2016年KBS、全24話。BS japanextで全16話で見ました。
主人公はソン・ジュンギ演じるユ・シジン。韓国軍、特殊戦司令部の大尉。
ヒロインはソン・ヘギョ演じるカン・モヨン。ソウルの大病院に勤める外科医。どちらかというと彼女視点で物語が進むので、彼女の方が主人公っぽいかもしれません。韓ドラでは兵役のエピソードはけっこう出てくるものですが、本物の職業軍人のキャラクターってなかなかいなくて、ちょっと馴染みがありませんものね。韓国の軍隊は対アメリカ的には自衛隊と近い関係なのだと思いますが、視聴者にとってもおそらくそこまでメジャーじゃなくて、モヨンの視点から特殊な仕事の、けれど魅力的な異性と知り合ってしまい…というとまどいやときめきとともにストーリーを追う形になるんだと思うのです。
特殊戦、というのがまたミソで、実在するのかファンタジーなのか謎ですが、要するに単に戦争に駆り出されるのとはちょっと違って、紛争地域で要人警護をしたり、人質の救出作戦を請け負ったりするようなチーム、とされています。シジンはそのアルファチームのチーム長で、コードネームは「ビッグ・ボス」。若いわりには階級も上でもちろん優秀でチームの人望も篤いナイス・ガイ、素顔は飄々としていて軽口ばかりの一見優男ですが…という感じ。イヤもうこのキャラ造形がお見事でした。
対するモヨンもとてもいいヒロインでした。カットされていたのかはたまた特に描かれていなかったのかはわかりませんが、勉強ができたし理系科目も嫌いじゃなかったのでそちらに進学した、どうせならお金を稼げる方がいいから医者になった、と嘯く女性で、家が医者一家なのでいやいや…とか幼いころ難病だったのを救ってもらったから…みたいな設定がなく、こちらも飄々としているのです。でも決してクールで冷酷ということはなく、かといってしゃかりきにタダでなんでも面倒見ます、なんてこともしないタイプです。病院内でもそれなりに出世したい、少なくとも正当に評価されたい、という要求はあって、でも腕もないのに愛想と賄賂で同期の女性がのし上がっていくようなのには歯噛みして、セクハラパワハラにも噛みついて、そうしたら干されて紛争地域への医療奉仕に行かされてしまい、シジンと再会して…というような展開です。アラサーなんだろうけれどこれまた飄々としていて、周りに結婚しろとか子供はどうするんだとか言うようなキャラがいないのもいいし、本人も美貌を褒められると「美人ですけど何か?」と返すような茶目っ気があり、変に煮詰まったり焦ったり悩んだりしていない、中年とは言わないけれどもうピチピチの若さではない、しか充実した日々を送っていて自分の足で立っている等身大の女性、というすがすがしい造形なのが素晴らしかったです。ソン・ヘギョは私にとっては『ホテリアー』のセカンドヒロインで『オールイン』や『秋の童話』のヒロインで、女子大生になるやならずやみたいなお役をやっていた印象が強い女優さんでしたが、まあ綺麗なお姉さんになっていて変わらず素敵な女優さんで、うれしかったです。
四角関係…というかセカンドカップルは、シジンの部下ソ・デヨン(チン・グ)と女性軍医のユン・ミョンジュ(キム・ジウォン)が構成しました。デヨンは上士とのことですが、つまり下士官なんでしょうね。おそらく歳はシジンより上なのかなと思いますし、副チーム長で信頼し合っていてプライベートでも仲はいいんだけれど、ずーっとお互い敬語で話すんですよ、それがめっちゃ萌えました。任務を離れたらタメ語、とかじゃないの、ずっとお互いですます調でしゃべってるの。仲良しのふたりのそういうプレイなんだろうな、と思いました。チン・グがまた、私が以前韓ドラを見ていたころはまだ線の細い美青年枠のスターだったと思うんですけれど、いい感じに幅が出て男臭くなっていて、質実剛健なこのキャラにぴったりでした。
ミョンジュは特殊戦司令部司令官の一人娘で、医師免許取得の際にモヨンと面識があった…んだったかな? 父親がシジンと結婚させようとして配属して、でもふたりともその気がなく、司令官の手前は婚約者同士のように振る舞うんだけれど、実際に出会って恋に落ちたのはデヨンとミョンジュで…というような関係性です。デヨンの階級が低いので、このおつきあいは司令官には認めてもらえないだろう、というある種の身分差の問題が発生しているのでした。
ひょんなことから出会ったシジンとモヨンが、それぞれ派兵、派遣されたモウル(どのあたりがモデルなんだろう? 宗教描写は避けられているのかなとも思いましたが、イメージとしてはイスラム圏の、町もあるけれどたいていは砂漠…みたいな国、地域?)で再会して、お話は進んでいきます。8割方モウルでのお話だったかな? オールロケだったんでしょうか、すごいなあ…
で、こういうドラマは日本では作られないな、とホント感心してしまったんですよね。そこがホント見どころありました。
つまり日本でやろうとすると、もっと自衛隊プロパガンダみたいなものになっちゃうか、でないと『VIVANT』みたいなのになっちゃうんだと思うんですよね。あれはキャラクターの設定は似ていたかもしれないけれど、展開のさせ方が脚本的に、設定的に荒唐無稽すぎて変におもしろい方にいっちゃってましたし、ラブも絡めていましたけど、まあザルで残念な出来でした。それからすると、もっと全然ちゃんとしていました。
まず、ヒーローもヒロインもどちらも人命を扱う仕事をしている、という捉え方が秀逸すぎました。もちろんシジンの方は必要なら暗殺めいたことまでするのが任務なんですけれど、自分も命懸けで、そういうギリギリ仕事で、一方でモヨンの方は医師なので、救える命はそれがどこぞの大統領だろうが村の子供だろうが全力で手を尽くす、という真剣さで働いているのです。その裏表なような、対等なような、な構造が抜群に効いていました。例えばヒロインがスーパーヒーローに守られるだけ、みたいな形にはまったくなっていないのです。ふたりが対立もする、共闘もする、なんなら彼女が彼の命も救うまである。
その中でヒーローも、軍人なんだけれど、軍務で動いているんだけれど、でもそれは単に国家の利益のためではなくて、彼にとっての国家は国民を守るためにあるもので、国民の利益になるものだと信じられる任務については全力でがんばり、怪しいものには反抗する気骨がある人間として描かれています。そしてそれが主人公のキャラだから、信条だから、ではなく、この世界線ではこれが正しい考え方であり理想であり正義だ、ここが守るべきラインなのだ、とされているのです。この一線が引ける創作家が日本にはいないと思うんですよね、残念なことに…だから、特殊戦なんて架空の組織だと思うんだけれど、これを自衛隊に移してドラマにすることなんて日本では絶対にできないと思うのですよ。たとえやっても、ヒロインはこういう形では立てられないと思うんですよね…それが情けなくて、絶望的な気持ちになります……
周りのキャラやひとつひとつのエピソードもとても良くて、なんとなくカットや編集には気づいていましたが、これはフルバージョン見たいな!と思いました。あとソン・ジュンギの顔がめっちゃ好みだったので(笑)、他のドラマも見てみたいです。
セカンドカップルの方もホントいいんですよー! ミョンジュ父はいつものアボジオモニーズで、でもあまり軍の高官なんて役をやる印象がないおじさま役者だったので、それもちょっとおもしろかったです。
オチもよかった。今回は無事だった、でも次はわからない。でもそれはみんなそうで、別に軍人じゃなくても、みんないつ車に撥ねられるかわからないし、未来なんて不確かなんです。だから好きなら、逃げずに食らいついて、つきあい続けるしかない。そういう前向きなラストシーンだと思いました。モヨンがぐだぐだ悩みすぎてかわいそうな自分に酔っちゃうようなタイプのヒロインじゃなくて、本当によかったです。それは医師という仕事から学んだシビアさもあるのかもしれない。でも大人だな、いいな、と自然に思えるのです。こういうヒロインの造形も、日本のドラマではまだまだないと思うのですよ…
あとは、けっこう前のドラマだと思うんだけれど、モヨンの同僚にちゃんと車椅子の医師がいること。障害者でもごく普通に働いている、という描写が普通にあることが素晴らしい。これも日本のドラマにまだ全然ないでしょう。あとは助手席の相手にキスするために、運転手が自動運転スイッチを入れる描写! すごくないですか!? 韓国ってもうそんななの!? 驚いたし激しくときめきましたよ…!
ホント全然進んでる…!と打ちのめされつつ、楽しく見てしまいました。有料チャンネルでないフルバージョン放送、お待ちしています!!
主人公はソン・ジュンギ演じるユ・シジン。韓国軍、特殊戦司令部の大尉。
ヒロインはソン・ヘギョ演じるカン・モヨン。ソウルの大病院に勤める外科医。どちらかというと彼女視点で物語が進むので、彼女の方が主人公っぽいかもしれません。韓ドラでは兵役のエピソードはけっこう出てくるものですが、本物の職業軍人のキャラクターってなかなかいなくて、ちょっと馴染みがありませんものね。韓国の軍隊は対アメリカ的には自衛隊と近い関係なのだと思いますが、視聴者にとってもおそらくそこまでメジャーじゃなくて、モヨンの視点から特殊な仕事の、けれど魅力的な異性と知り合ってしまい…というとまどいやときめきとともにストーリーを追う形になるんだと思うのです。
特殊戦、というのがまたミソで、実在するのかファンタジーなのか謎ですが、要するに単に戦争に駆り出されるのとはちょっと違って、紛争地域で要人警護をしたり、人質の救出作戦を請け負ったりするようなチーム、とされています。シジンはそのアルファチームのチーム長で、コードネームは「ビッグ・ボス」。若いわりには階級も上でもちろん優秀でチームの人望も篤いナイス・ガイ、素顔は飄々としていて軽口ばかりの一見優男ですが…という感じ。イヤもうこのキャラ造形がお見事でした。
対するモヨンもとてもいいヒロインでした。カットされていたのかはたまた特に描かれていなかったのかはわかりませんが、勉強ができたし理系科目も嫌いじゃなかったのでそちらに進学した、どうせならお金を稼げる方がいいから医者になった、と嘯く女性で、家が医者一家なのでいやいや…とか幼いころ難病だったのを救ってもらったから…みたいな設定がなく、こちらも飄々としているのです。でも決してクールで冷酷ということはなく、かといってしゃかりきにタダでなんでも面倒見ます、なんてこともしないタイプです。病院内でもそれなりに出世したい、少なくとも正当に評価されたい、という要求はあって、でも腕もないのに愛想と賄賂で同期の女性がのし上がっていくようなのには歯噛みして、セクハラパワハラにも噛みついて、そうしたら干されて紛争地域への医療奉仕に行かされてしまい、シジンと再会して…というような展開です。アラサーなんだろうけれどこれまた飄々としていて、周りに結婚しろとか子供はどうするんだとか言うようなキャラがいないのもいいし、本人も美貌を褒められると「美人ですけど何か?」と返すような茶目っ気があり、変に煮詰まったり焦ったり悩んだりしていない、中年とは言わないけれどもうピチピチの若さではない、しか充実した日々を送っていて自分の足で立っている等身大の女性、というすがすがしい造形なのが素晴らしかったです。ソン・ヘギョは私にとっては『ホテリアー』のセカンドヒロインで『オールイン』や『秋の童話』のヒロインで、女子大生になるやならずやみたいなお役をやっていた印象が強い女優さんでしたが、まあ綺麗なお姉さんになっていて変わらず素敵な女優さんで、うれしかったです。
四角関係…というかセカンドカップルは、シジンの部下ソ・デヨン(チン・グ)と女性軍医のユン・ミョンジュ(キム・ジウォン)が構成しました。デヨンは上士とのことですが、つまり下士官なんでしょうね。おそらく歳はシジンより上なのかなと思いますし、副チーム長で信頼し合っていてプライベートでも仲はいいんだけれど、ずーっとお互い敬語で話すんですよ、それがめっちゃ萌えました。任務を離れたらタメ語、とかじゃないの、ずっとお互いですます調でしゃべってるの。仲良しのふたりのそういうプレイなんだろうな、と思いました。チン・グがまた、私が以前韓ドラを見ていたころはまだ線の細い美青年枠のスターだったと思うんですけれど、いい感じに幅が出て男臭くなっていて、質実剛健なこのキャラにぴったりでした。
ミョンジュは特殊戦司令部司令官の一人娘で、医師免許取得の際にモヨンと面識があった…んだったかな? 父親がシジンと結婚させようとして配属して、でもふたりともその気がなく、司令官の手前は婚約者同士のように振る舞うんだけれど、実際に出会って恋に落ちたのはデヨンとミョンジュで…というような関係性です。デヨンの階級が低いので、このおつきあいは司令官には認めてもらえないだろう、というある種の身分差の問題が発生しているのでした。
ひょんなことから出会ったシジンとモヨンが、それぞれ派兵、派遣されたモウル(どのあたりがモデルなんだろう? 宗教描写は避けられているのかなとも思いましたが、イメージとしてはイスラム圏の、町もあるけれどたいていは砂漠…みたいな国、地域?)で再会して、お話は進んでいきます。8割方モウルでのお話だったかな? オールロケだったんでしょうか、すごいなあ…
で、こういうドラマは日本では作られないな、とホント感心してしまったんですよね。そこがホント見どころありました。
つまり日本でやろうとすると、もっと自衛隊プロパガンダみたいなものになっちゃうか、でないと『VIVANT』みたいなのになっちゃうんだと思うんですよね。あれはキャラクターの設定は似ていたかもしれないけれど、展開のさせ方が脚本的に、設定的に荒唐無稽すぎて変におもしろい方にいっちゃってましたし、ラブも絡めていましたけど、まあザルで残念な出来でした。それからすると、もっと全然ちゃんとしていました。
まず、ヒーローもヒロインもどちらも人命を扱う仕事をしている、という捉え方が秀逸すぎました。もちろんシジンの方は必要なら暗殺めいたことまでするのが任務なんですけれど、自分も命懸けで、そういうギリギリ仕事で、一方でモヨンの方は医師なので、救える命はそれがどこぞの大統領だろうが村の子供だろうが全力で手を尽くす、という真剣さで働いているのです。その裏表なような、対等なような、な構造が抜群に効いていました。例えばヒロインがスーパーヒーローに守られるだけ、みたいな形にはまったくなっていないのです。ふたりが対立もする、共闘もする、なんなら彼女が彼の命も救うまである。
その中でヒーローも、軍人なんだけれど、軍務で動いているんだけれど、でもそれは単に国家の利益のためではなくて、彼にとっての国家は国民を守るためにあるもので、国民の利益になるものだと信じられる任務については全力でがんばり、怪しいものには反抗する気骨がある人間として描かれています。そしてそれが主人公のキャラだから、信条だから、ではなく、この世界線ではこれが正しい考え方であり理想であり正義だ、ここが守るべきラインなのだ、とされているのです。この一線が引ける創作家が日本にはいないと思うんですよね、残念なことに…だから、特殊戦なんて架空の組織だと思うんだけれど、これを自衛隊に移してドラマにすることなんて日本では絶対にできないと思うのですよ。たとえやっても、ヒロインはこういう形では立てられないと思うんですよね…それが情けなくて、絶望的な気持ちになります……
周りのキャラやひとつひとつのエピソードもとても良くて、なんとなくカットや編集には気づいていましたが、これはフルバージョン見たいな!と思いました。あとソン・ジュンギの顔がめっちゃ好みだったので(笑)、他のドラマも見てみたいです。
セカンドカップルの方もホントいいんですよー! ミョンジュ父はいつものアボジオモニーズで、でもあまり軍の高官なんて役をやる印象がないおじさま役者だったので、それもちょっとおもしろかったです。
オチもよかった。今回は無事だった、でも次はわからない。でもそれはみんなそうで、別に軍人じゃなくても、みんないつ車に撥ねられるかわからないし、未来なんて不確かなんです。だから好きなら、逃げずに食らいついて、つきあい続けるしかない。そういう前向きなラストシーンだと思いました。モヨンがぐだぐだ悩みすぎてかわいそうな自分に酔っちゃうようなタイプのヒロインじゃなくて、本当によかったです。それは医師という仕事から学んだシビアさもあるのかもしれない。でも大人だな、いいな、と自然に思えるのです。こういうヒロインの造形も、日本のドラマではまだまだないと思うのですよ…
あとは、けっこう前のドラマだと思うんだけれど、モヨンの同僚にちゃんと車椅子の医師がいること。障害者でもごく普通に働いている、という描写が普通にあることが素晴らしい。これも日本のドラマにまだ全然ないでしょう。あとは助手席の相手にキスするために、運転手が自動運転スイッチを入れる描写! すごくないですか!? 韓国ってもうそんななの!? 驚いたし激しくときめきましたよ…!
ホント全然進んでる…!と打ちのめされつつ、楽しく見てしまいました。有料チャンネルでないフルバージョン放送、お待ちしています!!