駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

2009年総括など(ていうか宝塚話)

2009年12月31日 | 日記
 今年もたくさんの舞台を観ました。充実した一年でした。

 マイ・ベスト3は、『十二人の怒れる男』『サロメ』『怪談 牡丹燈篭』かなあ。
 …好みがわかりやすくてすみません。

 でも今年はオペラに一本も行けなかったので、それは残念でした。手ごろな公演がなかったんだよなー。
 クラシックはチャイコ・プロに多く通いました。

 そして今年は私にとって宝塚歌劇再元年となりました。
 これまた完全に好みにすぎませんが、今年の宝塚公演ベスト3は順不同で『エリザベート』『太王四神記』『カサブランカ』かなー。
 …わかりやすくてすみません。
 ホントはショー作品も大好きなんですが(アパショ、リオ、エキサみんなよかった)、たまたま一本立てばかりになってしまいましたが…

 93年の初観劇以来、最初はバーッとハマって、通って通って、やがてスターさんの卒業を何人も見送るうちに少しずつ情熱は冷め…チャーリーか、いやそのあとタカコ&ハナちゃんを見送ってからは本当にかくんと観劇数が落ちて、細々とアサコだけを見守っている、というくらいだったもんねえ…

 機運は、去年からありました。『太王四神記』の宝塚歌劇化、が発表されたのを知ったときからです。私はこの数年、すっかり韓流づいていたので。
「どの組でやるの? 花組?? え、ってことはホゲはユウヒってこと??? 何その私のための配役!!!!」
 と素で思いました。
 だって私はユン・テヨンの顔が大好きだしホゲのキャラクターが本当に大好きだったんですもの。
 そしてユウヒのことはなんとなくずーっとずーっと好きだったんですもの。この「なんとなく」ってとこが我ながらポイントなんですが(^^;)。

 それでも東京公演まで十分とおとなしく待っていたし、西での評判をリサーチすることもほとんどなかった。
 期待も何も特になく、ただただフラットな気分で、原作ドラマを観ていて宝塚は初めて、という知人ふたりと本当にふらりと東京宝塚劇場へ向かったのでした。

 二階席だったし、見え方も全然期待していなかった。それが…!

 今でも忘れられない、あの瞬間。
 イントロの凡回しの鮮やかさ、設定ががんがん消化され紹介されていくスピーディーさに愕然とし、
「スゲェ!」
 とうなった瞬間。
 子役時代から青年時代への転換の鮮やかさ、そして
「ヨン家のホゲだ!」
 ジャジャジャーン、なんて登場にシビれた瞬間。
 「炎の巫女」の歌にシビれ、武闘会の華やかさとその場の主役っぷりにシビれ、一幕ラストの
「私は生まれた、同じ星の元に」
 の歌の悲痛さに打たれ、幕間に知人と
「おもしろすぎる! 原作より良くない!?」
 と騒ぎ合った瞬間。
 二幕、ホゲの進軍シーンのトップスターばりの扱いにシビれ、原作とちがってタムドクをかばって落命する展開にシビれ、大ラス、二階席にいる私たちのためかと思うようなクレーンの近づきっぷりにシビれ、ユウヒの主題歌と四色のダンスにシビれた瞬間。
 あの日、あのときのことを、私はもう一生忘れないと思います! 断言。

 次の日にはツテをたどって追加チケットを頼みまくり、
「いいよ!」
 とあちこちに布教しまくり…

 そして、それからいくらもたたないある日の朝、新聞の朝刊で、ユウヒの宙組への組替えとトップ就任を知り、素で
「ぎょええっ!」
 と叫んだ、あの日、あの瞬間…
 (公式サイトをチェックする習慣もまだなかった)

 『スカ・ピン』を楽しく観て久々に実況CDまで買ったのと、東京よりチケットが取りやすかろうと大劇場までアサコのトートを観に行ったのとは、どう前後していたんでしたっけ…
 ともあれ、こうして私の再「元年」の幕は切って落とされたのでした。

 思えば苦手な(すまん!)タニとトウコは卒業し、ユウはむしろ好きなタイプの顔だしミズも嫌いじゃないし、チエちゃんはショーヴランが良かったし久々の大型スターって感じだし…ということで、全組どこも楽しく観られる布陣。
 強いて言えば娘役に激好みの顔の娘がいないのが残念…ってくらい。
 ちょうどツイッターにハマり始めていて、宝塚関連のつぶやきをするのも聞くのも楽しくて仕方がなかった時期だったというのも大きかった。
 誰かが必ず観に行っていて、感想をつぶやいていて…
 触発されて情熱が戻ってきて、特にファンじゃない生徒さん主演の公演でも、好きな先生の作品じゃない舞台でも、とにかくひととおり観ておくか、って気分になりました。

 何より、初めて会に入っちゃったし!(^^;)。
 今まで友会だけですませてきたのに!!

 というわけで、これまで私は組ちがいの『エリザベート』を通算10回かそこらは観ているだろう他は、各公演は一回のみ、せいぜいが二回止まりの観劇だったのですが、『太王四神記』は5回通い、ユウヒお披露目の『カサブランカ』は大劇場だけで3回通い、東宝では今のところ少なくとも8回は行くことにしているありさまなワケです。
 物語を観に行くのだから、スター目当てにリピートすることは邪道だと、これまでなんとなく思っていました。
 でも気づいたのです。たとえば私は愛蔵コミックスを、台詞を覚えていてもコマ割りを覚えていても、何度でも何度でも読み返します。
 それと同じなのだ、と。
 その世界に浸りたいから、何度でも劇場に通うのですね。
 まして舞台は生き物、芝居も演出もタイミングも、ちょっとずつ何かが変化していくことがある。それを見守りに行くのですね。

 というわけで、再び転げ落ちそうです。てか落ちてます。
 いやしかし、こんな我が人生に悔いはまったくないですね。
 来年も突っ走り続けたいと思います。すべてのタカラジェンヌに幸多かれ!!
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『姫が愛したダニ小僧』

2009年12月31日 | 観劇記/タイトルは行
 アートスフィア、2005年7月22日ソワレ。
 骨組だけの廃虚ビルを、ひとりの男が暗い顔で登っていく。彼の名は飯田(ラサール石井)、ここから飛び降りようと考えていた。だがゴミと見まがう服を着た、このビルに住むという男(後藤ひろひと)が飯田に不思議な話を語り始める。亡くなった祖母の遺品を受け取りに老人介護施設を訪れた祐一(ユースケ・サンタマリア)とエリ(佐藤康恵)は、そこで自ら「すみれ姫」と名乗る老婆(富田靖子)と出会い、船長と洗濯娘と呼ばれる…脚本・演出/後藤ひろひと。1988年にPiperによって初演された『Piper』がその後『姫と船長と洗濯娘』と改題されて二度公演され、四度目の再演。

 Piperという劇団を知らなかったのですが、実力者揃いで仰天しました。こんなに台詞の聞き取りやすかった舞台は久しぶりかもしれません。
 ただし休憩なし二時間半は長いし、冗漫な部分も多々ありました。でもおもしろかったですけどね。
 だけど一番不満だったのは主人公の祐一の造型かなあ。すみれ姫の妄想というかもうひとつの世界にすんなり入っていっちゃうエリとか、もともとちょっとヘンだった鯖田院長(松村武)とその手下(麗子役の大路恵美、絶品! モデル出身のアイドルタレントかと思っていましたが、このキャラはナニ!?)はともかく、普通の観客はやっぱりそんなにすぐには順応できないしこの世界のルールがよくわからないので、祐一にはもっと抵抗してほしいんですね。なのに「なんで?」と言っているだけでただ流されているだけで、キャラとしての魅力に欠けるんですよね。私ははっきり言ってこの公演はユースケを観に行ったのですが、これでは彼も演じようがなかったろう…と残念でした。ラストに楽しそうに『ダニーボーイ』を熱唱する姿が救いでしたが。

 もっと私の好みで言えば、何故祐一とエリが船長と洗濯娘なのか、というところもつっこんでほしいところ。もうひとつの世界に誘われてしまうってことは、現実の世界から浮き足だちかけているということなはずなので、たとえば離婚の危機にある夫婦であるとか、仕事にいき詰まっているとか設定があってもいい気がするのです。まあそんなの眼目じゃないと言われればそれまでですが…
 でも、ただのお祭り騒ぎじゃなくて、私はやっぱり何かの意味が、欲しいかなあ…
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『モーツァルト!』

2009年12月31日 | 観劇記/タイトルま行
 帝国劇場、2005年7月21日ソワレ。
 1768年、ウィーン。ザルツブルクの宮廷楽士であるレオポルド・モーツァルト(市村正親)は、名士が集まる貴族の館で、幼い息子がピアノを弾くのを目の当たりにしている。5歳にして作曲の才を花開かせたその子供は、「奇跡の子」と呼ばれていた。歳月は流れ、そのヴォルフガング(この日は中川晃教)は音楽活動を続けている。かたわらにはいつも、奇跡の子と呼ばれたころのままの分身・アマデ(この日は高橋愛子)が寄り添っていた…脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ、音楽/シルヴェスター・リーヴァイ、演出・訳詞/小池修一郎。1999年ウィーン初演、2002年に東京初演したものの再演版。

 初めて観たのですが…うーん。『エリザベート』のコンビの作品だとは知っていましたが、リプライズが多くて覚えやすかったそれとちがって、難しい曲が次々とたくさん並んで耳なじみが悪い感じ。何人かのキャストの歌唱力のせいかもしれませんが…それから暗転が多く、登場人物もバラバラと多く、ストーリーが断続的な感じを受けました。誰に感情移入してどんなお話を追っていったらいいかかつかみづらいのです。

 そして何よりテーマが…いや、天才の孤高とかそれゆえの不幸とかって、好きなテーマであるだけに、エンターテインメントとしてはなかなかに難しいのだなーと痛感しました。アマデというアイディアは本当にすばらしく(一言もしゃべらずただ五線譜に向かい続けている子供…でもすごく芝居っ気があってグッドでした)、彼の天才を表現し、一方でヴォルフガングは上司に命令されるのも嫌だし父親にも反抗したいし恋人だって欲しいしという、俗世間向けの欲望や意思を持った人間の部分を表現します。だけどなんかこう…わかりづらいんですよね。
 私は漫画『マドモアゼル・モーツァルト』くらいの知識しかないのでよくわからないのですが、コロレド大司教(妙に押し出しがいい役者だなと思ったら山口祐一郎だった)はどうしてあんなにモーツァルトに固執したのでしょうか…そしてレオポルド(歌が聴きづらくて仰天したんですけど…)は息子を本当のところどう思っていたのでしょうか。というかどう思っているものとして演出されていたのでしょうか。意図がよく見えなかった…レクイエムの依頼人がレオポルドの霊、というのはいい案だとは思ったんですけれどね。

 歌が良かったのはナンネールの高橋由美子やコンスタンツェの西田ひかる。女優に甘いわけではありません。ヴァルトシュテッテン男爵夫人は今月は久世星佳ですが、タータンの『星から降る金』を聞いてみたいと思いました。ノンちゃん、苦しかったよ…
 それからシカネーダー(吉田圭吾)がすばらしくって見惚れました。何者!?という感じで舞台をさらっていたと思います。
 初演に初舞台で主役に抜擢されて話題を呼んだ中川晃教ですが、聞き取りやすく音程も確かで頼もしかったです。背が低いのが役者さんとしてはネックなのでしょうか…フロックコートというのかな、あの下に現代的なTシャツと汚れて穴のあいたジーンズ、というモーツァルトの衣装は象徴的で、良かったです。
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英国ロイヤル・バレエ団『マノン』

2009年12月31日 | 観劇記/タイトルま行
 東京文化会館、2005年7月14日ソワレ。
 パリ近郊の宿屋の中庭。馬車が到着し、修道院へ入る予定の美しい娘マノン(シルヴィ・ギエム)が老紳士とともに現れる。老紳士はマノンに気があるらしく、マノンの兄レスコー(ティアゴ・ソアレス)は彼女の見受けの相談を持ち掛ける。外に残されたマノンは、その場にいた神学生デ・グリュー(ジョナサン・コープ体調不良によりマッシモ・ムッル)と一目で恋に落ち、老紳士から盗んだ金で駆け落ちする。だがその場にいた富豪のムッシューG.M.(アンソニー・ダウエル)もまた、マノンに関心を持ち…アベ・プレヴォによる18世紀の小説『マノン・レスコー』をもとに作られた1974年初演のバレエ。振付/サー・ケネス・マクミラン、音楽/ジュール・マスネ。全3幕。

 急に誘ってくれる人があって、初めてギエムを観てしまいました。すごい脚だったなああああ。
 それはともかく、ここのあらすじは一昨年の観劇記のコピーです。一度観た演目だから、と今回パンフレットを買わなかったのですが、でも冒頭の演出のニュアンスはこの文章とはちがっていた気がする…すみません。

 ギエムの脚がすごくて、色男だけど金と力はないデ・グリュー役にぴったりのムッルの美声年ぶりとひ弱い感じが良くて、でもとにかく観劇記を読むと一昨年の私はずいぶんと感動していて、それからするとそれほどでもなかったような気が…してしまったのが残念です。あのときの舞台は、もっとやわやわしていた印象がありました。今回はギエムのキャラクターもあってリアルでくっきりと強く、そのせいで美しい幻想性、愛の愚かさとはかなさ、みたいなニュアンスは弱くなってしまったのかもしれません。うーむむむ。
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