宝塚バウホール、2010年11月21日ソワレ。
1974年、テキサスのヒューストンではスーパーボウルが開催され、警察官たちもスポーツバーで試合中継を楽しんでいた。そこへ護送中の殺人犯が脱走したとの連絡が入る。途方にくれる警察官たちの前にひとりの旅行者が現れ、名前や出身地を訪ねても答えないので、警察官たちはその男を拘束するが…
作・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治。
「コード・ヒーロー」とはアーネスト・ヘミングウェイが分類したヒーロー像のひとつで、法律や社会常識に囚われず、自分自身の掟(コード)のみに従って行動する、反逆的ヒーローのこと。
…だそうですが…
てか『誰がために鐘は鳴る』とハシゴしたのですが、よもやのヘミングウェイつながりだったってことですね…
てか、完全ネタバレでお送りします。
これからご覧になる方で、事前の情報をあまり仕入れたくないタイプの方は、以下ご遠慮ください。
てかぶっちゃけ酷評です。
そういうのもダメな方も、ご遠慮ください。
いや久々に絶望的な気分になったもので。
出演させられている生徒さんが気の毒すぎます…(ToT)
ひと頃は、「皆殺しの谷」で有名でしたよね。
まあでもキャラクターの殺し方にはいろいろあるし、いいんですけれどね…
とりあえず今回は、作中で殺したキャラクター全員に謝ってください、谷先生。
ひどい。
ひどすぎる。
意味のある死が何ひとつない。
オープニングのライトはカッコ良かったんだけれどもねえ…
あと、いつの時代のアニメ? いや戦隊もの? っていう主題歌も、まあカッコ良かった。
しかし中身がアレじゃなんもかんも意味なんかナイよ…
サブリミナル効果でマインド・コントロールって、はたしていつのネタなの?
21世紀に生きてるの先生?
いや、物語の年代当時では最先端技術だったのかもしれないよ。だからモチーフとして扱うのはいいよ。
でもそんなに万能なものでもなかったってことは、現代に生きる観客はだいたいが知ってるんだからさあ、そこらへんを踏まえてお話を作ってくれないと。
それになんなの? 悪役たちがこの技術を使ってしようとしていたことは、いったいなんだったの?
買収相手の企業社長を殺す?
それで何を得ているの?
はっきり言って殺人というものはかなり高くつく手段なんだよ?
そんなことよりもっと安上がりで確実な方法で、同じ目的を遂げることはできると思うよ?
てか相手をいちいち殺していたらそれはもはや買収じゃないけどね。
たかだか金持ち企業がそんなことしないよ。あと何? 新聞社? なんだそれ。
マインドコントロールした暗殺者を育てて要人を殺して世界を変えるとかさ、なんでもいうことをきく兵士を育てて強力な軍隊を作って世界を奪うとかさ、そういうお話がいっぱいあったの。かつて。世の中には。フィクションだけれどね。中二病だけれどね。
そういうの、読んだこと、あります?
たぶん読んでませんよね。で、知らないから、わが身を省みることもなく、「いいの思いついちゃった」ってやってるんだよね。いい歳してね。
…恥ずかしいと思ってくださいよ。
こんなモチーフの扱い方、こんな悪役の立て方じゃ、対する主人公たちも立ちません。
そしてその主人公たち。
これもひどい。
まず、復讐ものって難しいって知っています?
冤罪だろうが陥れられたんだろうがなんだろうが、復讐してやる!ってなった時点で、主人公は自分を陥れた卑怯な相手と同じ土俵に立つ、というか同じ卑怯な世界に身を落とすことになるのです。
普通の観客は、最初は同情して主人公たちを応援していても、だんだん復讐のためなら手段を選ばなくなる主人公たちに嫌気を感じていくようになるものです。主人公たちもまた、自分のなんらかの目的のために手段を選ばず主人公を陥れた卑怯な相手に似てくるからです。
普通の観客にはそこまでの経験もないし根性もないし、どこかでつきあうのに疲れてくるからです。
この問題をクリアするのはかなり難しい。
主人公たちにかなりの魅力を作って、なるべく長くつき合えるようにし向けなきゃならないし、主人公たちの復讐の手段にもアイディアが必要になります。相手と同じ卑怯で悪辣なことを主人公たちにさせてはいけません。それはヒーローがするべきことではない。
それがコード・ヒーローであろうと、です。
ではこの作品の主人公たちはどうか。
まず、状況の設定だけで性格設定がまったくできていないのが問題です。
ジャスティン(朝夏まなと)は、恋人の両親を殺害した罪で捕まり、投獄され、無実を訴えるよりは早く出所するために模範囚として過ごし、監獄からでてきた今、真犯人を捜し歩いている。
それはわかった。で?
この事実からはやや粘着質なのねとか真面目なのねとか意外に冷静というかいや冷酷なんじゃないの?というような感想しか私は出てきませんでしたが、それはまあおいておくにしても。
彼が、どんな生い立ちの、どんな性格の、どんな人間かという情報がまったくないんです。
それを表現するエピソードもない。
将来を嘱望された士官候補性で、裕福な婚約者がいて…というのは説明される。
しかし彼が、たとえばのんきな人間なのか、優しい人間なのか、怒りっぽいタイプなのか、クールなタイプなのか…そういう性格、人間性に関する描写がまったくないわけ。
それはつまり彼がどんな人間かわからないってことと同じことです。
そりゃ冤罪に苦しんでいることには同情しますよ。でも所詮そんなの他人事です。彼を好きになって初めて、彼の身の上が親身になって考えられる。彼の復讐の物語につきあおう、という気持ちになれるのです。
それが、ない。
彼がどんな人間か皆目わからないから、好きになんかなれないし、彼があれこれ説明する事件の話にも耳を貸す気になれないんですよ。
だって周りの舟漕ぎ率、ハンパなかったですよ。あれ全部、生徒に見えてますよね? バウだもん、あんな小さなホールだもん。本当に生徒が気の毒です…
台詞が説明臭すぎて下手だ、という技術的な問題もありますが、根本的には、キャラクターが描けていないこと、キャラクターのチャームがないことが原因なんですよ。
そりゃ観客は役者のことが好きだからさ、役者が演じる役も愛する準備ができているワケ。でもそれだけじゃダメなんですよ、役者の魅力だけではダメなの、役に魅力がないとダメなの。
そこはいくら生徒ありき、スターありきの宝塚歌劇でも、脚本家が書いてあげないとダメな部分なんですよ。
そういうこと、わかってます?
ヒロインのヴァネッサ(実咲凜音)とかも典型的な例です。
まず、登場シーンの衣装が意味不明すぎる。
レモン色のワンピース、スカート部分はタイト、同じ黄色のカーディガン。これってスポーツバーで働く娘の服装か? パトロールをさぼる警官たちがたまり場にしているようなバーの? 柱に手錠でくくりつけた男を見張ってろとか言われちゃうような女の? 婚約者に両親を殺され、それでも婚約者の無実を信じて、彼の出所を待っている女の? ではどんな女なら似合の服装なのかというと、それも思いつかない。
中途半端だからです。何も考えられていないからです。
境遇も性格も作れていないから、こんな謎の服装になるんですよ。こんな役、演じようがないよ。
怒りっぽいからキンキンしているのか、クールだからキンキンしているのかなんか全然わかんないし。キンキンしていて全然かわいくない。
ソロの歌の歌詞もまったく意味不明だったし、こんな初ヒロイン、かわいそうすぎますよ…
あと、ラストですが、ケネスはもういいんですかねえ?
ジャスティンにきちんと惚れているようでもないようですが、ジャスティンの仕事を手伝うわとか言っちゃってた気はしたんだけど?
でもそんな薄情な女に観客は感情移入できませんよ?
それでラブ的にはハッピーエンド、とかにはなりませんよ?
あと、事件が解決されてもケネスの人生は破壊されたままですよ?
ケネスのことは直接ボイドやクリストファーが何かしたことではないにしても、キャラクターひとりを廃人にして、ヒロインをその世話係に一生縛り付けて、いくら脚本家はその世界の神様だって言ったって、そんな非道なことが許されると思ってるの?
これだけキャラクターの人生を破壊していてて、それで何が描けたの?
社会の掟に従わない主人公たちってカッコいい、とかなんかそんなこと?
バカじゃないの。それはただの無法者って言うんだよ。
観客は普通の社会に生きる良識的な一般市民で、そんな反社会人物にあこがれたり共感したりしません。
大人になってくださいよ先生、15やそこらの思春期の少年じゃないんだからさあ…
ハル(望海風斗)については、100歩くらいなら譲ってもいい。
実はFBIの潜入捜査官だった、というオチがあるから、多くは明かせないし、怪しさ満載でなんかワケありに見えれば、あとはへらへらやってみせただいもんのキャラでなんとなっていた。
でも、そういうことじゃないんです。
とにかく主人公たちに魅力が感じられないまま、共感できないまま、とりあえず物語は始まってしまうので観ていきますが、まあまたその展開のひどいこと。
冤罪を着せる相手なんて都合がよければ誰でもよくて、殺す相手にこそ意味があるのだということくらい、陥れられた彼らにだってすぐわかりそうなもんでしょう。なのになんなんだあの、なんかよくわからない推理の展開…「被害者意識が強すぎた」だと?
それに、結局ハルの事件は嘘だったんだから、そうするとこの手の冤罪事件はジャスティンとケネス(天真みちる)だけですか?
二件だけでは連続殺人事件とは言えないんじゃないのかなあ…
それに、どちらの事件も郵便配達人が証言者になっていて、偽証を専門にする組織があるのかも、みたいな話になりましたが、結局はそれはうやむやになってますよね?
てか結局、ドミニク(梅咲衣舞)の両親を殺しヴァネッサの両親を殺した実行犯は誰なの? ラリー(真瀬はるか)ってことなの? でもラリーはホントにただのチンピラで、マインドコントロールされてボイド(高翔みず希)なりクリストファー(紫峰七海)なりの命令に従っているわけではなかったですよね?
てかサブリミナルでマインドコントロール云々されていたのって、ドミニクとローズマリー(桜一花)だけ? でもなんで? なんの目的で? それでなんの利益があるの??
なんかもう全然わかんないんですけど???
ジャスティンはまだドミニクを愛していたのか、それとも自分を陥れた犯人に復讐するためならもうどうでもいいと思っているのかも不明なので、ドミニクが死ぬシーンも盛り上がりに欠けます。
妹キャサリン(天宮菜生)のこともどれくらい大切に思っているのかよくわからないから、このくだりも盛り上がらない。
加えて幼い少女ドロシー(菜那くらら)を人質にするんですよジャスティンは。なんてひどい男なの、復讐のためならかつて助けてあげたかわいい少女の心を傷つけてもいいというような男なの?
そんな人間を観客が応援して観ると思ってんのこの作品を、なんなんだなんなんだホントにもう。ひどすぎる。
ダニエル(祐澄みしゅん)もいい演技しているのにみんな無駄だよね。まあ彼がハルに殺されたってのはナシなんだろうけどさ、でもあの時点ではこれもハルの好感度を下げることにしか役立っていないんですよね。ひどい。
ジュリア(芽吹幸奈)も押し出しいいしいい演技しているんだけど台無し。
そしてジュニア(鳳真由)に対しては、本当に謝っていただきたい。これを無駄死にと言わずして何を言うの?
というか彼の人生はなんだったの?
たとえ役でも、キャラクターでも、フィクションでも、あまりに無責任すぎますよ先生。
こんな弄び方、あんまりです。家族のために生きようとしたひとりの青年に対して、あんまりです。
ザルすぎる。
大どんでん返しのヒーロー、レックス(彩城レア)はよかった。
下級生では看護師テレサの鞠花ゆめちゃんが縁起もせりふも良かった。あと貴婦人役の(シベールという役名はあるようでしたが特に意味はなかったので)桜咲彩花ちゃんがとてもとてもきれいでした。フイナーレで見惚れた。
アーサーときらりはまったくの役不足で、これもちがった意味で謝ってください。
ああもういろんな意味で死屍累々のこんな作品、プロデューサーさん止めてくださいよホント。
やらされる生徒も見せられる観客もホントいい迷惑。
こんなんだったらよっぽど再演ものの方がマシです。
てかマジでボケを心配したいくらいです。
ネタだとしてもひどすぎる。
ああ、青年館のチケット2回分、どうしよう…
売ろうかな、売れるかな。
正当な批評を書くためにはもう一回くらいは観るべきなんだろうけど、苦痛すぎる…
わかってて観てもワケわかんないんだろうし…あああああ。
1974年、テキサスのヒューストンではスーパーボウルが開催され、警察官たちもスポーツバーで試合中継を楽しんでいた。そこへ護送中の殺人犯が脱走したとの連絡が入る。途方にくれる警察官たちの前にひとりの旅行者が現れ、名前や出身地を訪ねても答えないので、警察官たちはその男を拘束するが…
作・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治。
「コード・ヒーロー」とはアーネスト・ヘミングウェイが分類したヒーロー像のひとつで、法律や社会常識に囚われず、自分自身の掟(コード)のみに従って行動する、反逆的ヒーローのこと。
…だそうですが…
てか『誰がために鐘は鳴る』とハシゴしたのですが、よもやのヘミングウェイつながりだったってことですね…
てか、完全ネタバレでお送りします。
これからご覧になる方で、事前の情報をあまり仕入れたくないタイプの方は、以下ご遠慮ください。
てかぶっちゃけ酷評です。
そういうのもダメな方も、ご遠慮ください。
いや久々に絶望的な気分になったもので。
出演させられている生徒さんが気の毒すぎます…(ToT)
ひと頃は、「皆殺しの谷」で有名でしたよね。
まあでもキャラクターの殺し方にはいろいろあるし、いいんですけれどね…
とりあえず今回は、作中で殺したキャラクター全員に謝ってください、谷先生。
ひどい。
ひどすぎる。
意味のある死が何ひとつない。
オープニングのライトはカッコ良かったんだけれどもねえ…
あと、いつの時代のアニメ? いや戦隊もの? っていう主題歌も、まあカッコ良かった。
しかし中身がアレじゃなんもかんも意味なんかナイよ…
サブリミナル効果でマインド・コントロールって、はたしていつのネタなの?
21世紀に生きてるの先生?
いや、物語の年代当時では最先端技術だったのかもしれないよ。だからモチーフとして扱うのはいいよ。
でもそんなに万能なものでもなかったってことは、現代に生きる観客はだいたいが知ってるんだからさあ、そこらへんを踏まえてお話を作ってくれないと。
それになんなの? 悪役たちがこの技術を使ってしようとしていたことは、いったいなんだったの?
買収相手の企業社長を殺す?
それで何を得ているの?
はっきり言って殺人というものはかなり高くつく手段なんだよ?
そんなことよりもっと安上がりで確実な方法で、同じ目的を遂げることはできると思うよ?
てか相手をいちいち殺していたらそれはもはや買収じゃないけどね。
たかだか金持ち企業がそんなことしないよ。あと何? 新聞社? なんだそれ。
マインドコントロールした暗殺者を育てて要人を殺して世界を変えるとかさ、なんでもいうことをきく兵士を育てて強力な軍隊を作って世界を奪うとかさ、そういうお話がいっぱいあったの。かつて。世の中には。フィクションだけれどね。中二病だけれどね。
そういうの、読んだこと、あります?
たぶん読んでませんよね。で、知らないから、わが身を省みることもなく、「いいの思いついちゃった」ってやってるんだよね。いい歳してね。
…恥ずかしいと思ってくださいよ。
こんなモチーフの扱い方、こんな悪役の立て方じゃ、対する主人公たちも立ちません。
そしてその主人公たち。
これもひどい。
まず、復讐ものって難しいって知っています?
冤罪だろうが陥れられたんだろうがなんだろうが、復讐してやる!ってなった時点で、主人公は自分を陥れた卑怯な相手と同じ土俵に立つ、というか同じ卑怯な世界に身を落とすことになるのです。
普通の観客は、最初は同情して主人公たちを応援していても、だんだん復讐のためなら手段を選ばなくなる主人公たちに嫌気を感じていくようになるものです。主人公たちもまた、自分のなんらかの目的のために手段を選ばず主人公を陥れた卑怯な相手に似てくるからです。
普通の観客にはそこまでの経験もないし根性もないし、どこかでつきあうのに疲れてくるからです。
この問題をクリアするのはかなり難しい。
主人公たちにかなりの魅力を作って、なるべく長くつき合えるようにし向けなきゃならないし、主人公たちの復讐の手段にもアイディアが必要になります。相手と同じ卑怯で悪辣なことを主人公たちにさせてはいけません。それはヒーローがするべきことではない。
それがコード・ヒーローであろうと、です。
ではこの作品の主人公たちはどうか。
まず、状況の設定だけで性格設定がまったくできていないのが問題です。
ジャスティン(朝夏まなと)は、恋人の両親を殺害した罪で捕まり、投獄され、無実を訴えるよりは早く出所するために模範囚として過ごし、監獄からでてきた今、真犯人を捜し歩いている。
それはわかった。で?
この事実からはやや粘着質なのねとか真面目なのねとか意外に冷静というかいや冷酷なんじゃないの?というような感想しか私は出てきませんでしたが、それはまあおいておくにしても。
彼が、どんな生い立ちの、どんな性格の、どんな人間かという情報がまったくないんです。
それを表現するエピソードもない。
将来を嘱望された士官候補性で、裕福な婚約者がいて…というのは説明される。
しかし彼が、たとえばのんきな人間なのか、優しい人間なのか、怒りっぽいタイプなのか、クールなタイプなのか…そういう性格、人間性に関する描写がまったくないわけ。
それはつまり彼がどんな人間かわからないってことと同じことです。
そりゃ冤罪に苦しんでいることには同情しますよ。でも所詮そんなの他人事です。彼を好きになって初めて、彼の身の上が親身になって考えられる。彼の復讐の物語につきあおう、という気持ちになれるのです。
それが、ない。
彼がどんな人間か皆目わからないから、好きになんかなれないし、彼があれこれ説明する事件の話にも耳を貸す気になれないんですよ。
だって周りの舟漕ぎ率、ハンパなかったですよ。あれ全部、生徒に見えてますよね? バウだもん、あんな小さなホールだもん。本当に生徒が気の毒です…
台詞が説明臭すぎて下手だ、という技術的な問題もありますが、根本的には、キャラクターが描けていないこと、キャラクターのチャームがないことが原因なんですよ。
そりゃ観客は役者のことが好きだからさ、役者が演じる役も愛する準備ができているワケ。でもそれだけじゃダメなんですよ、役者の魅力だけではダメなの、役に魅力がないとダメなの。
そこはいくら生徒ありき、スターありきの宝塚歌劇でも、脚本家が書いてあげないとダメな部分なんですよ。
そういうこと、わかってます?
ヒロインのヴァネッサ(実咲凜音)とかも典型的な例です。
まず、登場シーンの衣装が意味不明すぎる。
レモン色のワンピース、スカート部分はタイト、同じ黄色のカーディガン。これってスポーツバーで働く娘の服装か? パトロールをさぼる警官たちがたまり場にしているようなバーの? 柱に手錠でくくりつけた男を見張ってろとか言われちゃうような女の? 婚約者に両親を殺され、それでも婚約者の無実を信じて、彼の出所を待っている女の? ではどんな女なら似合の服装なのかというと、それも思いつかない。
中途半端だからです。何も考えられていないからです。
境遇も性格も作れていないから、こんな謎の服装になるんですよ。こんな役、演じようがないよ。
怒りっぽいからキンキンしているのか、クールだからキンキンしているのかなんか全然わかんないし。キンキンしていて全然かわいくない。
ソロの歌の歌詞もまったく意味不明だったし、こんな初ヒロイン、かわいそうすぎますよ…
あと、ラストですが、ケネスはもういいんですかねえ?
ジャスティンにきちんと惚れているようでもないようですが、ジャスティンの仕事を手伝うわとか言っちゃってた気はしたんだけど?
でもそんな薄情な女に観客は感情移入できませんよ?
それでラブ的にはハッピーエンド、とかにはなりませんよ?
あと、事件が解決されてもケネスの人生は破壊されたままですよ?
ケネスのことは直接ボイドやクリストファーが何かしたことではないにしても、キャラクターひとりを廃人にして、ヒロインをその世話係に一生縛り付けて、いくら脚本家はその世界の神様だって言ったって、そんな非道なことが許されると思ってるの?
これだけキャラクターの人生を破壊していてて、それで何が描けたの?
社会の掟に従わない主人公たちってカッコいい、とかなんかそんなこと?
バカじゃないの。それはただの無法者って言うんだよ。
観客は普通の社会に生きる良識的な一般市民で、そんな反社会人物にあこがれたり共感したりしません。
大人になってくださいよ先生、15やそこらの思春期の少年じゃないんだからさあ…
ハル(望海風斗)については、100歩くらいなら譲ってもいい。
実はFBIの潜入捜査官だった、というオチがあるから、多くは明かせないし、怪しさ満載でなんかワケありに見えれば、あとはへらへらやってみせただいもんのキャラでなんとなっていた。
でも、そういうことじゃないんです。
とにかく主人公たちに魅力が感じられないまま、共感できないまま、とりあえず物語は始まってしまうので観ていきますが、まあまたその展開のひどいこと。
冤罪を着せる相手なんて都合がよければ誰でもよくて、殺す相手にこそ意味があるのだということくらい、陥れられた彼らにだってすぐわかりそうなもんでしょう。なのになんなんだあの、なんかよくわからない推理の展開…「被害者意識が強すぎた」だと?
それに、結局ハルの事件は嘘だったんだから、そうするとこの手の冤罪事件はジャスティンとケネス(天真みちる)だけですか?
二件だけでは連続殺人事件とは言えないんじゃないのかなあ…
それに、どちらの事件も郵便配達人が証言者になっていて、偽証を専門にする組織があるのかも、みたいな話になりましたが、結局はそれはうやむやになってますよね?
てか結局、ドミニク(梅咲衣舞)の両親を殺しヴァネッサの両親を殺した実行犯は誰なの? ラリー(真瀬はるか)ってことなの? でもラリーはホントにただのチンピラで、マインドコントロールされてボイド(高翔みず希)なりクリストファー(紫峰七海)なりの命令に従っているわけではなかったですよね?
てかサブリミナルでマインドコントロール云々されていたのって、ドミニクとローズマリー(桜一花)だけ? でもなんで? なんの目的で? それでなんの利益があるの??
なんかもう全然わかんないんですけど???
ジャスティンはまだドミニクを愛していたのか、それとも自分を陥れた犯人に復讐するためならもうどうでもいいと思っているのかも不明なので、ドミニクが死ぬシーンも盛り上がりに欠けます。
妹キャサリン(天宮菜生)のこともどれくらい大切に思っているのかよくわからないから、このくだりも盛り上がらない。
加えて幼い少女ドロシー(菜那くらら)を人質にするんですよジャスティンは。なんてひどい男なの、復讐のためならかつて助けてあげたかわいい少女の心を傷つけてもいいというような男なの?
そんな人間を観客が応援して観ると思ってんのこの作品を、なんなんだなんなんだホントにもう。ひどすぎる。
ダニエル(祐澄みしゅん)もいい演技しているのにみんな無駄だよね。まあ彼がハルに殺されたってのはナシなんだろうけどさ、でもあの時点ではこれもハルの好感度を下げることにしか役立っていないんですよね。ひどい。
ジュリア(芽吹幸奈)も押し出しいいしいい演技しているんだけど台無し。
そしてジュニア(鳳真由)に対しては、本当に謝っていただきたい。これを無駄死にと言わずして何を言うの?
というか彼の人生はなんだったの?
たとえ役でも、キャラクターでも、フィクションでも、あまりに無責任すぎますよ先生。
こんな弄び方、あんまりです。家族のために生きようとしたひとりの青年に対して、あんまりです。
ザルすぎる。
大どんでん返しのヒーロー、レックス(彩城レア)はよかった。
下級生では看護師テレサの鞠花ゆめちゃんが縁起もせりふも良かった。あと貴婦人役の(シベールという役名はあるようでしたが特に意味はなかったので)桜咲彩花ちゃんがとてもとてもきれいでした。フイナーレで見惚れた。
アーサーときらりはまったくの役不足で、これもちがった意味で謝ってください。
ああもういろんな意味で死屍累々のこんな作品、プロデューサーさん止めてくださいよホント。
やらされる生徒も見せられる観客もホントいい迷惑。
こんなんだったらよっぽど再演ものの方がマシです。
てかマジでボケを心配したいくらいです。
ネタだとしてもひどすぎる。
ああ、青年館のチケット2回分、どうしよう…
売ろうかな、売れるかな。
正当な批評を書くためにはもう一回くらいは観るべきなんだろうけど、苦痛すぎる…
わかってて観てもワケわかんないんだろうし…あああああ。