんなりのメディア展開がなされないままに完結してしまったようですが、佳作だったと思います。
龍の一族の次期当主・シャクヤには、婚約者がふたり。最初の婚約者ルシンが行方不明になったあと、代わりにクワンが許婚になったが、ルシンが記憶を喪失して戻ってきたのだ…三角関係ドラゴン・ファンタジー。
作者によればラストは「三角関係の形が変わっても関係が続いていくというふうにしたかった」とのことで、白黒はっきりさせたがるタイプの(おそらくは多くの)読者にしたら不満だったかもしれませんが、私は嫌いじゃなかったかなー。
私はもちろん最初からクワン派でした。
しかしそれはもちろんシャクヤがクワンと結ばれればいいと願うということではなくて(^^;)、お話の流れから言ってもシャクヤはルシンとくっついて、クワンは当て馬・フラれ役なんだろうけれど、だからこそ私が代わりに愛してあげるから!と肩入れするという、難儀な愛の形なのでした(^^)。
しかし三角関係ものというのは描くのは存外に難しく、どちらかが明らかに当て馬になってしまうとおもしろくないものですし、かといって完全に対等に魅力的に描いてしまうと、ヒロインにどっちをどう選ばせるかが難しくなる…という問題があります。
もちろんセリフにあるとおり、「人の心は一人しか愛せないわけじゃない」のですが、少女漫画は保守的なのか哲学的なのかフィデリティを貫くものですし、だからこそなおさら今回のヒロインの「だからこそ私は一人を選んで愛したい」という選択が美しく感じられるのです。
というわけで、冒頭ではルシンが戻ってきてもクワン、クワンと言っていたヒロインが、今後はクワンがちょっかいかけてきてもルシン、ルシンと言っていく、というようなラストは、美しいし、このお話にふさわしいように感じられたのでした。
なんといっても、死亡フラグが立ちまくりだったクワンが生きていてくれただけでうれしいよ…
これまた物語においては妊娠同様キャラを死なせちゃうのが一番簡単な展開だったりしますが、「死者には勝てない」というのもあってこれまた恋愛の勝敗に関しては微妙な決着になるものです。そんなふうにならなくてよかった…
個人的には、クワンとアマランスの過去エピソードをねちねち読みたかったのですが、きっとその余裕も、そこまでの支持もなかったんだろうなあ(^^;)。
アマランスとは子供のころからのつきあいで共犯者意識もあって、本当の愛情はシャクヤによって教えられたのです…とするのは簡単だけれど、おそらく実際にはそんなに割り切れたものではなかったはずで、そこにこそ萌えますけれどね。だって絶対クワンとアマランスには肉体関係があったに決まっているもん(^^)。白泉社の漫画だからそこまで話が及ばないけれど、恋愛において肉体の問題というのは絶対に不可欠です。今はシャクヤがまだ幼いけれど、今後は特に。それはルシンにとっても同様なわけですが。
まあそれはいい。そういうところをねちねち補完して妄想して楽しむのは、ファンに任せておいていただきましょう。
作品として残念だったのは、やはりクワンの真意が暴かれたりするあたりから、話が錯綜してきて、やや整理が追いついていなかったこと。アマランスにしろインジェイにしろ、立場、意図、真意などについてもっと抑えながら話を進められればなおよかった。ときどき、「誰と誰が何を争ってるんだっけ?」とおいていかれそうになったので。
それからインジェイとの戦いのシーンは、アニメで観たかったねーというか、作者の頭の中の映像をうまく漫画として表現しきれていない気がしました。もともと殺陣のシーンですら表現はそんなに上手いタイプではないと見えたので、ハードルは高いのでしょうが…
もちろんページが足りなかったのか大ゴマなどのはったりも利かせられなかったのが残念でした。
ともあれ、ヒロインが特殊能力を持った「姫」であり、ステキ男子ふたりないしそれ以上にかしずかれる、という構図は少女漫画のファンタジーの一ジャンルと言っても過言ではないくらいに、少女読者のイージーな願望を尽くしたものなのですが、きちんと成立させられているものは意外に少ないので、そこをちゃんとがんばったという点においてははなはだすばらしい作品だと言えると思います。
特にシャクヤがチャーミングなヒロインに描けているところがすばらしい。ステロタイプな主人公キャラでもないところがまたいい。
ときめき重視の普通の女の子っぽいところがあり、がんばりやで真面目で、ちゃんと歳相応な感じ。自分の義務や能力に関してもきちんと自覚していて、考えていて、重く思うときもあるし役立てる喜びに顔を輝かすときもある(後半の肝として力をなくすようになるまでは、あまり自分の力のことを嫌だと思っていないところもいい。ルシンの宿で客の心無い言葉に傷ついたり、という表現はあるのですが)。そのバランスの良さ。
おそらく作者がこのヒロインをちゃんと好きで描いているんだと思います。これも、設定や世界観先行でキャラクターはステロタイプで情熱ナシ、となりがちなファンタジー作品においては大きいことです。すばらしい。
「LaLa」連載作品にしては珍しく、アニメ化なりなんなりのメディア展開がなされないままに完結してしまったようですが、佳作だったと思います。