駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『スカーレット・ピンパーネル』

2016年10月30日 | 観劇記/タイトルさ行
 赤坂ACTシアター、2016年10月26日13時半(赤坂千秋楽)。

 1789年、王政への不満を爆発させた民衆が蜂起し、フランス革命が勃発。その後、ロベスピエール(この日は平方元基。プリンス・オブ・ウェールズと二役)を指導者とするジャコバン党が権力を振りかざし、元貴族らが次々と処刑される恐怖政治が続いた。混乱の中、無実の人々を断頭台から救おうと立ち上がったのは、イギリスの貴族パーシー・ブレイクニー(石丸幹二)。彼は仲間と共にピンパーネル団を結成し、知恵を絞った救出作戦を秘密裏に敢行。その活躍ぶりは瞬く間に広まったが、女優を引退しパーシーの妻になったマルグリット(安蘭けい)でさえも正体を知らず、いつしか夫婦の間に大きな溝が生じていた…
 原作/バロネス・オルツィ、脚本・作詞/ナン・ナイトン、作曲/フランク・ワイルドホーン、編曲/キム・シェーンベルグ、訳詞・翻訳・潤色/木内宏昌、潤色・演出/ガブリエル・バリー。1997年ブロードウェイ初演、2008年に宝塚歌劇団星組にて日本初上演されたミュージカルの、ブロードウェイ版脚本・演出をベースに今回用に作られた舞台。宝塚版用に書き下ろされた「A Piece of Courage(ひとかけらの勇気)」も取り入れられる他、新曲二曲が追加されている。全2幕。

 宝塚歌劇での初演星組感想はこちら、再演月組感想はこちら。私が初めて生で観た新公は月『スカピン』東京で、そのときの感想はこちら
 宝塚歌劇が輸入・翻案・上演している海外ミュージカルの中では私はかなり好きです。たとえば『エリザ』なんかより全然おもしろいと思っています。
 なので見比べてみたかったので、お友達に声かけていただいて赤坂千秋楽に滑り込んできました。いやー、楽しかった!
 歌詞や曲の位置なんかはちょいちょい違うのですが、舞台装置のイメージとか話の展開とかはけっこうまんまなので、「おお、そうきたか」とか「ここはこうなったか」とかいろいろ思いつつも、基本的にはイケコはもともとのブロードウェイ版にかなり準拠して作っていたんだな、ということが察せられました。でも宝塚版のために役を増やしたり、後半のストーリーをかなり改変しているのはおもしろい。そして冒頭にスカピン団が貴族をギロチンから救うエピソードを足してパーシーに早速「ひとかけらの勇気」を歌わせているのは、男役トップスターの登場を早めるためでもあるし主人公を強く印象付けるためでもある。正しい。
 こちらは幕に映る影絵を別にすれば、マルグリットがコメディ・フランセーズで歌う場面から始まっているので、主人公よりも先にヒロインが歌う形になっちゃっているし、その主人公は舞台の端っこ、マルグリットの舞台の客席で手を振る一観客として登場するので、ちょっとキャラクターがつかみづらいかなと思いました。まあダンスたくさんのミュージカルというよりは歌メインのオペレッタふうではある作品だから、プリマドンナが最初に大ナンバーを歌ってもいいのかもしれませんが。
 さて、このパーシーはこの段階ではスカピン活動をしていないのですよね。となるとマルグリットとの出会いや、ふたりの恋はどんな感じで始まったんでしょうね? わずか6週間のおつきあいで結婚に至った、火花のような恋…みたいな表現になっている気はしましたが、ふたりとも外見も役作りも歳相応、つまり恋に恋する十代後半か二十代前半の若者、みたいな設定ではない、いい大人なはずなので、ちょっとナゾ。つまりパーシーはスカピン活動の目くらましとして極楽蜻蛉をやっているわけではなく、なんの理由もなく極楽蜻蛉なようなので、マルグリットは彼のどこがよかったの?とはショーヴラン(石井一孝)ならずともちょっと言いたくなってしまうのでした。
 ただ、サン・シール侯爵(田村雄一)の救出失敗からスカピン団結成に至る流れは悪くなかったな、と思いました。あと、ふたりがいい歳ながらも結婚初夜まではベッドを共にしていないことと、逆にマルグリットとショーヴランとの間には過去に肉体関係がきちんとあったことが明示されているのもいいなと思いました。というか、その方が自然ですよね。マルグリットは貴族の子女ではないから、結婚までは処女でないと…みたいな育てられ方はしていなかったのでしょう。そして革命の熱に浮かされただけなのだとしても、ショーヴランとは一時期はちゃんと恋人同士で、やることはやっていた。パーシーだってもちろん経験はあるんだろうけれど、結婚するとなった女性には結婚式前は手を出さなかった。で、そのままになってしまった。
 男はすぐ「おまえはあの女とまだやってないんだろう?(俺はやったぞ)」みたいなことを言いたがりますよね、もうニヤニヤしてしまいました。宝塚版では当然カットで、それはスミレコード云々よりはこんな男性のいじましさは宝塚歌劇の世界には不要だからだと私は解釈していますが、ショーヴランがただのストーカーに見えちゃうのはかわいそうだとは思っていて、マルグリットとちゃんと恋仲だったことは提示すべきだと思っていたんですよね。それは別にヒロインの格を下げることではないのだから。だから今回、ショーヴランの元カレ感が増して見えたことには賛成だし、より萌えたのでした。
 あとは、マリー(則松亜海)の婚約者は別にいてアルマン(矢崎広)とは違うこと、にもかかわらずアルマンのちょっと情けないキャラクターは健在なこと(私はアルマンが大好きなのです!)、そのマリーの婚約者がタッソーで彼女がのちのマダム・タッソーになることはちょっとおもしろかったです。そして後半の、というか全体のストーリー展開のメインの軸はルイ・シャルル王太子の救出劇ではなくアルマンの救出劇になっているんですね。ま、やってることは変わらないんですけど(^^;)。
 ロベスピエールは今回新曲をもらっていたようですが、これは来年の星組版でかいちゃんが歌うのかなあ。主な配役に上げられているのだから、役のポジションが多少上がるのでしょうね。ウェールズ公と二役、というのはいい皮肉でいいなと思いました。これは宝塚版では生徒にたくさんの役を与えるために別々のままだと思いますが。
 フィナーレはありませんでしたが、休憩込みたっぷり三時間、楽しかったです。ラインナップでマルグリットが劇中でも着ていなかった真紅のドレスで現われたときには、ちょっと笑ってしまいました。さすがヒロイン、さすがトウコさん!とも思ったのですが、よくよく考えたらこれは、彼女もこれでスカピン団の一員、以後みんなとともに活躍していくのだ、ということを示した紅はこべ色のドレス、なのかしらん?
 マルグリットが「ひとかけらの勇気」(今回のタイトルは「悲惨な世界のために」)のリプライズを歌うのは、トウコさん故のサービスなのかなあ? ブロードウェイ版にもあるのかな? あと私はアルマンが大好きだし姉弟萌えがあるのですが、マルグリットとアルマンが「あなたこそ我が家」(今回は「あなたは我が家」)のリプライズを歌っちゃうのはおもしろすぎました。イヤ大事な家族だからいいんだけどね?
 聴き慣れたナンバーはどれも男声が加わって音域が広く豊かになり、音楽的に素晴らしさ倍増になっていました。ここは男女混声の強みだなあ。もちろん声量や歌唱力ということでも宝塚歌劇団とは段違いで、聴いていて単純に楽しかったです。ダンスはほとんどないので、ミュージカルとしてのショーアップはやはり宝塚版に軍配が上がるかな。でも、娯楽大作として今後も広く愛され続ける作品になっていくといいな、と思いました。

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宝塚歌劇星組『桜華に舞え/ロマンス!!』

2016年10月29日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2016年9月3日15時。
 東京宝塚劇場、2016年10月25日18時半。

 黒船が来航し、異国を排斥しようとする攘夷の気運が日本全国で高まり始めていたころ、雄大な桜島を望む薩摩の吉野に生まれ育った中村半次郎(後の桐野利秋。北翔海莉)は幼馴染の衣波隼太郎(紅ゆずる)と共に、京で刀を振るう日を夢見て剣術の稽古に明け暮れていた。ある時、縁あって薩摩の英傑・西郷吉之介(後の隆盛。美城れん)と対面する機会を得た半次郎は、攘夷を成し遂げるために京に行きたいと直訴するが…
 作・演出/齋藤吉正、作曲・編曲/青木朝子。みちふうサヨナラ公演。

 問題点はふたつだけ。
 まず第一に、鹿児島弁がものすごすぎて台詞が6割くらいしかわかりません、これは大問題だと思います。脳内でいちいち標準語に訳すタイムロスが強いられ、観客が登場人物に感情移入したり気持ちがお話に乗っていく妨げになっています。もっとずっと減らして、語尾に特徴的な訛りが出るとかイントネーションがそれっぽいとかだけで十分です。そうした方が、「泣こかい? 飛ぼかい? 泣こよか、ひっ飛べ!」(だっけ?)というキーワードも効いてきたはずです。今の世の中のメジャー商業演劇で全編オール鹿児島弁でいこうなんて、演出家と役者の自己満足にすぎませんよ。みっちゃんなら齋藤くんを止められたのでは?と思うと残念です。
 感情的な流れがある場面は演技の助けもあって類推しやすいけれど、政治的な話を鹿児島弁でされると完全に理解が追いつかなくなり、それでストーリーからおいていかれた観客も多いはずです。多少の西南戦争に関する知識がないと、何故みっちゃんとベニー、かいちゃんたちが対立するはめになったのか、故郷に帰った彼らが追い詰められるように立ち上がらざるをえなかったのか、事情がサッパリわからず、それで上手く泣けなかった、という観客は意外に多いです。これは問題ですよ。同郷で幼馴染で同志で仲間だった彼らが、いかに対立せざるをえなくなり、それでも心はひとつで、それでも戦い一方は散るしかなかった、そこにこそドラマがあり泣かせどころがあり物語の主眼があったはずなのですから。猛省を促したいです。
 第二に、冒頭で何度も時系列が逆転する構成は、もう一声整理できたはずです。なんでもかんでも起きた順に説明するのは芸がない気がする、だからアバンを置きたくなる、それはわかります。でも二度も三度も話を行ったり来たりさせることは、ついていけずにこぼれる観客を少なからず生み出します。しかも場所まで変わっています。もっと観客に親切な舞台つくりを心がけるべきです。まずわかりやすく、その上でおもしろく、を心がけていただきたいです。
 逆にそれ以外は、本当によくで来た作品だと思いました。「サヨナラ公演に名作なし」と言われる宝塚歌劇ですが、最近だとちえねねの『黒豹の如く』とかまゆたんの『ラスト・タイクーン』とかテルの『白夜の誓い』は本当につらかったよね…きりまりの『エドワード8世』は私は好きでしたが、地味だと言う人も多いことでしょう。まさおの『NOBUNAGA』も評価が分かれるところかな? えりあゆの『前田慶二』はよかったかもしれませんね、そのレベルの仕上がりだったのではないでしょうか。
 確かにみちふう大ロマンス!とかではなかったけれど、ちゃんとラブはあったし、ラストのふうちゃんとあいーりの場面は私は近年出色の名場面なのではないかと思いました。そのあいーりも元々はベニーと恋仲で…というのもよかった。はるこやあんるちゃんも素晴らしかった。
 役がたくさんあって、組ファンやリピーターも楽しめたでしょうし、そんなに回数観ない人にもポイントはわかって、よかったと思いました。ドラマの筋も複数あり、まこっちゃんときーちゃんの線もとてもよかったです。
 個人的には、東西一回ずつしか観なかったのだけれど、まおくんの爺芸が上手くなっていたのに衝撃を受けました。まおとかなこは一生上手くならないんだと思っていましたよ…!(失礼すぎてすみません)ポジション的はに下げられてきているんだと思うのだけれど(ポコちゃんが学年どおり上げられてきている、といいますか)、いい戦力になってくれたらいいなあと思います。
 ここにくらっち投入か、おもしろいよね。新生星組も楽しみです。

 ロマンチック・レビューは作・演出/岡田敬二。
 手拍子がそぐわないゆったりした主題歌もゆかしく、デジャブ感がありまくりのパステルカラーのお衣装と娘役のお帽子も愛らしく、大階段から始まる構成はやはり華やかで、男役群舞にひとり混じってバリバリ踊るふうちゃんがかっこよくて、間奏曲含め全場面を堪能しました。ふうちゃんの「アモーレ・スクザミ」の銀橋渡りはドレスを着せてよ…!と思いましたが。
 次期トップコンビのベニーあいーりを「アイラブレビュー」で見せるのも、私は素敵だなと思いました。
 エトワールは華鳥礼良、久々に正しい歌姫の使われ方でこれも好印象でした。
 スターの使われ方は、たとえばみっちゃんにベニーまこっちゃんかいちゃん、次にポコまおとせおしど、とずっと同じというのはあるんだけれど、組ファンでないならそこくらいまでしか把握できないし十分かなーという気もしました。だがあやなの色気はヤバいと私は思う…ぴーすけはまだ大丈夫です(何が)。
 パレードでセンター降りしたさやかさんへの大きな拍手が印象的な公演でした。私は早めに見納めてしまいましたが、ご卒業おめでとうございました。





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ハンナ・ジェイミスン『ガール・セヴン』(文春文庫)

2016年10月24日 | 乱読記/書名か行
 石田清美、21歳は家族を何者かに惨殺され、ロンドンの底で生きている。そこに飄々とした殺し屋のマークがやってきた。君の家族を殺した人間を探してみようか、と彼は言うが…暗黒街からの脱出を願うヒロインの必死の苦闘を描ききる、女子が女子を書いたノワール。

 若くしてデビューした女性作家の第二作で、デビュー作もその若書きが評価されたようなところがあったようなのですが…いつおもしろくなるのかな?と思いながら最後まで読みました。
 別にヒロインがコールガールの仕事をしようが上司と不倫しようが実はレズビアンだろうがなりゆきで人を殺そうが、それはかまわないと思うのです。そういう事情があれば私もそうするかも、とか、そうしちゃうヒロインの気持ちもわかるわ、とか読者に思わせられるよう描けていれば。
 でもそうなっていない。ノワールだからクールで説明のない文体でいいんだ、ってことなのかもしれませんが、ヒロインの感じ方や考え方が支離滅裂にしか思えず、これでは読者は共感も感情移入もできません。ただの見知らぬサイコパスの話になっちゃっています。
 あげく、ヒロインの家族が殺された事情が明かされるわけでもなく、東京の「彼女」との過去や経緯が語られるわけでもなく、ヒロインがプロの殺し屋になることになっておしまい、ってなんじゃそりゃ、でした…
 あ、でもせめて、「女子による女子のためのノワール」なんてキャッチにせず、「ラノベだよ」って言ってくれたらよかったんだと思います。そういう見方で読めば、主人公や世界観に読者を馴れ合わせようとしない感じ、要するに中二の作家が書く中二の物語、ってことで、そういうものだと許容して読みやすかったはずだからです。実際、本国ではそういう捉えられ方をしているんじゃないの? ヤングアダルト小説なんじゃないの?
 なら納得だし、そういうふうに読みたかったな、そうできていたら意外と楽しく読んだろうな、と思いました。残念。




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宝塚歌劇月組『FALSTAFF』

2016年10月22日 | 観劇記/タイトルは行
 宝塚バウホール、2016年10月18日11時。

 イングランド・ヘンリー四世の御代。ロンドン、イーストチープにある居酒屋兼宿屋「ボアーズ・ヘッド」には一日の労働を終えた市井の男女が集まっている。そこに現れたのは騎士サー・ジョン・フォルスタッフ(星条海斗)、ペテン師で放蕩無頼の悪党と罵られているが、本人は人目を気にせず欲望のままに生きているだけだと豪語している。イングランドの皇太子ハリー王子(暁千星)は時に警句を吐く人間味あふれたフォルスタッフに惹かれ共に放蕩三昧の日々を送っていたが、父王が崩御したとの知らせを受け、王位を継承しフォルスタッフに国外追放を命じる。自由気ままにいきることは我が天職、と国をあとにしたフォルスタッフだったが…
 作・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治、植田浩徳。サブタイトルは「ロミオとジュリエットの物語に飛び込んだフォルスタッフ」、『ヘンリー四世』や『ウィンザーの陽気な女房たち』に登場するフォルスタッフを主人公にした、専科の星条海斗の初主演作。全2幕。

 一幕は…退屈しました。というかそもそも私はシェイクスピア作品があまり好きではないのです。詩的な台詞を楽しむ教養がないので、登場人物の行動や心情に現代的なリアリティが感じられないことがつらく、物語のつじつまが合わないこともつらいのです。イントロ場面はまあフツーでしたがマギーの大仰な演技がつらく(そういうキャラクターだから、なんだろうけれど)、舞台がヴェローナの『ロミジュリ』世界になってからはけっこう戯曲の台詞が長々展開されるので、生徒が上手いとか下手とかキャラクターとしてどうとかいう以前にとにかく私にはつらかったのです。普通の人間がこんなふうにしゃべることはありえないわけで、何を鑑賞したらいいのかよくわからなくなってしまうし、この台詞にともなう演技のリアリティはどこらへんのものが正しいのか判断がつかず、コミカルな展開になっても上手く笑えないのです。軸が、スタンダードがどこなのかわからないからです。
 フォルスタッフが仮面舞踏会でロミオ(暁千星の二役)と共にジュリエット(美園さくら)を見初めて可愛い子だなと舞い上がり、バルコニーでジュリエットがロミオにする告白を自分へのものだと勘違いし…という発想、展開自体はおもしろいと思うのです。でもこのワンアイディアだけなんだよね、要するに。
 その後もティボルト(宇月颯)とマキューシオ(蓮つかさ)の決闘やロミオの追放はあるにせよ、元のままの悲劇では終わらせないだろうと思っていたら、フォルスタッフが呑み屋で薬屋(汝鳥伶)の薬をごちゃまぜにしてみせたのでそこでもうオチがわかりましたが、まあ二幕は短かったし冒頭のプロコフィエフで踊るありちゃんが素敵だったから、まあよかったかな。
 なので、ありちゃんがのびのび楽しそうにやっていて歌もホントに危なげなくなっていたしバリバリ踊っていて素晴らしくて、さくさくが可愛くていじらしくて、としちゃんがカッコよくてれんこんがとにかく達者ではーちゃんが歌バンバンもらってて、生徒はみんなキラキラがんばっていたので、もうそれでいいか、という感じでした。
 作品としては凡作ってことです。というか手抜き感が見える。もうちょっと練って、手をかけて作っていただきたかったです。音楽は、谷先生はオペレッタづいてるよね、ってのと、おそらくわざとだ思うのですがマギーに与えたソロが古風な陰コーラスのバンバン入るご大層な吉崎メロディの曲で、壮大さがかえって悲しく笑える始末で、組のもう一方が現代的なフレンチロック・ミュージカルで大健闘しているだけに、国産のミュージカルってホントなかなかいいものができてこないよなあ…と寂しくなりました(宝塚歌劇にそれを求めてもせんないのかもしれませんが…ミュージカルの作曲を志す人はどこで仕事をしているんだろう…?)。
  
 マギーはマギーらしくてよかったかと思います。初主演おめでとうございます。るうちゃんは渋い、すーちゃんも手堅い、ひびきちも素敵。みくちゃんはこれで卒業か、寂しいな。ぐっさんやるねっこやぎりぎり、あちくんは…きっちり仕事していたけれど、まあ役不足だしやりようがないよね。
 セットも『こうもり』を思わせました。谷先生もぼちぼちくたびれてきているのかな…脚本家に新しい才能の出現が待たれます。
 太古腹の老人に限定する必要はないと思うので、アイディア自体はすごくおもしろいと思うんですよね。だからもっとがんばってちゃんと作ればよかったのに…れんこんの扱いが重かったことだけは評価したいわ。劇団はるねっこの方を押しているのかなとも思っていたので、これは嬉しかったです。ただ『グラホ』新公主演が来るかどうかは微妙かなあ…男爵、できると思うんだけど、るねっこ男爵にれんこんオットー、ときそうな気がする…しくしく。
 月組はホント芝居ができるいい子が多いいい組なので、『アーサー王』組と合流する本公演も楽しみですし、その前のBSWもどうやってくるか楽しみです。期待しかない!

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宝塚歌劇宙組『エリザベート』

2016年10月21日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2016年7月22日15時(初日)、23日11時、24日11時、31日11時、8月7日11時、9日13時、18時(新公)、13日11時、15時、14日11時、15時、15日13時、20日11時、21日15時、22日13時(千秋楽)。
 東京宝塚劇場、9月9日15時半(初日)、10日11時、17日11時、18日15時半、19日15時半、21日15時半、10月1日11時、8日11時、12日18時半、16日15時半(千秋楽)。

 オーストリー=ハンガリー帝国の皇妃エリザベート(実咲凜音)暗殺事件から100年あまり、煉獄の裁判所では今もなお実行犯ルイジ・ルキーニ(愛月ひかる)の裁判が続いている。皇后本人が死を望んだのだ、エリザベート殺害の理由を問われてそう答えるルキーニ。彼は死した者たちの魂を呼び起こし、エリザベートが辿った数奇な運命について証言させる。彼女は何を求め、何を愛したのか? その答えを知る証人として、深い闇の中から黄泉の世界に君臨する帝王トート(朝夏まなと)が現われる…
 脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ、音楽/シルヴェスター・リーヴァイ、潤色・演出/小池修一郎、演出/小柳奈穂子、翻訳/黒崎勇。1992年ウィーン初演、96年宝塚歌劇雪組で日本初演したミュージカルの、9度目の再演。全2幕。

 大劇場公演時の感想はこちら
 東京の役替わりは大劇場と逆で、A,B,Cの順。Aパターンは、大劇場からそんなに間は開いていませんでしたが、あっきールドルフはより繊細ではかなげな印象になった気がしました。贅沢を言えばあっきールドルフにずんちゃんエルマー、という組み合わせが観たかったなーとかも思いました。主に歌の点で、です。
 Bパターンは一度しか観られませんでしたが、ルドルフを経てあっきーシュテファンが若返って見えて、なかなかおもしろかったです。りくルドルフはあいかわらず甘く優しく、本当にいじらしいんだけど、残念ながらやはり歌が弱いままだったかなと思いました。音程が不確か、とかではないんだけど、不安定に聞こえがちな歌い方、喉の使い方、なんですよね…なんなんでしょうね、あれは。もったいない、でもりく好きだよりく。
 Cパターンのあっきーエルマーはすごくギラギラガツガツしたリーダーになっていて、刮目させられました。一幕のころは理想に燃えてキラキラした若者で、旗を投げ捨てる悲痛な嘆きもそのままで、でも大劇場のころにあった負け戦感満々な空気はなくて、拳銃を見つめる表情にすでに狂気がほの見えるようなすごみが加わっていて。二幕のイケオジっぷりは変わらず、でも長い活動に疲れた悲哀すら漂い色気が増し、若い皇太子を利用してやろうという野心すら見え…ゾクゾクしました。りんきらツェップスに肩貸されてハケていくの、ホント萌えましたよね!(だいなしな感想)彼らを拾って介抱する市民の女Sになりたい。フィナーレのシケもたまらん!
 そしてずんちゃんルドルフは大劇場よりずっと弱さを見せるようになった気がしました。他のふたりのルドルフを見て、一番間が開いて一番変化できるのがずんちゃんだったろうし、ずんちゃんが一番大変だったかもしれませんね。私が観た中では千秋楽が一番よかったです。拳銃自殺の直前に観念したように目をつぶるのに胸つかれました。みんな進化するんだよなあ、すごいなあ。
 まどか子ルドがまたホントにみんなに寄せてきていて大劇場とそれぞれ全然違っていて、素晴らしかったです。
 あとは…もう日々つぶやいてしまってけっこう満足しちゃっていて、まとまった感想が上手く書けないのですが…まいあたんが好きで女官とか披露宴とか世界の美女とかいっつも見てました。あとららたんも大好き、娼婦のときの右太腿の裏のホクロね! 素晴らしいね!! エビちゃんの家庭教師の権高さを愛し、もあちゃんスターレイの泣きの演技の深まりに涙しました。ゆいちゃんのマデレーネはまとう空気が大劇場と変わったーてより妖艶になった気がしましたし、ゆみちゃんのヘレネは幸せを祈らずにはいられませんでした。あおいちゃん、せーこ、きゃのんの手堅さも素晴らしかった。そしてもちろんゆうりちゃんの怖ろしいまでの美貌ね!
 黒天使たちをがんばって識別しようとガン見し、コミカルなオヤジ度を増す大臣たちににまにまし、あきもと琥南くんの侍従に目を細め、まりなのヤブ医者っぷりにニヤニヤし、かなこジュラの台詞の上手くならなさに歯噛みしました。あんなに美しいのにな…! もえこのエーヤンの歌手は聴くばかりで最後まであまり見られませんでした、すまん。ブルーレイで見ますね。あとモンチね、素晴らしかったよね!
 愛ちゃんルキーニはどんどんくたびれていき怪しさを増し、ゆりかフランツは優しさと朴訥さにますます磨きをかけていったようでした。ふたりともチャレンジな役どころだったと思うのだけれど、ものすごく躍進したと思います。
 そして千秋楽、いつも一定の仕上がりを見せるみりおんシシィがさすがいろいろ感極まっていて、「私だけに」では涙が光り、ラストの昇天場面でもなんとも言えない表情をしていたのが印象深かったです。
 そしてまぁ様が、東京ではシシィの居室での手つきを変えたり「最後のダンス」の歌い方を変えたり、常により良きもの目指して突っ走っていて、そうした進化を重ねたからこその千秋楽のご挨拶での「今の宙組による『エリザベート』が、今日、完成しました」だったのだろうなあと、感慨深かったです。プレッシャーもあったことでしょう、でも見事やり遂げてくださいました!
 フィナーレの「闇広」群舞ハケ際に盛大なリップ音つきで投げキスして引っ込んだこと、デュエダン後の銀橋挨拶のあとみりおんに投げキスしたこと、劇場中がヒューヒューキャーキャーしたこと、忘れられません。よっ、千両役者!
 日本上演20年、初日が900回で前楽が1000回、メモリアルな公演になりました。エリザ本も発売され、歴史に名を残した公演となりました。なんだかんだ言って結局は楽しく通いました、ありがとうございました。

 さて、ついでに久々に澄輝日記など。
 会活動については基本的にはネットに上げるべきものではないと承知しているのですが、個人の体験・感想としてごくいくつかのことだけ。だってホントーに楽しいんですよ!
 いつも会員みんなしておんなじテンションでキャッキャウフフしてて。威張る人とかエラそうな人がいなくて常にウェルカムでフレンドリーで。ギャラリーもよく「澄輝さんっていっつもニコニコしてて優しそうねえ、会の人もいっつも楽しそうねえ」ってささやいてくださっているのが聞こえます。
 会って生徒に似るんでしょうね。私は今は、こんな私でもある自分の中の優しくてゆるい部分が最大限ら引き出されているように感じます(^^;)。そういう優しさ、あるいはある種のゆるさ・ぬるさでは物足りないという、ワタシは特別扱いされたいの!貢ぐから見返りが欲しいのよ!みたいな人はいつのまにか更新しなくなっちゃったりして、残る人しか残っていないんじゃないかな、とも思います。だから、古参だからと威張る人がいない。で、こういうのほほんとした空気、雰囲気の良さが伝わって、ありがたいことにじりじりジリジリ新規会員さんが増えて行ってくれているようです。イヤ足掛け3年程度しか見ていない人間がエラそうにすみませんが。でもお茶会とか、前回は埋まるかヒヤヒヤした会場が、今回はなんとシアターでしたからね! ルドルフ効果かもしれないけど嬉しかったよね盛大にガヤったよね!!
 大劇場千秋楽ガードが解散するとき、みんなで「お疲れさまでしたー」ってなって、そのとき会員さんのどなたかが「スタッフさんも1か月お疲れさまでしたね!」って言って、みんなでスタッフさんに拍手したんですよ。なんかすごくほっこりしました。
 東京公演中にも、くわしくは避けますが、楽屋出待ちの際に「おやすみなさいルドルフ」イベントなるものがあったとき、あいにくの雨で、生徒はルドルフ仕様のレインコートを着て出てきてくれてみんな大喜びだったんですけれど、またまたガード解散時にそのレインコートがスタッフさんの徹夜の労作であることが明かされて、そしたらまたみんなで拍手して口々にお礼を言ったんです。すごくいいよなあたたかいよな、と思いました。
 東京の大千秋楽でもみんなでスタッフさんに拍手して、でもすぐまた集合日、全国ツアーですからね!全国でお待ちしていますからね!ってなって、大笑いのうちに解散になりました。おかげさまで本当に日々楽しかったです、ここで言ってもなんですが本当に感謝しています。それぞれ参加の頻度の違いはあるにせよ、みんなで一緒に好きな人を応援できていることが幸せでなりません。

 で、次は『バレンシアの熱い花』ですよ! ロドリーゴですよ!!
 私は初演は映像でも観たことがなくて、宙組タニウメお披露目で再演したときも生では観劇していません(タニもウメも実は苦手でした…ウメちゃんは今はいい女優さんだなと思うのですが)。のちにスカステの映像で役替わりは2パターンとも見たかな。みーちゃん主演の新公も映像は見ました。全国ツアー版は映像にはなっていないんですよね? これは見ていないと思います。
 初演と再演ではスター構成がけっこう違っていたのでわりと大きな変更があった、と聞きますが、どうなんでしょうね。そして今回はどうなんでしょうね?
 前回はまゆたんとみっちゃんでロドリーゴとラモンを役替わりしたワケですが、映像で作品を鑑賞する限りでは私個人はどう考えてもロドリーゴの方が大きい役だと思っていました(そして残念ながらふたりともあまりニンではない…)。というかおいしい役のように見えます。ラモンの方がヒロインのイサベルと絡むのだけれど、それでも、ね。単純にこういうタイプの二枚目の方が私のツボだ、ということもあります。
 だから今回の演目発表時に、まだ振り分けは出ていなかったと思うけれど、イシちゃんのバウに二番手格で呼ばれることがあるとすればそれはそれで大きなチャンスだし嬉しいけれど、全ツ組ならロドリーゴがいい!ロドリーゴ役が観たい!!と激しく思いました。
 少なくともラモン役は空回りしそうで怖い…というのもあったかな。『Shakespeare』のパリス(ホープ)なんかはチャーミングだったけれど、私個人が笑いに厳しいタイプなので、贔屓が笑いで滑るところとかあまり見たくないのですよね…と滑ること前提なのかよという毎度贔屓をまったく信用していない発言かましてすみません。
 そんなこんなでいたら、順番はどうだったかな? 振り分けと主な配役が同時に出たんでしたっけ? フェルナンドがまぁ様なのは当然で、ヒロインのイサベラがゆうりちゃんってのがすごく嬉しくて、そしてゆりかラモンってのが意外で、マルガリータまどかまでが発表されたのにロドリーゴもシルヴィアも配役が出ないという不思議な事態にちょっととまどいました。で、なんらかの組替え新キャストとかありえるのかな、いやロドリーゴは上げ上げのもえこってこともありえるかな、りくくんもいるしな、悪役のルカノールになってもいいチャレンジになるかもしれないけれど意外と出番が少ないんだよな…とか悶々としていたら、『エリザベート』東京千秋楽を待たずしてその他の配役が発表されました。で、ロドリーゴでした!
 東京Cパターンのギラギラ度が増したエルマーを観たときには、「やっと悪役ができるレベルに来たかな」とかエラそうなことを思ったものでしたが、でもやっぱりロドリーゴで嬉しいです! ギラギラガツガツの芝居ができるようになったからこそ、逆にただただ美しい、スカした二枚目の、悩める白皙の美青年を演じる…ってのもいいんじゃなかろうか、と思うのですよ!
 以下、ネタバレで語ります。作品を未見で、オチを知りたくないという方はご遠慮くださいませ。
 私は柴田スキーですし、この作品もクラシカルだなと思いますがすごく好きです。ただタニは歌以上に芝居が棒だったと私は思っているので、タニのフェルナンドでは「なんじゃこりゃ」感があったろうな、と思うのです。そこをまぁ様がさわやかに、説得力ある温かい芝居をしてくれるものと期待しています。
 フェルナンドは父親を陥れたルカノールに復讐するために、まず彼の目をくらますために軍人を辞めて遊び人の振りをすることにします。ロドリーゴは彼の友人、同じ貴族で軍人で…みたいな感じかな? フェルナンドが本来あるべき姿をそのまま貫いているような存在になります。生真面目な美青年。
 なのに、細かい経緯は忘れてしまいましたが、元カノのシルヴィアを叔父のルカノールに奪われてしまうのです。ルカノールはフェルナンドのときと同様にシルヴィアの父親を陥れ、シルヴィアは借金の形にルカノールの後妻に収まらざるをえなかった、みたいな経緯です。そのときロドリーゴは戦地にいたかなんかでそのことを知らなくて、帰国したら恋人が叔父の妻になっていて愕然、みたいな流れ。
 つまりルカノールは気に入らない男を奸計をめぐらせて破滅させ、気に入った女は奸計をめぐらせて手に入れる、卑怯な極悪男なのでした。今回はすっしぃさん。でもりんきらで観たかったな…
 で、嫌みなことに彼は甥であるロドリーゴを自分の後継者にしているんですよね。貴族としてロドリーゴはそれを受け入れざるをえない、だからシルヴィアとはもう叔母と甥の関係と割り切って一線を引こうとする、でもシルヴィアは未練たっぷりだしロドリーゴに嫌われたくなくて今の境遇がつらくて、ロドリーゴに取りすがるし日々泣いている…私はららたんは外見よりずっと大人っぽく色っぽい芝居ができる娘役さんだと思っているので、この嫋々とした人妻役が今から楽しみすぎます!
 一方フェルナンドは遊び人として安酒場に出入りするうちに、踊り子のイサベラと懇意になっています。これがヒロインで今回はゆうりちゃん、でも実はわりと出番が少ないのがネックかな。同じ酒場で働くラモンはイサベラに想いを寄せていますが、イサベラは相手にしてくれない。イサベラはフェルナンドに隠された素顔があるのを感じながら、今だけでもいい、と彼を慕っている。自分とは身分違いであること、彼に貴族の娘の婚約者がいることも承知している(フェルナンドがイサベラにマルガリータの存在を語るくだりが、卑怯でずるい男なのではなくむしろ彼の渾身の誠意なのだと見えるよう、まぁ様なら演じてくれると思うのですよ! 期待!!)。ラモンはそんなイサベラを見ていられない…
 ロドリーゴがルカノールに対し含むところがあることを知って、フェルナンドは彼を復讐の仲間に誘う。その話を盗み聞きしていたラモンも仲間に引き入れられる。これは男役123が「黒い天使」とか名乗ってゾロよろしく夜な夜な暗躍し、フェルナンドの仲間をひとりずつ懲らしめていく…みたいな冒険活劇になっているのです。
 フェルナンドの婚約者マルガリータは、まどか。フェルナンドの放蕩に事情があるらしいことを察していて、「待っています」と微笑む可憐で清らかな少女。『コルドバ』のアンフェリータ、『琥珀』のフランソワーズにあたる役です。私はこういうポジションのキャラクターを置く柴田ロマンが本当に大好きで、かつこれをウザくなく共感されるよう演じるのはけっこう難しいと思っています。でもまどかならできると思う、期待しかない!
 で、いろいろあってフェルナンドはついにルカノールを討ち果たすのですが、彼らをルカノールの邸宅に引き入れる役目を終えたシルヴィアは、彼らの成功を見届けたのちに身投げします。ロドリーゴを愛していたのに、父親の窮地を救うためとはいえ愛してもいない男に身を任せた自分を許せなかったから。愛のためとはいえ夫を殺す手助けをした自分を許せなかったから。これで万々歳、と恋人のところに戻る図太さは持ち合わせていない、慎ましく信心深く潔い女だったら。だから自ら死を選ぶ。
 でもロドリーゴは、ルカノールを倒して彼女を迎えに行くことを夢見て、この襲撃に参加していたのです。ロドリーゴは驚倒してフェルナンドに告げます、「私のシルヴィアが死んだ」と。
 その直前にフェルナンドもまた、イサベラと別れていました。イサベラはフェルナンドの宿願が果たされたのを知り、彼がかつていた、本来いるべき貴族社会に戻っていくであろうことを悟り、身を引くのです。フェルナンドは去る彼女を止めませんでした。ラモンが彼女の後を追いました。
 それでロドリーゴの言葉を受けて、物語のラストにフェルナンドは言うのです、「私のイサベラも、死んだ」…幕。
 『アルジェの男』ほどではないけれど、けっこう「ええええ?」って反応もありそうなオチだと思います。でも『アルジェ』同様、私は大好き。ただ、これもよほど上手く演じないと難しい台詞だと思うのです。理解されないどころか、下手したら反感買いますよね。
 だってイサベラは死んでなんかいない。彼女のそばにはラモンがいて、そりゃそれでこの先このふたりが上手くいくとは限らないけれど、でも彼女にはこれからもいろいろな出会いがあるかもしれないし幸せに生きていくかもしれないわけで、死んだ者扱いするなんてものすごく傲岸不遜なことなんですよ。
 でも、フェルナンドにとっては死んだも同然で、それは「私のイサベラ」は死んだ、私の恋は終わった、私の青春は終わった、真の人生は終わった、心が死んだ…って宣言なんですよね。イヤ彼だってこの先貴族社会に戻り伯爵だかなんだかとしてマルガリータと結婚し息子を作り家を継がせ社交をし事業をし幸せに生きていくのでしょう、妻を愛し子供を愛し人生を楽しんで過ごしていくのでしょう。でも心は、心の一番柔らかい部分は死んでいる、イサベラと共に死んでしまった…という台詞だと私は解釈しているのです。その悲痛、絶望、どうにもならない恋と現実の悲しさ、せつなさを表現してくれることを、私はまぁ様には期待しています。楽しみだなあ!
 で、ロドリーゴにはそこまで物語のテーマを背負うような部分はないので、逆にただひたすら美しく全編を通して苦悩しはりきり輝いてくれればいいのです。ああ楽しみ。いろいろカットされちゃったりしないといいなあ。ららたんとのダンス、ららたんとのキスシーン…あああ楽しみすぎます!
 それにホッタイズがついてくるんだから、全国どこまで観に行ったって安い気がします。大階段がないホッタイズはきっとみんなもっとバリバリ踊って観やすいよ! コマちゃん愛ちゃんずんちゃんがいない分、普通に考えればポジションは上がるはずで、それも楽しみ。歌手としてももっと起用されると嬉しいなあ。まあ「満点の瞳」は回ってこなくていいけど、ジャガーも別にNoThankyouなんだけど個人的には(^^;)。
 お休みがほとんどないままにすぐ集合日、で大変でしょうが、がんばっていただきたいです。そして全国各地で美味しいものをたくさん食べて鋭気を養い元気に回っていただきたい。もちろん昨年同様、私も梅田から鹿児島まで付けまわす(笑)所存です、きっとまた暑苦しい記事を書くことになるでしょう。よかったらおつきあいくださいませ…



コメント (2)
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