駒子の備忘録

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音楽劇『空中ブランコのりのキキ』

2024年08月19日 | 観劇記/タイトルか行
 世田谷パブリックシアター、2024年8月17日14時。

 もとは人見知りで平凡な女の子だった空中ブランコのりのキキ(咲妃みゆ)は、厳しい練習を重ね、今ではサーカス界のトップスター。鳥みたいに羽ばたくその華麗な技はいつも危険と隣り合わせですが、キキは観客から拍手をもらうためなら命を投げ出すことも厭いません。しかしそんな彼女の頭の中には、自分しかできない三回宙返りを「いつか他の誰かもやってしまうのでは」という不安があって…
 原作/別役実、構成・演出/野上絹代、音楽/オオルタイチ、脚本/北川陽子、サーカス演出監修/目黒陽介、セノグラフィー/佐々木文美(舞台美術)、藤谷香子(衣裳)。別役実が書いた童話の代表作『空中ブランコのりのキキ』『愛のサーカス』『丘の上の人殺しの家』をひとつの世界観でつないだ、「大人と子どもが一緒に観劇できる舞台」。全一幕。

私は『カラカラ天気と~』を観ただけの別役戯曲ですが、これは不条理劇ではなく、童話で、先日観た『ゴースト・ライト』と同じ「せたがやアートファーム2024」の一環の作品だそうで、演劇やダンス、サーカスに音楽といういろいろな表現が劇場に溢れ、交流することを目指したものだそうで、確かに夏休みだし昼の回だし子供連れの観客も多かったんですけれど…でも、これ、童話かな? けっこうシュール…というかざらりとした話では? 子供、わかります? まあわからなくても何かしら感じればいいのかもしれないけれど…
 ただ、実は私自身は大人になるまでサーカスというものを見たことがなかったように思うので(少なくとも記憶がない…親は「見せに行ったのに!」と言うかもしれませんが)、もっとサーカスそのものの演技を取り込んで見せてもいいんじゃないかしらん、など思いました。いや、サーカスアーティストは何人も登場していますし、エアリアルはじめいくつか技は舞台で披露してくれるんですけど、でもあくまで「イメージとしてのサーカス」を演じているだけにように、私には思えたので。
 それになんといっても肝心の空中ブランコが…最初の登場ではライトの動きだけの表現でしたよね? あれじゃなんのことかわからないんじゃないのかなあ…私はけっこう呆然としました。ゆうみちゃんが役作りのために実際に空中ブランコの体験レッスンみたいなのをしていてすごかったのを、彼女のインスタで見ていましたからね。実際の舞台ではもちろんプロがやるか、別の形で表現されるんだろうな、とは思っていましたけど(だってこれはサーカスではなく、演劇、音楽劇なので)、ライトがひょーんって移動するだけ…??って肩透かし感を感じてしまったのです。ゆうみちゃんが歌いながら大きなブランコを漕ぐところはよかったけれど、舞台ではあれが限界なんだろうな、とも思えたし…でもあれでもっと高く上げて、それで安全ベルトとか付けたりしたらそれはキキじゃないし…
 クライマックスのシーンは映像ではなくて、プロが飛んで見せたんですよね?(実はよくわかりませんでした…)まああくまで演劇なので、その中で本物の迫力みたいなものをどう出すか、それにどう勝つか、が問題なのかもしれないけれど…ちょっと、かなり、しょんぼりしました。
 あと、ここに書いたあらすじはプログラムから書き写したものですが、でも実際の舞台の印象は、こういうふうには進まないので、私はキキのキャラや彼女の悩みが実は観ている間はよくわかりませんでした。ゆうみちゃんキキがいじらしくて可愛いことはわかるんだけどね…?
 だって、つまり、ラスト、成功したことのない四回宙返りに挑戦して、そして白い鳥になった…ってことは、要するにに失敗して落下して死んだ、ってことなんですよね…? そんなしんどい童話、あります…? 拍手がもらえないなら死んじゃう、他の人も同じことをするようになったらもう人気者じゃなくなっちゃう…っていう悩みに、この回答でいいの…???
 ただ、それでいうならゆうみちゃんが二役で演じるピピ(咲妃みゆ)と象(松岡広大)のエピソードもちょっと、かなり、ひどいというかざらりとさせられません…? 筏に乗って港町に流れ着き、何もしゃべらないのでみんながかわいそうがって世話を焼いて、みんなが彼らを好きになって、そこにサーカス団長が現れて、これが芸だよ、今まで楽しんだでしょ、さあお代をくださいって言うってのは…ちょっと、ホント、ひどくないですか…? 大人の物語すぎませんか…??
 宣伝美術はよかったんですけれど、実際の舞台は美術もお衣装もややチープだった気もして(キキの白いふわふわのサーカス衣装は素敵でしたが)、めくるめくドリームやファンタジーの世界に没入して…みたいなのも私は感じられなかったので、もちろん私が真面目に観ようとしすぎてしまったのかもしれないけれど、うぅーんなんかホントにコレなのか??って気がしちゃったんですよね…すみません。
 語り(瀬奈じゅん)ほか何役も務める麻子は歌うし踊るしオン・ステージ!状態でしたし、松岡くんも素敵でしたが…そうそう、ロロ(松岡広大)のあの外国語設定、要ります…? 母国語になるとなめらかに話せる、ってくだりがあったけど、要するにすべて日本語で演じられていたわけで…あれ、子供にわかりますかね? 三兄弟はチャーミングでおもしろかったけど…滑っていた気もしなくもなくもなくもないかもしれない…すみませんホント駄目な観客で…
 ちなみに音楽、というか歌は歌詞も含めてどれもいいな、と思いました。「どうしちゃったんだ世界は まるで世界みたいじゃないか」というのは、なんか深げでよかったです。意味はわかったようなわからないような…ですが。
 というわけで少女を演じるゆうみちゃんはツヤピカのお肌もあって本当に少女のようで、そら絶品でした。頭も小さいしスタイルいいのに、子供に見える。すごい。また舞台が観たいな、と思いました。
 プログラムがコンパクトでお洒落でお安かったのもよかったです。姫路公演まで、どうぞご安全に…!














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