駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇星組『マノン』

2021年07月25日 | 観劇記/タイトルま行
 宝塚バウホール、2021年7月6日11時半、15時。
 KAAT神奈川芸術劇場、7月23日15時半。

 19世紀スペイン南部。セビリヤの名門貴族オリベイラ家の息子であるロドリゴ(愛月ひかる)は、あらゆる資質からいってエリートコースを選べた青年であった。そんな彼がマラガでひとりの少女と出会う。彼女の名前はマノン(有沙瞳)。その得体の知れない美しさに惹かれ、ロドリゴは激しい熱情を掻き立てられる。修道院へ入れられるというマノンを連れて、ロドリゴはマドリードへと駆け落ちするが…
 原作/アベ・プレヴォー、脚本・演出/中村暁、作曲・編曲/西村耕次、鞍富真一、青木朝子。2001年の花組で上演されたものの再演。全2幕。

 初演は生では観ていなくて、以前スカステで見たことがあったよーな…程度。原作小説も昔読んだことがあったような…バレエは観ていて、こちらなど。ちなみに月組『舞音』はこちら
 この作品は舞台をスペインに移していて、かつ主人公たちは10代設定のようだし、本当なら若手スターのバウ初主演作とかにふさわしい作品なのかもしれないな、とも思いつつ、そのクラシカルさ、レトロさを成立させられるのは今の愛ちゃんくらいかもしれないな…などと考えて、いそいそと出かけました。
 で…まず、題材そのものは柴田先生も取り上げそうなものなんだけれど、中村Aの手にかかるとキャラもドラマも薄っぺらく、何より台詞の日本語が貧弱で、演出にも芸がないのがつらく感じました。奥行き、深みがない…もちろん、あえてそう作っているのかもしれませんが、私はバウではかなりもの足りなく感じました。しょーもない話やな、という印象が強くて…横浜ではハコがデカい分かえって全体に客観的に観られたのか、はたまた役者の熱意が芝居を仕上げてきたのか、ま、こういうメロドラマもアリかもな、とわりと楽しく観られたのですが。初演メンバーは今より下級生だったのかなあ?
 ベンヴォーリオに続いて報われない友人役のあかちゃん、増えた新曲がさすがに聴かせてくれました。フィナーレとっぱしのノリノリ具合も楽しかったです。
 レスコー(天飛華音)のあまとくんは健闘していたとは思いますが、バウではまだちょっと足りなく感じ、横浜ではだいぶ押し出しが出てきていて、さすが若い人は伸びるのが早い、と感心しました。でもその恋人エレーナ(水乃ゆり)は、全然足りてないはニンじゃないはでひたすらダイコンに見えて、ちょっと気の毒だったかな…「よろしくやる」とか、今のジェンヌの辞書にないでしょう(><)。意味わかってんのかな? てかちゃんと解説して演技指導した? てかそもそもこのキャラの設定ってなんなんですかね? 軍人のガールフレンドってどのあたりの階層の娘で、どういう性格ってことになっているのかさっぱりわかりませんでした。娼婦ではないのでしょうけれど、それに準じたあたりなの? 純真なのか蓮っ葉なのか中途半端で、その据わりの悪さも観ていてつらかったです。
 マノンにコナをかける資産家のフェルナンド(輝咲玲央)やマノンを囲おうとするアルフォンゾ公爵(朝水りょう)がさすがで、実にいい色気を振りまいていましたし、マノンの父の使いレイエス(漣レイラ)他でかなえちゃんが、マノンを護送するフェンテス隊長(遥斗勇帆)他でユウホハルトが、そしてあかっしーやユウヒマキが何役もあれこれ仕事していて、手堅かったです。まいけるのオリベイラ伯爵(大輝真琴)はバウではもの足りなく感じたのですが、横浜ではいい圧をロドリゴにかけていてよかったなー。ロドリゴの兄ホアン(桃堂純)も、さすがにいい空気を醸し出していましたね(これでご卒業とは、残念です…)。伯爵夫人(紫月音寧)含め横浜ではすごくいいバランスと空気感の家族になっていて、でもロドリゴが暴走しちゃってどうにもならなくなっちゃってる…という感じが実によく出るようになっていたなと思いました。
 あと、どの場面でも俺たちのリラハナユキが可愛かったです。あとは冒頭の旅籠の客役やレスコーにまとわりつく女役の瑛美花れなちゃんと麻丘乃愛ちゃんが可愛くて好みでした。下級生男役さんにも、顔が小さくて背が高い、綺麗な生徒さんがいたけどなー、誰かなー。大希颯くんかな? いろはすも素敵でした。
 そして主演のおふたり、さすがでした。いろいろキャリアを積んできた愛ちゃんが今ここで、10代の白いボンボンの役を過不足なくやってみせるのが素晴らしい。加えて超絶スタイルの良さでどのお衣装も似合うこと! フィナーレも素敵でした。さらにいえばヅカオタの愛ちゃん、『不滅の棘』のオサに続いて今回のアサコの役の再演とは、内心それはそれはお喜びなのではないでしょうか(^o^)。
 くらっちも本当になんでもできる娘役さんですが、みほこほど蠱惑的なファム・ファタールに振って役作りしていなかったような印象でした。でも、貴族ではなく、貴族のところに嫁げるようなクラスでもない家柄の出の娘として、普通に売れるものは売って生計を立てようとしているだけの、現実主義者ででもやっぱりちょっとした贅沢には目がなくて貞操観念なるものがやや怪しい、逆に言えばまあごく普通の美人の娘さん、というものを実に上手く演じていたと思いました。フィエスタでフェルナンドをフるのもどちらかといえばなんとなく、流されて、勢いで、たまたま、なんだろうし、収監されてから連行される間も別に本当の意味で改心しているわけでもないんだろうなと思います。つまり別にロドリゴとマノンの間に真実の愛なんてものは生まれていないんだと思うんですよ。でも、そもそも人間なんてそんなものだとも思いますし、それでもロドリゴはそんなマノンを愛してしまって他の生き方が考えられないようになってしまって(お金がないから賭博で小遣い稼ぎ…って発想がもう、労働なんかしたことないし眼中にない、不労所得で食べている貴族の御曹司のものなんですよね)、だからもうこうなるしかなかったのだ…というストーリーが、無残と言ってもいいのだけれどやはり美しくもあるラストに結実していて、よかったと思いました。波音の効果は大正解でしたね。フィナーレのデュエダンもとても素敵でした。

 次の本公演はどんな感じになるのかな、楽しみです。原作も、予習できたらしたいと思っています!


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宝塚歌劇星組『婆娑羅の玄孫』

2021年07月23日 | 観劇記/タイトルは行
 シアター・ドラマシティ、2021年7月13日16時。
 東京芸術劇場プレイハウス、7月22日15時半。

 絢爛たる江戸文化が花開いた頃。神田稲荷町のなめくじ長屋に、細石蔵之介(轟悠)と名乗るひとりの男が暮らしていた。実は蔵之介は、近江蒲生郡安土を納める佐々木家当主の次男で名を佐々木高久といったが、13のときに突然容赦なく廃嫡され、それ以来素性を隠してこの長屋でよろず指導を商いとして細々と生きていたのだ。室町幕府設立の立役者でありながら文化芸能に通じ「婆娑羅大名」と呼ばれた佐々木道誉の子孫である高久は、長屋で暮らす者たちから親しみを込めて「石さん」「石先生」と呼ばれる人気者になっていたが…
 作・演出/植田紳爾、作曲・編曲・録音音楽指揮/吉田優子、振付/山村友五郎、花柳壽輔。85年初舞台、同年月組に配属され、88年雪組に組替え。97年より雪組トップスター、2002年専科異動、03年に理事就任、20年より特別顧問、本年10月1日をもって卒業する、轟悠の退団公演。全2幕。

 私が宝塚歌劇を観始めた頃のイシちゃんは、雪組3番手スターさんでした。いや、ダブル2番手の下席って感じだったかな? トップ就任の頃はちょっと離れ気味だったので、あまり生で観ていませんが、ここ十数年はひととおり観ています。
 特出するときも主演しないといいんじゃないのかなあ…とか思ったことはありましたが、終身在団するものとばかり思っていたので、卒業発表は意外でした。でも、ご本人もそれなりに思うところがあったのでしょう。今は、お疲れ様でした、と言いたいです。

 しかしそれはそれとして、この演目自体には私は激しくあきれ、退屈しました。コロナの影響で芸劇公演が中止になることもありえるのでは、とギリギリにドラマシティを足したのですが、「コレを複数回観るのか…」とちょっと気が遠くなりましたもんね…
 お祭り場面を入れてのショーアップとかはとても素敵なんですよ。とにかくイシちゃんにフィーチャーした、ベタな時代劇みたいなオープニングも、組子との涙の別れを重ねるラストの演出も悪くない。
 でも、まず1幕のメインストーリーになる長崎から来た中国人姉弟(小桜ほのか、稀惺かずと)の仇討ちの展開が、ザルすぎませんかね? 親が商売仇に闇討ちされた、ってことらしいんですけど、(「日本人が闇討ちなんて」という、外国人ならやるってことかよそれって差別では、という台詞の問題点はここではとりあえずおきます)闇討ちなのに何故真犯人がわかるんだとか、親の側に殺されるだけの理由があったのではないのかとか、一方の話だけ聞いてもう一方を悪だと決めつけていいのかとか、相手の顔しかわからないのに江戸の町を探して歩いているだけで何故見つけられたんだとか、証拠ったって当事者が言い立ててるだけでホントに証拠の意味あんのかとか、巻き添えで殺される阿部さま(天華えま)の家族から今度は恨まれるんじゃないかとか、この頃の仇討ちは通常の犯罪とは違ってOKとされていたのかもしれないけれどどこにも届け出たりせず勝手に実行していいんかいなとか、五貫屋(美稀千種)にだって家族もあろうにとか、何より親の仇とはいえ子供ふたりに実際に人殺しなんかさせて教育上いいもんかいなとか、私はとにかくいちいち引っかかりました。時代もの、世話ものとしてはベタであたりまえのことなのかもしれないですけれど、現代の観客に見せるものなんだし、もう少していねいに台詞とかでフォローしてくれてもいいと思うんですけど…いわゆる警察とか裁判とかにあたるものをすっ飛ばして、また復讐の虚しさなんかを説くこともなく、悪人成敗してヤッター!ハッハッハ!で幕が下りたので、私は心底びっくりしましたよ…これでいいのか!? いいわきゃないんじゃないの!?!?
 さらに2幕はストーリーというほどのものはもうほとんどなくて、一度は蔵之介を廃嫡した佐々木家が跡取り息子が死んだというので帰ってこいと言ってきて、家臣たちにもかき口説かれて江戸を去ることにする…というだけの展開なのですが、まあ芝居として芸がないこと甚だしい。1幕で彦佐(汝鳥伶)がこのあたりの設定を語る場面もそうですが、イシちゃんはただ突っ立っていてゆうちゃんさんはただ座っているだけ、2幕も家臣が3人に増えただけでやっていることはほぼ同じ。紙芝居か、朗読か! なんか事情がいろいろ語られていた気もしますが、正直耳が滑って全然アタマに入りませんでした。芝居にも芸がないけれど、そもそも台詞に、脚本に芸がないんです。言葉に含蓄がない、だから届いてこない。
 それは、ヒロイン・お鈴(音波みのり)との喧嘩ップル場面の台詞や瓦版売りの権六(極美慎)の台詞なんかもそうで、特にはるこはとても達者でとてもよくやっていましたが、それにしても台詞が雑でザルでおもしろい掛け合いになっていないから観ていてとても痛々しい。権六の口上にしても同様です、いくらかりんたんが大奮闘したってアレをおもしろく見せられるわけないよ…ファンとしては泣けてきて仕方ありませんでした。
 最後だからこそ、ごくシンプルな、観ていて楽しい、痛快娯楽エンタメをやりたかった、みたいな意図はわかりますよ。でもそれは雑でザルな作りでいいってことじゃない、むしろより緻密で繊細な作劇が必要になるんですよ。ショルダータイトルの「戯作」が泣きますよ、植Gは腐っても植Gでやっぱりおもしろくないんだな、と痛感しました…今後も、大昔の大作の再演とかならまだアリなのかもしれませんが、でもホントもういいよ引退しようよ…と申し訳ありませんが思ってしまいました。
 ファンの方々が大満足で涙、涙で楽しく観ているなら、失礼いたしました。あと、組子には本当に勉強になっているんだろうから、それはもう最後まで食らいついて一生懸命学んで、今後の芸に生かしていってください。
 俺たちのルリハナカが子役も芸者役も素敵だったことには満足です。でも『マノン』で水乃ゆりちゃんのお役をやらせた方がハマったのでは、とも思ったかな…
 あとは子役ばっかりで正直なんとも…稀惺くんも抜擢ですが、このお役ではなんとも…ぴーの青天は美しかったですね。あとホントはるこのヒロインっぷりがとてもよかった、それにつきます。まあ相手役はゆうちゃんさんでしたけどね(笑)。
 イシちゃんはこのあとDSやってご卒業、かな? スカステの特番くらいはあるのかしら…大劇場の大階段を降りることもなくセレモニーもなく、それが本人の希望なんでしょうけれど寂しくはありますね。でもこれでやっとゆっくり、タモマミノルに合流できるのかな。
 そのダンディさ、ストイックさはやはり生徒たちの規範になり、劇団を支えてきたことでしょう。本当に長らくお疲れ様でした。


コメント (2)
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『コッパダン』を見て

2021年07月22日 | 日記
2019年JTBC、全22話。

 何故「韓流侃々諤々リターンズ」シリーズでないかと言えば、私が2001年から十年ほどハマって所有していた過去の韓ドラや韓国映画の見直しではなく、最近BSで放送されていたものを見た最近のドラマだから、です。
 いわゆるなんちゃって朝鮮時代、つまり架空の王様を立てた歴史ものふうのラブコメディです。
 コッパダンは漢字でいうと「花婆党」で、邦題というかサブタイトルが「恋する仲人」となっていて、主人公は結婚コンサルタントみたいなことを生業としている青年です。本来は『屋根ヴァ』のまさしくマッチメイカーみたいな、村の老婦人がやるようなことを、都でプロとして美青年3人がやっている、という設定です。
 キム・ミンジェ演じるマ・フンは両班の青年で、政府高官の次男坊ですが、何故か家を出てこんな仲人業をやっている、という主人公です。ベビーフェイスなタイプですが、キャラとしてはクールでビジネスライクなやり手で、あまり笑わないところがミソ。愛を信じているから、とか人を幸せにするために、とかでやっているのではなく、特に両班の婚姻はしたら最後簡単には解消できないものだからこそ、縁談が持ち上がったときには十分に吟味する必要がある…という考えのもとにやっているという設定です。彼がそう考えるに至った事情や父親との確執なんかも徐々に明かされ、ストーリーに関わっていきます。
 ヒロインはコン・スンヨン演じるケトン。天涯孤独で、でも口八丁手八丁の詐欺まがいでしぶとく生き抜いているような、明るく元気な娘です。ご近所さんみたいな、幼馴染みのボーイフレンドみたいなスと結婚することになってコッパダンと関わりができて、けれど結婚式当日にスがいなくなってしまい…というような展開。彼の行方を捜しながら、コッパダンの見習いを務め始めます。また、生き別れた兄を探していたりもします。回想場面からすると、彼女たち兄妹は人に追われるような、逆に言えば身分ある出自だったのかなと思うのだけれど、そのあたりは未回収でしたね…兄の方は逃亡生活によるショックのためかちょっと知恵遅れ気味になってしまい、奴碑に落とされていましたが、ケトンはただの庶民…なのかな? 私がこの時代の階級制度みたいなものにくわしくなくて、すみません。
 そのスはソ・ジフンが演じていて、市井の鍛冶屋として生きてきたけれど実は王の落とし子で、王の病死と皇太子の暗殺とで急に王宮に呼び戻されて王にさせられてしまう…という展開です。優しくてちょっとおどおどしたタイプ。でもケトンには本気だったので、連絡を取ろうとあれこれ手を尽くすのですが…
 セカンドヒロインはコ・ウォン演じるジファ。政府高官の娘で王妃候補とも目される、典型的な悪役令嬢です。父と家の名声のために政略結婚することも承知している、クールでクレバーでちょっと意地悪な美人さんです。
 フツーは韓ドラってこの4人で四角関係を作るものなので、ジファはフンと幼馴染みだったりジファがスに執着したりしそうなものですが、このドラマではジファはコッパダンのあとふたりのメンバーのうちのひとり、ピョン・ウソク演じるト・ジュンとひょんなことで出会い、惹かれ合っていくこと展開です。ジュンはモテモテのイケメンでいつも妓房に入り浸っていて、でもそこであらゆる情報を入手するというチャラ男実はクールガイという設定です。彼にも実家にまつわる過去があり、だからむしろ愛なんて信じていないし女性不信気味なのですが、ジファには惹かれてしまうわけですね。
 コッパダンのもうひとりのメンバー、コ・ヨンスはパク・ジファン。衣装や化粧にうるさく、フンに懐きケトンを毛嫌いする青年で、彼にもまた過去があるのでした。
 ケトンの兄がジファの家の使用人になっていて…というようなこともあり、この6人を中心に、フンの父とジファの父の政争が絡んで展開するラブコメでした。
 ケトンはいわゆるおてんばヒロインですが、元気でけなげでいじらしくキュートでチャーミング、やや寂しげな顔立ちも私の好みで、彼女に引っ張られて楽しく見ました。ただ、脚本自体は凡庸で、広げた風呂敷が最終回40分すぎても畳まれる気配を見せないので、ハラハラしましたね…そして結局ぐちゃっとまとめられただけだった(笑)。本当は父親たちの陰謀とか政権争いとか、皇太后の思惑とか、父と息子の確執とか父と娘の確執とか、王の親政とか、失恋の決着と新たな恋とか、名誉回復と求婚とか、あれこれいろいろ全部、上手く順番に片付けて正義は勝ち悪が罰され愛が実り大団円ハッピーエンド!…みたいな流れを組まなきゃいけなかったんですけど、ノープランだったのか下手すぎたのか放棄したのか…ま、韓ドラあるあるですな(^^;)。
 個人的には、せっかくなんちゃって王朝なんだし、ジファは王家の血を引いていることにして、ジファが女王になることにしちゃったっていいんじゃないの?とも思いました。せっかく、王妃というよりは王の相があるとまで言われているキャラなんだしさ…でも、スが王であることを引き受け、かつ皇太后と大臣たちの手から政治をきちんと取り戻そうとするところはよかったんですよね。それがケトンをあきらめることと上手くつながれば、より美しい流れだったのになあ…でも、ジファが王になっちゃうとスとケトンの身分差という障害は薄まっちゃってフンとケトンがくっつきにくくなるから、やはり難しいですね。でもジファが父親の科で身分が落ちちゃってるラストはちょっと承服しかねたので…それでジュンとの差が減るから、ってのはダメでしょ。ともに上がらなきゃダメでしょ!
 というわけで、もっと上手くまとまるストーリーにできたやろ!とは思うのだけれど、それでも全体としては楽しく見たので、まあ満足です。ラブコメとしてもベタですが、ちゃんとキュンキュンできましたしね。原作はネット小説なんだとか、そのあたりもあるあるですね。
 ケトンが両班の娘に扮するときの父親役の役者さんは、私が韓ドラを見ていた頃の人だと思うんだけどな…なんか見たことある気がしました。そしてこの人がケトンとその兄の父親の親友とかで、ケトンもやっぱり両班だったと発覚する、とかの展開があるのかなとか思っていたのにな…なかったな、それともカットされたのかな?
 なんにせよ、在宅勤務の傍ら、BSのドラマにもけっこう手を出している日々なのでした。
 オススメあったら教えてください!

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『羽世保スウィングボーイズ』

2021年07月18日 | 観劇記/タイトルさ行
 博多座、2021年7月16日16時(初日)、17日16時。

 九州のとある港湾都市・羽世保。どこからともなく太鼓の音が聞こえてくる。五代剛(博多華丸)率いる羽世保造船和太鼓部の面々が、第1回市民グランドフェスティバルに向けて稽古に明け暮れているのだ。入れ替わりでタップダンス部が稽古場に入ってくる。剛の同僚で、かつては上司でも合った伊沢涼介(天宮良)は労働組合長とタップダンス部のリーダーを務めており、剛と同じくグランドフェスティバルの予選に向けてレベルアップを考えていたのだ…
 作・演出/G2、美術/伊藤雅子、照明/高見和義、音楽監督/﨑久保吉啓。『めんたいぴりり』に始まる、博多華丸座長の博多座自主制作公演4作目。全2幕。

 『めんたい~』に続いて大空さんのご出演、福岡と大阪のみで東京公演はナシとのことなので、久々に飛行機で出動して参りました。綺麗になってからももう何度か行きましたが、福岡空港は地下鉄までの移動も本当にスムーズで、博多座はご存じのとおり地下鉄の駅直結ですので、雷雲などに遭うこともなくオンタイムで着けました。関西から新幹線で来る友とはホテルで待ち合わせしていたのに、駅でバッタリするミラクルも。さすがでした(^^)。
 ポスターでは、工員っぽい作業服のメンバーたちに混ざってひとり赤いドレス姿で、ジャズシンガーみたいな役どころなのかな?まあまた舞台に花を添えるような役まわりなのかしらん…とか思っていたのですが、どうしてどうして、がっつりヒロインポジションの役ではないですか! なんせ主人公の別れた妻の役です。でも確かにジャズシンガーの「チェリー・バード」(笑)としてまず登場します。そしてそれはあくまで趣味、夜の顔であるらしく、昼間の顔はなんと羽世保市長なのでした。設定盛りすぎやろ!(笑) ピンクの鱗模様のマーメイドラインのドレスで歌う姿も美しい…と思っていたら次の登場はストライプの入ったきりりとダークなパンツスーツ姿で、さらに実はタップダンスの名コーチでオシャレなモノトーンのトレーニングウェア姿も凜々しく、もう1曲歌うときには黒のドレスで背中も綺麗に開いていて(このときもヘアスタイル変えればいいのにー! 亜沙子は変装する意識はないんだろうけれど、単純にショーアップのためにも)…どのお衣装も素敵で、そしてとてもチャーミングなハンサムウーマンのお役でした。大満足!
 ネタバレですが、なんとついに孫がいる役でもありました。四十代半ばくらいの設定だとは思いますが、さすが地方は結婚が早い(笑)。全体に、昭和の世話物みたいな、でも不況の中の企業の買収云々みたいな部分の展開は『半沢直樹』みもあるお話でしたが、でもちゃんと現代、ちゃんと令和なのは、この大空さん演じる亜沙子と南沢奈央演じる美咲と、夢のために海外に雄飛する女性がふたりも描かれることです。たまたまなのかもしれませんが、私はけっこう感動しました。だから、もちろんそこまでの恋仲ではなかったというのもあるかもしれないけれど、男が俺は行けない、となって別れる恋なんかも描かれる。これもそこまでの重きを置かれていないエピソードにも見えましたが、意外になかなかない展開なので感心しました。そういうあたりの感覚が、男性作家のわりにG2さんはアップデートされているのかもしれません。
 あ、でも、亜沙子が母親だったにしては、栞(大場美奈)にも匡(中村浩大)に対してもかなりあっさりした態度だったので、オイオイそれって子供にしたらけっこう大事だぞ?とちょっと引っかかったので、単に全体にあまり何も考えていないで作っているだけなのかもしれません…
 ま、そういう、そこはかとなく漂う大味感はある舞台でしたが、そもそもこの座組自体が、役者11人、アイドルふたり、タップダンサー10人、太鼓奏者ふたり、バンドマン4人、芸人6人、そして市民参加ふたり…というものなのでした。なのでものすごくきっちりした、深いお芝居をがっつりやろう、というよりは、ミュージカルではないんだけれど歌とダンスがある、楽しい、観ていて元気になる、そして地元を元気するようなエンタメをやろう、というような企画なんだと思います。大空さんもそのあたりを意気に感じて参加しているのかもしれないし、みんながわりと台詞が棒だったりロレったり飛んだり掛け合いの間が悪かったりしても、まあ目がつぶれる程度のクオリティはあったと思うので、私は一応楽しく観ました。ただ、博多座ありきの演目だから言っても詮ないんでしょうが、ホントはもう少し小さい箱で緊密にアットホームにやってもいい作品だったかもしれませんね。私は博多座は宝塚歌劇の公演くらいでしか来ないので、その場合はいつも録音なんですが、今回は生バンドで音がとても良く、そもそもは歌舞伎とかグランドミュージカルに向いたハコなんですもんね。残念ながら客の入りがあまりかんばしくないこともあって、ちょっと大きすぎるように感じました。でも、アンサンブル含め普通の芝居にしては出演者が多い公演だから、やっぱりこれくらいでよかったのかな。タップの床も特別なものなんでしょうしね。
 これから好評が行き渡って、駆け込みでもチケットが売れていくといいなあ…
 それにしても舞台慣れしていない役者さんってのは、視線とか、台詞がないときの舞台の居方とかが不安定なんだなー、ともすごく感じました。それがまた観客を不安にさせるんですよね。華丸さんですら、相手としゃべっているときはいいんだけれど、客席方向に視線を向けてしゃべるときなんかは目が泳ぐし、顔が伏せ気味になるんですよね。もっと2階席をぐっと見つめる感じで顔を上げてほしいし、でも別に誰かを見るんじゃなくて上手く中空を見つめることができないと、舞台の上に幻の現実は立ち上げられないんだな、ということがよくわかりました。
 そしてラストは、ステージ衣装に着替えた匡のソロからのフィナーレだろう!とちょっと思いました(笑)。イヤあの法被も立派なお衣装なんでしょうし、作業服こそ正装だってのもあるんでしょうけれど、ラインナップも兼ねたわりとシンプルなものだったので、もうひと盛り上がり欲しかったかなーとは思っちゃいました。
 ところでプログラムがとてもお洒落で、内容も充実していたことも印象深かったです。
 福岡のお友達にもちょっと会えて、もつ鍋食べたり豚骨ラーメン食べたりもできて、大好きなクロッカンも買えて、楽しい遠征でした。さらには梅雨明け、嬉しいです。でもこれからますます暑くなりますね、みなさま感染予防対策とともに熱中症予防に、引き続きお気をつけてお過ごしください。私もがんばる…!






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『ハコヅメ』を読んで

2021年07月15日 | 日記
 先日、泰三子『ハコヅメ』(講談社モーニングKC)最新の17巻までと『別章 アンボックス』を読みました。

 私は「お話」が好きで(まあドキュメンタリーとかノンフィクションも好きですが)、それで漫画とか小説とか映画とか舞台とかを好きであれこれ読んだり見たりしています。テレビドラマも気がつく限りは第一話はひととおり見て、興味が持てたものを見続けるようにしています。でもハナから手を出さないのが警察・刑事ものと医療・医者もののドラマで、たいてい一話完結だし、お仕事・業界あるあるのエピソードを展開させつつも真ん中のドラマやストーリーは十年一日のごとくベタで、新鮮さや何よりおもしろみに欠ける単なるヒューマンなものになるに決まっている…という激しい思い込みが何故かあるからでした。でも同じタイプでもレストラン・料理ものは好きで見るので、それは私が食いしん坊だからだろうし、それから考えると犯罪とか病気にはありがたいことにあまり縁がなくてピンと来づらいからおもしろく思えなくて敬遠している…のかもしれません。一番好きなのは引き引きなタイプの恋愛もので、私はそういう意味ではやはり現実の恋愛には縁遠いのですが、それはそれとして根がナンパな人間なものでキャッキャウフフもドロドロメロメロも大好物なので、ついつい楽しく見てしまうのでした。
 それでいくと『ハコヅメ』はスルーでもおかしくなかったわけですが、確か婦警さんが主人公の漫画が原作なんだよね…?という程度の知識はあって、でも漫画が読めていなかったのでせめてドラマは見てみようかなと思ったのと、主役の女優さんはパッとわからなかったけど戸田恵梨香はなんせ俺たちの戸田恵梨香ですし、女性バディものみたいになるのかな?と思うと女好きとしての血が騒ぎ、録画予約してみたのでした。
 ただ、結局警察とか交番あるあるのエピソードを散りばめただけでベタなバディもの、ないしドジでノロマでカメなヒロインが奮闘し成長し…みたいなベタベタなドラマになるようだったら早々に脱落しよう、と考えていました。テレビドラマだといろいろ制約があって百合っぽくはならないんだろうしな…と、そこは期待もできませんでしたしね。
 そうしたら、なんせ家にテレビがないこともあってほとんどドラマというものを見ない我が親友が、珍しくこのドラマの話題をLINEしてきたのでした。原作漫画のファンだそうで、私もドラマは見るつもりとレスしたところ、すぐにコミックスが宅配版で一式送られてきて、貸してくれたのでした。彼女は私の漫画に対する選り好みの激しさや注文の多さを知っているので、「好みじゃないかもしれないけど…」と言っていましたが、私も彼女がそもそもドラマを見ないどころか漫画もそんなに読まないタイプなことを知っていたので、彼女の眼鏡に適うとはどんな作品なんだろう?とそそられたのでした。

 先に、ドラマ第一話を見ました。とてもよかったと思いました。
 まず、ドジでノロマでカメなヒロインが…ってタイプのお話にいかにもなりそうだけど意外とそうならない、というところがよかった。このパターンって実は若い女性そのものを馬鹿にしてますもんね。イヤもちろん新米男性刑事とかでもそういうノリのドラマはあるでしょうが、この流れの嚆矢たる『スチュワーデス物語』って要するに、フライトアテンダントと呼ばれるようになる前の、職業女性ものってことで、当時のことで仕方ないとはいえやはり女性蔑視が明らかに入っていますもんね。
 そして、どうやら単なるバディものでもなさそうだな、というところもよかったと思いました。警察官のペアはバディというよりは明らかに先輩・後輩ということのようでもあるし、戸田恵梨香の役の一癖ある感じがちょっと一線を画しているなと思いました。それでいうと共同で捜査に当たった男性刑事たちの役もそうで、三浦翔平なんか先日まで『あのキス』でも印象的だったけどまたタイプの違うイケメンでも残念そう、みたいな軽々と役をやっていていいな、と思ったり。テンポとか、コミカルさとシリアスさの塩梅とかも、ちょっとフツーじゃなくて、でもわざととんがるのを目指している感じもなくて、とにかく安易には作られていない感じがしました。この安易さって、視聴者にはすぐ伝わると思うんですよ。なのに未だけっこう安易にただ映像化しただけ、人気俳優並べただけ、みたいな作品ってけっこうあります。いやテレビ局もタイヘンなんだろけどさ。
 とにかく好感を持ちました。で、そこから原作コミックスを読み始めたのでした。

 漫画家さんは、実際に女性警察官だったそうですね。それで企画性を買われてデビューしたのかな? まあ、絵は別に上手くないです。青年漫画あるあるかもしれませんが。デッサンが怪しいところもあるし、人物は描き分けているんだけど漫画の絵としてこなれていないから結果的に見分けづらくなっている部分もある。ネームも特にセンスはないし(最近は「週刊少年ジャンプ」の漫画とかもそうだけど、この三方タチキリとかホント意味ないと私は思っていて、初めてタチキリを発明したと言われている手塚治虫大先生に謝れ!といつも思っています)、構図も上手くない。何故このコマにこの向きこのポーズのこの人物をここに描くんだ、意図がわからん…というところがすごく多いし、フキダシの位置とかが下手で読みづらかったり誰の台詞かわかりづらかったりすることも多い。台詞の書体を変えるのは普通は担当編集者の仕事で、そこをこだわってやっているんだろうとは思うし効果も出ているんだけれど、まずフキダシの位置を直すよう修正しろ指導しろ、とも思います。もちろん整えすぎるのもいいことばかりじゃないけれど、ちょっともったいないです。あと、連載開始から3年経ってるけどそんなに変化していないというか、あまり上手くなっていない気がします。これはちょっと残念かもしれません。
 でも、才能があると思います。作家性がある、というのかな。本場の経験を生かして、あるあるエピソードを散りばめて、お仕事もの・業界ものとしてもっとスマートに仕立てることもできたはずなのに、あえてそうしていないんですよね。というか、描きたかったものはそういうものじゃないんですよね。ドジでノロマでカメな新米婦警さんが奮闘し成長しなんなら恋もして世界を薔薇色に変えるいい話…なんかでは、全然、ない。とおりいっぺんのバディものや群像劇、社会派ヒューマンドラマでも、ない。
 描かれるキャラクターは、主人公も、そのペア長も、その同僚や上長たちも、全員、ホントにみんながみんな、一癖二癖どころかクセしかない曲者揃いで、そこにはもちろん特異な性癖すら含まれていて、一筋縄ではいかない豪の者揃いです。警察ものにありがちな単純な正義漢、熱血漢みたいなキャラもひとりとしていません。
 また、ペアもチームも別に美しい友情とかやる気とか使命感で結ばれたりは全然していないし、といってただシニカルでハードボイルドでニヒルで厭世的、というのとも違う。ただ、ヘンで、ナチュラル(笑)。クスッ、とかほろり、とかではなく、ムヒヒと失笑しちゃう感じ? 実際私は何度も声を殺して笑い、目はつぶっちゃうし身体が揺れるので読み進められない、というのを5ページごとくらいに繰り返していた印象です。ブハッと爆笑、っていうのとは違う笑いなんだよなあ…シュールでもあって、感情も読後感も全然綺麗に収まらない。フツーこうまとめるでしょ?ってところにいかない。でもあえて外して落としているのとも違う。その絶妙さ、斬新さ。才能だと思います。
 アロマンティックなのは、イマドキだからやっているというよりは、実際に警察ってこういう空気なのかな、とも思います。実際にはいろいろあって職場結婚が多い職業なのかもしれませんが、そう簡単に恋愛なんて生まれないよという感じは、この仕事の本当の過酷さを表しているようでもあるし、また恋愛への敬意をも内包していると私は思う。こういう作品は新鮮で貴重だと思います。
 ハコヅメのハコとは交番のことで、つまりハコヅメとは交番勤務のことですが、一方でスピンオフのタイトルはアンボックス…箱から出ることです。本編のサブキャラクターである女性警官がこのスピンオフでは主人公で、要するに彼女が警官をやめるお話です。それもすごい。またかなりシリアスなので本編に入れず別立てにした、という判断もすごい。なかなかできないことだと思いますし、ますます本編のノリは計算してやっているものだということがよくわかります。
 ドラマ第一話は、原作漫画のこのノリ、このテンポ感をとてもよく掬い上げて映像化していたんだな、と改めて感じました。愛と誠意とリスペクトを持ってドラマ化しているのがよくわかりました。今後、漫画のどのあたりのエピソードをどうドラマでやっていくのかな、楽しみです。
 そして原作漫画の方は今後どう進み、どう完結に至るのかな、とてもとても楽しみです。
 映像化きっかけで人気に火が点く漫画は多いけれど、ドラマ化だとドラマの放送が終われば一気に下火感が出るので、その後の販促展開が意外に難しいものなのです。長尺ものは残念ながら読者の自然減もなかなか止められませんしね。最新巻で主人公の未来が描かれたこともあり、また異動が多い職場だとも聞くし、そのあたりを汐に25巻前あたりで完結するとキレイなのかなー。そしてまた別の作品を描いていくだけの力が、ある作家さんだと思います。
 主人公はそのときも今と同じ名字で呼ばれていたけれど、独身なのか、旧姓使用なのか、夫が改姓してくれたのか、はたまたおそらく20年後くらいのことだろうから選択的夫婦別姓制度が成立しているのか…つい想いはせちゃいますね。女性作家による女性警官を主人公にした作品で、でも男職場で、そして青年漫画で、でもとても丁寧に描かれたフェミニズム作品でもあります。特に性犯罪を扱うエピソードのときはまさに圧巻だと思います。なかなかこうは描けません、うなりました。その意味が、読者のほとんどであろう男性にもちゃんと響いているといいなあ、と思います。それならきっと未来を、社会を、少しずつでもよくしていけるはずだから。
 ドラマを見守り、漫画は完結したときにまた一気読みしたいです。先の楽しみがまたひとつ、できました。

 ところで、学校でみっちり勉強するところや、同期の絆、一個上や一個下との上下関係を確立する感じが、音校と同じやん、とか思えました(笑)。チームワークで仕事をする組織はにはこういうことが基礎として必要なのかもしれませんね。そういえば一コマだけど宝塚ネタもありました(笑)。女性はみんな、強く正しくたくましく、そして朗らかに、がんばっていってほしいものです…!(男性は男性でケアしてください)





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