駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『キレイ』

2009年12月30日 | 観劇記/タイトルか行
シアターコクーン、2005年7月13日ソワレ。
 三つの国に別れ、100年もの間民族戦争が続く「もうひとつの日本」。民族解放軍を名乗るグループに誘拐され、監禁されていた少女(鈴木蘭々)が、10年ぶりに地上へ逃げ出す。過去を忘れた少女は自らケガレと名乗り、戦場でたくましく生きるカネコ一家に加わる。彼らはダイズでできているダイズ兵の死体回収業で生計を立てていた…作・演出/松尾スズキ、音楽/伊藤ヨタロウ。大人計画主宰の松尾スズキが2000年に初挑戦した本格ミュージカルの再演。

 初演は奥菜恵と南果歩でした。どちらの女優さんも好きで、チケットが取りたくて、でも取れなかったの、覚えています。
 今回は酒井若菜と高岡早紀で、やっぱり好きでチケット取りたくて、でも取れなくて、手蔓を使った小ズルい方法で入手しました。でも酒井若菜は体調不良で降板しちゃったんですけれど。そして三時間半もの長い舞台は、全体的にはともかくテーマというかオチというかが全然気に入らなかったんですけど。
 過去を忘れてケガレと名乗り地上で生き始めた少女のもとに、その後にミサと名乗るようになった成人したケガレ(高岡早紀)が訪れる。時空を超えて交差するドラマ、そしてケガレが封印した過去が明かされていく…のが、まあ、主筋なんですけれど、ぶっちゃけネタバレですが、それが児童性的虐待ってのは、なんかさー、男性の書き手に簡単にやってほしくないんだけどなーと思ってしまったというか(ヘビーメンスシスターズとかも不快に感じました私は)、その後は自分も楽しむようになってしまったその行為の相手を殺して逃げて忘れてでもケガレと名乗ってでも思い出して「私はキレイ」と歌う、というのはだからどうしたというか当然じゃんというか、感動するようなことじゃないなというか…でした、私の感想は。

 大人計画の芝居って観たことないんですが、総じて長いと聞きます。まあそれはいいけれど。
 しかし高岡早紀の歌はつらかった。もちろんわざとなんだろうけれど、ケガレとミサのしゃべり方がちゃんと同じになっているところとかはよかったのですが。
 歌と踊りがしっかりしていたのはさすがの秋山菜津子(ダイダイ食品社長令嬢ダイダイカスミ20歳役)と岡本健一(ハリコナB役)。
 ハリコナAの阿部サダヲはキュートでした。その兄ジュッテンは今回は大浦龍宇一でしたが、初演はクドカンこと宮藤官九郎だったそうで、彼は今回マジシャン役でしたが、彼のジュッテンも観てみたかったです。キャラクターでは彼には萌えました。
 客層は明らかに若く、男性というか男の子も多かったです。さて彼らはどう観たのだろうか…
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安寿ミラダンスコンサート『FEMALE Vol.8』

2009年12月30日 | 観劇記/タイトルは行
 サンシャイン劇場、2005年7月8日ソワレ。
 出演/安寿ミラ、楓沙樹木、SHUN。構成・演出/ANJU、音楽・演奏/宮川彬良。元宝塚歌劇団花組トップスターのライフワーク、芸能生活25周年・退団10年目の記念公演。

 観たことがなかったのですが、誘ってくれる人がいたのでいそいそと出かけてきました。なんといってもヤンさんは私にとっての最初の「ヅカスター」なのです。
 あいかわらず細くて、あいかわらず踊れているだけに、いろいろと注文したくなってしまいました…
 まず、ダンスでストーリーを表現するのって意外と難しいと思うので、今回『オペラ座の怪人』や『ノートルダム・ド・パリ』をやったように、既存の有名な物語の音楽をそのまま使うとか、尾崎豊の『I LOVE YOU』の韓国版を使ったように、これまた有名で歌詞がすぐわかってもらえるものを使ってしまう、というのは手かな、と思いました(アンコールの『言葉にできない』のよかったこと!)。それで全編通してしまえばよかったのに…抽象的な曲や踊りだけだと伝わりづらくて、間が持たない感じがしてしまいました。
 あと、衣装が今イチだったなー…良さが出ていないよー。それとやっぱり歌は特に上手くはない…トークはおかしかったけど。
 退団後あまり時間が経っていないので当然かもしれませんが、楓沙樹が男役のキーのまま、発声のままで歌を歌ったのが妙に微笑ましかったです。
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『愛と幻想のシルフィード』

2009年12月30日 | 観劇記/タイトルあ行
 東京芸術劇場、2005年月7日ソワレ。
 スコットランドのグラスゴー。目下失業中の溶接工ジェームズ(この日はジェームス・リース)はかねてからの恋人エフィー(ミカ・スマイリー)との結婚を控えた身。結婚式前夜、仲間と繰り出したクラブのトイレでドラッグにふけるジェームズの前に、シルフ(ケリー・ビギン)が姿を現す…演出・振付/マシュー・ボーン、音楽/ヘルマン・セヴェリン・ローヴェンスキョルド、美術・衣装デザイン/レズ・ブラザーストン。『ラ・シルフィード』の翻案で、94年ブリストル初演、今年になって改訂版をロンドンで公演したものの、来日公演。原題は『Highland Fling』。

 私がバレエを観るのが好きなのは、そして特に古典の、「白いバレエ」を好んで観るのは、他のお芝居やミュージカルは当たり外れや出来不出来、好みの差異が大きいけれど、これならとにかく絶対に「美しい」ことはわかっているから、なんだなあ、と改めて思いました。「美」に浸りたくなると、私はバレエのチケットを取るのでした。
 そういう意味ではコンテンポラリーとか、マシュー・ボーンは危険です(笑)。
 今回も、物語の時代を現代に翻案したものだとは聞いていたので、まあクラシカルでロマンティックな意味での「美」を追求した舞台ではないだろうなあ、と一応心構えはしておきましたが、シルフの、なんというか、ちょっと「牧神」みたいな、白いんだけど裾に柄というか汚れが入った衣装とか、肌に痣だか汚れだかの黒ずみが入っていること、もちらん顔も目なんか隈どられているし、というのを見ると、ああやっぱ全然美の精霊じゃないわ、とちょっと引きました。汗とかすごかったしね。
 でも、なんか、物語にはほろりとさせられてしまいました。
 実は『ラ・シルフィード』を観たことがないのですけれどね。もともとこういうストーリーなのでしょうか。

 ネタバレですが、今回の舞台では、ジェームズは現実に、というかぶっちゃけエフィーに満足していないわけですね。だからドラッグに溺れ、エフィーにないものすべてを持っているシルフの幻覚を見る。シルフを追って窓の外に飛び出し、シルフィードたちの森に迷い込む。シルフを我が物にしようとして、というか自分の花嫁としようとして、その翼を切り、結果的にシルフを死なせてしまう。一方エフィーはジェームズを待つのをやめ、想ってくれる男のもとに嫁ぐ。だが彼女の目にもまた、窓の外のシルフの姿が見えてしまうのかもしれない。そのシルフはジェームズの姿をしている…
 つねに、ないものねだりをしないではいられない人間の愚かさ、悲しさ、せつなさ、絶望…そんなことを思って、胸をつかれるラストでした。
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Kバレエカンパニー『白鳥の湖』

2009年12月30日 | 観劇記/タイトルは行
 オーチャードホール、2005年6月9日ソワレ。
 純粋無垢な少女オデット(この日は康村和恵)が森の中で花を摘んでいると、悪魔ロットバルト(スチュアート・キャシディ)が呪いをかけて彼女を白鳥に変身させてしまう。一方、王国の宮廷では、ジークフリート王子(熊川哲也)の誕生日の宴が開かれる…原振付/マリウス・プティパ、レフ・イワノフ、演出・再振付/熊川哲也、音楽/ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、舞台美術・衣装/ヨランダ・ソナベンド、レズリー・トラヴァース。プロローグ付き全4幕。

 オディールにヴィヴィアナ・デュランテを迎え、白鳥と黒鳥を別キャストで演じさせる演出というので、だったらふたりが一緒にいる場を作らなくちゃ意味ないよなと思っていたら、やってくれました、第4幕はオディール出っ放しです。
 プロローグにまだ人間の娘であるオデットの姿を見せているのが、ラストシーンに効いてきます。いろんなバージョンがあるものですが、ここではオデットが身投げしてジークフリートも後を追って、その愛の強さにロットバルトが倒れて呪いが解けて、奇跡が起きてジークフリートとオデットが復活する…というような感じ。オデットは人間の姿で、ジークフリートと抱き合って終わるのでした。あんまリセットに凝るのは感心しませんが、まあ良かったのではないでしょうか。

 しかし3幕、4幕とも音楽の入れ替えやカットが激しく、やや馴染めなかったかなー。『白鳥の湖』ってもはや様式美の世界にあるものなので、別にあまり革新的なことを会えてやらなくてもいいのではと思えてしまうので。特に私は個人的に3幕の各国の姫君たちの踊りが好きなのでなおさら…しくしく。
 しかし黒鳥のパ・ド・ドゥはすごかった。
 私はこういう見せ場は、フラフラして不安定だったりするとまず不安になってしまって美しさを楽しむどころではなくなってしまうので、まず正確であることに重きを置いて観てしまうのですが…こんなにしっかり真っ直ぐ立つ32回転は初めて見た気がしました。ス・ゴ・イ!
 しかも、一度音楽を切ってから始めることの多い王子のピルエットも、そのままつなげて始めて、かつ回る回る回る。なんじゃありゃ! 『ドン・キホーテ』のバジルのあまりにも楽しそうな飛び跳ねっぷりにも感動して笑いましたが、なんかほとんど奇妙なものを見た気がしてしまいましたよ…

 2幕では白鳥たちのチュチュにびっくりしました。オデットはいわゆる普通の白鳥のチュチュなのに、白鳥たちはジゼル風の丈の長さで、だけど布一枚でふわっとしているタイプじゃなくて、羽を表すごわごわした飾りがいっぱいついていて、何故かキュロットのように、二枚の羽を表しているのでしょうがふたつに分かれて見えるので、マシュー・ボーンの男性舞踊手たちが踊った白鳥の衣装のようでした…
 でも総じて衣装と美術は素敵でした。

 妙に手を加えられてしまった分だけ、そして幽玄さやはかない美しさなどよりは強くて派手な部分が目立った分だけ、個人的には好みの『白鳥』ではなくて、『ドン・キ』の方がよかったかなーと思ってしまいましたが、でもまあ堪能しました。
 二階二列目最下手よりの席だったのですが、非常に見やすくてよかったです。
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