駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

高瀬隼子 『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)

2023年08月31日 | 乱読記/書名あ行
 職場でそこそこ上手くやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。ままならない人間関係を、食べものを通して描く、最高に不穏な傑作職場小説。第167回芥川賞受賞作。

 ほぼホラーでした。
 小説のジャンルっていろいろあるけれど、これはいわゆるお仕事小説ではありません。確かに職場小説なの、それも怖い。そしてタイトルにごはんとあるし料理も食事も出てくるけれど、グルメ小説ではない。食べもの小説、とは言えるかもしれない。でも登場人物たちは誰もあまり幸せな食事も調理もしていない。そこが怖い。
 さらにオチが怖い…転勤を機に別れればいいじゃん、なんでつきあい続けるの? なんで結婚とか視野に入れちゃってるの? こういう男がいるから、今の日本から不幸な結婚がなくならないんだよ、と心底思います…ホント怖い。『こっち向いてよ向井くん』より怖い。
 結婚はしたい人、向いている人だけがきちんと完遂する意志を持ってするべきです、本当に。なんとなく、とか周りに言われて、とかみんなしてるから、とかホントやめてほしい。誰も幸せにしません、当人含めて。
 食の好みとかが近くないと結婚とか共同生活はつらいかも、みたいなことはよく言われるものですが、本当にそうですよね。好き嫌いも、アレルギーも、興味やこだわりの有無も人それぞれですが、人はみんな食べないと死ぬので、生命とか人生とかに直結している問題なわけです。そんな問題で歩み寄れないなら他はまして推して知るべし、じゃないですか…何故なんだ二谷、おまえはまあまあ賢い人間ではないのか、何故そこまで自分というものがないのだ、そしてこういう人間はどうして男性にいがちなんだ…闇すぎます。

 毎年、芥川賞と直木賞受賞作のうち、興味が惹かれたものは読むようにしていますが、芥川賞受賞作って、観念的すぎて哲学的にはおもしろくても小説としてはハテ…みたいなものが多いような気もします。が、これはフツーにおもしろかったです。そこも怖い。装丁がカワイイ、それも怖い。
 オススメです。





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『THE MONEY』

2023年08月27日 | 観劇記/タイトルさ行
 CBGKシブゲキ!!、2023年8月25日18時半、26日17時。

 シンカンミツキ(寿つかさ)の夫が突然失踪した。理由は不明。警察に相談しても門前払いで、ミツキは自ら夫を捜索する中、ある洋館を訪れてひとりの女と出会う。その女、アオイ(七海ひろき)は「あなたと5000万円を山分けしたい」と言う。そのお金はミツキの夫が過去に犯罪行為により手に入れたもので…
 脚本・演出/保木本真也、プロデュース/七海ひろき。他の配役はマリ/緒月遠麻、サエ/伶美うらら、ウオ/澄風なぎという、元宝塚歌劇宙組子によるミステリー・シチュエーションコメディ。QQカンパニー初公演、全1幕。

 ひと口に宝塚OGといっても卒業後の進路は幅広く、芸能関係に進む人はむしろ意外と少ないのかもしれませんが、その中でもかいちゃんはなかなかに独自な路線を切り開いていて、ホントすごい人だと思っています。小劇場とか、ブロデュースとかに興味があるというのも、なんとなくさもありなん、です。かつての仲間を揃えて、テレビドラマの主演をした際の脚本家さんに当て書きでオリジナル書き下ろしを依頼して、ちゃんと舞台の形にしてみせるんだから、ホントたいしたものです。
 休憩なし、90分の脳味噌が揺さぶられるシットコムで、観客もタイヘンですがもちろん役者はもっとタイヘンなのでは…卒業後の初仕事、というか初主演のすっしぃさんは、出演者が70人と5人の違いはもちろんありますが、今のれいちゃんよりれいこちゃんより咲ちゃんよりこっちゃんより多い量の台詞を間違いなく担当しているだろう、と思いました。でもこなしちゃうんだもんな、ジェンヌってホントすごい…! それで言えばかいちゃんも、キタさんも、ゆうりちゃんもたっくも、一癖も二癖もある役をきっちり演じて、ボケてつっこんで笑いも取っての八面六臂で、ホントたいしたものでした。『刀剣乱舞』には呼んでくれたのに、うちのはダメでしたかかいちゃん…?とか実は思っていたのですが、こりゃ無理だ、このスピードには対応できないよねあきちゃんは…とか思いました、すみません。
 とにかく、ホントおもしろかったし、興味深かったです。

 以下ネタバレで語ると、サブタイトルは「薪巻満奇のソウサク」とされていて、これが夫を捜索しているシンカンミツキのこと…と思いきや、実はそれは劇中劇で、これはマキマキマキというややアレなペンネームでミステリーを執筆している小説家の創作なのでした。かいちゃんは「ソウくん」と呼ばれる編集者ですが、おそらくは「蒼」みたいな字で、それで小説の中ではアオイという女性キャラになっているのかもしれません。このふたりが現実の存在(?)で、マリ、サエ、ウオはマキが創作した作中のキャラクターです。が、作家の脳内ではよくあることに、実感を持って、実在の人物のように動き出し、作者自身もコントロールできなくなっていったりするのでした。
 そんなメタ、とも違うけれど、二重構造を持った作品で、展開に詰まったマキがソウと相談しながらお話を作っていき、作中で「5人の犯罪者」が右往左往する、という舞台です。最後はオープンエンドというか、ミステリーとしてダメじゃん!アレレ??みたいな終わり方をするのですが、まあ別に綺麗に決着しなくても、そこまでの過程やドタバタがおもしろいからいいんだよ、というタイプの物語です。
 というか、なのでメインのドラマとしては書けないと騒ぐ作家となんとかして原稿を取ろうとする編集者との駆け引き、掛け合いにあり、それは今は営業ですが過去20年編集をやっていた身としてはもうエモエモのエモでめっさ刺さるのでした。「いや、書けよ!」とか思わず怒鳴るよね、ウンウン(笑)。
 そう、世の中のみなさんは、編集者の仕事って原稿を待つことや受け取ることだと思っていて、作家の仕事場の座敷かなんかでイライラ時計見ながら座って待ってる…みたいなのがイメージなのではと思いますが、本質的にはそうではなくて、作家と一緒にお話を考えるのが仕事なんですよね。もちろん実際に文章にしたり漫画に仕立てるのは作家なんだけれど、話はほとんど自分が作った、原作料が欲しいくらいだ、って人から、ストーリーには本当にノータッチでただ作家を気分良く作業させることに注力してお茶入れたりおやつ差し入れたりするだけの人まで、関わり方に濃淡はありますが…そうやって共同作業で形にした作品が、ミリオンセラーの大ヒットになってアニメになりドラマになり映画になって作家が億万長者になっても、編集者には印税はビタ一文入りません。逆にまったく当たらずかすらず儲からず、作家がなけなしの原稿料では食べていけずバイトしてずっとモヤシを食べてしのぐ極貧生活を送っていても、編集者はちゃんと会社からお給料をもらえています。そういう商売なんです、編集って。で、会社の業務として担当を振られたら、作家につく。
 マキとソウは年齢もキャリアも差がありそうですが、まあまあいいコンビなのでしょうね。でも、友達でも恋人でも家族でもない。担当している間だけの関係なので、ビジネスパートナーとも言い難い。でも、協力して、おもしろいものを、誰かに愛され求められるものを作ろうと、あーでもないこーでもないと大騒ぎして七転八倒する生き物同志です。そんな一夜を描いた90分なのでした。
 ある意味で全員が二役を演じていて、その役者がみんな達者で、照明の変化が効果的で(照明/村山寛和)、BG程度なんだけど音楽もニクくて(音楽/森優太)、ワンシチュエーションでなんでもできるということがよくわかる、演劇の醍醐味にあふれた舞台でもありました。また座組を変えて、いろいろやっていってほしいなあ。かいちゃん、ホントすごいなあ。
 小さいハコでしたが完売御礼、配信もやるし、さすがですね。大阪公演もどうぞ無事に完走するよう祈っています。来たことがある気でいた劇場でしたが、記録も記憶もなかったので初めてでしたね。椅子がいいのに仰天しましたが、前列との間は狭すぎました…でも作品にはちょうどいい大きさで、生声でも十分で、わけてもキタさんは十分以上の声量でした(笑)。というか同伴した後輩は滑舌がいいのに感動していたなあ…確かにあんな長台詞、まあまあ早口でも綺麗に聞き取れましたもんね。やはりクオリティが高いなあ…
 しかし観た2回とも80分、85分くらいで終わってました。マキだけに、巻きすぎでは…(笑)残りの公演も、どうぞご安全に。





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宝塚歌劇星組『1789』

2023年08月24日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2023年6月2日13時(初日)、7月1日15時半(前楽)。
 東京宝塚劇場、7月25日18時、30日15時半、8月9日13時半。

 1780年代後半のフランス。栄華を極めたブルボン王朝の支配に翳りが見え始め、重税に喘ぐ民衆らによる暴動が各地で頻発していた。官憲に理不尽に父親を銃殺され、農地を奪われたロナン・マズリエ(礼真琴)は、父の仇を討って土地を取り戻すことを誓い、故郷を捨ててパリへ向かうが、革命家たちの牙城バレ・ロワイヤルでデムーラン(暁千星)やロベスピエール(極美慎)と出会い、彼らの思想に触れて新しい時代の到来に希望を託し始める…
 潤色・演出/小池修一郎、音楽監督・編曲/太田健、編曲/青木朝子。ドーヴ・アチアとアルベール・コーエンによる2012年フランス初演のミュージカル、2015年の日本初演に続く宝塚歌劇での上演。全二幕。

 初日雑感はこちら、月組初演の感想はこちら、東宝版はこちら
 大劇場公演に続き、東京公演もまさかのこっちゃんの体調不良でまさかの主演代役(他数人が玉突き代役)での上演再開となりました。私は17日にも観劇予定だったのですが、中止時期に当たってしまい、23日に頼んでいたお取り次ぎはお断りだったので、結果的にマイ楽から日が経っての記事アップとなってしまいました。
 せっかくだし、という言い方もアレですが、代役公演もぜひとも観てみたかったのですが、ご縁がなく残念です。千秋楽配信なら見られる、という方も多いだろうし、こっちゃんは大事を取ってこのまま休養でも…などと思っていたのですが(ちなみに私は雪組遠征予定で、どのみち星組大楽配信が見られなかったのですが)、千秋楽だけでも無理やり…ということではない、と信じたい、24日からの復帰が発表されました。代役最終回のパレードのありちゃんはそれは晴れ晴れとしていたそうで、こっちゃんのものを借りてつけていたアクセサリーもナシか自前のものだったとか。復帰準備が着々とされているということなのでしょう。代役も、本役そのままだった組子も、全スタッフさん含めて、本当に総力戦だったことと思います。お疲れ様でした。
 そして、本当に治ったんだろうし、ご本人が出たくて戻ってくるのであろうこっちゃん、信じてるけど、改めて、お大事にしてくださいね。無理しないでね、フツーにやってくださいね。生徒はみんな純粋で本気で、本当にいつでも一生懸命だから、いつも全力でやっちゃうんだろうけど、あえて、力まず、気張らず、フツーにやってください。それができるだけの確かな実力と技量があるスターだとは思っているけれど…ホント健康第一、ファンはスターの笑顔と幸せを祈っているのですよ。この先の作品もあるし、卒業後の未来だってあるのですからね…!
 そして劇団は本当に、興行形態その他いろいろ、改めてきちんと考えて、生徒やスタッフの負担を軽減していってくださいね。ファンも生徒の犠牲の上に咲く花を愛でる気はないのですよ…私が観始めたころもシメさんの『うたかた』休演は話題でしたし、ヤンさんも、チャーリーも、ウメちゃんなんかもありましたよね。病気になること、怪我すること、ありますよ人間だもの。ケアしてあげていただきたいです。
 フィナーレの群舞やデュエダン、パレードすべて、こっちゃんのところに代役のありちゃんが入ったことは、私は支持します。そこは「その日の主役」の場所だと思うから。宝塚歌劇では本公演の主役はその組のトップスターが演じるもの、という不文律があるからトップスターの場所だっただけで、それが代役なら代役の場所になるだけのことだと思います。何も知らないでその回を観る観客だっているんだから、最後にロナンだった人が一番おっきい羽根背負って出てこなかったら「なんで?」ってなりますもん。ナイアガラつきの大羽根はトップスターだけが背負う神聖なものなのに…というファンの感覚もわかりますけど、そんなふうに決められたのってホントここ十年くらいで、以前のショーでは誰も羽根を背負ってなかったりもっと全然小さかったり、ホントいろいろなんですよね。今はちょっと、いろいろと規定しすぎでしょう。臨機応変、当然です。人間だもの、機械じゃないんだもの。
 でも、おんなじじゃないことなんて当人たちが一番よくわかっていることでしょう。ありちゃんは羽根をこっちゃんから預かっただけ。代役だから背負っただけで、いつかトップスターになって自分のために用意された大羽根を背負ったときには、今回のことはいい笑い話、思い出話になっているといいんだと思うのです。新公でやっていても、あらかじめ決められた代役として多少の準備はしていたとしても、大変だったろうしプレッシャーもものすごかったことでしょう。でも、楽しかった、いい経験になった、と思ってくれているといいな。今回のことではどのスターのファンもみんなやきもきしたことでしょうけれど、ともにアクシデントを乗り越え、未来への養分に変換できる強かさがあるといいですね。
 あとは千秋楽まで、どうぞご安全に、そしてフツーに盛り上がりますように…いっそうの盛り上がりはなくていいですよ、どうぞ過熱もしませんように。そしてもういろいろ決まっちゃってるのかもしれないけれど、できるなら少しでも長めにお休みを取ってあげてください…
 でも『ミーマイ』の配役を少しも早く…(^^;)もう対外的には完売で、役替わりなど細かくあってもチケットは買い足せないかもしれないんだけれど~(><)。こういう戦略はもっとよく考えてくださいよ劇団…(ToT)

 …以上、例によって長い前振りでした。
 さてしかし、ホント月組版と星組版、味わいが違いますよね。どっちがどう、とか優劣、とかではなくて、でも私はトップ娘役をアントワネット(有沙瞳)に配し、トップスター演じるロナンと革命を挟んで対峙させた構造を作った月組版は、ホントおもしろいし考え方としては正しいのではなかろうか、と改めて思いました。星組版のようにトップ娘役をオランプ(舞空瞳)にして「バスティーユの恋人たち」感を強く押し出す、というのももちろんアリだと思うのですが、革命って「愛し合う自由を手に入れる」ためだけのものではやはりないんだろうな、と思うので。求める権利はもっと広く、もっとしんどくて、もっと言えば人々は食べられないから暴れたわけで、恋愛なんて衣食足りてからの話だろう、と、どんどん景気が悪くなり荒んでいく今の日本を見ているだけに余計に感じるのです。東宝版ではソレーヌの「パン屋襲撃」がものすごく大きなナンバーとなっていたかと思いますが、ソレですよソレ。人はパンのみにて生くるにあらず…かもしれないけれど、まずパンを食べて生き延びないと何もできないのです。
 そもそもアントワネットを中心とした群像コンサート・ショーみたいだったらしいフランス版から、イケコがあれこれ手を尽くして今の形になんとかしているのかもしれませんが、それでも芝居が足りてなくてロナンとオランプの恋ってやはりトートツと言えばトートツですし、バスティーユの門が開くと同時にロナンは落命してしまうので、肝心の革命そのものへの関わりも実は薄いっちゃ薄く見えてしまうわけです。名もなき庶民なんて本来そんな存在なんだけれど、でも数がハンパなかったので歴史の大きなうねりを作ったのだ、というのは真実だろうけれど、ひとりひとりがスーパーヒーローではない分、わかりやすい主人公になれないわけですからね。
 そんな主人公とその恋人がヒロインの話となると、ちょっとスケールが小さいというか革命とズレたところに立ち位置が移って見えそうで、だから歴史的にもスーパーヒロインであるアントワネットが一方にいた方が作品としてはやはり座りがよかったのではないか、ということです。
 でもこのあたり含めて、まだブラッシュアップしていく余地がある作品なんだとも言えると思います。今回、曲はいいけど話は好きじゃない、中身がない、そんなに出来のいい作品ではない、という意見もかなり見たので、まあそう感じる人も多いだろうなー、と改めて私も考えさせられたんですよね。なのでまだまだ掘り足りない、ポテンシャルを持ったおもしろい作品なんだと思います。また東宝上演があるかもしれないし、そしてまたしばらくたったころ…それこそつんつんが番手スターになったころにまた宝塚歌劇でも上演があったりするのかもしれません。私はわりと単純にこの作品が好きですし、今後の上演も楽しみにしています。

 こっちゃんロナンは、あえて「フツーの青年」に作っているのかな、と私には思えました。農夫の息子だからやんちゃで粗野で…みたいなキャラではなく、まさしく名もなき庶民代表にふさわしい、特別な色のない青年像にしたのかな、と。でもそれはこっちゃんにそれを演じられる確かな演技力があり、また歌い出し踊り出したらひときわ輝き出せる実力があるからこそできる役作りなんだろう、とも思えました。まさおロナンとはまた違ったアプローチで、本当に素晴らしかったと思います。
 ひっとんオランプは、やはりなんというか持ち味が武士なので(笑)、忠誠を誓ったアントワネットと袂を分かってロナンのもとに向かう…という流れがなんかちょっとアレに、私には思えました。ここは新公うたちの優等生っぽさの方がオランプというキャラにハマっていた気もします。うたちもこんなに可愛いお顔立ちでも実は姫ヒロインっぽい甘さがあまりないタイプの娘役さんなんだけどさ(^^;)(だからこれまた優等生っぽい作りのリュシルになっていて、それはそれでよかったと思う。デムーランの尻を陰で上手く叩いてそう…)、悩んだあげくロナン/恋を取る、という選択にまだ納得感があった気がしたので…ひっとんオランプはありちゃんロナン相手だとまた違って見えたのかしらん、ホント観たかったわー!
 せおっちアルトワ伯(瀬央ゆりあ)は、人外めいていたみやちゃんよりずっと現実を生きる冷酷な策略家で、本当に冷静に事態を読み兄王のことは馬鹿にしてスマートに生きている感じで、そりゃ従わないオランプに歯噛みはさせられるんだけど、でもたいしたことではないといなせるし、そりゃ革命が終わったあと帰ってきて王政復古させて王座に就くわ、という納得感があってよかったです。専科異動も、いろいろあるんだろうけど機会の幅を広げるということで、そりゃここで辞めさせられちゃうよりいいでしょう。早く次の出演作が決まりますよう祈ってます。ただ本公演に出すとなると番手が微妙なので(どの組にも同期の番手スターがいるので)、まずは別箱出演なのかな、とは思いますが…
 ありちゃんデムーランは、すみません諸事情により見えていないことが多いのですが(^^;)、明るくおおらかでいい意味でのお坊ちゃん感があるリーダー像になっていて、ロナンとの対比や革命家たちのバランスなどからしてもいい感じの役作りなんだと思いました。歌も本当に進化しましたよねえぇ…! 『ミーマイ』主演を挟んで次からは新2番手さんなんでしょう、でも任せて安心です。
 これでご卒業のくらっちアントワネットはまさしく大輪の花でした。サロンコンとかすぐにもやってね…!(ToT)たくさんの相手役さんと組んでたくさんの経験ができて幸せで満足で、一本立てでひとつの役としてやりきって辞めていけるのも幸せ、と朗らかに語っていた姿、忘れません。三児の母になっても恋に浮かれる乙女の姿から、国家の母たる責務を負うことを決意した女性になるまで、本当にお見事でした。着ている時間は短かったけれど、紫のドレスが好きだったなー。有村先生のこだわりで東京では大きく裾の飾りやデザインが変わった、という話も貴重でした。
 まゆぽんペイロール(輝月ゆうま)、ホント蹴ってない!? 当たってない!? って拷問シーンがさすがでした。アルトワとはまた別次元で貴族であることに誇りを持ち、疑いを持たず、庶民を見下し冷静に対処しているだけで、過剰にサディスティックだったりしないところがまた怖い…という良き役作りだったように思いました。専科さんとしてホントいいお仕事をしていますし、代役公演ではかつての新公ロナンとペイロールとしてありちゃんと対峙して、そらエモエモのエモだったことでしょう…! 続く活躍に期待しています。
 ぴーダントン(天華えま)も見えていないことが多いのですが、代役デムーランがすごくお坊ちゃんぽくてよかったと聞きますし、本当になんでも上手い人だと思います。もっと早くにどこかへ組替えできていたらまた違ったのではなかろうか…いやバウが本当によかったしこれからも大事にされていくとは思うんだけど、もう番手路線には乗らないということですからね…ダントンでは豪放磊落さを上手く出していましたが、私は単純にそういうキャラがあまり好きではないので余計にちょっとアレだったかな。なんでそんな声デカいねん、といちいち思ってしまうので…すみません。
 ほのかソレーヌ(小桜ほのか)は東京に来てからの「夜のプリンセス」の歌唱の進化が素晴らしかったと思います。大劇初日とかはまだ無理している感があったと思うし、地声で歌いきればいいというものでもないし娘役の枠をはみ出ればいいというものでもないと思うのですよ、このナンバー。下手したら観客の女性が一番シンクロするのってここなワケですからね。そのチューニングが公演後半は本当によかったと思ったのでした。
 そしてかのんくんフェルゼン(天飛華音)が、歌がなくなっちゃっても本当に芝居がよくて、さすがだったのでした。パレ・ロワイヤルでのロナンとのチャンバラもいいんだよね、経験ないけど運動神経は良くてなんなら喧嘩慣れしている、ってロナンをこっちゃんが実に上手くやり、バリバリの軍人だけど素人相手にどこまでやったものかという遠慮もある優しいフェルゼンをかのんくんが実に上手くやっていて、説得力がありました。ホント上手い。最後にアントワネットに腕を差し伸べるところも泣かせたなあ…次のバウ主演、楽しみです! あみちゃんといい、次は105期、とかにせずちゃんとできる人にはきちんと場を与えていく劇団、いいぞその調子だぞ!
 代役ダントンがまたよかったと聞くちゃりおは、だから本当はラマール(碧海さりお)なんかでは役不足なんでしょうけれど、これは仕方ないのかもなあ…
 あとはルリハナちゃんシャルロット(瑠璃花夏)なんかも、可愛いし上手いんだけどやはりちょっとチョイ役に見えて、もったいなかったなーと思いました。

 新公は配信で見ました。これもホントなんとかして生で観たかった…! 大劇新公はチケットが手配できていただけに悔しかったです。でも、映像でもわかる、大健闘の良き新公だったと思いました。
 ロナンは稀惺かずとくん、つんつん。タッパがない以外はなんの問題もない、三拍子揃った新進スターさんだと思います。初主演にしてはホント大きな主役で大変だったと思うけれど、立派でしたよね。もちろん本人には思うところがあるからこそあのご挨拶となったのでしょうが、もっとできたはず、みたいな後悔も反省も、みんな次につながるものだから…これくらいの時期に一度主演して、卒業間際にまた主演する、とかの育て方がいいと思うので、期待しています。ただしスターのバランスを見て早めの組替えも視野に入れた方がいいかと思います。だって同期の大希くんもちゃんと育ってきてるから…タッパやスタイルは完全にこっちだろうし、お化粧も上手くなってきて、こういう美人の方が人気出るってのもあると思うのですよ。今回のペイロールもとてもしっかりしていて、憎々しい悪役をきっちりやって見せていて好感が持てました。もちろん主演が観てみたいです。
 オランプは詩ちづる、うたち。新公ヒロイン経験者として同期の相手役をしっかり支えていて、しごできでした。前述しましたが優等生っぽい持ち味がキャラにハマって、よかったと思います。でもやはりロナンとオランプにはもう少し脚本でエピソードが、芝居の場面が欲しいところだな、とも改めて思いました。
 アルトワは紘希柚葉くん、これまたよかった! ビジュアルに説得力があり、演技もしっかりしていましたね。
 アントワネットはルリハナ。月組新公同様「全てを賭けて」が全カットなのでそこは残念でしたが、やはり「神様の裁き」が素晴らしく、これまた再びのヒロイン役が観たいぞ!と思いました。
 対するポリニャック(白妙なつ)は星咲希ちゃん、手堅かったなあ。一筋縄ではいかないいい女友達感がよく出ていました。フェルゼンは馳琉輝くん、これは月組ありちゃんフェルゼンに近い若さ、フレッシュさ、何もできなさ感でよかったと思います(笑)。イヤ今までの新公からしてもうちょっとはできる期待の新人だとはわかっているので、上手く育てていただきたいものです。
 革命家たちではデムーランの御剣海くんが鮮やかで出色の出来でしたねえ! これは顔と名前を売ったのでは。そして毎度まだ新公学年?と思う上手さのダントンの碧音斗和くん、今回も素晴らしかったです。そして私がかりんさん役に厳しいのはいつものことなので流していただきたいのですが、ロベスピエールの凰陽さや華くんはやはりまだあっぷあっぷしていたでしょうかね…
 逆に私が贔屓の!乙華菜乃たんリュシル、かーわー!でした。歌ももっと聞きたかったよー。そして同じく贔屓の!鳳花るりなたんソレーヌ、素晴らしかったですね! 歌はもちろん、あまりかまってないふうに見える髪型もよく似合っていました。このあたりも新公ヒロイン是非よろしくです! 星娘、人材豊富なんです!!
 ラマールの世晴あさくんも本当に達者でした。大きいし目立つ華があるので、もっと真ん中寄りの大きなお役がそろそろ観てみたいかも。
 あとはシャルロットの綾音美蘭がめっかわでした。でもそれは知ってる、ってなるよな、ここもヒロインやらせたってー!な案件ですよね…
 新公担当はタカヤ先生だったのかな? でもラストの「悲しみの報い」でやはりロナンとオランプががっつり触れ合っていて次元を越えちゃっていたので、そこは新公だけでも改善してほしかったので私は残念でした。しょぼん…

 では、最後にそっと、極美日記を…
 いやホントまだ大丈夫です、というか次の贔屓はこういうんじゃないところからきっと来るのだろうと思っています、すでにがっつり応援している方には気分悪い物言いでしょうホントすみません、でも勝手に楽しく愛でさせていただいております。こういう応援スタイルなんですすみません。
 演目発表時の配役予想でフェルゼン説がわりと多かったと思うのですが、私は絶対にロベスピエールをやってほしいと思っていました。少なくともフェルゼンは絶対にない、当時のありちゃんの学年やポジションと今のかりんさんとじゃもう全然違うし、あの役はその当時のありちゃんにふさわしいものだったんだもん、と考えていたので。実際の配役はかのんくんになったわけですが、当然役不足だと思いました。とにかくもうそういうポジションのスターじゃないの、なのにそーいう中身ないけどキラキラがたまらん!みたいな役が似合うスターだとまだまだ思われてるんだよねー、ってことが本当にずっと悔しかったのです。
 まあロベピは望みすぎかもしれない、とは思っていました。当時の月組とスター人事がいろいろ違うし、役の比重も変わってくるかもしれないからなんとも言えないけれど、でも私は珠城さんファンだったし「誰の為に踊らされているのか?」は一大ナンバーだと思っていたので、ここをやるところを観たい!と念じていたわけです。なので、嬉しかったなー! そしてポスター入り、プログラムもパレードも立派な正4番手扱いで、もうホント感動しましたよ…!!
 ご本人は作品のファンで、新公も生で観ているし東宝版も観ていたそうで、なので上演が決まって嬉しかったそうですし、ロベピとなってあの「2幕アタマのアレができる…!」と震えたそうです。かーわー! てか「珠城さんが本当にカッコよかったですし…」とのことで、“かりんさんが語る「珠城さん」”からしか得られない栄養があるわー、と悶えましたよね私…
 私は襟が赤いブルーのお衣装の方が好きですが、ご本人はスチールでも着ている紺とグレーのお衣装の方がお気に入りの模様。ところでここでひとりスターブーツなんですよね! 「カフェブレ」で中井さんに水向けられていたのに全然ピンと来ていなくて、ホントそーいうとこ!ってなりました。はーたまらん。
 そんなの要らないくらいスタイルがいい人ですが、さらに垢抜けてスマートになるので、本当にキャラクターに合っていてよかったと思います。生真面目でまっすぐで高潔で頑固で、視野が狭くやや神経質なんだろうなー、そら後年恐怖政治ゴリ押ししちゃうよなー、みたいな役作りがちゃんとできていると思いました。確か珠城さんの時はお衣装の裏地が赤くて、それが後年の恐怖政治で流させた血を思わせて…みたいなものを読んだ気がするのですが、かりんさんは襟ですよ前面に出ちゃってますよまあタイヘン、てなもんです。確かに珠城さんよりずっと恐怖政治やりそうではありました、中の人やニンはそんなじゃないのになー(笑)。
 あとは一瞬しか着ていませんが三部会のお衣装も好きでした。つらくて観るとこなかった宙『ベルばら』であっきーロベピのふくらはぎばっか見ていたことを思い出しましたよ…いわゆる宮廷靴もホントお似合い、はーノーブル!
 鬘は半鬘だそうですが、お手入れはどうしていたのかなー水乃ちゃんがやってくれたりしていたのかなー。あの長髪くるるん一本、なのがまたいいんですよね。前髪というかおでこがやや広すぎに見えるときもあったので、そこはまだまだ研究してほしいなと思いましたが…
 あ、あと、汗をかかなくなりましたよね! 『ジャガビ』なんてスッポンから出てきただけで滝汗で、今地下で拭いて出てきたろうにそれなんかーい!とか毎回思っていましたが、今回のフィナーレ群舞、二曲踊って綺麗なまんまで、進化した…!と観劇しました。綺麗に出るのもお仕事ですもの、良き良き。
 あと今までは本当に自分が楽しいからやってるだけ!って感じがしたのですが(オイ)、今回はスイッチが入って、ファンが喜んでくれるから楽しい、喜ばせるためにもっとカッコ良くやろう、という意識が初めて見えた気がしました。やっと精神的にもスターになったのね…!
 奇しくもマイ楽、1階中通路より後方でしたがどセンター席だったので、視線バンバン来てホント成仏できましたありがとうございました…!!
 久々に開催されたお茶会も大盛況で、でもトークのノリがいい意味で全然変わっていなくって、ホント楽しかったです。
 まず、感情全部を表情に出し過ぎ(笑)。作り笑顔とか、綺麗な顔だけ見せる、ってなことをしない、できない。困ればそのまま困ってしかめっ面もしちゃう、そこがカワイイ(笑)。トンデモ百面相が健在で嬉しかったです。
 そして回答がスロー(笑)。当人はいたって真面目で一生懸命に悩んで、最適の回答をしようと考えて考えて、言葉を探して吟味して…で、上手くいかなくて諦めて、疲れて、放り出して、「えへっ」って笑って次の質問にいく(笑)。何かを伝えようとがんばってくれたんだ、ってことだけは伝わるからこちらも許してしまうという、ホント情報量のないトークなんですけど、でもそこがイイのだからイイのです。そもそも普段から言語化してものを考えていないんだな、そういう回路ができていないんだな、ということがよくわかります。それがある人は普段楽屋や舞台袖であったおもしろいことなんかも言語化して再構築して記憶しておくから、エピソードを問われればすぐ取り出して披露できるんです。そういう人のお茶会はエピソード豊富でそら楽しいですよ、でもそういう回路はこの人にはないの、そういう人なの、それでいいのよ!(笑)
 そういうところ含めてホント全然器用じゃなくて、でもじりじりがんばってはいて、やっと結実してきたのではないでしょうか。ただスタイルがいいだけの、キラキラしているだけのスターじゃなくて、ちゃんと実力がついてきていると認められるところまで来た…めでたいです。引き続き愛で応援していきたいです。

 どうかみなさまご安全に。とにかくまずはそれだけを祈ります。生徒はみんな優秀だしがんばり屋さんだからやらせたらなんでもできちゃうんでしょうけれど、でも無理なものは無理なんだから。無理のない範囲で楽しくがんばり、ファンを楽しませていくべきでしょう。頼みましたよ、劇団さん…!!!






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『SHINE SHOW!』

2023年08月23日 | 観劇記/タイトルさ行
 シアタークリエ、2023年8月21日18時。

 真夏の夕暮れ時。オフィス街の一角にある複合オフィスビルの中庭に豪華な野外ステージが建てられ、派手な照明と爆音の中、音楽ライブが行われている。このビルにオフィスを構えるさまざまなジャンルの会社員が参加し、歌唱力を競う夏のカラオケ大会だ。「第48回あかりビルディング会社対抗のど自慢大会」3日目、決勝大会当日、チャンピオンが決まろうという裏で、さまざまなトラブルが発生し…
 作/冨坂友、演出/山田和也、音楽/栗山梢、ステージング/青木美保、美術/中根聡子。「普段は全く違う仕事をしている会社員達が、年に一度スポットライトを浴びて歌手になる、会社対抗のど自慢大会」「それを舞台裏の騒動のバックステージコメディとして描き、さらには後半をショーにする」という構想で企画され、作家主宰の劇団アガリスクエンターテイメントで昨年上演された作品をこの座組で上演。全二幕。

「“働くこと”を格好良く描こう」「人は、働き、歌うものだ」というコンセプトがいいですし、バックステージものとして、シチュエーション・コメディとして、お仕事ものとして、とてもよくできた舞台でした。ミュージカルではなく、あくまで歌謡ショーつきのストプレ…みたいな構成なのもいい。もう一押し歌唱を増やしてさらにショーアツプしてもよかったかもしれません。でも、本当にウェルメイドなコメディでした。
『ムーラン・ルージュ!』が洋楽ヒットメドレーならこちらは邦楽ヒットメドレー、とプログラムにありましたが、確かに「対抗して」いるのはそこで(笑)、そしてある意味拮抗したいいオリジナル作品が作れていると思いましたから、たいしたものです。まあこれがワールドワイドに通じるかというとそこはアレなのですが、ローカル内評価では遜色ないと思いますし、なんならこっちの方が刺さるという層だってあるでしょう。いやホントたいしたものでした。
 作家にも役者にもサラリーマン経験などほぼないはずですが、会社あるある、仕事あるあるな感じと、今どきあるあるな台詞、演技がとてもナチュラルかつ秀逸で、感心しました。今をちゃんと生きていないと、こういう台詞はなかなか描けないしこういうふうにお芝居できないものです。人間というものに対する見方がちゃんとしているということでしょう。
 また、まぁ様が流れるようなビジネス敬語を使い90度のお辞儀をし、パンツスーツで闊歩するバリキャリを演じる姿とか、なかなか見られるもんじゃないですよね。アイドル上がりの経理OLでいかにもな制服着ながら警備員室でクダ巻いちゃうかのちゃんとかね、新鮮かつおもしろすぎました。みんないい配役だし、19人の登場人物全員がみんなよく立っていて、素晴らしかったです。いわゆるプリンシパル以下は劇団アガリスクエンターテイメントの劇団員がほとんどだったようですね、そこもまた手堅かったです。
 惜しむらくは、私は笑いには厳しいのですが本当におもしろく観たので、おそらく週末の公演の方がもっとどっかん盛り上がっていたのではなかろうか、と感じられたことです。平日の夜公演はそれこそ仕事を終えて来たお疲れ気味のOL観客が多いからなのか、わりと客席の笑いが少なめに感じたんですよね…まあ、こういうのは1回1回空気が違うものだから、仕方ないかな。
 鈴本さん(朝夏まなと)が安易に加瀬くん(小越勇輝)とくっつくとか、あるいは弦田さん(久ヶ沢徹)といい感じになるとか、なくてホントよかったです。加瀬くんはイベント担当1年目ということを差っ引いても、気が利かない、仕事が今ひとつできない今どきの小僧な後輩で、鈴本さんはホント優秀だから正しい叱り方としっかりした指導をしているんだけれど、最後には「おまえ全部言うのな!」とキレちゃったりして(笑)、でもそうやって胸襟開いたからってやっぱり十か下手したら干支一回りも歳が違うんだろうし、歳の差はともかくそれぞれ別にお相手がちゃんといるのかもしれないし、たとえフリーの独身同士でもそれでラブが生まれるかといったら全然そんなことはなくて、所詮は会社の先輩後輩なんだから、たとえ異性でも何も漂わなくて当然なんですよ。でもついラブ、描きがちでしょ、フィクションって。でもこの作品はそういうことをしていない、それがいいのです。
 琴浦さん(花乃まりあ)と浅見さん(淺越岳人)もそうです。かつてのアイドルとその単推しドルオタがOLと警備員として再会して、何かが生まれちゃったりしちゃったりしないでもないところを、何もないままに終わるのです。でも浅見さんは満足でしょう、そこがいい。琴浦さんも同期のちひろ(榎並夕起)と和解しますしね、その方が大きいですよね。それでも飲みになんか行かないところも、なんかリアルでよかったなあぁ。
 司会者コンビが元恋人同士だったり、父と息子の確執があったり、プロポーズ大作戦があったり、Vtuberの身バレ騒動があったり、ネガティブというかほぼ鬱みたいなシステムエンジニアのひとり相撲があったり…トラブルは多彩でホントどれもめんどくせー!ってなもんでしたが、鈴本さんががんばってバサバサ捌く姿がホント凜々しかったです。
 てか中川あっきー、ピンクのスーツはプロポーズ用衣装だったんだね、ってのがめっちゃおもしろかったし、イベントスタッフの秋野さん(前田友里子)役の女優さんがホントいい味出していました。てかみんなそんな人に見えるの、すごいよなあ…代理店さんとかさ、ゲストミュージシャンとかさ。
 でも全部さらっていったのは木内健人の「粉雪」熱唱とドリフ(笑)、だったかな。仕事の書類をシュレッダーにかけたものが紙吹雪として使われ、それがドカ雪のごとく落とされる…ってだけなんだけど、やはり破壊力がありすぎました。まあ笑った笑った、ドリフってすごい…! また歌がむやみに上手いんだコレが!!(笑)
 もちろんかのちゃんのあややもよかったよ、さすが元トップ娘役ですよきゅるんきゅるんでしたよ! そしてまぁ様も、まさかの音痴設定なんだけどそれがまたよかったし、イメージの弦田さんと微妙にハモっちゃうのもおもしろすぎたし、そもそも鈴本さんの弦田さんのファンっぷり、モジモジっぷりがもう可愛すぎておもしろすぎました。てかみんなホント芝居が上手すぎる…! 贅沢…!!
 私は音楽には疎い自身があるのですが、こういうカラオケ大会ってこういう選曲になるよね、って感じでやや昭和な、メジャーな歌謡曲揃いだったのも楽しかったです。BGをちゃんと聞くためにリピートしたくなっちゃうくらいでした。こういう作品がロングランになっていったり、また違う座組で上演されていったり、シアタークリエがシットコムの聖地と呼ばれるようになる…と、ホント素晴らしいんだろうなと思いました。演劇には、舞台には、まだまだ可能性があるなあ。オリジナル作品、がんばってもらいたいなあ。
 元気が出る観劇でした。







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岩井圭也『完全なる白銀』(小学館)

2023年08月21日 | 乱読記/書名か行
「山頂で"完全なる白銀"を見た」という言葉を残し、冬季デナリで消息を絶ったリタ・ウルラク。だがマスコミは「彼女は〈冬の女王〉ではなく〈詐称の女王〉だ」と、彼女の登頂を疑う記事を書き立てた。藤谷緑里はリタの幼馴染みシーラとともに、彼女の足跡を追って北米最高峰に挑むが…山岳小説の新たなる傑作。

 スリリングでエモーショナルで、おもしろく読みました。でも、緑里もリタもシーラも女性キャラクターだから、なのかもしれない…と途中から思うようになりました。これが全員男性キャラクターなら、今までにもたくさんあった、よくある小説なのではないかしらん、と。
 登山というものも体力勝負なのでしょうから、多少の男女差があるのは仕方ないにせよ、それでもこの分野も必要以上の性差別が横行しているんだろうな、と思いました。そして作家は男性です…ちょっと、しょんぼりしました。





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