駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

今週の言葉

2010年06月28日 | MY箴言集
旅行は一の熱情である。
恋や結婚と同じやうに、
出発の前に荷造りされてる、
人生の妄想に満ちた鞄である。



  萩原朔太郎『虚妄の正義』より
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初新公観劇!

2010年06月17日 | 日記
 宝塚歌劇月組『スカーレットピンパーネル』東京新人公演
 東京宝塚劇場、2010年6月17日ソワレ。


 宝塚歌劇団には、新人公演と呼ばれるものがあります。
 入団7年目までの生徒(劇団員のことです)で、本公演とまったく同じお芝居(一本立てのお芝居の場合は抜粋版)を、1回だけ上演するのです。
 本役は、たとえば主演する男役トップスターはたいてい入団15年前後であることが多い。
 つまりそれだけ若く未熟な役者たちだけで公演するわけです。
 座席の料金はもちろん安い。親心で発表会として観るものだと思います。

 私は宝塚歌劇を見始めて20年近いのですが、新人公演、略して新公を今まで一度も観たことがありませんでした。
 一回しかない公演なので(東西で計2回ですが)レアチケットだからなかなか入手できない、ということもあります。
 が、そもそも私は演劇とは演者ではなく演目、内容を見るものだと思っているので、本役より圧倒的に未熟に決まっている演者たちで上演される演目をわざわざ観に行く意味がわからなかったのです。意義はわからなくはないけれどね。
 でもそういうのはもっとタニマチっぽいディープなファンがなさることで、毎公演1,2回程度しか観ない、ライトで細く長い私のような一介のファンが手を出せるものでも手を出すべきものでもない、と思っていたのです。
 実際、その程度の回数しか観ないと、真ん中以外に目がいったとしても、そういう目立つ役が付いている生徒はもう新公学年を卒業していて、新公に出るような若い生徒は私なんかでは顔も名前も一致しない、だから親心も何も応援しようがない…ということもありました。
 (そう、『太王四神記』でハマって再び宝塚歌劇への情熱が再燃し、ずっとボーッと好きだったユウヒに改めてハマり、初めて会になんか入っちゃったりして、こんなに通い出す前は、私は毎公演その程度しか見ないライトなファンだったのですよ…一番遠ざかっていたときは、演出家に興味が持てない公演は観もしなかった…)

 でも、今回は…

 珠城くんが、『ラストプレイ』新公で二番手に抜擢されてまあまあ健闘した、というのは機関誌「歌劇」のレポート記事などで知っていました。
 で、バウ公演『HAMLET!!』の東京公演でレアティーズ役を観て、ホントに普通によくできている、と思いました。こんな学年の子の名前と顔がわかったのなんてホントに初めてかもしれません(娘役は抜擢が早いことが多いのでまた別ですが)。
 そうしたら今度のスカピン新公では主演する、というので、演目そのものもいいし、ああ観てみたいなあ、どんななんだろうなあ、と初めて純粋に興味を持ったのです。

 やはりチケット難でしたが、頼んでおいたら、直前になんとかなることになった。
 で、初めて映像でも新公を観てみました。『太王』です。これがまた映像だからかもしれませんがまた実によくできていた。
 台詞がクリアなのに仰天し、みんなすごく落ち着いて芝居をしていて、新人があわあわぱたばたやっていて目も当てられない…という感じがまったくなかった。ひとつの役変わり公演みたいにすら見えた。すごい、と思いました。

 …と、前置きが長くなりましたが、そんなわけで今回初めて、生で、新公なるものを体験してきたのでした。


 いやー………


 若い。
 心臓に悪い。
 芝居としてなんとか成立している部分と、明らかに上滑りしている部分とが混在していて、やはり演目として観るには圧倒的に物足りない。

 それでもやっぱり、おもしろかったです。
 若い役者ががんばっていること、本役とはちがう個性、そういうものが観られるのはやはり楽しい、おもしろい。
 観てみてやっとわかりました。


 パーシー珠城りょうくん。スタイルがいい、というのはもちろんですが(もちろん見せ方はまだまだなんだけれど)、ハートのある歌が大健闘していたと思います。
 歌が上手くて本公演のショーなどでも使われているマルグリット彩星りおんちゃん。台詞の声を初めてきちんと聞きましたが、とても好みでした。スカステのインタビューなんかを見ているととてもキツそうで、マリモちゃんのマルグリットよりさらにタイヘンなことになるのではないかと危惧していたのですが、なんかいい感じの可愛げがあって、とてもよかったと思いました。
 ショーヴラン紫門ゆりやくん。本公演ファーレイの美しさに仰天しましたが、こちらも大健闘だったのではないでしょうか。ちゃんとショーヴランに見えた(^^;)。歌は特に低音部が正直しんどくて、つらいところもありましたが、逃げずにがんばっている感じもとてもよかったです。

 新公の長は響れおなくん。本公演のクーポーもよかったので注目でしたが、軽快なプリンス・オブ・ウェールズでした。
 本公演エルトンもとてもよかった宇月颯くんはロベスピエール。童顔を心配していましたがこちらも押し出しのいい悪役っぷりでよかったです。
 スカピン団ではフォークスの貴千碧くんがやはり一日の長がある感じ。
 総じて、声ができているな、と思った人はみんな学年が上でした。やはりキャリアというものはあるものなのです。でも華とはまた別、という難しさもあるわけですが。

 イザベル白雪さち花ちゃんも聴かせました。
 スカフェコンビのアルマン煌月爽矢くんとマリー花陽みらちゃんもお似合いで手堅い感じだったかと。

 大劇場での新公では初舞台生がいたのですが、それも抜けて、モブはかなり寂しかったかなー。
 私は宝塚の人海戦術はかなりたいしたものだと思っているので、やはり人数が半減するとパワーも落ちますよね…残念。
 でも、民衆の男で背が高くてとても目立っている子がいたりして、こういうところからまた明日のスター候補生が育っていくのだろうなあとも思いました。


 観客としても勉強になりました(^^)。
 宙組もなんとか観られると嬉しいなー…

 とりいそぎアップ。

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ラインナップへの苦言

2010年06月15日 | 日記
 以下、宝塚歌劇団公式機関誌『歌劇』の投書欄「高声低声」に投稿しちゃいました。
 この声が届くといいのだけれど…

***

 先日発表されたラインナップについて苦言を呈したい。

 まず花組。新トップ娘役の蘭乃はせっかくのお披露目公演もショー『EXCITER!』が再演物だが、続く全ツ『メランコリック・ジゴロ』も再演(正確には三演)、『ラブシンフォニー』も再演物(何度目か?)で、しかもこの組み合わせは前トップ娘役・桜乃の真飛とのコンビお披露目と同じだ。
 全ツは予算がないので再演物で、という制約があるのはわかるが、あまりに気の毒である。しかも『メランコリック~』はロマンチック・コメディという点では『麗しのサブリナ』と被る。
 本公演で『太王四神記』から1作しか間を開けずに、またも古代アジア物の『虞美人』を持ってきたときもどうかと思ったが(事実、鎧など見たことあるものばかりだった)、新鮮味がなさ過ぎる。
 花組自体、新作のショーを一年やらない事態となるのも問題だ。バウ主演も朝夏連投でなくとも、他にもスポットを当てられていい生徒がいるのでは?

 雪組も、水のサヨナラ作品に続いて、新トップ・音月のお披露目が正塚作品。これまたイメージが似るだろう。

 そして宙組。本公演でやっと新作オリジナル二本立ての本公演ができたと思ったら、次はまたも映画原作の一本立て、扱う時代も作品イメージも『カサブランカ』に似た作品だ。そして間に入る全ツ作品はこれまた再演物(これも三演)の『銀ちゃんの恋』である。

 これでは演目セレクトに、あまりに芸がないと思う。たとえば同じ再演でも、今の花で『銀ちゃん』、宙で『メランコリック』だったら、また目新しさが演出できたのではないか?
 生徒の多彩な魅力を引き出すのがプロデューサーの腕の見せ所ではないのか?
 特にトップ娘役の軽視(月に続いて花、雪でも人事発表が遅すぎる)、ショーの軽視には目に余るものがある。初めて宝塚歌劇に触れる観客も多いであろう全ツに、ショーを持っていかないとはどういう了見なのか。「TAKARAZUKA REVUE COMPANY」という名称は飾りなのか。

 似たような顔ぶれで似たような演目を続けてダラダラやっていては、ファンでもリピート率が下がるし、集客率も落ちる一方だと思う。
 現代物の次は時代物、悲恋物の次はハッピーエンド、シリアスの次はコメディ、コスチューム物の次はスーツ物、洋物の次は和物、シックなショーの次は元気なショー…交互にするだけでも新鮮さは演出できるのでは?

 劇団には、制約の中でも生徒の輝きを引き出す公演が準備できるよう、もっと考えてもらいたい。

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今週の言葉

2010年06月14日 | MY箴言集
けっとばされてきたものは
けり返せばいいのだ
ける一瞬に
きみが自分にたしかめるもの
ける一瞬に
きみが誰かにゆだねるもの
それはすでに言葉ではない

泥にまみれろ
汗にまみれろ
そこにしか
憎しみが愛へと変わる奇跡はない
一瞬が歴史へとつながる奇跡はない


       谷川俊太郎『サッカーによせて』より
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能町みね子『オカマだけどOLやってます。完全版』(文春文庫)

2010年06月10日 | 乱読記/書名あ行
 能町みね子、2×歳、都内某会社でOLとして働き始めて3年、実はまだ「チン子」がついています。会社の人は誰もそのことを知りません…オトコ時代について、恋愛のお話、ドキドキOL生活などについて語る脱力系イラストエッセイ本。

 セクシャルマイノリティについて興味があって、目につくとわりと読んでいます。
 いろいろなタイプの本がありますが、これはとても好感が持てました。
 解説によると、
「書かれたものとは、書かれた意味内容より、その書き方にこそ思想が現れる」
 とのことで、内容もそうなんだけれど、書き方のライトっぽさがいい意味で素人っぽく、でもリアルで、センスがあって、素人はだしで、結局はその後プロの文筆業&イラストレーターになったというのもうなずけるというものです。

 しかし改めて思います。
 自分のストレートさが残念だと…ヘテロさが憎い、と…

 これは同人誌だったんですが、とてもよくできたセクシャルマイノリティ解説本があって、ほとんどの人は自分のセクシャリティについて考えたこともなくて漠然としてしか考えていないものだから、まず自分へのカミングアウト、すなわち自覚が必要だ、と書いてあったんですね。
 で、その時私はかなり真剣に考えた。
 どうもあんまり恋愛体質じゃないし、そもそもモテないので、恋愛経験の数がそもそも少ないのでナンだけれど、相手は確かに異性だったが、それはたまたまではないのか。
 BLも好きだがユリも好きだし、宝塚歌劇なんかすっごい好きだし(今ならAKB48…『マジスカ学園』について語らせたら今の私はかなりウザい自信がある)、実は同性愛者ってことはないのか?
 その方が世界が広がるのではないか?
 …と。

 で、残念ながら、うーんやっぱり自分が生身でする恋愛とかセックスとかはどうも男性に対して発動するようだ、そして私は性格的には雄々しいし凛々しいしさっぱりしていて女々しいところもないかわりに女らしい細やかさなどにも欠けるかもしれないが、それでも自分のことを女だと思っているし女として生きていくことの方が気安いと思っているし…というわけで、女として男を好きな、ただの異性愛者だな、という自覚、自分へのカミングアウトをしたのでした。

 で、そういう経緯があっても、でもジャニーズよりAKBに惹かれる自分はなんなんだとか、彼氏の身体には愛着があっても他の男性の身体には興味がなくて、たとえばアイドルのヌードとか見てもどうでもいいが、むしろグラビアアイドルのグラビアは見たいぞ、というのはなんなんだ、とか考えていて、だからこういうジャンルのものについ手を出してしまうのだと思います。

 真剣に、病理として考えているわけではないし、マイノリティの方も大変だろうとは思うけれど、同情したり心配するのもなんかちがう気もするし、彼ら・彼女らにとってはそれが普通だったりもするわけで…とか思っていたので、この力の抜けた自然体加減のエッセイはとても読みやすかったし、笑えたし、ドキドキしたし、おもしろかったです。
 著者は、当人にはそんな気はなくても、とてもクレバーで、優しくて、センスがいい人なんだと思うな。自分や周りや人生や社会と上手く距離が取れて、愛せている人なんだと思うな。

 素敵なことだと思います。
 お気楽で的外れな感想だったら、すみません…

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