宝塚バウホール、2021年7月6日11時半、15時。
KAAT神奈川芸術劇場、7月23日15時半。
19世紀スペイン南部。セビリヤの名門貴族オリベイラ家の息子であるロドリゴ(愛月ひかる)は、あらゆる資質からいってエリートコースを選べた青年であった。そんな彼がマラガでひとりの少女と出会う。彼女の名前はマノン(有沙瞳)。その得体の知れない美しさに惹かれ、ロドリゴは激しい熱情を掻き立てられる。修道院へ入れられるというマノンを連れて、ロドリゴはマドリードへと駆け落ちするが…
原作/アベ・プレヴォー、脚本・演出/中村暁、作曲・編曲/西村耕次、鞍富真一、青木朝子。2001年の花組で上演されたものの再演。全2幕。
初演は生では観ていなくて、以前スカステで見たことがあったよーな…程度。原作小説も昔読んだことがあったような…バレエは観ていて、こちらなど。ちなみに月組『舞音』はこちら。
この作品は舞台をスペインに移していて、かつ主人公たちは10代設定のようだし、本当なら若手スターのバウ初主演作とかにふさわしい作品なのかもしれないな、とも思いつつ、そのクラシカルさ、レトロさを成立させられるのは今の愛ちゃんくらいかもしれないな…などと考えて、いそいそと出かけました。
で…まず、題材そのものは柴田先生も取り上げそうなものなんだけれど、中村Aの手にかかるとキャラもドラマも薄っぺらく、何より台詞の日本語が貧弱で、演出にも芸がないのがつらく感じました。奥行き、深みがない…もちろん、あえてそう作っているのかもしれませんが、私はバウではかなりもの足りなく感じました。しょーもない話やな、という印象が強くて…横浜ではハコがデカい分かえって全体に客観的に観られたのか、はたまた役者の熱意が芝居を仕上げてきたのか、ま、こういうメロドラマもアリかもな、とわりと楽しく観られたのですが。初演メンバーは今より下級生だったのかなあ?
ベンヴォーリオに続いて報われない友人役のあかちゃん、増えた新曲がさすがに聴かせてくれました。フィナーレとっぱしのノリノリ具合も楽しかったです。
レスコー(天飛華音)のあまとくんは健闘していたとは思いますが、バウではまだちょっと足りなく感じ、横浜ではだいぶ押し出しが出てきていて、さすが若い人は伸びるのが早い、と感心しました。でもその恋人エレーナ(水乃ゆり)は、全然足りてないはニンじゃないはでひたすらダイコンに見えて、ちょっと気の毒だったかな…「よろしくやる」とか、今のジェンヌの辞書にないでしょう(><)。意味わかってんのかな? てかちゃんと解説して演技指導した? てかそもそもこのキャラの設定ってなんなんですかね? 軍人のガールフレンドってどのあたりの階層の娘で、どういう性格ってことになっているのかさっぱりわかりませんでした。娼婦ではないのでしょうけれど、それに準じたあたりなの? 純真なのか蓮っ葉なのか中途半端で、その据わりの悪さも観ていてつらかったです。
マノンにコナをかける資産家のフェルナンド(輝咲玲央)やマノンを囲おうとするアルフォンゾ公爵(朝水りょう)がさすがで、実にいい色気を振りまいていましたし、マノンの父の使いレイエス(漣レイラ)他でかなえちゃんが、マノンを護送するフェンテス隊長(遥斗勇帆)他でユウホハルトが、そしてあかっしーやユウヒマキが何役もあれこれ仕事していて、手堅かったです。まいけるのオリベイラ伯爵(大輝真琴)はバウではもの足りなく感じたのですが、横浜ではいい圧をロドリゴにかけていてよかったなー。ロドリゴの兄ホアン(桃堂純)も、さすがにいい空気を醸し出していましたね(これでご卒業とは、残念です…)。伯爵夫人(紫月音寧)含め横浜ではすごくいいバランスと空気感の家族になっていて、でもロドリゴが暴走しちゃってどうにもならなくなっちゃってる…という感じが実によく出るようになっていたなと思いました。
あと、どの場面でも俺たちのリラハナユキが可愛かったです。あとは冒頭の旅籠の客役やレスコーにまとわりつく女役の瑛美花れなちゃんと麻丘乃愛ちゃんが可愛くて好みでした。下級生男役さんにも、顔が小さくて背が高い、綺麗な生徒さんがいたけどなー、誰かなー。大希颯くんかな? いろはすも素敵でした。
そして主演のおふたり、さすがでした。いろいろキャリアを積んできた愛ちゃんが今ここで、10代の白いボンボンの役を過不足なくやってみせるのが素晴らしい。加えて超絶スタイルの良さでどのお衣装も似合うこと! フィナーレも素敵でした。さらにいえばヅカオタの愛ちゃん、『不滅の棘』のオサに続いて今回のアサコの役の再演とは、内心それはそれはお喜びなのではないでしょうか(^o^)。
くらっちも本当になんでもできる娘役さんですが、みほこほど蠱惑的なファム・ファタールに振って役作りしていなかったような印象でした。でも、貴族ではなく、貴族のところに嫁げるようなクラスでもない家柄の出の娘として、普通に売れるものは売って生計を立てようとしているだけの、現実主義者ででもやっぱりちょっとした贅沢には目がなくて貞操観念なるものがやや怪しい、逆に言えばまあごく普通の美人の娘さん、というものを実に上手く演じていたと思いました。フィエスタでフェルナンドをフるのもどちらかといえばなんとなく、流されて、勢いで、たまたま、なんだろうし、収監されてから連行される間も別に本当の意味で改心しているわけでもないんだろうなと思います。つまり別にロドリゴとマノンの間に真実の愛なんてものは生まれていないんだと思うんですよ。でも、そもそも人間なんてそんなものだとも思いますし、それでもロドリゴはそんなマノンを愛してしまって他の生き方が考えられないようになってしまって(お金がないから賭博で小遣い稼ぎ…って発想がもう、労働なんかしたことないし眼中にない、不労所得で食べている貴族の御曹司のものなんですよね)、だからもうこうなるしかなかったのだ…というストーリーが、無残と言ってもいいのだけれどやはり美しくもあるラストに結実していて、よかったと思いました。波音の効果は大正解でしたね。フィナーレのデュエダンもとても素敵でした。
次の本公演はどんな感じになるのかな、楽しみです。原作も、予習できたらしたいと思っています!
KAAT神奈川芸術劇場、7月23日15時半。
19世紀スペイン南部。セビリヤの名門貴族オリベイラ家の息子であるロドリゴ(愛月ひかる)は、あらゆる資質からいってエリートコースを選べた青年であった。そんな彼がマラガでひとりの少女と出会う。彼女の名前はマノン(有沙瞳)。その得体の知れない美しさに惹かれ、ロドリゴは激しい熱情を掻き立てられる。修道院へ入れられるというマノンを連れて、ロドリゴはマドリードへと駆け落ちするが…
原作/アベ・プレヴォー、脚本・演出/中村暁、作曲・編曲/西村耕次、鞍富真一、青木朝子。2001年の花組で上演されたものの再演。全2幕。
初演は生では観ていなくて、以前スカステで見たことがあったよーな…程度。原作小説も昔読んだことがあったような…バレエは観ていて、こちらなど。ちなみに月組『舞音』はこちら。
この作品は舞台をスペインに移していて、かつ主人公たちは10代設定のようだし、本当なら若手スターのバウ初主演作とかにふさわしい作品なのかもしれないな、とも思いつつ、そのクラシカルさ、レトロさを成立させられるのは今の愛ちゃんくらいかもしれないな…などと考えて、いそいそと出かけました。
で…まず、題材そのものは柴田先生も取り上げそうなものなんだけれど、中村Aの手にかかるとキャラもドラマも薄っぺらく、何より台詞の日本語が貧弱で、演出にも芸がないのがつらく感じました。奥行き、深みがない…もちろん、あえてそう作っているのかもしれませんが、私はバウではかなりもの足りなく感じました。しょーもない話やな、という印象が強くて…横浜ではハコがデカい分かえって全体に客観的に観られたのか、はたまた役者の熱意が芝居を仕上げてきたのか、ま、こういうメロドラマもアリかもな、とわりと楽しく観られたのですが。初演メンバーは今より下級生だったのかなあ?
ベンヴォーリオに続いて報われない友人役のあかちゃん、増えた新曲がさすがに聴かせてくれました。フィナーレとっぱしのノリノリ具合も楽しかったです。
レスコー(天飛華音)のあまとくんは健闘していたとは思いますが、バウではまだちょっと足りなく感じ、横浜ではだいぶ押し出しが出てきていて、さすが若い人は伸びるのが早い、と感心しました。でもその恋人エレーナ(水乃ゆり)は、全然足りてないはニンじゃないはでひたすらダイコンに見えて、ちょっと気の毒だったかな…「よろしくやる」とか、今のジェンヌの辞書にないでしょう(><)。意味わかってんのかな? てかちゃんと解説して演技指導した? てかそもそもこのキャラの設定ってなんなんですかね? 軍人のガールフレンドってどのあたりの階層の娘で、どういう性格ってことになっているのかさっぱりわかりませんでした。娼婦ではないのでしょうけれど、それに準じたあたりなの? 純真なのか蓮っ葉なのか中途半端で、その据わりの悪さも観ていてつらかったです。
マノンにコナをかける資産家のフェルナンド(輝咲玲央)やマノンを囲おうとするアルフォンゾ公爵(朝水りょう)がさすがで、実にいい色気を振りまいていましたし、マノンの父の使いレイエス(漣レイラ)他でかなえちゃんが、マノンを護送するフェンテス隊長(遥斗勇帆)他でユウホハルトが、そしてあかっしーやユウヒマキが何役もあれこれ仕事していて、手堅かったです。まいけるのオリベイラ伯爵(大輝真琴)はバウではもの足りなく感じたのですが、横浜ではいい圧をロドリゴにかけていてよかったなー。ロドリゴの兄ホアン(桃堂純)も、さすがにいい空気を醸し出していましたね(これでご卒業とは、残念です…)。伯爵夫人(紫月音寧)含め横浜ではすごくいいバランスと空気感の家族になっていて、でもロドリゴが暴走しちゃってどうにもならなくなっちゃってる…という感じが実によく出るようになっていたなと思いました。
あと、どの場面でも俺たちのリラハナユキが可愛かったです。あとは冒頭の旅籠の客役やレスコーにまとわりつく女役の瑛美花れなちゃんと麻丘乃愛ちゃんが可愛くて好みでした。下級生男役さんにも、顔が小さくて背が高い、綺麗な生徒さんがいたけどなー、誰かなー。大希颯くんかな? いろはすも素敵でした。
そして主演のおふたり、さすがでした。いろいろキャリアを積んできた愛ちゃんが今ここで、10代の白いボンボンの役を過不足なくやってみせるのが素晴らしい。加えて超絶スタイルの良さでどのお衣装も似合うこと! フィナーレも素敵でした。さらにいえばヅカオタの愛ちゃん、『不滅の棘』のオサに続いて今回のアサコの役の再演とは、内心それはそれはお喜びなのではないでしょうか(^o^)。
くらっちも本当になんでもできる娘役さんですが、みほこほど蠱惑的なファム・ファタールに振って役作りしていなかったような印象でした。でも、貴族ではなく、貴族のところに嫁げるようなクラスでもない家柄の出の娘として、普通に売れるものは売って生計を立てようとしているだけの、現実主義者ででもやっぱりちょっとした贅沢には目がなくて貞操観念なるものがやや怪しい、逆に言えばまあごく普通の美人の娘さん、というものを実に上手く演じていたと思いました。フィエスタでフェルナンドをフるのもどちらかといえばなんとなく、流されて、勢いで、たまたま、なんだろうし、収監されてから連行される間も別に本当の意味で改心しているわけでもないんだろうなと思います。つまり別にロドリゴとマノンの間に真実の愛なんてものは生まれていないんだと思うんですよ。でも、そもそも人間なんてそんなものだとも思いますし、それでもロドリゴはそんなマノンを愛してしまって他の生き方が考えられないようになってしまって(お金がないから賭博で小遣い稼ぎ…って発想がもう、労働なんかしたことないし眼中にない、不労所得で食べている貴族の御曹司のものなんですよね)、だからもうこうなるしかなかったのだ…というストーリーが、無残と言ってもいいのだけれどやはり美しくもあるラストに結実していて、よかったと思いました。波音の効果は大正解でしたね。フィナーレのデュエダンもとても素敵でした。
次の本公演はどんな感じになるのかな、楽しみです。原作も、予習できたらしたいと思っています!