宝塚歌劇月組『スカーレットピンパーネル』東京新人公演
東京宝塚劇場、2010年6月17日ソワレ。
宝塚歌劇団には、新人公演と呼ばれるものがあります。
入団7年目までの生徒(劇団員のことです)で、本公演とまったく同じお芝居(一本立てのお芝居の場合は抜粋版)を、1回だけ上演するのです。
本役は、たとえば主演する男役トップスターはたいてい入団15年前後であることが多い。
つまりそれだけ若く未熟な役者たちだけで公演するわけです。
座席の料金はもちろん安い。親心で発表会として観るものだと思います。
私は宝塚歌劇を見始めて20年近いのですが、新人公演、略して新公を今まで一度も観たことがありませんでした。
一回しかない公演なので(東西で計2回ですが)レアチケットだからなかなか入手できない、ということもあります。
が、そもそも私は演劇とは演者ではなく演目、内容を見るものだと思っているので、本役より圧倒的に未熟に決まっている演者たちで上演される演目をわざわざ観に行く意味がわからなかったのです。意義はわからなくはないけれどね。
でもそういうのはもっとタニマチっぽいディープなファンがなさることで、毎公演1,2回程度しか観ない、ライトで細く長い私のような一介のファンが手を出せるものでも手を出すべきものでもない、と思っていたのです。
実際、その程度の回数しか観ないと、真ん中以外に目がいったとしても、そういう目立つ役が付いている生徒はもう新公学年を卒業していて、新公に出るような若い生徒は私なんかでは顔も名前も一致しない、だから親心も何も応援しようがない…ということもありました。
(そう、『太王四神記』でハマって再び宝塚歌劇への情熱が再燃し、ずっとボーッと好きだったユウヒに改めてハマり、初めて会になんか入っちゃったりして、こんなに通い出す前は、私は毎公演その程度しか見ないライトなファンだったのですよ…一番遠ざかっていたときは、演出家に興味が持てない公演は観もしなかった…)
でも、今回は…
珠城くんが、『ラストプレイ』新公で二番手に抜擢されてまあまあ健闘した、というのは機関誌「歌劇」のレポート記事などで知っていました。
で、バウ公演『HAMLET!!』の東京公演でレアティーズ役を観て、ホントに普通によくできている、と思いました。こんな学年の子の名前と顔がわかったのなんてホントに初めてかもしれません(娘役は抜擢が早いことが多いのでまた別ですが)。
そうしたら今度のスカピン新公では主演する、というので、演目そのものもいいし、ああ観てみたいなあ、どんななんだろうなあ、と初めて純粋に興味を持ったのです。
やはりチケット難でしたが、頼んでおいたら、直前になんとかなることになった。
で、初めて映像でも新公を観てみました。『太王』です。これがまた映像だからかもしれませんがまた実によくできていた。
台詞がクリアなのに仰天し、みんなすごく落ち着いて芝居をしていて、新人があわあわぱたばたやっていて目も当てられない…という感じがまったくなかった。ひとつの役変わり公演みたいにすら見えた。すごい、と思いました。
…と、前置きが長くなりましたが、そんなわけで今回初めて、生で、新公なるものを体験してきたのでした。
いやー………
若い。
心臓に悪い。
芝居としてなんとか成立している部分と、明らかに上滑りしている部分とが混在していて、やはり演目として観るには圧倒的に物足りない。
それでもやっぱり、おもしろかったです。
若い役者ががんばっていること、本役とはちがう個性、そういうものが観られるのはやはり楽しい、おもしろい。
観てみてやっとわかりました。
パーシー珠城りょうくん。スタイルがいい、というのはもちろんですが(もちろん見せ方はまだまだなんだけれど)、ハートのある歌が大健闘していたと思います。
歌が上手くて本公演のショーなどでも使われているマルグリット彩星りおんちゃん。台詞の声を初めてきちんと聞きましたが、とても好みでした。スカステのインタビューなんかを見ているととてもキツそうで、マリモちゃんのマルグリットよりさらにタイヘンなことになるのではないかと危惧していたのですが、なんかいい感じの可愛げがあって、とてもよかったと思いました。
ショーヴラン紫門ゆりやくん。本公演ファーレイの美しさに仰天しましたが、こちらも大健闘だったのではないでしょうか。ちゃんとショーヴランに見えた(^^;)。歌は特に低音部が正直しんどくて、つらいところもありましたが、逃げずにがんばっている感じもとてもよかったです。
新公の長は響れおなくん。本公演のクーポーもよかったので注目でしたが、軽快なプリンス・オブ・ウェールズでした。
本公演エルトンもとてもよかった宇月颯くんはロベスピエール。童顔を心配していましたがこちらも押し出しのいい悪役っぷりでよかったです。
スカピン団ではフォークスの貴千碧くんがやはり一日の長がある感じ。
総じて、声ができているな、と思った人はみんな学年が上でした。やはりキャリアというものはあるものなのです。でも華とはまた別、という難しさもあるわけですが。
イザベル白雪さち花ちゃんも聴かせました。
スカフェコンビのアルマン煌月爽矢くんとマリー花陽みらちゃんもお似合いで手堅い感じだったかと。
大劇場での新公では初舞台生がいたのですが、それも抜けて、モブはかなり寂しかったかなー。
私は宝塚の人海戦術はかなりたいしたものだと思っているので、やはり人数が半減するとパワーも落ちますよね…残念。
でも、民衆の男で背が高くてとても目立っている子がいたりして、こういうところからまた明日のスター候補生が育っていくのだろうなあとも思いました。
観客としても勉強になりました(^^)。
宙組もなんとか観られると嬉しいなー…
とりいそぎアップ。